食品だけでなく未来も守る 世界最高水準のバリア性能「GL FILM」ができること
2019/11/19(火)
三重県の企業24社は18日、ベトナムのホーチミン市で商談会に参加した。食品企業を中心に、地場や日系のレストラン、小売り、卸売りの各業者に対して自社の商品をアピールした。
「ホーチミンビジネス商談会2019」は、三重県の発展と振興を目指す岡田文化財団が主催し、企画をイオンコンパス(千葉市)が担当。百五銀行(津市)が運営を支援した。三重県の商談会はホーチミン市で3回目だが、出展企業は過去最多。ベトナムで事業を手がける地場や日系のバイヤーや飲食店150社以上に参加を呼びかけた。
商談会には、日本酒や調味料、牛肉、海産物、菓子類など多様な商品が出展された。300年以上の歴史を持ち「ミエマン醤油」などの醸造や販売を手がける西村商店(度会郡玉城町)は、「あおさ醤油」や「白だし」「塩ぽん酢」などを展示。西村真美常務は「これまでマレーシアや香港、フランスなど向けに業務用の商品をOEM(相手先ブランドによる生産)してきた実績がある」と説明。今回の出展を通じて「ベトナム人の好みを理解したい」とし、主に業務用で商機を探っていくとした。
魚問屋の奥山安蔵商店(桑名市)は、瞬間冷凍によって鮮度の高い三枚おろしを提供する「ライブカプセル」の技術を用いた刺身用のフィレを紹介した。解凍後も活魚の食感が残り、三枚おろしがしてある状態で冷凍されているため、魚をさばく時間と人件費を節約できる。奥山安紀専務は「中国やシンガポール、タイ、カンボジアなどから引き合いがある」といい、ベトナム向けにも積極的に売り込んでいく姿勢を示した。
■県内企業のベトナムへの関心高く
出展企業の一部は、15~17日に市内のイオンモールで開催された三重の食品フェアにも参加。その後に市内の小売店やレストランなどを視察したほか、勉強会も実施した。百五銀行によると、県内ではベトナム向けの輸出や進出に関する問い合わせは他国と比べて多い。今回の展示会での成果を踏まえ、来年以降の開催についても検討していく方針だ。
年間約643万トン。本来は食べられるはずなのに廃棄されてしまった食品、いわゆる「食品ロス」の日本での推計(2016年)だ。トータルの数値だと実感がわきにくいが、国民1人あたりに換算すると年間約51キロ、茶わん1杯分のご飯を毎日捨ててしまっているという計算になる。
世界に目を向ければ、年間で食糧生産量の3分の1に相当する約13億トンが廃棄されている。全世界の人口の9人に1人にあたる約8億人が栄養不足にあると言われている一方で、大規模な食品ロスが深刻な社会課題となっている。
食品ロスの問題を難しくしているのは、地球で暮らす全ての人々が当事者であるということだ。消費者の立場で考えると、必要以上に買い過ぎない、料理を作り過ぎないなど、私たち一人ひとりができることも多い。だが、個人の努力だけでは、なかなか前には進まないのも確かだ。
国や自治体、企業などのさまざまな立場の関係者が各々の強みを生かし、できることへの取り組みが求められている。それによって、食品ロスの根本的な解決に向けて大きく動き出すことができる。
この10月に、行政としての大きな前進があった。食品ロスを国民運動として推進していくために、国や自治体、事業者などの責務を記した「食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)」が施行されたのだ。政府は今年度内に基本方針を策定し、地方自治体では具体的な削減に向けた計画を打ち出すことになっている。
事業者の取り組みも進んでいる。食品メーカーでは、賞味期限の表示を年月日から年月に変更したり、AIを利用して生産量を最適化するなどの試みが始まっている。卸売業者では、まだ食べられるにもかかわらず市場で流通できなくなった食品を、フードバンクの活用によって生活困窮者などに提供するケースが増えつつある。外食産業では、小容量メニューの提供や、余った食材・商品を割安で販売するフードシェアリングも行われている。
食品の流通に関して問題視されていたのが「3分の1ルール」。製造日から賞味期限までを3等分して、最初の3分の1をメーカーから小売までの納品期限、次の3分の1を販売期限とする商慣習だ。期限切れで廃棄される食品が多く発生し、食品ロスの要因の一つとされている。国は、卸売業者や小売業者の業界団体に対して期限の緩和を働きかけており、大手の小売店などでは納品期限の見直しが進んでいる。
