インフォメーション

2022-05-29 20:27:00

【明日のフードビジネスへの展望】

【第180回】

ポストコロナ時代の流通サービス産業の展望(3)

 

[2]ポスト・コロナ時代の予測

(1)ポスト・コロナ時代の産業

2020年のコロナ・ショックは、第二次世界大戦後の最大の危機で、経済的破壊が深刻を帯びている。今回の経済収縮の構造からみて危機の深刻化や重篤化は、リーマンショックに比較ならないくらい、より広い産業と地域を長期にわたって巻き込まれている。

これらのなかで、観光、宿泊、小売、外食、サービス、エンターテイメントなどの分野は、かつては、製造、金融の不況につれて悪化を始めたが、いまや最初にしかも営業禁止や自粛によって壊滅状態に陥ってしまった。

この結果、多くの識者が、衰退産業と指摘しているが、これらの産業分野は生活者にとって不可欠であり、特に生活者の生活がなくなることはないので、小売産業界、外食・中食・内食産業界(フードビジネス産業界)、サービス産業界と関連する広い範囲を「生活産業」として位置付けていくことによって新たな展望を図ることである。

重要なことは、当面は「長期マネジメント・ビジョン、戦略、計画」をかかげながら、「中短期マネジメント・ビジョン、戦略、計画」を早期に確立していくことである。

長期的には、グローバル化やデジタル革命によって、産業構造の大転換が進行している。

このような劇的な社会的経済的環境の変化に対して、企業は持続的に適応し、企業の進化を図るために、企業の根本的な「企業マネジメント体系」に時間をかけて「イノベーション」を図ることである。

コロナ・ショックの危機を脱するための「企業マネジメント」は、なんといっても「生き残る」ことである。このためには、「経営者」は各戦略、計画をトップダウンによりスタッフに卓越したリーダーシップと優れたコミュニケーションによって徹底させるとともに、る全員参加を強化し、危機後は、いち早く反転攻勢に転じ持続的成長を目指すことである。

 

(2)流通サービス産業界の対策

 

  流通サービス産業界とは

流通サービス産業界は、新型コロナウイルスによる「緊急事態宣言」で壊滅状態に陥り、解除後も「三蜜対策」のルールのため生活者の「ライフスタイル」は、リスク回避の意識が高く、経済活動の復活には相当の期間を要すると言われている。

そのような状態のなかでも光明の見える対策をとった企業もあった。また、ポスト・コロナ時代を迎えるにあたり、過去の延長線ではなく、「原点回帰」に立って企業を見つめなおす企業が続出している。

さらに、「デジタル・トランスフォーメーション」と「コーポレート・トランスフォーメーション」によって、生産性の向上、自己資本利益率の向上、営業利益率の向上を図り、キヤッシュフロー・マネジメントによって、自己資金の増大をはからなければならない。

また、リスクマネジメント(事前策)とクライシスマネジメント(事後策)の導入、オンライン教育訓練や会議、企業目標数値の設定、企業間提携、M&Aの実践、人財重視のマネジメントを行っていかなければならない。

オンラインによって、生産性向上を図る傾向が高いが、重要なことは、コミュニケーションの緊密度や商品開発はチームワークによって行う不可欠である。さらに、「SDGssustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、ビジネスにおいては世界共通のゴールを実践しなければならない。このためには、「未来価値創造」を行っていかなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 


2022-05-21 21:41:00

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インフレが家計を圧迫するなか、米国の消費者は節約を余儀なくされている。米労働統計局によると、4月の消費者物価指数(CPI)は、前年比8.3%の上昇となった。

生活費が増えている主な要因は、価格の変動が大きい食品とエネルギーだ。特にエネルギーは、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの経済制裁による供給不足の影響が大きい。

食品価格については、「ハンバーガー」を例に考えてみたい。今年4月の主な材料の小売価格(都市部)はそれぞれ、1年前と比べて以下のように変化していた。値上がり幅が最も大きかったのは、肉類となっている。

ハンバーガーの値段はどう変化した?


