インフォメーション

2026-07-25 12:28:00

ヒューマノイド、もう薬局・コンビニで働いてた。「Galbot」が狙う社会実装の現在地【駐在員が見た中国】

Facebook
X

「ハイテク中国」にあるのは大きな市場や技術だけではない。

本連載では、日中経済協会北京事務所副所長の宮奥俊介氏が日々中国の現場を歩き回る中で体験した熱気、興奮、期待そして期待外れや裏切りも含め、リアルな姿を伝える。

今回取り上げるのは、ヒューマノイドロボットの開発・製造を手掛ける「Galbot(ガルボット)」のオフィス。設立から3年あまりでCATL(寧徳時代新能源科技)などからの大型調達を繰り返し、評価額がすでに100億元(約2300億円)を超えた。日本での受注も見込み、都内に法人を設立したGalbotの現在地を探った。

中国国際サプライチェーン博Nvidiaブースでも展示された「G1」

創業3年で社員500人超える

「羨ましい!」ーー同僚の中国人スタッフが目を輝かせた。

「毎日オフィスでお菓子が補充されるのはもちろん、頼めば階下のコンビニからロボットが商品を届けてくれるんだよ。しかもエレベーターのボタンも自分で押せるんだから」

これは果たして「福利厚生」と呼べるのだろうか。しかし同僚は、自分が所属するオフィスとの差に、次第に落胆の色を隠せなくなっている。こちらに向けられる視線が痛い。このままでは転職を考え始めるのではーーと焦る筆者をよそに、Galbotの府川葵副総裁と石一璇セールスディレクターは自社の充実した社員向けサービスを次々披露する。

「新しいスタッフが入るたびにパーティーも開かれるんだよ。インターンを含めると社員はもう500人を超えているけど、出入りも多いからね」

Galbotは2023年5月、1992年生まれで清華大学とスタンフォード大学を卒業した王鶴CTOが設立。瞬く間に成長を遂げ、中国ヒューマノイドロボット市場でも注目企業の一つとなった。エンジニアをはじめとするスタッフも20~30代が中心だ。だからこそ優秀な人材を引き留めるため、福利厚生やサービスの充実に力を入れているという。

「でもみんな超激務。もちろん社長も含めてね。今朝も、最近恒例になっている朝食ミーティングだったし」

同僚スタッフは次第に冷静さを取り戻している。どうやらまだうちで働き続けてくれそうだ。

薬局、コンビニで働く

Galbotを訪問するのは半年ぶり2度目。福利厚生だけではなく、前回からの進化ぶりにも驚かされた。まず案内されたのはGalbotのヒューマノイドロボット「G1」が働くデリバリー特化の薬局だ。

G1は薬局でピッキングと梱包作業を担当する。薄暗く、空調の音だけが静かに響く地下1階の店舗でオンラインオーダーが届くと品名から度数まで人間以上に正確に識別し、ピッキングを行う。ラベル貼りを完了し、発送準備が整えば、配達員が商品を受け取りに来る。まるで人類がロボットに使われているような錯覚すら覚える。

作業を終えるとG1は自ら充電ブースに戻り、次のオーダーまで小休憩を取る。

「コンタクトレンズはこれで十分だけど、薬局には薬剤師も必要です。G1がピッキングしたものを、薬剤師がチェックして出荷するという流れです」(石セールスディレクター)

G1は引き出しを自ら開け、エア吸引で商品を吸着し、ピッキングを手際よく進めていく。オーダーが完了するたびに充電ブースへ戻るため、24時間体制での稼働が可能で、朝方や夜間にオーダーが集中しがちなコンタクトレンズの需要にも、柔軟に対応できる。しかも人間とは異なり、ロボットは単調な作業に精神的な負担も感じない。

「銀河太空艙」と名付けられたロボットキオスクも見学した。

数平方メートルのカプセル型店舗ではペットボトル飲料を販売するだけでなく、コーヒーやソフトクリームなどの注文を受けるとロボットが調理・サーブしてくれる。待機中は客と軽く会話を交わす余裕も見せ、その接客ぶりは板についている。採用しているAIはアリババクラウド製で、日本語能力はまだ途上とのことだが、「こんにちは!」と元気にあいさつしてくれた。

オーダーから商品提供まで30秒以内。銀河太空艙は北京市内で約50店舗、全国では175店舗を展開している。また、フランチャイズ型でさまざまな店舗を展開しており、アートトイメーカー「POP MART(ポップマート)」の商品を扱う店舗もある。

ファミマとも協業

50キロの荷物を軽々と持ち上げるS1は、主に工業用としての導入が進み、日本にも1台が出荷済みだ。「S1」の「S」はストロングを意味し、文字通り頑強な作りだが、人が作業導線に入ると自動停止する安全システムも備えている。

屈強なS1

また、GALBOTは3月から中国でファミリーマートとコラボ店舗の運営も始めている。こちらは通常のコンビニエンスストアの定員としてG1が働いている。レジに立ち、ホットスナックを含むピッキングを行う。G1から商品を受け取った顧客はセルフ会計を行う流れは非常にスムーズだ。

来客が少ない時間帯は品出し・補充のほか、さまざまな形状の商品を取り出す訓練を行っているそうだ。肉まんなどの柔らかい商品は握りつぶしてしまうことがあり、タバコ販売時の年齢確認機能についてもアップデートが必要だ。実用化に向けた研究が、現在も進められているという。

ファミマで導入されているG1

日本は最重要市場

Galbotのロボットは半年前から格段に進歩しており、開発と実装化のスピードに驚かされる。府川副総裁は、ジャスミンティーのペットボトルを運ぶG1に目を細める。

「日々トレーニングを積むロボットは、まるで自分の子供の成長を見守るよう。『あぁ、もうこんな事も出来るようになったんだ』って」

ヒューマノイド最大手のUNITREE(ユニツリー)がJALとGMOとの連携を発表するなど、中国ヒューマノイドロボットの日本市場への関心は高い。

Galbotも今年、日本法人を都内に設立。NVIDIA(エヌヴィディア)をはじめ、BOSCH(ボッシュ)やHYUNDAI(ヒュンダイ)といった外資系企業との連携を深める同社は、日系企業との協業の可能性も探るため、府川副総裁と石セールスディレクターを中心に、日々精力的に営業・渉外活動を展開している。

「日本市場はリスクアセスメントに時間がかかる傾向があって、スピード感の面では少し課題を感じています。ただ、一度信頼を得られれば長期的な関係を築けるというメリットもあるので、創業時から最重要市場の一つとして位置づけているんです」

「ロボットを実装化していくことで、人間が嫌がる仕事を減らし、より楽しく働ける社会を作っていきたい」

流暢な日本語で次々と紡がれる力強い言葉。自身と会社の成長に向け、惜しみなく時間とエネルギーを注ぐ。そして「学び続ける」若者たちとロボットが、鉄腕アトムとドラえもんを産んだ国を目指す。

