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2024-04-27 20:06:00

2024年度「アジアのベスト50レストラン」。開催地ソウルから“美食の祭典”をレポート!

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『7th Door』(18位)と『天地門』で開催された「50 Best シグネチャー・セッション」のワンシーン

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先ごろ発表された「Asia’s 50 Best Restaurants 2024」(以下「アジア50」)。ランキングの発表自体はライブ配信されるため、なぜ各国から飲食業界関係者や有力メディアがこれほど集まるのか問われることも多い。その理由は関連イベントの独自性にある。

今回は韓国が初めてホスト国となり、授賞式と多数の関連イベントがソウル市内各所で開催された。公式イベントが実施されたのは2024年3月23日〜27日の5日間。前後して非公式のものも含めると数え切れないほどのイベントやワークショップ、パーティーが行われ、またあえて同時多発的に設定されたこともあり、すべてを網羅するのは不可能だった。

ここでは筆者が実際に見聞きしたものを中心に、韓国農業食料農村省(MAFRA)とソウル市が演出したアジア最大級の“美食の祭典”の一端をレポートする。

【関連記事】2024年版「アジアのベストレストラン50」発表(2024年度の1〜50位リストを公開中)

フォーラムではアジアを代表するシェフたちが次々と登壇

まずは、毎年恒例となっている公式イベントから。最も注目度が高いのは、飲食業界の未来を先取りするようなオピニオンリーダーが登壇するフォーラム「#50BestTalks」だ。「アジア50」の母体である「The World’s 50 Best Restaurants」(以下「世界50」)でも同名で開催されている。

右から台北『Mume』(34位)、ホーチミン『Anan Saigon』(48位)、シンガポール『Lolla』(43位)、ムンバイ『Ekaa』(98位/シェフ)、韓国食文化研究家、『Ekaa』(バー テンダー)、とんでもなく洗練された冷麺のテイスティングで会場をざわつかせたソウル『Yun』(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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毎回テーマが設定され、今年のテーマは「Food of the People」。それぞれが自分のルーツである気候風土・伝統文化風習に立ち返り、深く掘り下げ、それを“ガストロノミー”という世界共通語に昇華し共有する。

今回はインドやベトナム、フィリピン(『Lolla』のジョアン・シイさんはシンガポールに店を構えるフィリピン人で今回はフィリピンの食文化を紹介)といった、近ごろ存在感を増している美食界の“新勢力”が多く参加しており、時代が反映されたフォーラムとなった。

彼らが語った、アジアで広く共有する食文化の背景は「発酵」。発酵から生まれる「ウマミ」はアレンジされて西洋を含め世界的に広まり、今では「コク」という次なる新しい味覚の概念に注目しているシェフもいる。このテーマで日本の料理人が登壇しなかったのは少々残念だった。

手前から時計回りに、台湾の納豆、フィリピンの朝食の定番「ロンガニーサ(ソーセー ジ)」とココナッツビネガー、ベトナムのニョクマム(魚醤)のテイスティングプレート

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「#50BestTalks」の前には、シェフや飲食店関係者が少数のメディアと共にテーブルを囲み、フランクに意見を交換する「Meet The Chefs」が行われた。こちらも韓国、シンガポールのほかインド・チェンナイ、インドネシア・ジャカルタと多国籍なキャスティングに「アジア50」らしさが表れていた。

チェンナイのモダン・インディアン・キュイジーヌ『Avartana』(44位)のNikhil Nagpal(ニキル・ナグパル)さん(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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そのほか、参加シェフたちが最も楽しみにしているシェフたちの交流パーティー「Chefs’ Feast」では、スポンサー企業の韓国料理やビバレッジがふんだんに振る舞われ大いに盛り上がった。

日本勢の活躍が伝えた“食の日韓関係”の親密さ

公式に発表される前からフーディーズの間で噂が駆け巡り、限定シートを巡って争奪戦が起きるなど、ホットなトピックスとなったのがコラボレーションの数々だ。ソウル市内のトップレストランが各国のセレブリティシェフを迎えて開催した公式ダイニングイベント「50 Best シグネチャー・セッション」をはじめ、非公式も含めて“今回限り”のコラボレーションが多数開催された。

