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「専門家にご注意」20211010

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「専門家にご注意」20211010

聖書 ルカによる福音 十二章一節

 

 先日、岸田文雄首相の所信表明演説がありました。日本人として、これからぼくらはどのように生活していけばいいでしょうか。

 国というのは結構難しい概念です。強大な国が生まれたのは、数千年前でしょう。つまり、それほど昔のことではありません。青森にある山内丸山遺跡は五千九百年から四千二百年前の縄文時代の大規模集落だと言われておりますが、まだまだ国と呼べるものではありません。なぜならば、大きな集団ができるためには、それを支える文化が必要だからです。石、銅、鉄へ武器変化していきますし、多人数で暮らすためには、食料の生産と備蓄、運搬するためには馬による移動技術も必要になってきます。そのような技術の発展に加えて、心理的に人をまとめる論理の発展も必要です。一言で言えば、文化の発展共に強大な集団が結成可能になり、集団を指導する論理を展開できるリーダーが出てきて、はじめて強大な国が誕生きるので

 ピラミッドを見て判るように、その当時すでにエジプトには強大な国があったことは判ります。しかし、エジプトでどのように権力が強大化し大きい国が誕生したのかを知ることは非常に難しいのです。

 エジプト文明とは比べ物にならないくらい新しいものですが、とは言え、かなり古い記録がしかもまとまった形で、しかもぼくたちでも手軽に手にすることができる資料が旧約聖書です。

 もちろん、実際の記録ではなくて、著者や編纂者の意図によって創作、変更修飾された歴史ですけれども、イスラエルと呼ばれる国の誕生の様子をうかがい知ることできます。

 歴史の面白いところは、背景に現実に生きていた人々がいたことです。人々の営みは隠すことができずに滲(にじ)み出てくるのです。

 しかもイスラエルの地方では、かなり早い時期に文字が発達し、律法を文字で書き残す文化がありましたので、幸いにもイスラエルという国の誕生に迫ることができるのです。

 

【民は王を求めてしまった】

 さらに、イスラエル国家誕生前の歴史も、わたしたちに判る物語形式で詳しく描かれております。もちろん歴史ですから注意して読まなければなりません。

 たとえば、創世記の天地創造物語からカナン(パレスチナ)地方に定着するあたりまでは、ソロモン政権を支えるために創作された神話として読む必要があります

 本当に十二部族であったかどうか判りませんが、とにかく、周りの強大な武力が侵攻してくることに対抗するために、小さな部族が連合を作ったのは事実であろうと思います。

 ちょうど日本の戦国時代のように、多くの軍勢を持つ国からの侵攻に備えるために、小さな国が連合したことを思い浮かべると判りやすいでしょう。

 部族連合だけでは緊急事態に対抗するには不十分であったことは想像に固くありません。そこで各部族をまとめて天下を取る者が求められます。だれが天下人になるかということで部族間の競合もあったようです。

 

謀略の勝利者が支配者になった

 当時幾らかの信頼を勝ち取っていた預言者サムエルを抱きこんで、最初に王になったのがベニアミン族出身のサウル(サムエル記上十章)です。しかしサウルは預言者サムエルの言葉に従順でなかったために、王座から降ろされそうになって悩まされるようになります。そんなサウルを慰めるために竪琴の演奏者として連れてこられたのがダビデです。ダビデは石投げ紐を使ってペリシテの大勇士を倒したことにより、サウルの従者となり、その後頭角を現して、サウルの死後にまずユダ族の王となり、北の部族連合イスラエルとの戦いに勝って、北イスラエルと南ユダを統一した国の王となりました。しかしその後、何度も王座を狙われていることから安泰ではなかったことが判ります。

 ダビデが忠実な家臣ウリヤの妻を奪って産ませた子がソロモンです。ダビデが年老いた頃にその相続権をめぐる争いの末に兄たちを殺してソロモンは王になりました。ダビデの死後にソロモンは大幅な粛清(しゅくせい)をし王国の全ての制度一新して、王位を確立します。

 ダビデは王宮に住めるようになった頃、幕屋で礼拝していた主のために家を建てようと思ったのですが(サムエル記下七章)、預言者ナタンに託された言葉によって許されなかったことになっており、その遺志を継いで神殿建築に当たったのがソロモンだということになっております。ソロモンは神殿建築し祭司も自ら任命したほどですから、礼拝形式まで一新して、王座を磐石なものにしましたソロモンはユダヤ教を確立し、それを徹底的に教えたのだと思います

 この神殿礼拝を含むユダヤ教の正当性を証明しようとして編纂されたのが旧約聖書の文書群でしょう。これらは民衆を支配するための道具に用いられ、それらを教えのが専門家です。概して専門家には御用学者が多いのが世の常です。

 

支配形態が巧妙になった

 このように、国というものは、当初は外部の敵から支配者と隷属する民の生命や財産を守るために作られたものだったのです。しかしそう言えるのは、数十年前までのことです。現在の世界を混乱におとしいれているのは、目に見えないです。見えない病原体だけのことでもなくて、人間には感知できない姿へと進化した技術です。人の往来や情報の伝達が、人間の想像を超えた速さと広がりを獲得して、全く新しい世界秩序を作り出してしまいました。

 実在する人でさえ情報の波に飲み込まれて、実態が浮かび上がってきませんし、国や地方という今までの枠にも縛られない情報実態がありません。数十年前には考えもしなかった方法で人が踊らされ世界中が混乱の渦に巻き込まれてしまいました。

 感染症のことだけでなく、さまさまな恐怖煽(あお)る情報がどこから出ているのか判りません。信頼できるエビデンス(証拠)がどこにもないのです。翻弄(ほんろう・もてあそぶ)されている庶民に平安はありません。専門家に訊かずとも、焦らずに常識的に考えれば、だれかがこの現状を作っていると気づけるはずです。

 互いに異なる見解を述べる専門家が世界中にこれほど多くいるのですから、そんなもの信頼できません。「ホ、ホ、ホータル来い」という歌がありますように、誘われるままに流されていく人の群れを見て誰かが笑っているに違いありません。あなたもわたしも差別されバカにされているのです。

 

【ぼくたちは】

 このような現状にイエスが置かれたら、どんな助言なさでしょうか。

 ファリサイ派のパン種、すなわち偽善に注意しろ、とイエスはおっしゃいました。律法学者やファリサイ派は法律の専門家ですもの、法律を使って庶民を騙すことぐらい朝飯前です。そうだとすれば、人を扇動するために専門家が作った物語に流されないことが最も必要です。イエスは難しいことを言っておられません。ただ「専門家に注意せよ」とおっしゃっただけです。ぼくたちは専門家の偽善に流されず、常識的に考えればよいだけなのです。

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