(注)本稿の内容は執筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。

文:宮奥 俊介

日中経済協会北京事務所副所長。民間企業での勤務経験を経て2020年8月、一般財団法人日中経済協会に入職。調査部で中国経済情報の収集・発信、セミナー運営、ジャーナル企画編集などを担当。25年1月からは北京に駐在、日々最新の中国を追いかける。中国のスイーツは黄金糕(蜂窩糕)がお気に入り。立命館大学大学院国際関係研究科修了。

ヒューマノイド、もう薬局・コンビニで働いてた。「Galbot」が狙う社会実装の現在地【駐在員が見た中国】 - 36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

 


2026-07-25 12:27:00

全員参加マネジメント戦略[3]

 

「全員参加マネジメント戦略」の理論形成としては、野中郁次郎・勝見明共著「全員経営」があるが、「全員参加マネジメント戦略」を企業に導入するには、「トップ」はもちろんのこと「経営陣」や「全スタッフ」は精読し、さらに熟読することをお奨めする。

 

[2]全員参加マネジメント戦略論の基本 

「自律分散(環境変化に対するスピードや柔軟性を高める為に、一人ひとりが自立性をもって活動し、命令がなくても俊敏に向けて対応していく生命体のような組織)イノベーション企業成功」の本質として、野中郁次郎・勝見明共著「全員経営」で、日本企業が取り戻すべきは衆知を集めた「全員経営」であるとして、「基本的な考え方」を次のように説明している。

 

※実戦知:社会的な価値に向けて、現場において適切に判断する力

※形式知:文章や計算式、図表などで説明できる知識のこと

※暗黙知:経験や勘、直感力などにもとづく知識

 

(1)全員に「実践知」を組み込む

「全員参加マネジメント戦略」の「カナメ」は、「全員カリスマのマネジメント」である。この意味するところは、「中央集権型」から「自律分散型」への180度の転換である。

このためには、「全スタッフ」一人ひとりに「実践知」を組み込むことである。「実践知」というのは、元々日本企業の「DNA」であるので、「実践知」を復活させていくことが「全員マネジメント」である。

 

 

(2)「実践知」とは「即興の判断力」

企業の中で、常に高いパフォーマンスを達成しているその部署で、部員たちが発揮する最も特徴的な能力は、「即興の判断力」である。現場で個別具体的のミクロの現実に直面したとき、その都度、背後にある文脈や関係性を読み、マクロの対極と結びつけ、適時に最前の判断を俊敏に行う。それが典型的な「実践知」である。

「即興の判断力」を身につけるには、出発点として、「何がよいことなのか」という「共通善(common good:個人や一部の集団とっての善ではなく政治社会全体の共通の善のこと)」の「価値基準」を持たなければならない。

「何がよいことなのか」という「価値基準」をベースにしながら、その都度、状況に応じて最前の判断をする。もし、判断が結果的に間違っていたら、即、フィードバックして修正し、次の「目標」に向けてフィードフォワードしていく。このサイクルを速めながら一歩一歩、自分たちの目指す「よいこと」に近づいていく。

この「即興の判断力」には、論理や分析よりも「直観的な察知力」が大きく働く。日本の場合、その「直観」の背後には特有の「真善美」の意識がある。企業や組織において、社員やナバーたちが、「何がよいことなのか」という「共通善」を「価値基準」として持つと、それを目指そうとする思いが共有され、企業であっても、利益至上主義ではない「共同体(コミュニティ)」的な組織が生まれる。

その「共同体」的な「組織風土」のもとで、一人ひとりが「即興の判断力」を発揮し、「機動力」が生まれるところに、日本企業の強みがある。

 

 

(3)凡事の非凡化

「凡事(あたりまえのこと)」の積み重ねが「非凡(特にすぐれていること)」を生むので、「実践知」を高めるには、「凡事の非凡化」も必要な条件である。「ハイパフォーマンス」の企業でも、直面する多くの困難や混乱を乗り越えるため、その都度、「イノベティーブ」な試みに挑戦してきた。

ただ、「イノベーション」は、「さあ、これからやろう」と思い立って起こせるものではない。ましてや、論理分析的に「イノベーション」の方法が導かれない。論理分析からは非連続な発想は生まれない。

では、「イノベーション」は、いかにして生まれるのか。日々の仕事という「凡事」の連続が蓄積していくなかで、あるとき、日々の仕事という「凡事」が「非凡化」する。それが「イノベーション」にほかならない。

直面する個別具体の現実は決して固定的ではなく、流動的で常に変化をする。ただ、日々の「凡事」を積み重ねていなければ、変化への気づきは得られない。変化が一回性の出来事であっても、「凡事」の蓄積があるからこそ、その背後にある文脈や関係性を見抜き、普遍的な意味合いを読み取って、新しい価値を生み出していくことができる。

「凡事」の積み重ねが「非凡」を生むプロセスは、日本独自の自己革新の方法論である「守・破・離」のプロセスと重なる。「守」は日々の基本(凡事)を模範どおりに遂行する。「破」は基本から抜け出し、試行錯誤して自分らしさを発見していく。そして、「離」は基本(凡事)から脱し、まったく新しい独自のものを創造し、生み出す(非凡化)。

「守・破・離」は、「武道」や「茶道」などの伝統から継承された概念であるが、日本では企業活動においても、数々の「イノベーション」が人々の「守・破・離」の「自己革新」が生まれている。

これまでにない「イノベーション」により、高い「パフォーマンス」を実現し、競争力を高めていくためには、一人ひとりが「守・破・離」で「凡事」を「非凡化」していくことが求められる。

 

※守:師匠に言われたこと、師匠の流儀、基本の型を守る

※破:師匠の流儀を極めた後に、工夫して自分が良いと思った型を作り既存の型を破る

※璃:独自の境地の中で、一流を目指す。師匠の型・自分自身が作り出した型を踏まえたオリジナルに心化し、型から離れる

 

(4)ミドルマネジャーの

「ミドルアップダウン・マネジメント」

いちばん難しい問題は、現場で「実践知」を発揮しながら、新しい価値や価値を持った概念を生み出し、そこから、一つのビジネスモデルをつくり出して、収益へと結びつけることである。

実際、「パフォーマンス」の高い企業でも、第一線のフロントにいる人間が優秀でも一人だけの力では限界がある。それでも高い成果を出すことができるのは、チームを組むメンバーたちや社内外でであった人たちと、対話を通じて互いの「知」と「知」を結びつけ、ともに実践していく「場」をつくることができるからである。

互いに対話し、ともに実践する「場」においては、それぞれが現実のなかで直観的に見抜いた文脈や意味合いを、対話を通じて概念化し、一つの物語として相手に伝え、共有していくことも求められる。

「パフォーマンス」の高い企業の場合、対話と実践の「場」をつくり、そこから新しい概念を紡ぎ出し、その概念から物語をつくり出して、一つのビジネスモデルにつくり出していくうえで、重要な役割を演じるのが、ミドルマネジャーやミドルリーダーたちである。彼らは単にコントロールする管理職ではなく、「プロデューサー」としての力を発揮することが求められる。