「3分の1ルール」に代表されるように、さまざまな業種にまたがって発生する食品ロスを削減するためには、食品が生産されてから消費者の元に届くまでのサプライチェーンをいかに見直すかが重要であると言える。そして、食品のサプライチェーンにおいて大きな役割を果たしているのが「容器包装」だ。
容器包装の役割は、「守る」「運ぶ」「伝える」の3つに大きく分けられる。サプライチェーンを担う「運ぶ」だけでなく、内容物の商品情報や賞味期限などを記載して「伝える」ことも重要だ。なかでも、食品を「守る」機能の進化や改善は、食品を捨てずに長く保つために大きく貢献できる要素だ。
「当社の容器包装は、製造の段階や消費の段階など、サプライチェーンの中でさまざまな役割を担っています。したがって、食品ロスの解決方法をいろいろな形で提案できると思います」。そう語るのは、凸版印刷株式会社の川田靖さん。生活・産業事業本部パッケージソリューション事業部販売促進本部の部長を務める。
「例えば、鮮度保持と賞味期限の延長に関しては、食品を守るのに不可欠な容器包装のバリア性能で貢献できます。ほかにも、レトルトタイプの食品やチューブ容器に入った内容物を最後まで出し切れるような機能を付与したり、食べ切りサイズの小分け包装にしたりするなど、いろいろな切り口でのソリューションを提供しています」
凸版印刷株式会社 生活・産業事業本部グローバル事業部バリア販売部長 新矢直樹さん(左)と同事業本部パッケージソリューション事業部販売促進部長 川田靖さん(右)
印刷テクノロジーをベースに、情報コミュニケーション、建装材、半導体関連製品などの幅広い事業展開を図っている凸版印刷において、パッケージ事業は1900年の創業以来の伝統を持つ。その大部分を占める食品の容器包装には、同社が長年磨きをかけてきた技術やビジネスのノウハウが活かされている。
「容器の形に加工する技術だけでなく、素材までをも自社で製造することによって、他社にない製品機能を出せるのが、当社の強みの一つ」と、同事業本部グローバル事業部営業推進本部の部長、新矢直樹さんは語る。素材メーカーと加工メーカー、そして印刷会社の機能をあわせ持つことで、オリジナリティーや付加価値を持つ容器包装を実現しているという。
容器包装を主用途として、同社がグローバルに展開している素材が「GL FILM」。酸素、水蒸気などの浸入や放出によって内容物が変質・劣化することを防ぐバリア性能に優れた、透明バリアフィルムの一種だ。
GL FILMは、基材となるPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロンと、無機蒸着バリア層(アルミナまたはシリカ)、バリアコート層で構成される。物質を蒸発させて薄い膜にした状態で付着させる「蒸着」という加工において、同社がビールびんのラベルなどで培ってきた独自の技術を活用している。
凸版印刷が開発した「GL FILM」。さまざまな容器包装のバリアフィルムとして用いられる
「内容物が劣化する時に大きな要因となるのが、酸素と水蒸気です。GL FILMはこれらを遮断するバリア性能が高く、金属であるアルミに限りなく近いポジションにあるため、他の透明バリアフィルムと比較しても非常に優れていると言えます」と新矢さんは説明する。
バリア性能のほかにも、透明性や非金属性、焼却しやすさなどの理由で、GL FILMは私たちが普段目にするさまざまな商品に使われている。特にレトルト食品では、高温での殺菌処理に対応した耐熱性能を発揮。さらに、アルミなどの金属を使用していないため電子レンジ調理が可能となる。食品以外の分野でも、ディスプレイや太陽電池、医療・医薬包材などに採用されている。
画期的な応用例が、同社の開発した紙製の小型飲料容器「カートカン」だ。常温流通や長期保存ができ、自動販売機でホットでの販売も可能。自治体の指定する回収方法で紙パックとして扱われ、リサイクルが可能となる。
GL FILMは、世界45以上の国と地域、1万5000点以上の商品に採用され、世界的な食品ロス削減の一翼を担っている。2016年には米国にジョージア工場を設立し、グローバルな供給体制を確立した。
TOPPAN USA, INC. ジョージア工場