ホスト側の韓国のシェフを除くと、最も数多く出演したのが日本のシェフたち。日韓間は距離が近く互いに行き来しやすいこともあり、かねて日韓のシェフたちは親交を深めてきた。韓国のシェフは大多数が英語を話すし、日本語を使いこなす人も多いので言語の壁もない。

なかでもメディアが注目したのは公式セッションとして開かれた「天地門×Mume×傳(8位)」だ。

『傳』の長谷川在佑さん(左)、『天地門』のKim Dae-chun(キム・デチュン)さん(前列)、Han Bumhee(ハン・ブンヒ)さん(後列中央)、『Mume』のRichie Lim(リッチー・リン)さん(右)

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タラの芽、行者ニンニク、菜の花など春らしい素材が満載。「韓国とは共通点も多いですが、似ている中にも日本のものとは風味が違って興味深い」と長谷川さん

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日本のシェフとも親交のある香港のジャーナリストVanessa yeung (ヴァネッサ・ヤン)さんは「長谷川さんは、現在のアジアにおける日本料理の人気確立に最も貢献した料理人のひとりです。次世代の育成にも積極的。韓国のハンさんが日本料理でアジアの舞台に立てるように、国境を越えてサポートしているのも長谷川さんらしい」と言う。

ヨーロッパ各国のジャーナリストは大半が初めての渡韓。「ヨーロッパとはまったく違う食文化を持つ東アジア、日本・韓国・台湾の食を俯瞰して体験する貴重な経験でした」と語った。

同日同時刻には、別の公式イベント「7th Door×JL Studio(33位)×La Cime(9位)」が開催された。会場となった『天地門』と『7th Door』は同じビルの同じフロアにあるため、スターシェフたちが双方を行き来して顔を見せファンサービスに努める場面も(トップ画像)。両会場のデザートは『あずきとこおり』の堀尾美穂さんが腕を振るった。

『La Cime』の高田裕介さん(中央)。普段はシャイでもの静かな職人気質の料理人だが、彼の渡韓を待ちわびていたファンの熱狂ぶりに笑顔で記念撮影などに応じた。『JL Studio』のJimmy Lim(ジミー・リム)さん(左)、『7th Door』のKim Dae-chun(キム・デチュン)さん(右)

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フレンチの技術で再構築したアートのようなかき氷で有名な『あずきとこおり』の堀尾美穂さん

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同じく同日同時刻には、日韓の華やかなスターが勢揃いした「Eatanic Garden(62位)×Florilege(2位)×Solbam(65位)」も公式セッションとして行われた。

『Florilege』の川手寛康さん(右)。韓流スター並みに人気の『Eatanic Garden』のSon Jong-won(ソン・ジョンウォン)さん(中央)、『Solbam』のEom Tae-jun(オム・テジュン)さん(左)と

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ソンさんとオムさんの「憧れの川手さんの調理を間近で見られたことは料理人として大きな経験になった」という言葉を受けた川手さんは「ふたりとも料理に真摯に向き合っていて技術も非常に優れています。これからの韓国のガストロノミーをリードしていくシェフたちです」と話した。

ソンさんもオムさんも「来年の50入りは確実」と早くも下馬評が飛び交っている今年の注目シェフ。美しく洗練された料理に本人の整ったビジュアル…と、スター性は十分。これからの躍進が楽しみだ。

【注目記事】『フロリレージュ』川手寛康シェフが語る「東京で一番のレストランになるより大切なこと」

セッションならではのグルーヴ感のある料理を披露

一方、シェフたちの関心を集めたのが、同じく公式セッションとして開かれた「Alla Prima(91位)×cenci(47位)×L’Espoire du Hibou」だ。

『cenci』の坂本健さん(中央)。『Alla Prima』のKim Jin-hyuk(キム・ジンヒョク)さん(左)、『LʼEspoire du Hibou』のLim Ki-hak(リン・キハク)さん(右)と