「プロデューサー」というと、ある特定事業のリーダーをイメージするが、そうではない。社内や組織内において、クローズになりがちなサイロ(縦割り組織)を超え、より大きな関係性に目を向けて、内外にオープンに人脈やネットワークを形成し、「知」を総動員して新しいビジネスモデルを生み出していくことのできる人材、それが「プロデューサー」である。

「プロデューサー」的なミドルがネットワークのハブ的な役割を担い、そこにかかわる人々の「知」と「知」を結びつけていくことが、衆知を集めた「全員マネジメント」の実現には何より必要である。

企業や組織の内外において、ミドルマネジャーやミドルリーダーがタテとヨコの「知」の流が交差する中心点に立ちネトップとフロントを巻き込み、「知識創造プロセス」を促進する。これは「ミドルアップダウン」ともいうべき「マネジメント」のあり方である。

トップは「ビジョン」や「方向性」を示すが、フロントはどうしても日常的な現実世界に目を奪われ,視野や考え方が硬直しがちである。

そこで、ミドルがトップの目指す「ビジョン」と現実世界の間の矛盾を統合できるような「コンセプト」をつくり出し「伝道師」の役割を演じて、新しいビジネスモデルを紡ぎ出していく。この「ミドルアップダウン・マネジメント」も日本企業の得意技であることを、再確認すべきである。

 

(5)目標を実現する力

社内外のネットワークを駆使し、人々の「知」と「知」を結びつけ、これまでにない「価値」を生み出し、新しいビジネス・モデルをつくり出そうとするとき、多くの困難がともなう。それでも「パフォーマンスの高い企業」が成果をあげることができるのは、ミドルマネジャーたちの実現力がすぐれていたからである。

周囲から反対されても、市場のデータと反していても、巨費の投資が必要であっても、「世のため人のため」という「価値観」で挑戦すべきであると判断し、自分たちの生み出した新しい概念を実現していく、それには、政治的判断力や政治力も必要である。

これは、いわゆる狭義の政治の意味ではない。次元の違いにかかわらず、政治の本来の目的は「未来創造」にある。「未来創造」という、よい目的のためには、あらゆる手段を駆使し、実現する、それが本来の政治的判断力であり、政治力である。

 

(6)実践知を「組織化」する

「実践知」を育成し、伝承し、組織に埋め込む。「実践知」を組織的な「実践知」へと発展させていく、これも「実践知」に求められる能力の一つである。

 

(7)実践知の6つの能力

「実践知」のありようをさまざまな角度からとらえてみると、「実践知」にすぐれた人材には、次のような共通する特性がある。

1.「何がよいことなのか」という判断基準を持ち、「よい目的」をつくる能力を持つ

2.ありのままの現実のなかで本質を直観する能力を持つ

3.「場」をタイムリーにつくる能力を持つ

4.直観した本質を概念化し、物語として伝える能力を持つ

5.あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力を持つ

6.「実践知」を埋め込み「組織化」する能力を持つ

この6つの能力を合せると、「賢(phronesis:フロシネス)」と呼ぶ「リーダーシップ」のあり方が浮かび上がる。

「演繹的」な代表格は、マイケル・ポーターの「競争戦略論」であり、「ファイブ・フォース分析」によって市場を分析する科学的な考え方である。この結果「自分たちが何をやりたいのか」という主体的な当事者意識が欠如して、多くの日本企業がこの問題を抱えるようになった。

これと対照的なのは、一人ひとりの「実践知」を重視する考え方である。お客様のいる現場に行き、共体験し、対話する。そこには、生き生きした生活世界があり、主体と客体の対立を超えた主客一体の世界が展開される。

このとき大切なのは「競争の度合いは○○%」といった分析データではなく、マーケットを内側から見たときに、現実が自分にどう見える化、主観的な意味を問うことである。

主観的世界の入り口は、自らの思いである。自分は何のために生き、何のために仕事を、やりたいかという思いから始まり、主客一体の世界で「何がよいことなのか」という「気き」を得ていく。

あるいは、最初は単純な好奇心からでも、主観的世界に入り込んでいくうちに自分は何をやりたいのかという思いが次第に湧き上がりね「よい目的」が浮かび上がる。そうした主観的な世界で、ありのままの現実を直観し、直感した本質を概念化し、その概念を物語化し、あらゆる手段を駆使して実現し、一つのビジネスモデルをつくり出す。これが「実践知」である。

「分析マヒ症候群(分析することばかり意識を集中し、現場の声を無視し、使い道のない結果を生むこと)」から抜け出すためには、日本人が持っていた「実践知」を、もう一度取り戻す必要がある。つまり、「演繹的な方法」から「帰納的な方法」に転換することが「実践知」の実現になる。

※演繹法:「ルール」と「法則」に基づく物事に当てはめて結果を導き出す方法。

※帰納法:複数の事実や事例から共通点を導き出し、一般論となる結論にたどり着く方法。

 

(8)全員経営を実践する企業の特徴は何か

① 1人ひとりが実践知を発揮し、知識創造の「SECIモデル」のサイクルを回す

人間が生み出す「知」の在り方は、個人的で主観的な「暗黙知」と社会的な客観的な「形式知」の二つの側面に分けることができる。「暗黙知」は、言葉や文章で表現することが難しい主観的な「知」で、個人が経験に基づいて「暗黙」のうちに持つものである。思いや信念、身体に染め込んだ熟練、ひらめきもやもやなどは典型的な「暗黙知」である。「形式知」とは、言葉や文章で費用減できる明示的で客観的な「知」のことである。

新たな「知識創造」の源泉は、「暗黙知」にある。「知識」とは、個人主体的な信念や糸を真理に向かって社会的に正当化していくダイナミック・プロセス() である。日本は特に「暗黙知」を重視する「精神風土」がある。

人間が行う最も知的な営みである「知識創造」には、「暗黙知」と「形式知」が互いに作用し合い、相互変換し、それがスパイラル(spiral:らせん)に循環していく画で行われる。この「知」の循環運動が組織やチームで起きる場合、「知識創造論」では、次のような4つのモードをたどると考えられている。

1.まず、個人はまわりの世界との相互作用のなかで「暗黙知」を組織的に「共創」する。これを「共同化(Socialization)」と呼ぶ。

2.次に、「暗黙知」を「形式知」に変換する「表出化(Externalization)」。

3.続いて、「形式知」を組織内外の他の「形式知」と組み合わせ、一つの体系としての新たな「形式知」をつくり出す「連結化(Combination)」。

4.こうして体系化された「形式知」は行動や実践を通して、新たな「暗黙知」としてメンバー全員に吸収され、体化されていく。つまり、「形式知」からまた「暗黙知」へと変換される。「内面化(Internalization)」と呼ばれる。

この知識変換の4つのモードを、「共同化(S)」「表出化(E)」「連結化(C)」「内面化(I)」のそれぞれの頭文字をとって「SECIモデル」と呼ぶ。この一連のプロセスが回ることで、「知識」は「個人、集団、組織」の間を循環し、より豊かに増幅されていく。と同時に、「知識」が新しい「価値」として具現化されていく。これが組織的な「知識創造」の「基本原理」である。