・バンズ:+10.1%
・レタス:+12.7%
・トマト:+0.4%
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・ベーコン:+17.7%
・牛ひき肉:+14.8%
・ソース類:+9.2%
(出所:米労働統計局)

世界のサプライチェーンが依然としてパンデミックによる混乱に苦しむなか、各国は昨年以降、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために実施していた都市封鎖(ロックダウン)などの行動規制を緩和。消費者の間では、「リベンジ消費」と呼ばれる消費行動もみられ始めた。インフレ率はそうしたなかで上昇し始めたが、肉類はその時点ですでに、コスト上昇の影響が最も大きい食品のひとつとなっていた。

それ以後、物価上昇圧力は食品やアルコール飲料、家賃をはじめ、より幅広いカテゴリーにおいて強まっている。中古車・トラックの価格は昨年中にすでに高騰していたが、新車の価格も、1年前と比べて13%高くなっている。

ただ、あらゆるものが値上がりするなかでも、まだ例外はあるとみられる。トマトの値段は0.4%の上昇にとどまっており、それほど変わっていない。生鮮野菜全般も、食品カテゴリーのなかでは最も低い6.2%の値上がりになっている。

インフレは「ほぼ」世界的


米国以外の先進国も、インフレに悩まされている。経済協力開発機構(OECD)によると、インフレ率はドイツが7.4%(4月)、英国が6.2%(3月、入手可能な最新の統計)となっている。

例外といえる日本は、3月の物価上昇率がわずか1.2%だった。価格の上昇がニュースになる日本は値上げをひどく嫌う傾向にあり、現在のように経済が世界的に混乱するなかでも、企業は値上げを避けようとしてきた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、階層化された日本の労働市場と企業が行ってきたのは、投資ではなく貯金だ。それは、日本のエコノミストたちをいら立たせてきた。だが、低成長を容認する日本のアプローチは、少なくとも現在のような状況においては、都合がよかったということになる。

日本は、欧米が実施している対ロシア制裁に全面的に加わっているわけではない。だが、それでもウクライナで続く戦争の影響は、日本の消費者物価にも表れ始めている。

2022-05-21 21:38:00

レシートで判明⁉コロナ後の買い物時間 スーパー・ドラッグストアは昼間、コンビニは夕方の買い物が増えた

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フィールド・クラウドソーシング事業を展開する株式会社mitoriz(本社:東京都港区、代表取締役社長:木名瀬博)は、全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から月間1500万枚のレシートを収集する国内最大規模の(提携サイト含める)、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ(以下、POBデータ)」を活用し、生活者の購買行動を分析しています。

小売り大手は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い営業時間の短縮を続けています。そこで今回は、新型コロナ感染拡大前(19年)、感染拡大後(20年、21年)における、POB会員から収集した食品・総合スーパー、ドラッグストア、コンビニ各業態別のレシート合計枚数に占める発行時間帯別構成比から、コロナ禍の生活様式の時間帯別の消費行動を分析しました。

レシートには、購入時間が打刻されており、それを弊社でデータ化しているため、時間帯別の消費行動分析が可能となります。

調査結果概要

13721_image01.jpg図表1は、食品・総合スーパーにおけるレシート枚数構成比を、新型コロナ感染拡大前(19年)と感染拡大後(20年と21年)時間帯別で表したものです。
コロナ前(19年)とコロナ後(20年と21年)の構成比をみると、買い物時間帯のピークは開店直後と考えられる10時頃~正午であることは変わりませんが、コロナ後は、開店直後~午後5時頃までの時間帯において、コロナ前よりもレシート構成比が高く、買い物時間帯が早くなっていることがわかります。

13721_image02.jpg
続いて、図表2はドラッグストアにおけるレシート枚数構成比を、新型コロナ感染拡大前(19年)と感染拡大後(20年と21年)時間帯別で表したものです。
コロナ前(19年)とコロナ後(20年と21年)で、買い物時間帯のピーク変化がみられ、コロナ前は、午後午後6時以降の帰宅時間~夜間の構成比が高い状態が続いていたのが、コロナ後は、開店直後の利用が増え、夜間の利用が減少しています。

