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「イスラエルは戦争をやめない」20241013

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「イスラエルは戦争をやめない」20241013

聖書 マタイ福音書 八章五節~十三節

 

 隣国に対するイスラエルの攻撃が止みません。戦闘状態は拡大しています。そこで、イスラエルが戦争をやめない理由を考えて聖書を読みました。

 イスラエルは宗教国家です。その宗教とはもちろんユダヤ教です。ユダヤとイスラエルという呼び名が出てくることに混乱している方もおられると思いますので、このあたりから説明しましょう。

 イスラエル国家の元は、アブラハムの孫ヤコブの息子十二人を族長に持つ部族連合でした。ヤコブの息子たちが作っている国がどうしてイスラエルなのかというと、ある事件をきっかけに、ヤコブは神様からイスラエルという名を頂いたことになっているからです。アブラハムの長男イサクにはエサウとヤコブという双子が生まれました。弟ヤコブは兄エサウから長子の特権を騙し取ったために命を狙われ、逃亡したのです。逃亡先で成功したヤコブはある日突然、故郷に帰れと神から命令されたので、しぶしぶ生まれ故郷に帰るのですが、その途中でヤボクの渡しと呼ばれる所で、家族や財産を先に行かせて、一人でその場に残りました。その場所で、ヤコブは神と取っ組み合いしたという神話があります。決断を実行に移すために七転八倒したのでしょう。夜が明ける前に放してくれと言った神に、私を祝福してくれるまで放しませんとヤコブは食い下がったのです。このようなヤコブに神はイスラエル(神と争う者)という名前を与えたといいます(創世記三十二章)。神から祝福をもぎ取ったヤコブの子孫の国がイスラエルと呼ばれているのです。

 ヤコブはアブラハムの孫です。アブラハムに長男が生まれる前に、神はアブラハムの子孫にカナン地方を与えると約束した(創世記十二章七節)ことになっております。この契約があるから、カナン地方(現在のイスラエルとその周辺地域)はアブラハムの子孫イスラエルのものだと主張しているのです。

 

【現実は奪い合い】

 とはいえ、現実は厳しいもので、過去に何度も飢饉や戦争のために、イスラエルはこの地を離れなければなりませんでした。

 エジプトの奴隷であったイスラエル民族がモーセに率いられてカナンの地に帰って来た頃には、すでに多くの民族が住んでいました。イスラエル民族はモーセの後継者ヨシュアに率いられてカナンを奪還(だっかん)していくのですが、数百年もカナン地方に住んでいた人々の側から見れば、突然攻めてくるイスラエル民族は侵略者です。

 イスラエルがカナン地方を征服し各部族に割譲(かつじょう)し終わるまでには、数十年を要しました。その後も、当然周りの部族間との衝突は絶えませんでした。その頃は、隣国との戦いの際には、士師と呼ばれるカリスマ的な指導者がそのつど選ばれ、部族連合で対処していました。しかし、周りの国々のように、兵力を常に率いてくれる王を民は要求するようになり、最初に王位についたのがサウル(ベニヤミン族)でしたが、王権はまだ弱かったのです。その後、ペリシテ(パレスティナ)との戦闘で巨人ゴリアテを倒したダビデ(ユダ族)が二代目の王になり、十二部族を纏める王になったのです。三代目の王になったダビデの息子ソロモンは荘厳な神殿を建てたほどですから、強大な権力を持ったのですが、民に重税や強制労働を課し、王は異邦の女たちを抱えたために、異教を持ち込んでしまい宗教の退廃や分裂を招きました。また、ユダ族優遇の政策による不満などが、ソロモンの死後に一気に吹き出して、北の十部族と南のユダ及びベニアミン族に分裂したため、弱体化して周りの国々に対抗できなくなったのです。北イスラエル王国の首都サマリアは紀元前七二二年にアッシリア帝国に陥落させられ、南ユダ王国は紀元前五八六年にバビロニア帝国(ネブカドネザル二世)に滅ぼざれ、エリート層はバビロンに捕囚されます。ペルシャ帝国(キュロス二世)がバビロニアを征服してから解放されたユダヤ人たちはエルサレムに戻り、紀元前五一六年に第二神殿を完成させました。

 その後もギリシャの支配下になったり、反乱により独立を獲得した時期もありますが、紀元前六十三年からはローマの支配下に置かれます。ローマに対する反乱の末、紀元七十年にエルサレム神殿は破壊され、神殿礼拝は終わります。その後もローマ帝国に対する反乱を起こして紀元一三二年に一時的にエルサレムを奪還しますが、三年後にはローマの大群によって鎮圧されました。この時から、ユダヤ人はエルサレムへの入城を禁止され、完全に離散の民(ディアスポラ)となったのです。

 しかし、十九世紀に入り、離散した土地で勢力を伸ばしたユダヤ人はエルサレムの丘シオンに帰ろうというシオニズム運動を起こし、第二次世界大戦後国連の干渉によりパレスチナがイスラエルとアラブ諸国に分断されたのです。このように、イスラエルは多くの試練を乗り越えて現在のイスラエルを手に入れました。しかし、イスラエルはこの状態を良しとしていません。神とアブラハムの契約の通り、パレスティナ全域をイスラエルのものにしようとしているので戦争をやめません。

 

【イエスの意識変化】

 ローマ占領下のイスラエルに生まれたイエスも、アブラハム契約を信じていたので、異邦人を軽蔑していたはずです。しかし、当時の社会が罪人と断定していた人々に救いを宣言したイエスの噂は、国境を超えていました。シリア・フェニキア生まれのギリシャ人の女が娘から悪霊を追い出して欲しいとイエスに迫った逸話(マルコ七章二十四節~三十節)や、ローマの百人隊長が、部下を癒してくださいとイエスに懇願した逸話(マタイ八章五節〜十三節)から判るように、全ての人間が救いを求めている現状を出来事によってイエスは理解したのでしょう。イスラエルだけが神に選ばれた選民であるという神話(神学)を疑ったはずです。その後、福音を伝えるイエスの姿勢は民族主義を超えていました。イスラエルだけが神に選ばれた選民であるという神学に対立してイエスは行動しています。

 ところが、イエスの後継者であるはずの弟子たちが組織したキリスト教会は、マタイ福音書の最後に大宣教命令を出す復活のキリストを描いてしまいました。それによれば「世界に出ていって全ての国民を弟子となせ」と言うのです。イスラエル民族だけの救い主というイメージを打ち壊しましたけれども、キリスト教は全世界に対する覇権主義です。ユダヤ教であれ、キリスト教であれ、人間が作り出した神話の神は、自己民族の優位性を保証して争いを生み出して来ました。このように人を分断し争いを生む神話の神を一般民衆は必要としません。

 

【ぼくたちは】

 これらの神話はイエスの願いと完全に対立しています。イエスの願いは世界の民衆の救いと平和です。そのためには依怙贔屓(えこひいき)する神話の民族神は必要ありません。むしろ神話の神など無い方がいいのです。

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