「全員参加マネジメント戦略論」では、一人ひとりが「実践知」を発揮し、組織やチームで高いパフォーマンスをあげていくが、それを「知識創造」の切り口から見ると、必ず「SECIモデル」が回っている。それが、「全員マネジメント」の第一要件である。

 

【SECIモデル】

 

(組織的知識創造の一般原理)

1.共同化(S)

身体・五感を駆使、直接経験を通じた「暗黙知」の獲得、共創、創出(共感)

2.表出化(E)

対話・思索・喩えによる概念・図像の創造(概念化)

3.連結化(C)

「形式知」の組み合わせによる理論モデルの体系化(物語化)

4.内面化(I)

「形式知」を行動を通じて具現化、新たな「暗黙知」としての理解・会得(実践)

 

(知識創造のコンテンツ)

1.共同化(S):共感

・社内外の活動による現実直観

・感情移入・気付・予知の蓄積

・「暗黙知」の伝授、移転

2.表出化(E):概念

・「暗黙知」の言語化

・「暗黙知」から「形式知」への変換、翻訳

・言語からの概念・仮説の創造

3.連結化(C):分析

・概念間の関係生成トプロトタイピング・モデル・物語化

・「形式知」の伝達・普及・共有

・「形式知」の編集・操作化、ICT化

4.内面化(I):実践

・実験・仮説検証を通じた「形式知」の体化

・目標・製菓の持続的追及と自己超越

 

(暗黙知と形式知のスパイラル)

「暗黙知」と「形式知」は相互に作用し、スパイラルに回りながら新しい「知」を生みだしていく

[暗黙知]

・言葉や文章で費用減するのが難しい「暗黙知」で主観的な「知」

・経験や五感から得られる直接的知識

・思いや信念、身体に染み込んだ熟練やノウハウ、勘どころ

・個人的/情緒的・情念的・審美的

・特定の人間・場所・対象により特定・限定されることが多い

・身体体験をともなう共同作業により共有、発展増殖が可能

[形式知]

・言葉や文章で明示できる明示的で客観的な「知」

・特定の文脈から区切られた体系的知識

・理論、問題解決法、マニュアル、データベースなど

・社会的・組織的/理性的・論理的

・情報システムによる補完などにより場所の移動・転移、再利用可能

・言詩的媒介を通じて共有、編集が可能

 

② 全体と部分が相似形の「フラクタル組織」が生まれる

「フラクタル」とは、「複雑系科学」の擁護で、全体と部分が相似形で形成される状態を表している。全体を細分化していっても最初と同じ形が現れると言う「自己相似性」を持つ。逆にいえば、部分を合わせて全体をつくると、部分と同じ形になる。日本語では、「入れ子構造」がこれに近い概念である。

「複雑系科学」とは、相互に関連する複数の要因が複雑に絡み合って、全体として何らかの性格や振る舞いを見せるものについて、さまざまな現代科学的手法を用いて研究する学問である。

一般的に企業は、ピラミッド型の階層組織の構造をとる。そこではもっぱら、ヒエラルキー(階層構造)に沿った指揮命令系統があり、職務が専門分化されて、分業が行なわれ、規則や手続きが重視されるといった官僚制(ビューロクラシー)の運営が行なわれる。「官僚制階層組織」においては、部分はあくまでも全体の一部分にすぎない。

これに対して、トップからフロントまで、一人ひとりが「経営者意識」を持ち、「実践知」を発揮すると、どのレイヤー(layer:階層、重ね合わせ)、どのレベルにおいても、自己完結的な判断能力と実行力が発揮されるようになる。一人ひとりが「実践知」を発揮すると、企業やそれを構成する組織やチームは「自己組織化」していく。これも「全員参加マネジメント」の要件の一つである。

 

③ 組織が「自己組織化」し、創造性と効率性を両立させる

「フラクタル組織は、「全員参加マネジメント」を自づ現できる企業の組織の構造を表す概念であるが、一方、企業の個々の構成員の動き方にスポットをあてると、「自己組織化」と呼ばれる姿が見えてくる。「自律組織化(Self-organization)」とは、やはり「複雑系科学」の概念で、自然界のある動きが、自らを組織だて、自律的に秩序を生み出す現象のことをいう。

幾何学的な構造を持つ決勝の生成、動物の体表や鳥の羽の模様、DNAの二重螺旋のように、分子が自発的に集まって構造と機能を生み出す現象など、自然界や生物界のいたるところに見られる。

これは、人間の組織にもあてはめて考えることができる。組織やチームのメンバーが全体の目的や目標を達成するよう、自分の役割と価値を理解し、自らを動機づけながら、自律的に動く。

その結果、メンバーの力の総和より、高度な「知」が創発されるように組織のあり方、それが自己組織化である。そこでは「創造性」と「効率性」の両方を高めることができる。一人ひとりが、「実践知」を発揮すると、企業やそれを構成する組織やチームは「自己組織化」していく。これも、「全員マネジメント」の要件の一つである。

 

④ 変化への即応性が高い「知的機動力」を発揮する

「自己組織化」した組織やチームについて、その「戦い方」を見ると、「気動線」と呼ばれるあり方が見えてくる。戦争における戦い方には、消耗戦と機動戦がある。消耗戦は、兵器の破壊力を最大限に活かし敵の攻撃力の重心を攻撃し、物理的な壊滅状態に追い込もうとする戦法である。必要なのは圧倒的な軍事力であり、兵站力(軍事装備や物資、兵力の補給、輸送、管理運用)である。

一方、機動戦は迅速な意思決定と兵力の移動・集中により、敵に対して物理的、心理的に優位に立ち、戦闘の主導権を握る戦闘方法である。機動戦では、指揮系統は中央より現場の状況判断と行動が優先される。機動戦を効果的に遂行するには、そうした自律分散的なネットワーク型組織が必要になる。

企業も、変かの激しい市場でビジネスや事業を展開するには、機動戦によって、価値の源泉となる知識を高速回転で創造し、戦略から戦術レベルまで、柔軟な構想力、迅速な判断力、俊敏な行動力を駆使する「知的機動力」が重要になっている。

自己組織化した組織やチームのメンバーたちは、最前線において、変化への即応性の高い知的機動力を発揮する。「全員マネジメント」で高いパフォーマンスを実現できる企業は、そのような知的機動力マネジメントを展開しているのと考えることができる。

 

⑤ 有事に強い「ハイパーテキスト型組織」がつくられる

「全員参加マネジメント」を実現できている企業も、多くの場合、ピラミッド型の官僚制階層組織によって構成される。管理用制階層組織は平時のルーティンの業務において、効率性を追求する。

組織にはもう一つ、基本的なタイプとして「タスクフォース」という形態がある。有事の課題に対応するため、縦割りの階層組織のさまざまな部署からメンバーを集めてプロジェクトチームを組み、創造性を追求する。

