インフォメーション
[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の外食産業にとっては、買収ファンドが救世主になる可能性がある。マクドナルド(MCD.N)や、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)を運営するヤム・チャイナ(YUMC.N)、火鍋チェーンの海底撈(6862.HK)は、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大に伴って中国の全店舗を一時閉鎖した。今まで中国の飲食店とプライベートエクイティ(PE)会社はお互いを警戒し合っていたが、この新型コロナウイルス問題を契機に状況が変わるかもしれない。
ヤム・チャイナは、春節(旧正月)以降で中国本土に展開する飲食店およそ9000の3割余りを休業し、営業を続けている店舗の既存店売上高は40-50%減少している。マクドナルドは中国の数百店を一時閉鎖し、海底撈や大手中華料理の九毛九(9922.HK)は、本土の全店舗の営業を取りやめた。
チャイナ・ルネッサンスのアナリストチームによると、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際にも、消費関連セクターで痛手が最も大きかったのは、飲食・宿泊業だった。だが中国経済全体が減速している今回、事態がもっと悪くなってもおかしくない。人気の飲食チェーン、西貝を経営するJia Guolong氏が地元メディアに示した見積もりでは、中国で飲食業に従事する人々は3000万―4000万人に達する。
ヤム・チャイナの場合、潤沢な手元資金を保有し借金がほとんどないため、苦境を乗り切れるはずだ。しかしバランスシートがずっと脆弱な中小の飲食チェーンは、西貝を含めて数知れない。Jia氏は、現在の資金の回転率ではわずか3カ月操業できるだけの手元資金しかないと認めている。
当然のように銀行は彼らへの融資には慎重になっている以上、価値が割安化した企業を物色する買収ファンドは、Jia氏のような創業者が資金受け入れにより前向きになっていると気づくのではないか。特に海外展開を熱望する創業者なら、なおさらだ。中国の外食産業は旧弊だとの固定概念が付きまとうものの、実際には多くが洗練され、ハイテク技術を巧みに利用して営業する形に進化し、中国の消費者が大きな懸念を持つ透明性と食の安全という分野に大規模な投資をしている。そうした流れに乗れてこなかった向きも、今回、外部の支援を活用できるかもしれない。
Advertisement
ただしユーロモニターのデータで19年の売上高が7170億ドルに上った中国の外食産業は、引き続き生き馬の目を抜くような世界だ。競争はし烈で、賃金と食品のコストは上がっている。だから英投資会社CVCが14年、四川料理チェーン運営会社の買収で散々な目にあってその難しさを学んだように、中国飲食関連企業の実態を把握し、財務状態を監査するのは一筋縄ではいかないだろう。
一方、こうした企業の多くの所有者は経営権を手放したくないので、これまでPE会社と関係を持つことに消極的だった。それでもSARS終息後の経験に基づいて判断するなら、新型コロナウイルスの感染がいったん抑制されれば消費は急速に持ち直す可能性がある。懐に余裕がある投資家なら、足元は中国外食産業の獲物を狙うチャンスなのかもしれない。
●背景となるニュース
*米ファストフード大手マクドナルドは、中国に展開する約3300店のうち数百店を一時閉鎖した。また中国の人気火鍋チェーンの海底撈は、国内の店舗営業を当面停止すると発表した。
*米コーヒーチェーン大手スターバックスは、中国国内のおよそ4300店の半分強を閉鎖するとともに、予定していた最新の2020年業績見通し公表を延期した。家具販売のイケアは中国の全店舗を、バーガーキングは一部店舗の営業をそれぞれ取りやめた。
Advertisement
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。
外食産業も休み方改革 くら寿司、年2回10連休を義務化
- 2020/2/20 11:30
- 日本経済新聞 電子版
店長以上の社員に年2回の10連休取得を義務化した(くら寿司の店舗)
人手不足に悩む外食各社が社員の「休み方」の改善を進めている。くら寿司は現場で働く店長以上の社員を対象に、年2回の10連休の取得を義務化した。ロイヤルホストなどのファミレス業態でも5連休以上の取得を推奨する取り組みが進む。「外食業は休みが取りにくい」とのイメージを払拭し、人手の確保や優秀な人材の呼び込みにつなげる狙いだ。
くら寿司は2020年10月期から、店長以上の社員約600人に年2回の10連休の取得を義務化した。有給休暇などを充てる。くら寿司単体の社員の約半数が対象となる。現場社員はシフト制で勤務しているため、土日や2日連続の休日を取得することが難しかった。会社側が義務化することで、連休を取得しやすい環境を整える。
このほか、従業員の士気向上をめざし、今期から店長以上の基本給を10~12%引き上げた。3月末には社員約250人を対象に譲渡制限付き株式報酬を付与する。今後は段階的に全社員に付与していく方針。「第2次新卒など優秀な若手社員の獲得につなげたい」(くら寿司)という。
休みやすい環境づくりに取り組むのは、店舗運営の核となる正社員に定着してもらうためだ。ロイヤルホストでは1店舗あたりで働くパート・アルバイトの人数を1割近く増やしている。スタッフの増加で正社員の労務負担を減らしたうえで、7連休を年に2回取得するよう正社員に促している。19年は45%の社員が2回取得したという。
「デニーズ」を展開するセブン&アイ・フードシステムズでも、正社員が17年度から5連休を年2回とるように促している。これを19年度には「7連休を2回」か「5連休を3回」に拡大した。取得率は100%近くになる見通しだ。