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「イタリアンとフレンチの技術の出合い」をテーマにメニューづくりに取り組み、仕込みにも時間をかけて丁寧に仕上げた

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ゲストのひとりとして料理を楽しんだアジアを代表するスターシェフ、『Nusara』(6位)『Le Du』(12位)のThiTid “Ton" Tassanakajohn(愛称トン)さんは「高い実力と豊富な経験を持つシェフたちのコラボなので楽しみにしていました。日本と韓国のフレーバーが効果的に使われているのもユニークでした」と語った。

そのほか、筆者自身は追いきれなかったが日本勢が活躍した公式セッションは「La Yeon×NARISAWA(14位)」、非公式としては「L’Amant Secret×Estro(71位)×Crony(58位)」も開かれた。また、2023年のシンガポールに続き独自イベントを開催した『Gucci Osteria』は、フィレンツェ、東京、ソウルのシェフの競演でゲストを魅了した。

『Gucci Osteria Tokyo』のAntonio Iacoviello(アントニオ・イアコヴィエッロ)さん(左から2人目)。フィレンツェのKarime Lopez(カリメ・ロペス)さん(右)、紺藤敬彦さん(右から2人目)、ソウルのJun Hyungkyu(ジュン・ヒョンギュ)さん(左)と(写真提供:Akamatsu Kimiko)

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日本勢以外では、特に次の二つの公式セッションを紹介したい。一つめは「Onjium(21位)×The Chairman(4位)×Seroja(31位/最上位の新規入賞レストラン賞)」。

右から『Onjium』のPark Sung-bae(パク・ソンベ)さんとCho Eun-hee(チョ・ウンヒ)さん、『The Chairman』のDanny Yip(ダニー・イップ/アイコン賞)さん、『Seroja』のKevin Wong(ケヴィン・ウォン)さん

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「アイコン賞」を受賞したダニーさんは、自店のある香港だけでなくアジア各国のシェフや業界関係者を広く繋げることで、アジア全体のガストロノミーの存在価値を高め、サステナブルに発展させることに力を尽くしている。若い世代へのサポートも温かく、その人柄と功績が相まってアジア全域のシェフやメディアから抜群の人気と信頼を得ている。筆者がアジアで最も敬愛する一人だ。

食の分野にとどまらず建築や服飾など韓国の文化と歴史を総合的に研究する『Onjium』、広東料理の本質を極めた『The Chairman』、マレー半島の伝統的な食文化を追究する『Seroja』のセッションは、ローカル性とグローバル性を考える示唆に富んだものだった。

そして二つめは「Soigne×Le Du×Wing(5位/ハイエスト・クライマー賞)×Kwonsooksoo(89位)」。

右からトンさん、『Kwonsooksoo』のKwon Woo-joong(クォン・ウジュン)さん、『Soigne』のLee Jun(リ・ジュン)さん、『Wing』のVicky Cheng(ヴィッキー・チェン)さん (写真提供:Julia Lee)

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世界の最先端で勢いに乗るシェフたちが、セッションならではのグルーヴ感で今っぽい刺激的な料理をつくりあげていく。「アジア50」らしさを最も強く感じた。

ソウルが世界に掲げた“プラントベース”と“ジェンダーフリー”

なんと言っても今回目を引いたのは、農業食料農村省(MAFRA)とソウル市の全面的なサポートのもと官民が一体となった韓国の総合プロデュース力だ。

各国の評議委員長(アカデミーチェア)や「世界50」の運営元といった超ビッグネームのためのウェルカムディナーとして、公式セッション「Jeong Kwan(チョン・クワン)×Jungsik(ジョンシク)」が開催された。

『白羊寺』の尼僧チョン・クワンさん(左)と『Jungsik』のYim Jungsik(イム・ジョンシク)さん(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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「韓国で最もクリエイティブでラグジュアリーなキムパ」といわれる『Jungsik』のシグネチャーディッシュ「オールインワン・キムパ」をプラントベースに再構築(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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時を遡ること2か月。日本評議委員長の中村孝則さんいわく「ウェルカムディナーがプラントベースなのは、僕の記憶にある限り初めて」という新しい挑戦は冬の『白羊寺』で始まっていた。