ところが、プロジェクトチームでありがちなのは、メンバーが出身部署の利害代表になってしまい、プロジェクトがまとまりを欠いたまま、成果を出せなってしまうケースである。これに対し、プロジェクトにおいて「全員参加マネジメント」を実現できている企業は、プロジェクトチームが自己完結的な判断能力と実行力を発揮して、自己組織化し、知的機動力を駆使して、「イノベーション」を起こしたり、高い「パフォーマンス」をあげていく。

 

⑥ 組織が「共同体=コミュニティ」化し、社員の自己実現が可能になる

「全員参加マネジメント戦略論」について、組織を構成する社員同士、メンバー同士のつながり方という視点から見てみよう。衆知を集める「全員参加マネジメント」で、社員一人ひとりが自律分散リーダー人材として発揮する「実践知」の真髄である即興的な判断力は、出発点として、何が良いことなのか」という共通善(コモングッド)の価値基準を持つことがベースになる。

誰もが共通善の価値基準を共有することで、そこに「場」が形成される。それは、利益を追求する企業であっても、職業的な倫理観を共有する共同体的な性格を持つようになる。「全員参加マネジメント戦略論」や「衆知マネジメント」を追求すれば、志を同じくする「コミュニティ型マネジメント」に行き着く。これも大きな要件である。かつての日本企業は、共同体的な組織であったことに強みがあった。

 

 

 

 


2026-06-27 14:41:00

全員参加マネジメント戦略[2]

 

前回は、「松下幸之助の経営哲学」を紹介したが、近年では「稲盛和夫の経営哲学」を紹介しよう。この「哲学」の中心は、「全員参加マネジメント戦略」であり、今日の「亰セラ」を創りあげた「原理原則」でもある。この「原理原則」は、稲盛和夫が「日本航空」の再生を短期間に行った大きな「全員参加マネジメント戦略」の賜物なのである。

 

(3)稲盛和夫の経営哲学 

現代の日本の「経営者」で「リーダー的経営者」である稲盛和夫の著書「京セラフィロソフィー」で「経営のこころ」として、次のように説明しているが、「京セラでは一人ひとりが経営者」として位置づけ、「全員参加マネジメント戦略」の「経営哲学」として称賛されている。

 

 

1.心をベースとして経営する

 

京セラは資金も信用も実績もない小さな町工場から出発しました。頼れるものはなけなしの技術と28人の信じ合える仲間だけでした。会社の発展のために一人ひとりが精一杯努力する、経営者も命をかけてみんなの信頼にこたえる、働く仲間にそのような心を信じ、私利私欲のためではない、社員のみんなが本当にこの会社で働いて良かったと思う、すばらしい会社でありたいと考えてやってきたのが 京セラの経営です。

人の心はうつろいやすいものと言われますが、また同時にこれほど強固なものもないのです。その強い心のつながりをベースにしてきたからこそ、今日までの京セラの発展があるのです。

 

2.原理原則にしたがう

 

京セラでは創業の当初から、すべてのことを原理原則にしたがって判断してきました。会社の経営というものは、筋の通った、道理にあう、世間一般の道徳に反しないものでなければうまくいかず、長続きしないはずです。われわれは、いわゆる経営の常識というものに頼ることはしません。「たいていの会社ではこうだから」という常識に頼って安易な判断をしてはなりません。

組織にしても、財務にしても、利益の配分にしても、本来どうあるべきなのか、もの

の本質に基づいて判断をしていれば、外国においても、また、いまだかって遭遇したことのない新しい経済状況にあっても、判断を誤ることはありません。

 

3.大家族主義で経営する

 

私たちは、人の喜びを自分の喜びとして感じ、苦楽を共にできる家族のような信頼関係を大切にしてきました。これが京セラの社員どうしのつながりの原点といえます。この家族のような関係は、お互いに感謝しあうという気持ち、お互いを想いやるという気持ちとなって、これが信じあえる仲間をつくり、仕事をしていく基盤となりました。

家族のような関係ですから、仲間が仕事で困っているときには、理屈抜きで助けあえますし、プライベートなことでも親身になって話しあえます。人の心をベースとした経営は、とりもなおさず家族のような関係を大切にする経営でもあるのです。

 

4.実力主義に徹する

 

組織を運営していく上で最も重要なことは、それぞれの組織の長に本当に力のある人がついているかどうかということです。本当に力のある人とは、職務遂行の能力とともに、人間として尊敬され、信頼され、みんなのために自分の力を発揮しようとする人です。こうした人が組織の長として場や機会を与えられ、その力を十分に発揮できるような組織風土でなければなりません。

こうした実力主義によって組織の運営が行なわなければ、その組織は強化され、ひいてはみんなのためになっていきます。京セラでは年功や経歴といったものではなく、その人がもっている真の実力がすべてを測る基準となっているのです。

 

5.パートナーシップを重視する

 

京セラでは創業以来、心の通じあえる、信頼できる仲間づくりを目指し、これをベースに仕事をしてきました。したがって社員どうしは、「経営者」と「スタッフ」という縦の関係ではなく、一つの目的に向かって行動を共にし、自らの夢を実現していく同志の関係、つまりパートナーシップ(partnership:協力関係)という横の関係が基本となっているのです。

一般にありがちな権力や権威に基づく上下関係ではなく、志を同じくした仲間が心を一つにして会社を運営してきたことにより今日の発展があるのです。これはパートナーとしてお互いを理解しあい、信頼しあえる人間同士の結びつきとなったからこそ可能であったのです。

 

6.全員参加で経営する

 

京セラでは、アメーバ(amoeba:柔軟な)組織を経営の単位としています。各アメーバは自主独立で経営されており、そこでは誰もが自分の意見を言い、経営を考え、それに参画することができます。

一握りの人だけで経営が行なわれるのではなく、全員が参加するというところにその真髄があるのです。この経営への参加を通じて一人ひとりの自己実現が図られ、全員の力が一つの方向にそろったときに集団として目標達成へとつながっていきます。

全員参加の精神は、私たちが日頃のひらかれた人間関係や仲間意識、家族意識をつちかう場として、仕事と同じように大切にしてきた会社行事やコンパなどにも受けつがれています。

 

◎すべてのスタッフに経営への参加を求める

 

◎スタッフ一人ひとりが「有意議」となることが大切

 

◎京セラでは、すべての催しに「全員参加」を鉄則とした

 

◎スタッフと経営者の考え方のベースが同じになれば労使紛争は起きない

 

7.ベクトルを合わせる

 

人間にはそれぞれさまざまな考え方があります。もし社員一人ひとりがバラバラな考え方に従って行動したらどうなるでしょうか。それぞれの人の方向「ベクトル(vector:方向と勢い)」がそろわなければ力は分散してしまい、会社全体としての力とはなりません。

このことは、野球やサッカーなどの団体競技を見ればよくわかります。全員が勝利に向かって心を一つにしているチームと、各人が「個人タイトル」という目標にしか向いていないチームとでは、力の差は歴然としています。全員の力が同じ方向に結集したとき、何倍もの力となって驚くような成果を生み出します。1プラス1が5にも10にもなるのです。

 