店舗の休業などで社員が休みやすくする動きも広がる。「ガスト」などを運営するすかいらーくホールディングスは、20年4月までに24時間営業を全廃する。スシローグローバルホールディングスは、19年から試験的に2日間の一斉休業日を導入した。年末年始の時短や店休日を設ける外食チェーンも増えている。
厚生労働省の調査によると、対象企業が17年に社員に付与した年次有給休暇日数の平均は18.2日。このうち業種別の取得率をみると、「宿泊業・飲食サービス業」が32.5%と全16業種の中で最も低かった。
飲食店では人手不足が深刻で、店長を務める社員などは現場のスタッフが不足している場合、休みを返上して出勤することも珍しくない。こうした状況が離職率の高さにもつながっているとみて企業は改善を急ぐ。コスト増加につながる面もあるが、人手の確保のためには不可欠との認識だ。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55850140Q0A220C2MM0000/?n_cid=NMAIL007_20200220_Y
HISがバクーで日本食プロモーションイベント開催、販路開拓のハブ目指す
(アゼルバイジャン)
イスタンブール発
2020年02月14日
エイチ・アイ・エス(以下、HIS)は2月4日、アゼルバイジャンの首都・バクーで日本食プロモーションイベント「Taste of Japan」を開催した。農林水産省輸出環境整備緊急対策事業として、農林水産省と在アゼルバイジャン日本大使館、三重県、ジェトロが後援し、現地のパートナー企業と調理師協会も協力した。
アゼルバイジャンは人口約1,000万人、1人当たりGDPは約4,500ドル。日本食品の流通も限定的なことから、現時点では大きな市場とは言い難い。しかし、この数年、バクーでの日本食イベント開催や、アゼルバイジャン企業による「『日本の食品』輸出EXPO」(注)への来場といった動きがみられ、同国のポテンシャルについての関心が高まっていた。
HISは欧州や中東、ロシア・CIS諸国向けの輸出拠点としてアゼルバイジャンの可能性に着目し、2018年から農林水産省の補助事業を活用しながら、同国のハブ機能を活用した日本産食品輸出プロジェクトに取り組んでいる。2019年には三重県と戦略的連携協定を締結、三重県産の伊勢茶を使った緑茶ティーパックや抹茶チョコレートをアゼルバイジャン企業と共同開発することを発表した。
今回の和食プロモーションイベントでは、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの和食レストラン「湖畔亭」の協力によるすしと和牛のデモンストレーション、伊勢茶・抹茶を使用しアゼルバイジャン企業と共同開発した商品の発表、日本人専門家による日本の茶文化の紹介が行われ、シェフや流通業者、メディアなど約200人が出席した。イベントに先立って開催された湖畔亭上田寿夫料理長と現地シェフ協会副会長による和食・和牛のマスタークラスには、シェフ約30人が参加した。隣国イランから参加したシェフもみられた。
参加したアゼルバイジャン人シェフは「素晴らしい。以前からこれらの食材を取り扱いたかったので、すぐに検討したい」と、今後の取り扱いに前向きなコメントをしていた。イベントを運営したHISイスタンブール支店の田上亮子氏は「既にアゼルバイジャンへの和牛輸出は始まっている。HISも三重県と連携して伊勢茶や抹茶チョコレートの販売を実現した。今後さらにビジネスが拡大していくと確信している」と、手応えを語った。HISは今後、アゼルバイジャンをハブに、日本食を欧州や中東、ロシア・CISなどへ輸出していく計画だ。
(注)日本最大級の食品輸出専門展。農畜産物や水産物から、飲料、調味料、加工食品まで、日本食品を一堂に出展し、世界80カ国・地域から来場する食品バイヤー・食品輸出商など2万人と商談を行う展示会。2018年10月の第2回「日本の食品」輸出EXPO(幕張メッセ)には、アゼルバイジャンから約30人のバイヤーが来訪した。
(中村誠)
(アゼルバイジャン)
ビジネス短信 8013b6658cfe49a0
モス、100%植物性バーガー 健康・環境志向に対応
- 2020/2/15 23:00
- 日本経済新聞 電子版
モスバーガーは代替肉などを使い植物性100%のハンバーガーを発売する
モスフードサービスは、代替肉などを使った植物性100%のハンバーガーを今夏にも全国販売する。代替肉のほかにバターや卵、動物性エキスのないパンやソースを国内メーカーと共同開発した。米国など海外の外食チェーンでは代替肉を使った商品の投入が相次ぐ。100%植物性の商品は世界的にも珍しく、各社の開発競争が一段と激しくなる。
欧米では健康志向に加え、牛が吐き出し温暖化の一因となるメタンガスや、食用肉に使う水の多さを理由に、肉料理の環境負荷の高さを指摘する動きが徐々に広がり、代替肉への関心が高まっている。日本でもこうした潮流が及ぶ可能性がある。
モスは3月、植物性のハンバーガーを一部の「モスバーガー」の店舗で実験販売し、夏までに全国販売する計画だ。通常のバーガーから風味や食感が落ちないよう、パティ、パン、ソースを国内の食品メーカーと1年半かけて共同開発した。販売価格は500円程度と、主力商品「モスバーガー」(税別343円)より4割程度高くなる見通しだ。
同社は国内のモスバーガーでの売上高のうち3%程度を占める商品にする考え。中華圏の菜食主義者が口にしないにんにくやタマネギなども使っておらず、将来的はアジアの店舗での販売も視野に入れる。
海外ではマクドナルドやケンタッキー、ダンキンなど米大手チェーンが2019年から代替肉を使った商品を相次ぎ投入している。ただチーズやバター、動物性エキスなどの材料は商品の風味や食感を左右するため、一切使わない商品のハードルは高かった。
モスフードサービスの植物性バーガーは肉の代わりに大豆をベースにした代替肉を使う。パンにはほうれん草のピューレーなどを練り込み、バターや卵白を使ったパンから風味や食感を落とさないようにした。ソースにも動物性エキスを使わず、トマトなどをベースにした。
日本産牛肉、最多輸入の意外な国 東南アから再輸出?