最近の例では、コンビニエンスストアでよく見かける総菜商品用に、電子レンジのマイクロ波に耐えうるパウチ包材として、GL FILMが多く使われている。GL FILM自体は1986年から販売を開始しているが、核家族化など食をめぐる社会環境の変化や、簡便調理と食器を洗わなくても良いというニーズの高まりに伴い、採用されるケースが増えたという。
容器包装の将来について、川田さんは「社会の変化に応じて、求められる役割も変わってきています。高度成長期頃に大手量販店が増えると、食品も常温流通で多品種になり、コンビニエンスストアの時代にはチルド流通が増えました。今後はデジタルトランスフォーメーションが発展していく中で、容器包装がどんな情報を伝えるのかが課題になりますし、バリア性能という普遍的な技術もさらに進化していくでしょう」と語る。
GL FILMが使用された「カートカン」(左)と「チューブなパウチ」。(いずれもサンプル)
「ひらかれた社会へ 多様性がはぐくむ持続可能な未来」をテーマに東京都内で開かれた国際シンポジウム「朝日地球会議2019」最終日の10月16日、食品ロスに関するパネルディスカッションなどが行われた。同社常務執行役員で生活・産業事業本部パッケージソリューション事業部長の野口晴彦さんも登壇し、容器包装が果たす役目について講演を行った。
野口さんは、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」に食品ロス削減が含まれていることを紹介し、「2030年までに、世界全体の一人あたりの食糧廃棄を半減させるという目標が設定されています。我々は食品ロスの現状について真摯(し)に受け止め、SDGsの目標達成に向けて、国、事業者、生活者、それぞれの立場で取り組むことが必要です」と語った。
「朝日地球会議2019」で講演する同社常務執行役員 生活・産業事業本部パッケージソリューション事業部長、野口晴彦さん
具体的に必要とされる容器包装の機能として、(1)鮮度保持、(2)賞味期限延長、(3)小分け包装、(4)内容物の付着防止、(5)輸送時の損傷軽減、の5つに分類。それぞれの事例を説明し、共通する要素として容器包装のバリア性能向上を挙げた。
続いて野口さんはGL FILMの特長を紹介し、「アルミに匹敵する世界最高水準のバリア性を誇る」と述べた。実際に採用されたケースとして、コンビニの総菜の容器を従来のトレーからパウチに変更して賞味期限が延びた例や、缶に入れていた洋菓子を小分け包装にすることで鮮度を保持した例について解説した。
GL FILMは環境適性もあわせ持ち、印刷層とバリア層を兼ね備えていることで、製造時に発生するCO2排出量の削減にもつながるという。酒類の紙パックの内側に使われていたアルミをGL FILMに置き換えることで、容器のリサイクルが可能になったことを説明し、野口さんは講演をこのように締めくくった。
「より機能性を高めたバリアフィルムの開発を行い、包装業界のリーディングカンパニーとして、食品ロス削減と環境問題の解決に貢献する容器包装を提供し続け、サステナブル社会の実現を引き続き目指してまいります」
「廃棄されている食糧が人々に行き渡れば、多くの健康を守ることができる」と話す野口さん
人間が食べないで生活するのは困難であり、食べ物は時間の経過とともに劣化していく。自然の摂理を前提に考えると、食品ロスをゼロにするのは難しい。だが、取り組む人の数が増えれば増えるほど、食品ロスを減らすことはできる。食品をただ単に守るだけではなく、多くの人に食品が無駄なく行き渡るための橋渡しをする存在として、容器包装の重要性はますます高まっていくことが予想される。
2019年10月7日
イタリア北部のボローニャで、9月6日から9日までの4日間、有機食品・製品の見本市SANA(サーナ)が開催された。今回で31回目の開催となった同見本市に、ジェトロがジャパンパビリオンを初めて設置、有機食品を取り扱う10社の日本企業が出展した。
SANAは、オーガニックの食品や製品に特化したイタリア最大級の見本市である。農業が盛んなエミリア・ロマーニャ州の州都ボローニャにて、6万平方メートルの会場にイタリア国内外の企業1,000社が出展した。
会場は、「食品」、化粧品などの「ビューティー&ケア」、ホームインテリアなどの「グリーンライフスタイル」の3つのエリアに区切られており、そのうち「食品」エリアにジェトロがパビリオンを設置。日本茶や日本酒、みそ・しょうゆなどの調味料を扱う企業などが日本全国から参加した。