◎ベクトルが合うまでとことんスタッフと話し込む

 

8.独創性を重んじる

 

京セラは、創業の時から独創性を重んじ、人の模倣ではなく、独自の技術で勝負してきました。他者ができないといったものを喜んで受注し、全員が必至の努力でこれをつくり上げ、結果として独自の技術を次々に確立・蓄積してきたのです。

大河内記念生産特賞や科学技術庁長官賞を受賞し、京セラが大きく飛躍するきっかけとなった「マルチレイヤーパッケージ(multi layer pacage:高い目標をかかげ困難な状況から逃げる事無く真っ正面から取り組み素晴らしい成果を上げること)の開発は、このことを実証しています。何としてもやり遂げなければという強い使命感をもち、毎日毎日創意工夫を重ねていく、その一歩一歩の積み重ねが、やがてすばらしい創造へとつながっていくのです。

 

◎「約束」を「現実」にしていく過程で、独創性は生まれた

 

◎毎日の小さな「創意工夫」の積み重ねが、偉大な技術開発へとつながっていく

 

◎自分自身で考え、自分自身の足で歩むこと

 

◎「やれもしないことをやる」という習い性が、第二電電を誕生させた

 

9.ガラス張りで経営する

 

京セラでは、信頼関係をベースとして経営が行なわれています。そこでは、経理面をはじめ、すべてのことがオープンになっており、何ら疑いをさしはさむ余地のないシステムが構築されています。

その一つの例として、「時間当り採算制度」では全部門の経営成績が全社員に公開されています。自分たちのアメーバの利益がいくらで、その内容はどうなのかが誰にでも容易に理解できるようになっています。

一方、私たち一人ひとりも同じように心をひらき、オープンに仕事をすることを求められています。このように社内がガラス張りであることによって、私たちは全力で仕事に取り組むことができるのです。

 

◎公明正大であることが経営者の迫力を生む

 

◎「経営者」の犠牲的精神が社会的な正義を守っている

 

10.高い目標をもつ

 

創業時、京セラは間借りの社屋がスタートし、「スタッフ」が百人に満たない頃から、「京セラは世界的視野に立って世界の京セラへ前進する」と言ってきました。

ちっぽけな会社でありながら世界に目を向けるということは、高く大きい目標をもつということと同じです。高い目標を設定する人には大きな成功が得られ、低い目標しかもたない人にはそれなりの結果しか得られません。

自ら大きな目標を設定すれば、そこに向かってエネルギーを集中させることができ、それが成功のカギとなるのです。明るく大きな夢や目標を描いてこそ、想像もつかないような偉大なことが成し遂げられるのです。

 

◎目標は、京都の「原町一」そして「世界一」へ

 

◎高い目標と、一歩一歩の積み重ねから未来は開かれる

 

 

(4)逆ピラミットの組織化

多くの企業の「組織」は、「ピラミッド型」であるが、「カリスマ(Charisma:大衆の強い支持を得る非凡な能力)」性が高い「トップ」であろうと、あるいは「ワンマン(one man:独裁者)」であろうと、「トップ」一人では、企業を動かせるはずはない。

最近、「人を重視」する傾向が高くなり、「逆ピラミッド型」組織が横行しているが、形だけで成功していない企業が多い。つまり、「魂」が入っていないための形骸化である。重要なことは、「逆ピラミッド型」の「組織」の最上位は、「お客様」であり、「お客様発」の思想を「トップ」みずから実践し、「組織」を構成する「スタッフ」ばかりでなく、関係する企業にも徹底させなければならない。

 

(5)全員参加マネジメント戦略化のポイント

「企業マネジメント能力」を高めるためには、多くの企業では「企業能力」のテクニックを向上させることに終始しているが、これでは絶対に「企業マネジメント能力」は高めてはいない。

「企業マネジメント能力」を高める最善の道は、「全員参加マネジメント戦略」を徹底させなければならない。そのためには、「卓越したリーダーシップ」と「優れたツー・ウエイ・コミュニケーション」が不可欠である。さらに、「全員参加マネジメント戦略」を発揮するには、「実践知」→「形式知」→「暗黙知」の連結化である。

「全員参加マネジメント戦略」のポイントは、店舗販売に例えるなら、最前線の「スタッフ」には、「ルール」としての「マニュアル」は必要である。「マニュアル」というのは最低限厳守するための「ルール」であって、「おもてなし社会を実現」するためには、「各スタッフ」の「おもてなしの心」の「アップスケール」がなければならない。

つまり、「各スタッフ」の「個性化」が不可欠であり、「お客様」が次の利用機会には、担当した「スタッフ」の指名があるほどの「おもてなしレベル」である。かくして、ここに「現場力」の「エンパワーメント・マネジメント戦略」を発揮によって、「全員参加マネジメント戦略」が可能になり、「企業マネジメント能力」が高まるのである。

「全員参加マネジメント戦略」の「カナメ」は、「全員カリスマのマネジメント戦略」である。このためには、「全スタッフ」に「実践知」を組み込むことである。「実践知」は、元々日本企業の「DNA」であるので、「実践知」を復活させることが不可欠である。

「実践知」というのは「即興の判断力」である。つまり、「ミクロ(micro:微少)」の現実に直面したときに、「マクロ(macro:巨大)」の対極と結びつけ、適時に最前の判断を俊敏に行うことである。

「即興の判断力」には、「論理」や「分析」よりも、「直観的な察知力」や「エンパワーメント・マネジメント戦略力」が不可欠である。「全員参加マネジメント戦略」には、「実践知」ができたら、「形式化」による「文章化」である。「形式知」が形成されたら、「暗黙知」として、「システム化」をしていかなければならない。

 

 


2026-06-27 14:38:00

デニーズのボックス席から世界一へ エヌビディア創業者が語る飲み放題コーヒー

  • Xのリンクアイコン
  • facebook
  • LINE

Jackie Davies - stock.adobe.com

米国の取引所に上場するテック株のうち、時価総額で世界トップクラスに君臨するのがエヌビディアである。しかもテクノロジーセクターは、米国市場全体において極めて大きな比重を占めている。半導体メーカーのエヌビディアは、AI特化のハードウェアを提供することで、マイクロソフトやアップルといった巨人を追い抜き、世界を席巻した。

 

デニーズで生まれた会社としては、悪くない。そう、台湾出身のジェンスン・フアンは、客がボックス席でコーヒーを飲みながら長居できることで知られる、象徴的なレストランチェーンでの朝食を囲みながら、この会社を構想したのだ。

それはまさに、貧しさから富へと上り詰める物語だ。ある意味では、ガレージでの創業どころか、ソーセージや卵の香りが漂うファミリーレストランのボックス席から世界一の企業が誕生したという、まさにドラマチックな創業譚だ。

現在、エヌビディアはSKハイニックス、ネイバー、SKテレコム、斗山グループ、LGグループといった韓国の有力企業と契約を結んでいる。

 

