インフォメーション
外食産業の動向
食生活の国際化 ‐ 外国レストランの客層二極化
2011年1月
分野:食品・農林水産物
中国の経済成長に伴い、中国人の食生活は多様化し、外食やグルメ志向が高収入者や若者を中心に増えている。各国料理のレストランが北京で次々と開業し、外食産業は一層バラエティ豊かになっている。国際的大都市にふさわしい食生活が、今北京で味わえるようになりつつある。
外食産業の国際化が進む北京
北京で開業された外国レストランに関する公式の統計はないが、中国随一の口コミウェブサイトである「大衆点評ネット」の情報を利用して、大まかな状況を把握することができる。
料理のジャンル | 店舗数 | 料理のジャンル | 店舗数 | ||
---|---|---|---|---|---|
西洋料理(合計) | 1,498 | 7 | 韓国料理 | 910 | |
1 | 洋食 | 750 | 8 | 日本料理 | 865 |
2 | ピザ | 436 | 9 | タイ料理 | 84 |
3 | イタリア料理 | 149 | 10 | ラテン焼肉 | 41 |
4 | フランス料理 | 77 | 11 | ベトナム料理 | 32 |
5 | ステーキ | 50 | 12 | 中東料理 | 26 |
6 | ロシア料理 | 36 | 13 | インド料理 | 23 |
ファストフード | 2,795 |
出所:「大衆点評ネット」の検索結果(2011年1月14日付)。
※ 太字項目は西洋料理に当たる。
表1に整理したように、北京で開業している外国料理レストランは少なくとも4,000店舗以上ある。なかでも、西洋料理が約1,500店と最も多い。ただし、西洋料理の中では、本格的なイタリア料理、フランス料理よりも、一般的な洋食レストランが750店と圧倒的に多い。その中には、ホテルのカフェバーなどの高級店もあれば、「Sizzler」、「T.G.I. Friday's」などの中所得者層向けの店、さらに庶民向けのチェーン店もある。ほかに西洋風のピザ店も、街の随所に見られる。今や、中国人はかなり西洋風の味付けに馴染んできていることがうかがえる。
その次に人気がある外国料理は、韓国料理、日本料理である。北京在住の韓国人は10万人(※1)と非常に多いこと、また、韓国料理の香ばしい味付けが中国人によく合っていることなどにから、韓国料理は北京に浸透している。一方、日本料理店は日本人駐在員や家族によく利用されていると同時に、中国の高所得層や若者にも利用されている。
※1, 「長期滞在の外国人が50万人弱で、違法滞在は管理の課題」正義ネット(2011年1月10日)
その他、東南アジア料理やインド料理もそれぞれ数十カ所のレストランがある。ただし、利用者は外国人が多い。中国人の中には、東南アジア、インド料理などのエスニック料理はまだ浸透していない。
総じて見ると、北京で外食の国際化が進んでいるが、しかし外国人向けか中国人向けかによって、外国レストランは二極化しており、それぞれ異なる客層ターゲットを持っている。
ファストフードなどのチェーン店の進出
1987年に「Kentucky Fried Chicken」北京1号店が開業してから、その後1990年に「Pizza Hut」、1992年に「McDonald's」が続いて開業した。早い時期に北京に進出したこの3つのチェーン店は、今でも最も人気がある洋風ファストフードのチェーン店である。その後、「T.G.I. Friday's」(1995年)、「Subway」(1995年)、「Grandma's Kitchen」(1999年)、近年は「Sizzler」(2005年)、「Burger King」(2009年)なども開店し、世界的に有名なチェーン店も多数北京に進出した(表2)。大多数の店は顧客の入り具合がよく、食事の時間帯に行列ができる人気ぶりである。
ジャンル | チェーン店名称 | ブランド国 | 店舗数 | 平均消費 (元/1人) | 利用者と利用ケース |
---|---|---|---|---|---|
ファスト フード | Kentucky Fried Chicken | アメリカ | 251 | 26 (325円) | 10~20代が主要客層。デート、食事、待ち合わせ、休憩に使われる。 |
McDonald's | アメリカ | 116 | 24 (300円) | ||
Subway | アメリカ | 85 | 23 (288円) | 20~30代が主要客層。デート、食事、待ち合わせ、休憩に使われる。 | |
Burger King | アメリカ | 8 | 29 (363円) | 若い男性が主要客層。食事、待ち合わせ、休憩に使われる。 | |