パビリオンに設置された試食ブースでは、出展企業の製品をもとにイタリア人シェフがレシピを開発した、抹茶のパンナコッタ、しらたきのあえ物などのメニューが来場者に振る舞われた。「食」をテーマとした2015年のミラノ万博も追い風となり、日本料理はイタリアで徐々に浸透してきてはいるものの、食材の生かし方を具体的に提示できる機会は限定的で、今回のジャパンパビリオン参加は日本の食材を使った調理の仕方を紹介する貴重な機会となった。ブースを訪れたイタリア人は、興味深そうに手に取り、風味と食感を楽しんでいた。
健康意識の向上と環境配慮の高まりなどを受け、イタリアでは近年、有機食品の市場が拡大している。イタリアの調査会社Bio Bankによれば、有機食品の国内売上高は、2010年の18億ユーロから2018年の36億ユーロへと、8年間で2倍に拡大した(図1参照)。
図1:有機食品全体および購入場所別の国内売上高の推移出所:Assobio, Ice, Ismea, Nielsen, Nomismaのデータを基にBio Bankが作成
また同社によれば、有機食品の購入場所として、以前は専門店が突出していたものの、2014年ごろよりスーパーマーケットが伸長し、現在は専門店の約2倍の売上高となっている。実際、大手スーパーマーケットの店頭には、幅広いジャンルの有機食品が並んでいる。パスタ、コメなどの穀類から、ヨーグルトなどの乳製品や卵、野菜、果物などの生鮮品、ビール、ワインなどの酒類まで、多くの飲食品は有機でそろえることが可能だ。生活に密着したスーパーマーケットが有機食品の取り扱いに乗り出したことで、流通量が増加し、価格も徐々に抑えられ、有機食品が生活に浸透してきている。一方、専門店の場合はシャンプー、化粧品など、食品以外の生活必需品も取りそろえているケースが多く、こちらも人気は堅調だ。
有機食品市場の盛り上がりは、その他の統計にも顕著に表れている。イタリアからの有機食品の輸出は、2009年の10億ユーロに対し、2017年の21億ユーロと、8年間で倍増した(図2参照)。2018年時点では、同国全体で利用されている農地面積の15.5%が有機栽培用であり、2017年のEU平均の7%を大きく上回る。加えて、有機食品を取り扱う輸入業者の数も、過去10年間で約2倍となっており、国内市場の拡大に寄与している(図3参照)。同国のテレサ・ベッラノバ農業・食料・森林・観光政策相も「イタリアは有機食品産業従事者数で欧州をリードしている」とし、さらなる市場の盛り上がりに期待を寄せている。
図2:有機食品の輸出額の推移出所:FiBL Statistics
図3:有機食品を取り扱う輸入業者数の推移出所:FiBL Statistics
有機食品を購入する理由として、SANAに出店していたイタリアの有機食品メーカーの担当者は「イタリア人は昔に比べて忙しくなり、食事に割く時間も減った。以前は前菜、主菜、と順を追って食事をとっていたのに対し、現在は1品で済ませる人も少なくない。その分、一品一品をより大切にするようになり、食材にも気を遣うようになった」と話す。
有機食品の広がりを後押ししているトレンドの1つは、健康意識の向上だ。健康に配慮する人々の間では、「含有しない」ことが商品価値を高める要素の1つとなっている。その中でも特徴的なのが、いわゆる「〇〇フリー」と呼ばれるものだ。グルテンフリー、ラクトースフリーなどはイタリアでも浸透してきているが、昨今は「パーム油フリー」も存在感を示し始めている。パン、クラッカー、クッキーなどの商品を中心に、パーム油不使用であることがパッケージに明記されたものが店頭に多く並ぶ。小売業の業界団体GS1 Italyと調査会社ニールセンが発表した統計によれば、「パーム油なし」の商品は2016年から2017年にかけて12.9%、2017年から2018年にかけては3.8%と売上高を伸ばしている。パーム油の使用については賛否両論あるものの、森林・生態系破壊の要因となっているとして、環境倫理の面から含有する商品の購入を控える消費者も少なくない。
分類 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|
保存料なし | △ 0.4 | △ 4.0 |