『Le Bernardin』のEric Ripert(エリック・リペール)さんや『Noma』のRene Redzepi(ルネ・レゼピ)さんといった世界的なシェフにも影響を与え、2022年には「アイコン賞」を受賞した尼僧チョン・クワンさんの元を、モダン・コリアン・キュイジーヌを世界に初めて広めたK-カリナリー界のレジェンド、ジョンシクさんが訪れた。

山の幸や手づくりの発酵調味料について教えを乞う。左はジョンシクさんに同行した次世代の注目シェフ『Kang Minchul Restaurant』のKang Minchul(カン・ミンチョル)さん

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『白羊寺』でチョン・クワンさん自身が調えてくれた冬から早春へと移ろう時期の滋味に溢れた韓国精進料理

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韓国らしく人々を惹きつける新しい取り組みは授賞式当日の会場でも行われた。これからのソウルのガストロノミーを担うと期待されるネクスト・スターたちが、アワード前に開かれたレセプションでそれぞれブースを構えて料理を振る舞った。

「ミシュランガイド ソウル&釜山2024」で唯一、一つ星から二つ星に昇格した『Restaurant Allen』のAllen Hyunmin Suh(アレン・ヒョンミン・ソ)さんも参加(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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さらに授賞式翌日の夜には、各国の女性スターシェフ4名による公式セッション「Soul×Potong(17位)×Lolla×Korea House」を開催。女性を中心に、各国で最も影響力のあるシェフやジャーナリスト、インフルエンサーに参加を呼びかけた。

これが奏功し、例年であれば世界を飛び回る多忙な彼らの大半はアワード翌日には開催地を離れるが、今回は多くが市内に1日長く滞在した。また、公式セッションをディナーに設定したため、昼間の空いた時間を使って、話題のレストランを1軒多く体験した。彼らの大半は「アジア50」の投票者だと予想できる。筆者は来年の飛躍が期待される一軒を訪れたが、みっちり満席のダイニングの9割が、著名なシェフやジャーナリスト、インフルエンサーで埋め尽くされていた。

右からジョアン・シイさん、『Potong』のPichaya “Pam”Soontornyanakij(愛称パム/アジアの最優秀女性シェフ賞)、韓国で“シェフの先生”と慕われるCho Hee-sook(チョ・ヘス ク)さん、『Soul』のKim Hee-eun(キム・ヒウン)さん

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料理や舞踊など韓国の伝統文化を複合的に発信するために韓国伝統家屋をリノベーションした「コリアハウス」

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これから世界が緩やかに、しかし確実にシフトしていくと予測されるプラントベースが、すでにガストロノミーとして成熟していること。また、韓国ガストロノミー界は女性にも開かれていることを鮮やかに印象づけたソウル。アワードが開催された都市にあるレストランが翌年のリストに多く名を連ねるというこれまでの前例にならうと、来年はいくつものソウルのレストランがランクインすると予測される。

こうして読み解くと、これまでアワードを誘致していない日本から最多タイの9軒がランクインしたことは驚くべきことだ(正確には2021年は横浜、2022年は東京と2回開催されたがコロナ禍の影響で国内のシェフやメディアのみを対象に人数も制限して行われた)。

日本はアジアの中では飛び抜けて飲食業界の層が厚く、また、それぞれのレストランのシェフやチームが厳しい環境の中で日々努力を重ね、豊かなクリエイティビティを発揮した結果が“アジア最多”を誇る成果を生み出しているのはもちろんだ。だが、ここでは日本勢を影から支える2名の貢献者についても触れておきたい。

ひとりは日本評議委員長の中村孝則さん。メディアとレストラン業界の両方を知る彼は、時に両者の交流の場をセッティングしたり、メディアの視点からシェフたちにさまざまなアドバイスをしたりしながら、日本のレストランとシェフを世界に発信する機会をつくってきた。