ピザ | Pizza Hut | アメリカ | 71 | 66 (825円) | 20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事に使われる。 |
Big Pizza | イタリア | 38 | 44 (550円) | 20~30代が主要客層。デート、友人会食、食事、休憩に使われる。 | |
Papa John's | アメリカ | 18 | 62 (775円) | ||
The Pizza Company | タイ | 15 | 52 (650円) | 20~30代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事、休憩に使われる。 | |
Mr. Pizza | アメリカ | 10 | 66 (825円) | 20~40代が主要客層。デート、友人会食、食事に使われる。 | |
洋食 | Jacket Potatoes | イギリス | 7 | 16 (200円) | 20~30代が主要客層。デート、待ち合わせ、食事、休憩に使われる。 |
Sizzler | アメリカ | 6 | 59 (738円) | 20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事に使われる。 | |
Grandma's Kitchen | アメリカ | 5 | 80 (1,000円) | 20~30代が主要客層。デート、友人会食に使われる。 | |
T.G.I. Friday's | アメリカ | 4 | 128 (1,600円) | 20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、ビジネス会食に使われる。 | |
CAFE FLATWHITE | ニュージーランド | 4 | 84 (1,050円) | 20~30代が主要客層。デート、友人会食に使われる。 |
出所:「大衆点評ネット」の情報およびヒアリングした結果をもとに作成。
※ 為替レートは、1元=12.5円とする。
その成功要因は、第一に安心感である。外国料理においては、どの店がよいか、どの料理を注文するか判断できない人にとって、どこでも見かけるチェーン店には、実力のある店で信頼できる、期待できる料理が食べられるというブランド効果が働く。
第二に値段の手頃さである。特典セットや期間限定商品などを加えると、中華料理より少し高いが、気軽に利用できる程度である。
第三に、家族やカップル、一人でも利用しやすい環境。外国料理チェーン店は内装がきれいで、どの消費者層も気楽に利用できる。
第四に、味を中国人に合わせて改良し、新しいメニューを次々と出すことである。例えば「Kentucky Fried Chicken」では朝食メニューにおかゆを出したり、中国人が主食を欠かせない食習慣に合わせてさまざまな味付けのチキンをサンドなどにして出したりしている。日本の「Kentucky Fried Chicken」にないメニューでは、スパイシーチキンサンド、ニューオーリンズチキンサンドなどがある。また、「Pizza Hut」では、ピザに中国風のハムを入れたり、また中国人に馴染み深い米料理のドリアを取り入れ、味も焼き肉や貝柱海鮮など中国人に人気のある味でアレンジしたりしている。これらは皆、中国人に人気のあるメニューである。
ただし、中国人への洋食の浸透はまだ主に若い世代に限られており、中華料理以外の外国料理に対する態度は世代間で格差が大きい。40代半ば以上の世代では、食べ慣れていない味に対して拒む心理が強く働き、新しいものを楽しむ傾向はほとんどない。一方、1980年代以降生まれた若い世代は小さい時からファストフードの味に慣れており、経済的に許される限り、新しい味を試してみたい、または楽しみたいという気持ちが強い。
ファストフードなどのチェーン店の進出で、中国人は洋風の味に慣れつつあり、若い世代の成長に伴い、今後、日本人のようにさらに西洋料理を楽しめるようになっていくと思われる。
高級西洋料理は長期滞在の外国人向け
北京にはどれほどの外国人がいるか、公式な統計発表がないが、ある記事では合法的な長期滞在者は約20万人(※2)と推計されている。日本人1万人と韓国人10万人を除いても、米国、ヨーロッパ、アフリカから来ている外国人は10万人ほどいると思われる。彼らはイタリア料理、フランス料理などの高級な西洋料理やタイ料理、ベトナム料理の主な客層である。店内に入ると、半分以上は外国人の顧客である。大使館や外資企業が北京市内の東側にあることもあり、西洋料理の立地場所も国貿、三里屯、三元橋などの東エリアや北東エリアに群がっている(図1)。
※2, 前掲の※1と同