食品・総合スーパー、ドラッグストアともに、コロナ後の買い物時間帯が昼間に変化した理由をみると、「その日の特売をめがけて開店直後に行き、まとめ買いするようになった(30代専業主婦女性)」「在宅ワークになったため、昼休みに買い物に行く機会が増えた(40代就業中男性)」、「ドラッグストアが好きなので仕事帰りに毎日のように通っていたが、感染が怖いので行く回数が減り、人の少ない時間帯に時々利用するようになった(40代就業中女性)」「スーパーだけで用事を済ますことが増えた。どうしてもの時だけドラッグストアに朝一に行く(40代就業中女性)」など、在宅勤務の定着や、感染症対策、特売狙いなどの理由が挙がりました。
次に、食品・総合スーパーやドラッグストアよりも営業時間が長く、自宅や職場などから近く利便性も高いコンビニの買い物時間はどのような変化があったのでしょうか。

13721_image03.jpg

最後に、図表3はコンビニにおける時間帯別レシート枚数構成比で、新型コロナ感染拡大前(19年)と感染拡大後(20年と21年)時間帯別で表したものです。
コロナ前(19年)の買い物時間は、通勤時間帯の朝(午前8時)と、ランチ時間(午後12時)の構成比が大きく、通勤時間~ランチ(午前8時~12時)のレシート構成比は<35.2%>が、コロナ後(21年)は<28.5%>となり、6.7pt減少しました。
そして着目すべきは、コロナ後(21年)は、夕食前から夜間(午後4時~午後9時)のレシート構成比が<39.1%>となり、コロナ前(19年)<32.8%>よりも6.3pt増加し、昼間の客足が増えた食品・総合スーパーやドラッグストアとは異なり、コンビニでは夕方以降の客足が増えていることがわかりました。

コロナ前のコンビニといえば、おにぎりやお弁当など、いわゆる中食で売上を伸ばしてきましたが、コロナ後は、「カレーやシチュー、ハンバーグなど、チルド商品を購入する機会が増えた(50代男性)」「お総菜をよく買うようになった(40代女性)」「家のみが増えて、お酒やおつまみを購入回数が多くなった(70代男性)」といったコメントからもわかるように、主菜や副菜向けの商品の拡充や、冷凍食品の強化、家飲み需要など、新しい食卓ニーズの取り込みにより、客層が拡大し、利用時間が変化したことがうかがえます。

●調査概要 各業態の分析チェーン数とレシート枚数(19年~21年の合計)
「食品・総合スーパー」約180チェーン/856,561枚
「ドラッグストア」約60チェーン/396,284枚
「コンビニ」約20チェーン/556,672枚

Point of BuyⓇデータベースとは?

13535_image06.jpgPoint of BuyⓇデータベースは、全国の消費者から実際に購入/利用したレシートを収集し、ブランドカテゴリや利用サービス、実際の飲食店利用者ごとのレシート(利用証明として)を通して集計したマルチプルリテール購買データです。

同一個人(シングルソース)から「消費行動」に関わる複数種類のデータを収集しており、ショッパーの行動結果からリアルなショッパーの実態に直接迫り、マーケティング戦略に不可欠なデータを、“より精度を高く” 企業・メーカーに提供します。集計対象は、消費財カテゴリ68種類 約6,000ブランド、飲食利用カテゴリ10種類約200チェーン(2018年1月現在)。全ての利用証明に購入/利用理由(フリーコメント)がデータ化されています。

■「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」 https://www.sbfield.co.jp/multi-idpos/
■【株式会社mitoriz】 https://www.mitoriz.co.jp/

元記事はこちら

レシートで判明⁉コロナ後の買い物時間 スーパー・ドラッグストアは昼間、コンビニは夕方の買い物が増えた - FoodClip| 食ビジネスの動向やトレンドを届ける専門メディア (cookpad.com)

 


2022-05-21 21:37:00

米UberはMaaSのお手本? レストランと移動をセットで予約可能に

 読了時間: 6分
4
  • 牧村 和彦

    計量計画研究所 理事 兼 研究本部企画戦略部長

新型コロナウイルス禍で多くの交通事業者が苦境に陥った一方で、米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズは存在感を発揮している。海外では、電気自動車(EV)の利用を促す「Uber Green(ウーバーグリーン)」を始めたほか、アプリでレストランやコンサートなどの情報閲覧と予約ができる「Uber Explore(ウーバーエクスプローラー)」も開始。進化を続けるウーバーに日本の交通事業者が学ぶべきことは多い。