「アジア50や世界50は、ボーダーレスなコミュニティをつくることも主旨の一つであり、日本のレストランやシェフは、国境など気にせずどんどん世界へ羽ばたいてほしいと思っています。けれども日本評議委員長の自分としては、やっぱり日本のレストランに1店でも多くランクインしてほしいし、日本の素晴らしいシェフたちをひとりでも多く世界のみなさんに知ってほしい」(中村孝則さん)

日本評議委員長の中村孝則さん(後列右)。彼の「チームジャパン!」のかけ声に香港や台湾など国外で活躍するシェフも集まり、メディアが一斉にカメラを向けた。今では各国の恒例となった国別の記念撮影は中村さんが始めた(写真提供:Fukuyama Goh)

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もうひとりは『NARISAWA』の成澤由浩さん。2013年に「アジア50」がスタートして以来、入れ替わりの激しいリストに連続してランクインし、授賞式にも積極的に参加している。海外のシェフからも尊敬される日本のシェフとして、日本の料理人やレストランだけでなくプロダクツも海外に紹介するなど、影響力の大きさは計り知れない。子息のレオさんは、いまやすっかり世界の人気者だ。

『NARISAWA』の成澤由浩さん。「ベスト50」コンテンツディレクターのWilliam Drew(ウィリアム・ドリュー)さんと(写真提供:The Worldʼs 50 Best Restaurants)

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次世代のスターシェフを育成する「サンペレグリノ ヤングシェフアカデミー」

授賞式前日、冠スポンサーとして「50ベスト」をサポートするイタリアのナチュラル・ミネラル・ウォーター・ブランド「サンペレグリノ」と「アクアパンナ」を有するサンペレグリノ社が、メディアを対象にランチとトークセッションを開催した。

サンペレグリノ社は、サステナブルなレストラン業界の発展を目指して、トップシェフと若い料理人が交流することで、さらなるクリエイティビティの追究とボーダーレスなコミュニティづくりを目的とする国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフアカデミー」を主催している。

この日はビッグスターから若手まで、「サンペレグリノ ヤングシェフアカデミー」と関わりの深い7名の料理人がコラボするかたちで料理を振る舞い、トークセッションに臨んだ。

右からソンさん、『Nae:Um』(73位)のLouis Han(ルイス・ハン)さん、『Odette』(10位)のJulien Royer(ジュリアン・ロワイエ)さん、ケヴィンさん、2022-23年「サンペレグリノヤングシェフアカデミー」アジア地区決勝大会優勝、世界決勝大会トップ3に入賞した『Inicio』のIan Goh(イアン・ゴー)さんほか(写真提供:SPYCA)

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ジュリアンさん、ソンさん、イ・ジウさん、キム・ヒョジョンさんがコラボしたチェジュ産アワビのユッケジャン風スープ仕立てとビビンパ(写真提供:SPYCA)

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「サンペレグリノ ヤングシェフアカデミー」の最大の特徴は、「メンターシェフ」と呼ばれるトップシェフから直接指導育成を受けることで、ネットワークが飛躍的に広がり、活躍の場が世界へと拡大されることだ。

日本では実感を得にくいが、ガストロノミーが発展途上の国では、ファインダイニングの数もあまり多くなく、スターシェフと直接言葉を交わせる機会は少ない。「ミシュランガイド」が上陸していない国も多く「50ベスト」を世界への足がかりと捉える料理人もいる。そんな彼らにとって、「ミシュランガイド」と「アジア50」の双方で高い評価を受けるメンターシェフは雲の上のような存在だ。なかでもミシュラン三つ星で「アジア50」10位のジュリアンさんには、多くの質問が寄せられた。

ジュリアンさんは、人柄を感じさせる温かい言葉を慎重に選びながら、繰り返しこう伝えた。国境を超えたメンターシェフとの繋がりは、コンクール終了後も師弟関係として長く続くこと。コンクールは結果だけに左右されるものではなく、よい結果を目指して研鑽を積むその過程が重要なこと。同世代の料理人同士が同じ目標に向かって切磋琢磨する経験は、その時点ではライバルでも明日の友となり、料理人人生において大切なコミュニティになること。