パーム油なし | 12.9 | 3.8 |
着色料なし | 0.1 | △ 5.8 |
添加物なし | 4.5 | 3.6 |
硬化油なし | △ 3.1 | △ 7.9 |
遺伝子組み換えなし | △ 1.8 | 1.6 |
飽和脂肪なしまたは少量 | 4.7 | △ 0.1 |
グルタミンなし | 3.0 | 4.8 |
加糖なし | 7.4 | 5.4 |
減塩または塩なし | 7.2 | 3.6 |
アスパルテーム(甘味料)なし | 2.8 | △ 14.7 |
出所:Osservatorio Immagino Nielsen GS1 Italy
世界的に機運が高まる環境保全は、イタリアでも常に注目を集めるトピックであり、特に若い世代では関心が高い。今後、その機運がさらに高まれば、農業の持続性にも寄与する有機食品に、より一層の注目が集まるだろう。今後、経済停滞が続くイタリアで、成長市場として飛躍していくことが期待される。
2019年10月30日
他の欧州諸国と同様、日本食の浸透が近年目覚ましいイタリアだが、認知度が高まったのはここ数年のことだ。日本食を部分的に取り扱う総合エスニックレストランなどの増加により、日本食に触れるきっかけが増え、与えるイメージも多様化している。そのような中、2008年からローマ市内で日本食を提供し続けているのが「レストラン滝」だ。市中心部、バチカン市国の近くに位置するこの店は、すしや麺類、煮物など幅広いメニューを取りそろえ、今では客層の大多数をイタリア人が占める。イタリアでの店舗運営の工夫などについて、開店当初から人材発掘やサービス提供の運営全般を取り仕切り、現在では和牛の輸入を行うTaki Japan International Srlの社長も務めるビッティゆかり氏に話を聞いた。(10月15日)
2019年11月5日
魚、紙、パーム油、コーヒーと認証そろい踏み
藤田 香
日本マクドナルドはMSC認証マーク付きフィレオフィッシュを2019年11月から販売する。東京五輪を契機に若い世代に認証を知ってもらい、未来の顧客を取り込む。
日本マクドナルドは、海の環境を守って漁獲した魚であることを証明する「MSC(海洋管理協議会)」認証のロゴマークを付けたフィレオフィッシュを2019年11月末から販売する。
フィレオフィッシュに使用している魚はアラスカ産のタラ。これまでも資源量を管理するなどMSCの漁業認証を取得していたが、日本の流通段階で認証水産物を非認証品と分別管理する「CoC認証」が取れていなかった。仕組みを整え、2019年8月に店舗と流通拠点で審査に合格してCoC認証を取得。マークを付けられるようになった。
欧州ではMSC認証マークを付けたフィレオフィッシュが広く市場に出回っている。環境五輪をうたった2012年のロンドン五輪をきっかけにマクドナルドが認証取得に取り組んだ結果だ。日本でも東京五輪を2020年に控え、市場への普及を狙う。
日本マクドナルドはCoC認証取得に当たって、1年かけて仕組みをつくった。もともとMSC認証のタラと非認証のエビを混在しないよう袋の色やフライバスケットの大きさを変え、納品数や保管量などのデータ管理を行っていた。それに加え、リスク管理マニュアルを作るなどマネジメントシステムを構築。MSCの教材を充実させて全国15万人のアルバイトへの教育も徹底した。
同社は他にも認証製品の採用に取り組んでいる。袋やカップなどすべての紙にFSC(森林管理協議会)認証紙を採用。ポテトやフィレオフィッシュの揚げ油に使うパーム油には、油脂メーカー3社に要求を出し、2019年1月からRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証油を使っている。2019年10月からはコーヒーをレインフォレスト・アライアンス認証のものに切り替えた。
今回の取り組みは、スケール(規模)を利用して環境や社会への配慮を進めるマクドナルドの持続可能性方針「Scale for Good」の一環だ。一方で「先行投資でもある」と日本マクドナルドCSR部マネージャーの岩井正人氏は話す。「認証への認知度は子供の方が高い。彼らを啓発することで未来の顧客となり、未来の雇用にもつながる」と期待する。
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/news/00059/