2022年4月22日のアースデーでは、Uber Greenプログラムを宣伝するイベントを実施(写真/ウーバーテクノロジーズ)
2022年4月22日のアースデーでは、Uber Greenプログラムを宣伝するイベントを実施(写真/ウーバーテクノロジーズ)

 米ウーバーテクノロジーズの2021年第4四半期の総予約数は、前年同期に比べ51%増、総利用額は259億ドル(約3兆3000億円)に達した。これは配車サービスやフードデリバリー「ウーバーイーツ」などの合算だ。内訳としては、配車サービスの予約数が前年同期比67%増の113億ドル(約1兆5000億円)、フードデリバリーは同34%増の134億ドル(約1兆7000億円)と、創業以来の記録的な数字となった。

 世界では、すでに配車サービスは新型コロナウイルス禍前の水準に回復しつつある。それに加え、コロナ禍でフードデリバリーが躍進した結果だ。まだ赤字体質からは抜け出せておらず、足元の株価は19年の株式公開時点の価格を大きく下回って推移している。

 それでも、コロナ禍で多くの交通事業者が厳しい利用状況となっている中で、ウーバーの躍進は目を見張るものがある。人とモノ、車両とドライバーをデジタルでマッチングする次世代の交通サービスの強さが実証された形だ。事実、ウーバーの総予約額は、フードデリバリーの大きな伸びも手伝って21年に904億ドル(11兆7000億円)に達し、コロナ禍前の19年の水準を40%も上回る結果となっている。

脱炭素化へいち早く脱皮するウーバー

 ウーバーは、2040年までに同社事業による二酸化炭素(CO2)の排出をゼロにする目標を掲げている。そんな中、21年に米レンタカー大手のザ・ハーツ・コーポレーションがテスラの電気自動車(EV)5万台を購入したことが大きな話題となった。同時にハーツは、21年11月1日からウーバーのドライバーに対してテスラ車両の貸与を始めている。

米UberはMaaSのお手本? レストランと移動をセットで予約可能に:日経クロストレンド (nikkei.com)

 


2022-05-14 21:45:00

宅配特化「ゴーストレストラン」急増 80業態持つFCも

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think!多様な観点からニュースを考える
山口真一さんの投稿山口真一

 

野村不動産は飲食店ビルにゴーストレストラン向けのシェアキッチンを設けた(東京・港)

客席を持たず宅配に特化した「ゴースト(幽霊)レストラン」が急増している。宅配に対応する飲食店の1割強を占める地域も出てきた。鶏肉料理や丼物など数十の業態を用意したフランチャイズチェーン(FC)が登場し、参入が容易になった。新型コロナウイルス禍に苦しむ飲食店主らが「副業」として加盟し、飲食宅配市場の拡大に弾みをつけている。

料理宅配アプリの「出前館」や「ウーバーイーツ」で注文する際、こう思った経験はないだろうか。「こんなお店、うちの近所にあったっけ」。ゴーストの名は、看板も客席もないため、店が「幽霊のように目に見えない」ことに由来する。

どの程度のゴーストレストランが存在しているのか、実態調査を試みた。ウーバーイーツで東京都港区の一角を配達場所に設定すると、注文可能な店として約750店が表示された。

一見普通の一軒家に

「松屋」「リンガーハット」といった有名チェーンをまず除外する。残りの店は公式サイトに宅配専門と記載があればゴーストとしてカウント。記載がなければ現地での目視などで判断した。確認できただけで85店、全体の1割強がゴーストだった。リスト化すると、住所が同じ店がいくつもあることに気が付く。

その一つを訪ねると、住宅街にある一見普通の一軒家だった。大きなリュックを背負った配達員がひっきりなしに出入りする。ここ、ゴーストレストラン研究所(東京・港)では「すーぷのあるせいかつ」「おさかな日和」など約20の業態を運営している。同じ厨房で「多店舗展開」できるのもゴーストの特徴だ。

