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「ライフスタイルを変える」20240602
「ライフスタイルを変える」20240602
聖書 マルコ福音書 二章 十八節〜二十二節
これほど物価が上がりますと、生活に困窮する人が多くなって当然です。物価上昇を止めるどころか、上昇の加速に拍車をかけるような材料が続出して来るように思えます。こんな現状を止められない政府を作ったのは国民一人一人の責任であることを自覚しなければなりません。
のんびり生活していた頃には、個人の生活を高める「自己啓発」が流行ったこともありました。しかしこれからは、大きな外圧によって、生活様式、つまり「ライフスタイル」の変更を余儀なくされることがますます増えてくるでしょう。
【外圧に対する備えがない】
今年の元旦に能登半島を襲った大地震から五ヶ月が過ぎました。地震直前まで正月を楽しんでいた人々は、思いもよらない災害に襲われて、生活が大逆転しました。伝統的な生活様式が一瞬にして崩れ去り、大切な人々を亡くし、その日の衣食住さえ失くした事態になったのです。
このような災害が何時何処に起きてもおかしくないと言われている日本に住んでるぼくらの多くが、備えのないまま生活しているのですから日本人は脳天気であるとしか言いようがありません。
天災だけではなく戦争という人災も各地でおきています。弾が飛んでくる直前までの穏やかな生活が一瞬に吹き飛ばされて、追い出され逃げ惑い、生活が一変した人々をライブに近い映像で見せられました。
このように、生活様式は、外圧によって一瞬に変化するにもかかわらず、変わる、変わらざるを得ない、変えさせられるという危機感を持っていない人があまりにも多いことを危惧しています。
【生活様式を変えざるを得なかったイエス】
今日読んでいただいた聖書の箇所によれば、ファリサイ派の人々、つまり分離派と呼ばれた熱心なユダヤ教徒は、イエスの弟子たちが断食していないことを批判しました。弟子を批判したということは、彼らの師であると見なされていたイエスを批判したということです。
これに答えてイエスは突然、判りにくい譬え話をしたように思えます。花婿がいる間に婚礼の客は断食なんかできない。花婿が奪い去られる時が来れば、つまりそれほど、状況が一変すれば断食するだろう。しかし、そうでもないかぎり断食しない、とイエスはキッパリ言ったのです。
すでにこの時点で、イエスは自分が殺されることを予言しておられたのだという解釈がありますけれども、今日の話題からズレないために、これについては説明しません。とにかく、「生活が大転換させられるほどのことでもなければ断食なんかしない」とイエスは言ったのです。
断食を修行の中に取り入れている宗教が多いのは、修行に打ち込んでいることを示すパフォーマンスとしては手頃だからでしょう。確かに、腹一杯で修行するよりは、腹を空かせたほうが、精神が研ぎ澄まされるということも事実です。しかしイエスは断食で信心深さをアピールするようなことはなさいませんでした。当時では突拍子もない福音を理解してもらうために、イエスは色々なパフォーマンスをなさいましたが、自分の信心深さをアピールするための断食などしませんでした。
確かにイエスも、修行を始めた頃には、バプテスト・ヨハネに勧められて、荒れ野で四十日間の断食をしたようです。しかし、自分が伝えるべき内容に気づいたイエスは、伝統的宗教に見切りをつけて、それまでの宗教的な熱心さをアピールする生活様式を捨てたのです。生活様式を変えたイエスは、宗教的なパフォーマンスである断食などするはずもなく、弟子たちにも断食などさせませんでした。イエス自身の生活様式はそれほど変わったので、昔の生活様式を取り入れるつもりはないと宣言したのです。
【新しい葡萄酒は新しい皮袋に入れる】
さらにイエスは自分の考えを判りやすく説明するために、別の譬え話をなさいました。
新しい布で古い服の継当てをしない。新しい布は濡れると縮んで破れを大きくしてしまうから。新しい葡萄酒を古い皮袋に入れない。新しい葡萄酒は発酵が進んで膨張し、伸び切った古い皮袋を裂いてしまうから。
この譬え話は、今までの伝統に無い新しい考えをしはじめたぼくたちは、古い生活様式には馴染めないから、新しい生活様式で生きていくことにした、というイエスの宣言なのです。
【時代と生活様式の変化】
毎晩、姉とする電話の中で昔の生活を話題にして笑うことがよくあります。そのように市外に毎晩電話するなど、電話代が高かった昔は考えられませんでした。今は毎月一定料金のかけ放題で、通話時間を気兼ねせず電話で話せます。先日も、九州福岡にお住まいの恩師青野太潮先生に電話して三十分前後話しました。
昔は、寮のピンク電話、いかがわしい電話じゃなくて、黒電話に対してピンク色の電話機という意味です。寮のピンク色の特殊簡易公衆電話で、市外に電話する時には、どんどん落ちていく十円硬貨(降下)を継ぎ足しながら電話したものです。
その内に百円硬貨が使える緑色の公衆電話ができましたが、学校から離れた所にあったので不便でした。テレホン・カードもなかった時代でしたから、百円玉を十枚くらい持って出かけたものです。それが今では個人に直通電話できるのです。スマホを使っている現代人には、昔の生活習慣を説明するのも難しいほどの変化です。このように、人災や天災だけでなく技術の変化によって、生活様式は変わるのです。
【ぼくたちは】
罪を赦してもらうためには、犠牲を献げ、伝統的な生活様式で勤勉に神に仕えなければならないと教えたユダヤの宗教から脱却(だっきゃく・ぬぎすてること)したイエスは、古い生活様式で生活することなどできなくなったのです。
ところが、イエスの死後に弟子たちが設立した教会は、かつてのユダヤ教の生活様式をすてたものの、キリスト教という新たな宗教の生活様式を作ってしまいました。
初代カトリックに始まり、今までに数え切れないほどの教会がさまざまな生活様式を提唱してきましたが、どれも「人間イエス」が考えた自由度の多い生活様式からほど遠く思えます。
既成のキリスト教会の生活様式は、イエスが見つけた福音を内包しきれていません。新しい葡萄酒のようなイエスの福音が、ぼくらの生活様式を元も子もない状態に引き裂かないように、ぼくたちはイエスに倣(なら)って、もっと柔軟性の高い生活様式を自ら創造して行くべきなのです。