「提携の焦点は、重要なメモリ技術の開発と確保、AIインフラの拡張、そしてAI計算需要の世界的増加に対応するAI『ファクトリー』の構築支援にある」と、GlobalDataのBV・スワガスは書いている。「エヌビディアとSKハイニックスは先進メモリ製品の開発と供給確保で協力し、エヌビディアのAIインフラロードマップを支える」

あの謙虚な原点へ

「1993年、3人の友人、フアン、クリス・マラコウスキー、カーティス・プリームがデニーズに集まり、パソコン上でリアルな3Dグラフィックスを可能にするグラフィックス・チップ(GPU)の開発について話し合った」と、ブライアン・コールフィールドは2023年9月にエヌビディアのブログで書いた。フアンが自社を最初に思い描いた場所に銘板を設置するために戻ったことを伝える記事だ。「シリコンバレー中心部の交通量の多い大通りから少し入った場所にあるそのデニーズは、事業を始めるのに最適な場所だったとフアンは語った。当時フアンは妻と子どもとともに近くに住んでいた」

2つの言葉

コールフィールドの報道によれば、フアン自身は15歳のときに、そのデニーズで初めての仕事に就いたという。フアンは当時をこう語っている。

「食器洗いもやったし、バスボーイ(下膳係)もやったし、ウェイターもやった。コーヒーカップを運ぶ量なら、私より多い人はいない」

さらにフアンは、取材でデニーズについてこうも語っている。これが、なぜあのレストランがエヌビディアのインキュベーターになり得たのか、その一端を示している。

「飲み放題のコーヒーがあって、誰も追い出しに来なかった」とフアンは説明した。1990年代にデニーズで過ごしたことのある人の多くは、これが本当だったと覚えているだろう。少しだけ注文して、長居し、友人と語り合い、そして起業の計画を練ることができた。ある意味でそれは当時のスターバックスだった。ブランドの誇示は控えめで、肘を置く余裕があり、当時の米国の風景のなかで独自の「本物らしさ」を備えていた。

 

盛大な帰郷

コールフィールドは、その再訪をこう描写している。

 

「火曜日のイベントは、賑わう店内の一角で行われた。そこは北カリフォルニアでも特に人気の高いデニーズの1店舗で、家族連れや退職者、夜勤明けの労働者が、卵とパンケーキを山盛りにした皿、ソーセージやベーコンの皿を求めて次々と入ってきた。フアンもそのなかにいて、彼と同席者は、ランバージャック・スラム(パンケーキや卵のセット)などの米国定番メニューを平らげ、たっぷりのコーヒーで流し込みながら、会議で1日を始めた」

まさにランバージャック・スラムである。

やがてデニーズは、賞金2万5000ドル(約401万円)の「Denny's Trillion-Dollar Incubator Contest」を立ち上げた。ケンタッキー州レキシントンのウォルター・アーネットが、寄付のための「Dad Mob」コミュニティプラットフォームで優勝した。

 

ソウルへ

現在へと話を進めると、エヌビディアに関する最も新しい動きは、これらの契約について話し合うためのフアンの韓国訪問である。

「皆さんとここにいられて本当にうれしい」とフアンは述べたと報じられている。「これが韓国のエコシステムだ。これが産業基盤だ。これがベンチャー投資家だ。これが若い起業家だ。私たちは彼らを一堂に会させた。率直に言って、来年はこれを2倍ではなく、10倍の規模にしたい」

フアンはまた、同社がAIチップへの投資を決断するに至った哲学についても語った。

「偉大な技術のほとんどは、最初は玩具として始まった」と彼は言う。「そして私たちは、コンピューターゲームは現実を再現しようとしているから複雑なのだと気づいた。現実の再現には、並外れたアルゴリズムと並外れた計算技術が必要だ。そしてその出発点から、いつか世界で最も重要なテクノロジー企業の1社になれるかもしれないと夢見た。それが私たちの夢だった。33年前のことだ」

確かに、デニーズのあのボックス席から大きなものが生まれた。これと同じような話は、どこを探してもまず見つからないだろう。エヌビディアはまさに、この時代の金融の巨獣である。半導体の大半が製造される台湾の出身で、しかも米国で学んだ人物(若い頃にはケンタッキー州やオハイオ州の学校に通っていたとはいえ)なら、この圧倒的な巨大企業を創業するうえで好位置にいたと言うこともできる。だが、あのコーヒーも、多少は関係していたのかもしれない。

(forbes.com 原文)

デニーズのボックス席から世界一へ エヌビディア創業者が語る飲み放題コーヒー | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 



2026-06-20 20:33:00

2026.06.19 12:00

抹茶の世界市場は1.2兆円へ、3度目の正直で米国でのブームが加速

  • Xのリンクアイコン
  • facebook
  • LINE

stock.adobe.com

数字が物語るのは、目を見張る成長だ。Jade Leaf Matchaの社内データによれば、家庭用抹茶市場は2023年の約1億3000万ドル(約209億円)から2025年には推定2億ドル(約321億円)へ拡大している。2030年までに、その数字は倍増する可能性があると同社は見込む。より広い世界市場を追うアナリストも同様に強気で、世界の抹茶産業は2030年までに74億3000万ドル(約1兆1900億円)に達すると予測されている。地域別では北米が最も高い成長率を示し、年平均成長率は約8%にのぼる見通しだ。

 

しかし、TikTok向きのクリームトップや、パステルグリーンのラテがブルックリンからロサンゼルスまで(そしてその間の各地で)メニューに並ぶようになった今、その裏側では供給、調達、そして世界が需要に追いつけるのかという、より複雑な物語が進行している。

今週だけでも、CNBCは年収25万ドル(約4010万円)の若いテックワーカーが、その給与を手放して抹茶カフェを開業したという話題を取り上げた。実際、抹茶への愛が主流化するにつれて、抹茶カフェは米国の大都市圏にとどまらず、各地で増えつつある。

とはいえ、抹茶は新しいものではない。統合医療の医師であり、長年の抹茶支持者でもあるアンドリュー・ワイル博士は、ほとんどの米国人がその言葉を耳にする以前に抹茶と出会っていた。

 

「1959年11月、日本に着いて2日目のことだ。ホストマザーが私を隣家へ連れて行き、茶道をたしなむ近所の女性に会わせてくれた」とワイルは振り返る。「その女性が茶会を開いてくれて、抹茶を一碗出してくれた。私はすっかり心を奪われた。まず色だ。それに茶筅も、ただただ素晴らしいと思った。そして味だ。恋に落ちた」

その後に続いたのは、抹茶を米国の消費者へ届けようとする数十年にわたる試みだった。定着までに2度の失敗を経て、ようやく本格的なブームが到来した。1970年代、ワイルは日本へ行くたびに抹茶を米国へ持ち帰り、友人に分けていたが、誰もそれを知らなかった。1980年代にはさらに踏み込み、日本の抹茶会社と提携して、自身のウェブサイトで販売した。それもまた時代が早すぎた。

