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2011-03-25 22:50:00
地震から6日目の3月17日の夕方、香港のスーパーマーケットの様子がいつもと違う。売り場、そしてレジに並ぶ客の多さはまるで旧正月前のよう。溢れんばかりの商品をカートに詰め込んでいる客も目立つ。

 売り場にも異変があった。塩がない。隣の棚に山のように積まれた砂糖とは対照的だ。醤油も品薄になっている。米のコーナーには人だかりができている。目当ては日本米だ。「あきたこまち」などのブランド米が、次々にカートに放り込まれる。

 客に殺気立っている様子はないが、とにかく普段と客の数が違う。「マイルドなパニック」という表現が当てはまる。その発端は中国本土にあった。

 この日、中国では塩を求める客がスーパーなどに殺到する「パニック買い」が全土で見られた。ネットや口コミで「食塩中のヨウ素が放射性物質の健康被害を軽減する」「放射性物質で海が汚染されたため塩が不足する」といった科学的根拠のないデマが広がったためだ。塩分が多く含まれる醤油は、その連想として買われた模様だ。

 中国でも香港でも、店に殺到した消費者全てがデマを信じていたわけではないだろう。ただ、過去の経験からデマの威力をよく理解しているため、品不足や価格高騰を恐れとりあえず店に向かう。結果的に、それがパニックを増幅させる。

 塩の価格高騰を懸念する中国政府は、塩の充分な備蓄量をアピールし自制を求めている。自ずと、“塩騒動”はまもなく落ち着くだろう。ただ、日本にとって、さらに被災地にとっても深刻に考えなければならない問題が別に進行している。それが、日本の食に対する「恐怖」の広がりだ。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20110322/106172/?mail