「結果に一喜一憂するのではなく、料理人としての人生をより豊かにするためにコンクールを活用してください」(ジュリアンさん)

ひとつひとつの質問に誠実に答えるジュリアンさん

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「サンペレグリノ ヤングシェフアカデミー」によると、30歳未満であれば国籍や性別を問わず広く応募を受け付けている。日本からは現『middle』(京都)の藤尾康浩さんが2018年の国際大会で優勝しているが、全体数から見ると応募者の割合は少ないそうだ。今年の応募受付は2024年6月19日まで。世界へのステップを探している人は挑戦してみてはいかがだろうか。

「50ベストにはなぜ有名シェフなどたくさんの人が集まるのですか?」

実は冒頭に書いた筆者のもとに届くそんな問いも、若い人たちから寄せられることが多い。このレポートが少しでも現地の空気感をお伝えできたなら、そして今これを読んでいる若手料理人の誰かが、いつか赤いスカーフを身につけて壇上に立つ姿を見られるなら、書き手としてこれほど嬉しいことはない。

2024年度「アジアのベスト50レストラン」。開催地ソウルから“美食の祭典”をレポート! | 飲食店ドットコム ジャーナル (inshokuten.com)

 


2024-04-27 20:02:00

【マネジメント・サイクルの活性化】(1)

「企業目標によるマネジメント」を推進する上で、「マネジメント・サイクル」の効果的なオペレーションが不可欠であるが、多くの企業で「企業マネジメント」の中で日常活動に忙殺され、「マネジメント・サイクル」が働かされず、結果として、「企業目標によるマネジメント」が「機能」しなくなっている。 

したがって、「マネジメント・サイクル」の重要性を「企業マネジメント」に関わる全員に徹底させることと、オペレーション上の課題を解決する方法を実践することによって、「マネジメント・サイクルの活性化」を行うことが不可欠である。

 

[1]マネジメント・サイクルの課題

(1)マネジメント・サイクルとは

多くのの企業では、「マネジメント・サイクル」を「Plan(計画)」→「Do(実施)」→「Check(チェック)」としていて、次の「計画」に向けて「Action(改善)」を加えて「PDCA」としていて、この「Action」に力点をおいている。

しかし、「マネジメント・サイクル」を効果的にオペレーションしている企業は「Planning(計画)」→「Organizing(組織化)」→「Motivating(動機化)」→「Controlling(統制化)」→「Coordination(調整化)」→「Planning(計画)」を実践している。 

かくして、「マネジメント・サイクル」を活性化させるためには、「組織化」「動機化」「統制化」「調整化」が不可欠である。

本編では、一般的に使われている「PDCA」という名称によって「マネジメント・サイクルの活性化」を探究してみよう。

 

(2)PDCA成功させる原理原則

  組織化

「企業目標によるマネジメント」の「マネジメント・サイクル」において、「目標」の「職務」によって「組織化」が行なわれる。

「組織化」に不可欠なのは、「上司」の各人に「職務」の合理的に分類し配分することと「責任や権限」によって構成員の「行動基準」を規定していくことである。この場合、リーダーの「公平性」「アップスケール性」「人間性」が重要である。

 

  動機化

「企業目標によるマネジメント」の「マネジメント・サイクル」において「目標」を達成させるために「動機化」が行なわれる。

「動機化」に不可欠なのは、「組織」の各人の職務遂行の「意欲」を継続的に喚起して、「満足」を得られるような「動機づけ」と「組織のチームワークづくりによる協働」のために、上司の「卓越したリーダーシップ」である。この場合、リーダーの「人望」「品格」「アップスケール志向」が重要である。

 

  統制化

「企業目標によるマネジメント」の「マネジメント・サイクル」において、「目標」を実現させるために「統制化」が行なわれる。

「統制化」に不可欠なのは、各人の「マネジメント活動」を「計画」通りに実行してもらう「機能」である。

「統制化」というのは、「計画」を下回るだけでなく、必要以上に上回ることを放置するのではないことである。この場合、リーダーの「観察力」「分析力」「原因排除力」が重要である。