- 2020/2/13 2:00
世界で最も日本産牛肉を輸入している国はどこか?――。この答えがカンボジアだと知っている人は多くないだろう。財務省の貿易統計によると2018年度の日本産牛肉(冷凍、冷蔵の合計)の最大の輸出先はカンボジアで、約880トンが輸出された。王座の常連だった香港(約770トン)を上回った。19年度も4~12月実績で香港を4割以上上回っており、2年連続で世界一の日本産牛肉の輸入国となることが確実な情勢だ。
しかし、この事実はカンボジア人でも知らない人が多い。一部の高級な日本料理店などを除き、カンボジアで日本産牛肉を見かけることはまずないからだ。東南アジアの中でも牛肉消費量が多いと言われる同国のスーパーや伝統的市場ではオーストラリア、ニュージーランド、国産の牛肉が主に売られている。カンボジア家畜飼養家連盟の幹部も「そんなに多くの日本産牛肉が輸入されていることは全く知らなかった」と驚いた様子で話す。
カンボジアに輸出された日本産牛肉の大部分は中国に再輸出されている可能性が高い。01年9月に日本で起きたBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)に伴い、中国政府は日本産牛肉の輸入を禁じた。輸入量が多かった香港は月齢など条件を付けて07年に解禁したが、本土は禁輸を継続した。
カンボジアで売っている牛肉は豪州か地元産が多い(プノンペンの市場)
禁輸の間、中国では日本への関心が急速に高まった。2010年代に入り、中国からの訪日客が急増し、15年には前年の2倍の約500万人が来日した。多くの中国人は日本の焼き肉、すき焼きなどを食べ、うまみのたっぷり詰まった「サシ」が入った日本産牛肉の味を知って帰国していった。
そんな日本の味を知ってしまった中国人の胃袋を満たすのが"闇ルート"で輸入された日本産牛肉。中国本土で本来は手に入らないはずの日本産牛肉が上海、深圳など主要都市で食べることができるという。高額になる店も多いと言われているが、富裕層には関係ない。中国政府が摘発することもあったが、最近は少なくなっているようだ。
カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも中国寄りの国として知られる。1985年の首相就任から今年で在任35年となるフン・セン首相(68)はインフラやカジノ関連など中国からの投資マネーと労働者を呼び込み、経済成長につなげてきた。国際舞台でも、ベトナムやフィリピンと中国が領有権を争う南シナ海問題で中国寄りの態度を取ることで中国の後ろ盾を獲得していた。
貿易面でも中国は主要な相手国。17年実績で輸入額の37%、輸出額の7%を占め、多くの物資が両国を行き来している。日本産牛肉は港湾都市のシアヌークビルから海路で運んだり、ほかの東南アジア諸国を経由して輸出したりすることが多いとみられる。米国や欧州連合(EU)向けの衣料品、靴以外は主要な輸出品目がないカンボジアにとって日本産牛肉は貴重な輸出品だった。
ただ、事態は少し変わってきた。中国政府は19年12月、月齢30カ月以下の骨なしの牛肉に限り、輸入を解禁した。今後、日中両政府で検疫条件など詳細を詰め、20年中にも輸入が再開される可能性が高い。
わざわざコストをかけてカンボジアを経由する必要性はなくなり、中国への直接輸出が増える。日本産牛肉の輸入、中国への再輸出を既得権益にしていた政治家、企業にとっては大きな痛手となるだろうが、"うまみ"を味わったことがないほとんどのカンボジア国民にとっては何も変わらない。
(企業報道部次長 富山篤)