同社は2019年、吉見悠紀代表が「飲食業界は驚くほど生産性が低い。成長が確実なデリバリーならデジタル技術を活用できる」と考えて設立した。コロナ禍で市場の急成長は現実のものとなり、21年春にはFC事業に乗り出した。

商圏の客層を分析してオーナーに適切な業態とレシピを提案し、注文受付から配達員へ商品を渡すまでのオペレーションを支援する。「通常4~6カ月かかる開業までの時間を約1カ月に短縮できる」(同社)という。

ローソンのメニュー開発も

22年1月、ローソンが店内厨房を使って1000店にゴーストレストラン事業を広げる方針を掲げた。大企業の本格参入として注目されたこの事業にもゴーストレストラン研究所が携わっている。FC契約ではないが看板メニュー「チキンオーバーライス」などのレシピを監修した。ローソンの吉田泰治・事業開発部部長は「スピード感を持って事業拡大するために連携したい」と話す。

ローソンはゴーストレストラン事業を1000店に広げる

コロナ禍で飲食店は大打撃を受けた。ゴーストレストラン研究所のようなフランチャイザーの力を借り、「副業」として別の店名でゴーストレストランを始める飲食店も多い。フランチャイザーの一つで「鶏あえずタンパク」など約80業態を持つWiaas(ウィアーズ、東京・新宿)では、全国約150の加盟者の約8割が既存の飲食店だ。初期費用は無料とし、月商の10%をロイヤルティーとして受け取る。

飲食ビルにシェアキッチン

不動産事業者もゴーストレストランの関連事業に乗り出している。野村不動産は飲食店ビル「GEMS(ジェムズ)田町」に、ゴーストレストランに特化したシェアキッチンを設けた。来店客から調理の様子が見えるオープンキッチンで、3業者が合計35の業態を運営している。配達員が配達番号を入力すると扉が開く商品ロッカーもある。

「配達時にジェムズのチラシを配れば地域の消費者へ効率的に周知できる」(同社)という狙いもあり、今後の飲食店ビルでも導入を検討する。

厨房機器メーカーにとっても商機だ。エレクター(東京・目黒)では、煙を吸引する移動式の調理ワゴンへの引き合いが増えている。「売り上げが立ちそうな地域へ機動的に拠点を変更するゴーストレストランにとって使いやすい」(同社)

調査会社のエヌピーディー・ジャパンによると、21年の料理宅配市場は約7909億円と19年の2倍近い。データ分析のヴァリューズの調べでは、料理宅配アプリの4月の利用者数は1282万人で、14カ月連続で1000万人を超えている。

飲食店の営業利益率はコロナ前で一般的に5%前後にとどまっていた。三井物産戦略研究所の高島勝秀研究員はゴーストレストランについて「同じ設備で他の業態も展開できれば、追加出店や設備投資のコストをかけずに売上高を伸ばすことができ、働き手の有効活用もできる」と評価する。

要の宅配サービス、撤退相次ぐ

宅配に特化したゴーストレストランは、デリバリー事業者がいなければ成り立たない。コロナ禍での特需を狙って外資系事業者が次々と日本市場に参入してきたが、早くも淘汰が始まっている。

「フードパンダ」を展開する独デリバリーヒーローは1月に日本から撤退した。20以上の都道府県に営業網を広げていたが、配達員を確保できなかった。中国・滴滴出行(ディディ)傘下のDiDiフードジャパンも日本での料理宅配サービスを5月25日に終了する。
勝ち組といえるウーバーイーツジャパン(東京・港)には約10万人の配達員がいるが、ネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」のため、雇用保険は適用されず、労災保険も自己負担だ。労働環境の改善が大きな課題になっている。

同社や出前館などが参画する日本フードデリバリーサービス協会(東京・渋谷)は3月末、「就業環境整備に関するガイドライン」を示した。著しく低い金額を報酬として定めることを禁じた下請法の規定順守などを求めるなど、ギグワーカーの離反を招かない手立てを進めている。

(河端里咲)

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