こうした外国人向けのレストランは、店内のインテリアにイタリアやスペイン、アメリカ風のデザインを取り入れ、外国を再現したかのような雰囲気で、外国人に親しみを感じさせる。また、外国人シェフがいるレストランが多く、本場の味をそのまま北京で提供している。メニューは外国人の好みに合わせて、厳選された食材やワインを現地から空輸するという本格的料理店も少なくない。ワインやアルコールを多数揃える店も多く、夜はバーとしても利用できる。さらに、外国人向けのレストランが集中する食堂街(例えば東エリアの「幸運街」)では、夜はイルミネーションを加えて、時には通り一体が華やかに装飾される。
外国人向けレストランの価格は日本国内並みで、平均消費金額は120~180元(約1,500~2,250円)。例えば、ボリュームのある海鮮サラダは60~70元(約750~875円)。一般の中国人にとっては高い金額である。
外国人向けレストランは宣伝として、無料広告誌「Cityweekend」(英語)、「Concierge」(日本語)などに記事や広告などを掲載するところが多い。これらの無料広告誌による宣伝は、ピーアール効果が高い。口コミも重要な情報源で、北京にいる多くの外国人は、食・住に関して特定の場所に固まっている。
今後、中国の富裕層の子ども世代の成長や海外留学経験者の帰国増加に伴い、高級西洋料理を利用する中国人も増えていくと思われる。
図1:北京の西洋料理店の立地分布
*引用掲載アドレス
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/foods/trends/1101005.html
売り場にも異変があった。塩がない。隣の棚に山のように積まれた砂糖とは対照的だ。醤油も品薄になっている。米のコーナーには人だかりができている。目当ては日本米だ。「あきたこまち」などのブランド米が、次々にカートに放り込まれる。
客に殺気立っている様子はないが、とにかく普段と客の数が違う。「マイルドなパニック」という表現が当てはまる。その発端は中国本土にあった。
この日、中国では塩を求める客がスーパーなどに殺到する「パニック買い」が全土で見られた。ネットや口コミで「食塩中のヨウ素が放射性物質の健康被害を軽減する」「放射性物質で海が汚染されたため塩が不足する」といった科学的根拠のないデマが広がったためだ。塩分が多く含まれる醤油は、その連想として買われた模様だ。
中国でも香港でも、店に殺到した消費者全てがデマを信じていたわけではないだろう。ただ、過去の経験からデマの威力をよく理解しているため、品不足や価格高騰を恐れとりあえず店に向かう。結果的に、それがパニックを増幅させる。
塩の価格高騰を懸念する中国政府は、塩の充分な備蓄量をアピールし自制を求めている。自ずと、“塩騒動”はまもなく落ち着くだろう。ただ、日本にとって、さらに被災地にとっても深刻に考えなければならない問題が別に進行している。それが、日本の食に対する「恐怖」の広がりだ。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20110322/106172/?mail
オーストラリア 2011年3月25日(金曜日)
農業研究開発公社(RIRDC)はこのほど、ニューサウスウェールズ(NSW)州産業投資省、コメ生産者協同組合サンライスと共同で、低温に耐性のある中粒米の新品種「YRM69」の開発に成功したと発表した。既存の品種と比較して収穫率を大幅に引き上げることが可能だという。
豪州のコメ生産地は現在、NSW州南西部リベリナ地区にほぼ限定されている。温暖な気候に恵まれているものの、内陸部は温度差が激しいため生育期に「コールド・スナップ」と呼ばれる一時的な寒波に見舞われることがある。
RIRDCによると、既存の品種は受粉の時期に冷害を受けると単収が40%以上下落し、収穫量の著しい減少につながるため、生産者にとって悩みの種となっていた。
新開発したYRM69は、既存の中粒種に比べ摂氏2度低い気温にも耐えることができることから、より安定した収量が期待できる。試験栽培では、極端な温度変化があった場合、既存の中粒種と比較して1ヘクタール当たり2~4トン多い収穫量を確保できた。また、7年間にわたって27カ所で栽培したところ、単収は中粒種「アマルー(Amaroo)」よりも平均13%高いという結果が出た。
豪州のコメ生産はかんがい用水の供給に大きく左右されるが、新品種はより少ない水で育つことも大きなメリットとなっている。整粒歩合や色合い、味わいなどは既存の品種と同等の品質を実現したという。
RIRDCの上級研究マネジャーを務めるマジニック氏は「非常に画期的な研究成果であり、生産者の期待は高い。干ばつの年でも気温に極端な変化があっても安定した収穫が望めるだろう」としている。干ばつの打撃からV字回復を目指す豪コメ産業にとって力強い後押しとなりそうだ。(豪州農業ニュースより)