 

  調整化

「企業目標によるマネジメント」ノ「マネジメント・サイクル」において、「目標」を達成させるための「計画化」「組織化」「動機化」「統制化」の「プロセス」で「調和」と「均衡」をを保つ「調整化」が行なわれる。

「調整化」に不可欠なの、各人の「マネジメント活動」の実践の「能力向上」である。この場合、リーダーの「優れたツー・ウエイ・コミュニケーション」によって、各人の「意欲喚起」である。

 

(3)PDCAの失敗の要因

  システム理解力の不足

多くの企業で、「マネジメント・サイクル」がスムーズに回転しないのは、「システム」として完全に理解力が不足していることと、「ビジネス・ルール」として身につけていないことがあげられる。

つまり、各人が、仕事をこなすのに、「マネジメント・サイクル」にのっとって実践すれば良いのに面倒ぐさがって、早道を行こうとして結果として遠回りしていることが結構あることに気がついていない。

さらに、「上司」が「部下」の仕事に対して「組織化」「動機化」「統制化」「調整化」の能力が不足していて、「目標」に対しての強制的な指示ばかり横行していて、適切な指導が欠けていることがほとんどである。

 

  経営資源の不足

現在の「経営資源」は、「人、知識、情報、物、金、ブランド、共感」でなければならないのに、依然として「人、物、金」に終始している企業やビジネスマンが圧倒的に多い。

特に、企業のトップ自身が、いまだに「知識」「情報」に対しての理解度がなく、企業内の各人が「知識」「情報」に対して、まったくの無関心であることが多い。このような企業のトップは経験値に頼ることが多く、先を読もうとしない傾向が高い。

「サクセシイブ・カンパニー」の企業は、トップ自身がみずから「知識」や「情報」を重視するだけでなく、「人」そのものを重視し、「教育訓練」や「自己啓発」を積極的に行っていて、さらに、計画的に「グローバル・パーソン」の育成を強化しているる

 

  仮説と検証力の不足

「サクセシイブ・カンパニー」の原動力は、「仮説」と「検証」を徹底して推進することにあるが、多くのの企業は「リーディング・カンパニー」の追従ばかりで、「検証」をまったく行なわないことが多い。

また、多くの企業では、「仮説」と「検証」を「マネジメント・サイクル」と連動させていないことが多い。特に、「仮説」の段階において、「情報」不足ということがまったく多いのに驚かされる。

「仮説」を立てる場合、多くの企業は「事後情報」に終始していて、「事前情報」は「カン」に頼っているので、「仮説」そのものがあいまいであるから「検証」の結果は明らかに確立できない。

 

  能力の不足

「仮説」と「検証」は、「革新」が「目的」なのに、「仮説」と「検証」という言葉に踊ろされているばかりでなく、トップを始め各人のの「仮説」と「検証」の意義がまったく理解していないばかりか「方法」についての能力の不足があげられる。

特に、お客様最優先といいながら、「お客様の立場」や「お客様発」をまったく無視している。つまり、「お客様発」の「ニーズ」はおろか「ウォンツ」や「シーズ」について、まったくの不理解ばかりでなく、仮に「お客様発」を志向する能力がまったく欠けている。

 

  現場力重視の不足

「マネジメント・サイクル」において、「システム」そのものばかり喧伝されて、「現場力重視」の不足が圧倒的に多い。

「お客様発」の「ニーズ」「ウォンツ」「シーズ」を発掘するには、「お客様の声」が最大の「源泉」になるのにもかかわらず、「お客様の声」を無視している横柄な企業が圧倒的に多いのにはあきれてしまう。

さらに、これらの企業は、「お客様」は物を言わないと、頭から思いこんでいて、「仮説」と「検証」が最優先という勝手に考えているまちがった自己主張を続けている。

「お客様発」というのは、「お客様の真の心」で、発信する場がないので、最前線である「現場」を重視することこそ、真の「お客様発」となる。

 


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