「有益な植物の普及活動と同じで、またしても時代が早すぎた」と彼は言う。市場が準備できていなかったのだ。さらに30年を要し、ソーシャルメディアの台頭、コーヒーから離れる世代の変化、そして世界的なウェルネス運動を経て、ようやくタイミングが一致した。今回の波は、抹茶を米国生活の定番にするための3度目の挑戦であり、そして初めて、米国のほうが彼に追いついた。

当時彼を引きつけたもの、そしていま消費者の関心を動かしているものは、味わい、儀式性、そして生物学的特性の組み合わせであり、これほど揃った飲み物は多くない。Jade Leaf Matchaのゼネラルマネージャー、ダニエル・ウォルダーは、主流化に向けた転換点は2024年秋だったと指摘する。

「ずっと伸び続けてはいたが、加速がはっきり始まったのは約18カ月前だ」と彼は言う。「そのころからソーシャルメディアで爆発的に広がり、本当に主流に入り始めた」

ウォルダーによれば、ソーシャルプラットフォーム上の抹茶への関心は前年比19%増で、Jade Leafの自社データとも近い。リピート購入率は年初来で56%まで上昇し、約12%の伸びを示す。平均注文額も2桁成長だ。抹茶を飲む人の約40%は、1日少なくとも1杯のコーヒーを抹茶に置き換えているという。

爆発的な需要に対する調達の課題

需要の急増は、より切実な問いを浮かび上がらせた。これほどの抹茶は実際どこから来ているのか。そしてサプライチェーンは持ちこたえられるのか。

 

Jade Leafの成り立ちは、その文脈を示す。同社は2014年、抹茶の精神的な故郷と長く見なされてきた地域、宇治にある独立系の家族経営農家による日本の共同体「Kizuna」の輸入者として設立された。多くのブランドが今もオークションを通じて仕入れる市場において、この直接的な関係は競争上の優位性となっている。

「私たちは同じ農家から、農家直で買っている」とウォルダーは説明する。「春の収穫が始まる前から、こちらが購入するつもりの量を十分前もって伝える。購入前から確保分がある」。この違いは大きい。オークションベースの調達では、価格高騰や供給不足のリスクを抱えやすい。直接の関係があれば、農場インフラへの資金投下が可能になり、大規模展開では再現しにくい品質の継続性も担保しやすい。

そうした対話は、いまや一段と切迫している。昨年広く報じられた抹茶不足は、業界の多くにとって不意打ちだった。要因の一部は「追いつき」問題で、粉砕能力が需要に追随できていなかった。しかし、より長期的な構図は構造的でもある。

 

「需要があるところへ、人は向かっていく」とウォルダーは言う。世界最大の茶生産国である中国も抹茶へ生産をシフトしつつあると、ワイルも確認する。ただし、とりわけ濃茶グレードの製品では、日本が大きな品質優位を保っている。

再生型農業の支持者であるワイルは次のように語る。「私たちは、土壌の健全性、持続可能な栽培、透明性を重視する日本の多世代にわたる茶農家と直接取引している。これにより、葉には抗酸化物質やその他の重要な栄養素が豊富に含まれる。トレンドに左右される市場では、こうした長期的な関係こそが、抹茶の豊かな文化、そして品質と健康上の利点を真に守る」

ワイルとJade Leafはいずれも宇治から調達し、オークションではなく農家直を選んだが、対象とする市場は異なる。ワイルがアンドレ・ファシオラと共同創業したMatchaKariは、医師としての信頼を背景に、プレミアムで健康志向の消費者を狙う。一方Jade Leafは、手に取りやすさとスケールに焦点を当てる。

オーガニックの分水嶺

品質と調達が交差する論点の1つが、オーガニックだ。抹茶は茶葉を丸ごと摂取する製品であるため、茶葉を抽出して飲む一般的なお茶とは異なり、栽培方法の安全性がより厳格に問われることになる。

 

「抹茶は、茶の中で唯一、葉を丸ごと摂取する形態だ」とワイルは指摘する。「すべてを摂取している」。この違いは、茶葉を取り除いてから飲む浸出茶には当てはまらない、農薬曝露の含意を伴う。

オーガニック抹茶の需要は世界で前年比21.4%増と急伸し、カテゴリー全体を上回っている。すでに逼迫した供給に、さらなる圧力がかかっている。Jade Leafは抹茶の約90%〜95%をオーガニックとして調達しており、オーガニック認証が比較的まれな日本市場全体とは対照的だ。

ウォルダーによれば、日本における慣行栽培とオーガニックの差は、見た目ほど大きくない。「日本の農法は自然にかなりクリーンだ。過度なほど伝統的で、それもプラスに働く」。彼にとって認証の価値は、農法そのものよりも、それが提供する確実性にある。「その確実性があることで、可能な限り最もクリーンな製品を得られていると分かる」

 

ワイルは、特に抹茶の健康面での訴求が強まるなか、急増する需要を満たすだけのオーガニック認証抹茶が圧倒的に足りていないと付け加える。その根拠は、植物の特異な栽培プロセスにある。

「収穫の約3週間前、植物は遮光布で強く覆われ、日光の約70%〜80%が遮られる」と彼は説明する。「その反応として、葉は大きく薄く育ち、抗酸化物質とL-テアニンをより多く生成する」

この遮光工程こそが、鮮やかな色をはじめとする抹茶の最も価値ある特性、さらには身体への独特の作用を生み出す。

「抹茶は、抗酸化物質とL-テアニン(カフェインの作用を調整する鎮静作用のあるアミノ酸)のレベルが最も高い」とワイルは付け加える。「神経が高ぶるようなカドを取ってくれる。コーヒーは多くの人に落ち着かない感じを生み、しばしば反動もある。抹茶にはそれに近いものが見られない」

2033年には3億4000万ドルに達する予測

当面、この勢いは明白であり、弱まる可能性は低いとワイルは言う。

米国の抹茶市場は2024年に1億6400万ドル(約263億円)を生み、2033年には3億4000万ドル(約546億円)に達すると予測されている。ウォルダーによれば、Jade Leafの現在の顧客の約65%は過去1年以内にブランドへ流入しており、カテゴリーが単に既存ファンを回しているのではなく、実際に拡大していることを示唆する。世帯浸透率は約5%で、コーヒーの約80%と比べると低い。ウォルダーにとって、このギャップこそが物語だ。

「抹茶の世界にいる人間に聞けば誰でも、抹茶は『健康によい』を掲げるどんな飲料よりも、あなたにとって良いと言うだろう。消費者がそれを理解し、アクセスでき、自分が望む形で抹茶を本当に楽しめるようにすることが重要だ」

今日の抹茶飲用者の多くが生まれる以前から同様の主張をしてきたワイルは、ここまで時間がかかったことに驚いていない。経験上、世の中が追いつく必要のあるものがあるのだ。60年、3度の挑戦を経て、ついに追いついた。彼は、いつか自身の茶の原点が米国で主流となり、抹茶さえも超えて広がっていくことを願っている。

(forbes.com 原文)抹茶の世界市場は1.2兆円へ、3度目の正直で米国でのブームが加速 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 

 

 

 

 

 

次ページ >爆発的な需要に対する調達の課題

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ...