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2022-02-27 10:06:00
 
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熊本城天守(令和3年4月撮影)© SankeiBiz 提供 熊本城天守(令和3年4月撮影)

熊本に発祥したローカルラーメンがグローバルを制す! アメリカに次ぐポジションにつき、経済大国を標榜し始めた中国。14億の人民を魅了した一杯を追えば、「失われた20年」にも粘る日本ラーメンのバイタリティが見える。その時代に台頭したラーメン店に焦点を当て、日本経済の興隆と変貌、日本人の食文化の変遷を活写する本連載。今回は、中国本土をはじめ世界に750店以上を擁する『味千ラーメン』に迫る。

2010年の中国外食シーンを熊本ラーメンのレジェンドが席巻

世界最大、約14億の巨大人口を擁して改革開放後の経済をドライブさせてきた中国。2010年、そのGDPは日本を抜いて世界第2位となった。40年以上も守り続けたNo.2の席を失い、新興中国の後塵を拝することとなった日本。しかし、その巨龍の身中には豚骨香るホットなラーメンが勢いを見せていた。

2010年、中国料理協会が選出した「中国ファストフード企業トップ50」を引こう。米国のヤム・ブランズ(ケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどを運営)、同じくマクドナルド、台湾発のファストフードであるディコスに次ぎ、4位にランクインしたのが『味千ラーメン』である。

この店が熊本県庁正門横にオープンしたのは1968年。奇しくも日本が西ドイツ(当時)を抜き、世界2位の経済大国にのし上がった年であり、東京では本連載で紹介した『ラーメン二郎』が創業している。さて、そんな味千ラーメンの出で立ちは? 白濁豚骨スープがどっしりと構え、ネギ、チャーシューといったスタンダード具材に加えてキクラゲも存在感を発揮。ストレート中太麺が泳ぐ、重厚な九州ラーメンらしい一杯だ。お品書きを見れば漆黒の香味油がスープ表面にたゆたう「黒マー油ラーメン」なるメニューも目に留まる。

この味千ラーメン、有力ご当地麺「熊本ラーメン」誕生の一幕に深く関わったキー店でもある。1950-60年代の九州ラーメン年譜を紐解き、熊本ラーメンの出自を振り返ってみよう。

九州ラーメンの多くは豚骨ダシをベースとする白濁スープだが、この「とんこつスープ」が生まれたのは福岡県久留米市である。1937年、西鉄久留米駅前に屋台として出店した『南京千両』が開業。そして、1947年に、同じく屋台の『三九』が、仕込みプロセスの偶然の産物として白濁スープを世に出した。「煮込みすぎて白く濁ったスープに味付けをしてみたらおいしかった」――これが白濁豚骨スープ誕生のセレンディピティである。

ブレイクした久留米ラーメンは九州各地に伝播。久留米から県境を挟んでほど近い熊本県玉名市にも、1952年に『三九』の屋台が久留米から出店し話題となる。その噂を聞きつけ、ラーメン技能の習得を目指し、熊本市から3人の男が玉名市にやってきた。その中のひとりが熊本ラーメンの古豪『こむらさき』を創業した山中安敏、そして『味千ラーメン』の創業者・重光孝治である。

九州各地で開花した多くのラーメンは、久留米のデッドコピーに堕すことなく、それぞれ独自の装いを纏って立ち上がった。熊本では豚骨に加えて鶏ガラ、キャベツなどの野菜も出汁に使われ、まろやかなスープが作られる。そして、強化パーツとして投入されたのが「ニンニク」だ。ニンニクを油で炒め、寸胴に加える手法が開発されたのだ。台湾をルーツとし、中国食文化圏の料理に通じていた重光孝治は、その発案者のひとりと言われる。

『味千ラーメン』『こむらさき』『桂花』といったアーリー熊本ラーメンの名店は、この手法を先鋭化。炙ってから乾燥させたニンニクチップ、揚げ工程を経たガーリックチップ、ニンニクを揚げて香りを移した香味油「マー油」が開発され、熊本ラーメンに無二のオリジナリティを付与することとなる。

店舗個々が実力をつけ、そして同じコアパーツを擁するラーメン集団としても強みを持った。熊本ラーメンは有力なご当地麺として認知度を着実に高めていくが、フリークをはじめ中央のラーメン論壇で認知されたのは、東京進出でブレイクした『桂花』、そして『新横浜ラーメン博物館』の出店で注目を集めた『こむらさき』といった面々。『味千ラーメン』は九州地方を中心に勢力を広げたが、東京には出店しなかった。現在、最も東にある店舗でも静岡県の掛川インター店である。首都圏での出店を経ずして、中国からグローバルへの飛躍。このリープフロッグはいかにしてなし得られたのか……?

麺料理の本場に逆輸入で躍進した「日式拉麺」

日本のラーメンが海外への雄飛を図ったのは1980年代以降のことだ。グローバルでは麺料理の一つとして「Ramen」が定着しており、中国、香港、台湾といった漢字文化圏では「日式拉麺」として受容されている。

中国大陸における日本式ラーメン店の橋頭堡は、1986年に北京にオープンした『新僑二幸』と言われる。日本の商社と北京の大手ホテル新僑飯店の合弁レストランとして開業した。ただ、カウンタータイプの日本ラーメン店のスタイルを現地にそのまま持ち込んだもので、主なターゲットは現地の邦人駐在員。広く中国人民に向けた「日式拉麺」に至ってはいなかった。

その後、商社や外食産業など多くの日本企業が合弁による中国進出を目指したが、成功モデルは「1000店出店計画」を掲げ、中国の各都市で大量に大規模店を出店した『味千ラーメン』をおいて他にはない。初めて海外出店を図ったのは1994年、創業者の故郷・台湾だ。

「初めての海外進出は失敗に終わりました。失敗の原因は、現地オーナーに当社の考え方を理解してもらえなかったことです。当社は台湾の製麺会社と合弁会社をつくったのですが、現地法人が販売していたラーメンは、日本の「味千ラーメン」とは似て非なるものでした。麺はフニャフニャで、スープの味も薄かったんです」(『経営者通信』2011年4月号)

創業者である父の想いを継いだ2代目社長・重光克昭の回顧である。この苦い戦訓を経て、重光は「現地の好みは無視できないが、本来の味については妥協してはいけない」と決意。1995年には現地実業家と強固なパートナーシップを結び、香港に初出店。コア・コンピタンスである「豚骨スープ」の味については徹底的に管理しつつ、店づくりなどのソフト面やメニュー開発、マーケティングは現地パートナーに移譲。日本法人・中国法人がバランスを取った両頭体制で大量出店につなげていく。

大人数でワイワイ食べる中国食文化に合わせ、席は4人がけ以上がスタンダード。ステータスを重んじる国民性を慮り、空港や百貨店、ショッピングセンターに活気ある大型店をつくった。スープは熊本流をぶらさず、麺の茹で方もしっかり品質管理。一方、トッピングは徹底的にローカライズする。香港では丼に皮付きの有頭エビを乗せた海老ラーメンやトマト鶏ラーメン、タイではトムヤムラーメン、シンガポールではチリソースを加えたボルケーノラーメン。焼き鳥などのサイドメニューも充実させ、ファミリーニーズにも刺さるよう配慮した。かくして、「地方中小企業の海外進出成功モデル」として大躍進を果たした味千ラーメン。2010年の中国経済躍進と歩を合わせたブレイクから、現在の発展はいかに――?

2010年代前半は1000店舗体制を目指して驀進していた味千中国だが、現在の店舗ネットワークは約700店ほど。尖閣諸島問題に端を発する反日感情の高まり、そしてスープの内製を巡った報道などがあり、基盤はいまだ強固ながら、一時期の勢いが失われているのも確かだ。

失速の背景として指摘されるのが、中国消費者の成熟だ。日本のマンガからコンテンツ化された『深夜食堂』が人気を集め、金ピカラグジュアリーから渋い職人志向の食体験を求める動きがあれば、SNS映え、コロナ禍によるオンラインデリバリーの隆盛も大箱店舗の苦境に追い込んでいる。

本連載で取り上げてきた多くのラーメンと同じく、戦後に勃興した熊本『味千ラーメン』。日が昇るかのような高度経済成長期に浸透し、リープフロッグ型のモデルとして無二の存在感を発揮してきた。成熟ステージに向かう中国、そしてアジア圏で、北極星をどうやって見出していくのか――。今こそ、火の国で培われた創意に期待したい。

佐々木正孝

ラーメンエディター/有限会社キッズファクトリー代表

ラーメン、フードに関わる幅広いコンテンツを制作。『石神秀幸ラーメンSELECTION』(双葉社)、『業界最高権威 TRY認定 ラーメン大賞』(講談社)、『ラーメン最強うんちく 石神秀幸』(晋遊舎)など多くのラーメン本を編集。執筆では『中華そばNEO:進化する醤油ラーメンの表現と技術』(柴田書店)等に参画。

2010年―熊本から巨龍・中国を飲み込む! 味千ラーメンの軌跡 (msn.com)

 

 


2022-02-26 17:56:00

ミネラルウォーター/購入場所は「スーパー」が58.2%、「コンビニ」は35%

2022年02月21日 / 商品

     

伊藤忠グループのリサーチ会社、マイボイスコムは2月21日、10回目となる「ミネラルウォーターの飲用」に関するインターネット調査の結果を発表した。

調査では、普段どのような水を飲むことが多いかを聞いたところ、「水道水をそのまま飲む」「市販のミネラルウォーターを購入して飲む」が、それぞれ4割弱、「浄水器に通したものを飲む」と32.9%がk答えた(複数回答)。「水道水をそのまま」は、北海道、東北、北陸で6割前後となった。関東では、「市販のミネラルウォーター類」「浄水器に通した水」が、やや高かった。

<市販のミネラルウォーターの飲用頻度>
0221mvc1 - ミネラルウォーター/購入場所は「スーパー」が58.2%、「コンビニ」は35%
ミネラルウォーターの飲用頻度について調べたところ、市販のミネラルウォーターを飲む人は7割弱だった。関東や近畿で高く、北陸で低かった。週1回以上飲む人は3割弱、ミネラルウォーターの飲用者の4割だった。年代では10~30代の男性の比率が高かった。

直近1年間に飲用したミネラルウォーターについては、コカ・コーラの「い・ろ・は・す」(39.7%)、次いでサントリーの「サントリー天然水」(36.7%)、アサヒ飲料の「おいしい水 天然水 六甲/富士山」(25.5%)となった(複数回答)。飲用頻度が週に1回以上の層では「サントリー天然水」、月に数回以下の層では「い・ろ・は・す」が1位だった。

ミネラルウォーターの飲用場面では、「のどが渇いた時」(42.2%)トップで、「水分補給」(35.2%)、「お風呂上がり」「起床時」「仕事・勉強・家事の合間」が、それぞれ2割強となった(複数回答)。飲用頻度が週に5回以上の層では、「のどが渇いた時」「起床時」が上位2位で、ほかの層よりも高くなった。

<ミネラルウォーターの購入場所>
0221mvc2 - ミネラルウォーター/購入場所は「スーパー」が58.2%、「コンビニ」は35%
ミネラルウォーターの購入場所は、「スーパー」(58.2%)、「コンビニエンスストア」(35%)、「自動販売機」(23%)の順となった(複数回答)。2016年での調査と比べて、「ドラッグストア」が増加した。また、「い・ろ・は・す」と「エビアン」を主に飲む人は、「コンビニエンスストア」の比率が高かった。

ミネラルウォーター購入時の重視点に対しては、「価格」(54.5%)が最も多く、「味」「商品名」「メーカー」が、それぞれ20%台となった(複数回答)。「富士山のバナジウム天然水」と「エビアン」を主に飲む人では、「価格」が、ほかの層より低かった。

<ミネラルウォーターの使用場面>
0221mvc3 - ミネラルウォーター/購入場所は「スーパー」が58.2%、「コンビニ」は35%
ミネラルウォーターの使用場面では、「自宅で水を飲む」が41%、「外出時に持ち歩いて飲む」が35.3%、「食事のときに飲む」「災害時の備蓄用」が、それぞれ1割強となった(複数回答)。

調査は1月1日~5日に実施し、1万85件の回答を集めた。また、調査対象のミネラルウォーターには、ウォーターサーバー、味や香りがついた商品は含まれていない。

■ミネラルウォーターの飲用に関するアンケート調査(第10回)
https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=28201

■問合せ先
マイボイスコム
https://www.myvoice.co.jp/
Mail:otoiawase@myvoice.co.jp
TEL:03-5217-1911

ミネラルウォーター/購入場所は「スーパー」が58.2%、「コンビニ」は35% | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

 


2022-02-26 17:53:00

アマゾン、棚を埋め尽くす驚異のPB 米店舗Amazon Fresh体験ルポ

 読了時間: 11分
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  • 岩井 琢磨

    顧客時間 共同CEO

  • 田原 美穂

    サステナビリティコンサルタント、クロスボーダーマーケター、ライター

米アマゾン・ドット・コムが展開するスーパーマーケット業態「Amazon Fresh」。その解釈については既にこの連載でも触れたが、実際の店頭や体験はどのようなものだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で、筆者らは現地に視察には行けていない。だが、ニューヨーク在住で顧客時間(大阪市)のメンバーでもある田原美穂が、実際の店舗体験をリポートしてくれた。そこから見えてきたのは、「店舗形態やシステム」の進化によって、OMOで提供する3つの価値だけではなかった。真の衝撃は、プライベートブランド(PB)を中心とした商品展開にあった。

米アマゾン・ドット・コムの新型スーパーマーケット「Amazon Fresh」を視察した感覚値だが、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazonのプライベートブランド(PB)が占める。緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付くことが分かる
米アマゾン・ドット・コムの新型スーパーマーケット「Amazon Fresh」を視察した感覚値だが、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazonのプライベートブランド(PB)が占める。緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付くことが分かる

 Amazon Freshのリアル店舗は2020年8月から展開を開始し、21年12月29日時点では米国の東海岸、西海岸、およびイリノイ州などの特定の地域で全米23店舗、および海外で営業している。今回の視察では、21年5月にオープンしたバージニア州にある郊外型店舗と、同7月にオープンしたワシントンD.C.にある都市型店舗の2店舗を訪れた。

 郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置しており、面積は約2787平米の、いわゆるロードサイドモールの大型店形式を取っている。同モール内にはファストフード店から小児科まで、幅広い業態が入居し、ファミリーがメインの顧客層だと推測できる。実際に訪れた21年11月中旬の平日午前は、年配の来店客が中心で人はまばらだった。

2021年5月にオープンしたヴァージニア州にある郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置している。面積は約2787平米で、いわゆるロードサイドモールの大型店だ
21年5月にオープンしたバージニア州にある郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置している。面積は約2787平米で、いわゆるロードサイドモールの大型店だ

店内を埋め尽くすAmazon PBの実態

 Amazon Freshは商品自動認識やスマートフォンとの連携で、リアルタイムにお薦め商品をリコメンデーションしてくれるスマートレジカートなどテクノロジーが注目を集めがちだが、店舗に入って、まず目に付くのは店自体の広さだ。

入口正面にスマートフォンと同期して、買い物を便利にする「スマートレジカート」が設置されている
入口正面にスマートフォンと同期して、買い物を便利にする「スマートレジカート」が設置されている
入店後すぐの左手一面には生鮮食品がずらりと陳列されている。テクノロジー以上に店自体の広さが目に付く
入店後すぐの左手一面には生鮮食品がずらりと陳列されている。テクノロジー以上に店自体の広さが目に付く

 商品構成にも驚きがある。同店では米アマゾン・ドット・コムが買収した米大手スーパーマーケット「Whole Foods Market」、ナショナルブランド(NB)、Amazon PBが棚に並んでいることはさまざまなメディアでも記述されている。だが、実際に店舗の棚を観察してみると、驚くことにAmazon PBがかなり高い割合を占めていることに気付く。特に、家計支出の高い割合を占める食品については、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazon FreshのPBが占めるといってよいほどである。冒頭の写真でも分かる通り、緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付いた。

 視察前には、Whole Foodsブランドで展開できていない商品をAmazon PBで補っているのではないか、と推測していたが、その期待は見事に裏切られた。アマゾンはWhole Foodsと類似商品を開発し、同じ陳列棚で、より低価格のPBを横並びで展開し始めている。次の写真はドレッシングの陳列棚だが、Whole Foodsブランド「365」の隣にAmazon PBの「Happy Belly」が並び、その下にNBの「Kraft」などが展開されている。価格は、365の「Organic Ranchドレッシング」が3ドル75セント、Kraftが1ドル84セント、そしてHappy Bellyの「Ranchドレッシング」は最安値の1ドル48セントで販売されていた。

ドレッシングのコーナーではAmazon PBの「Happy Belly」の商品が最安値で販売されていた
ドレッシングのコーナーではAmazon PBの「Happy Belly」の商品が最安値で販売されていた

 ただし、Amazon PBのすべてが低価格戦略を取っているわけではない。PBのブランド数は、すべて合わせると20年の時点で110以上あるといわれているが、Amazon Freshのリアル店舗でも下記の10種類を確認できた。

アマゾン、棚を埋め尽くす驚異のPB 米店舗Amazon Fresh体験ルポ:日経クロストレンド (nikkei.com)

 


2022-02-19 15:02:00

ENEOSが「モス」や「サイゼ」を自動配送 1万3000カ所の給油所活用で目指す姿とは自動走行ロボットの輸送インフラを構築

2022年02月15日 06時00分 公開
[太田祐一ITmedia]

 ENEOSホールディングス(以下、ENEOS)、ZMP、エニキャリは2月1日、自動宅配ロボットを活用したデリバリーの実証実験を、東京都中央区佃・月島・勝どきエリアで開始した。今回は2021年2月に実施した技術実証に続く第2弾。前回よりも配達エリア、参加企業を拡大し、事業採算性の検証を目的として行っている。

ロボットZMPが提供する自動宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」

 第1弾の設置場所は「Dr.Drive月島SS」のみで自動宅配ロボットは1台。参加店舗は11店舗で、配達先は今回の5分の1となる約1000戸だった。近接監視による運行で、主に技術性の検証を主眼に行われた。(関連記事

 今回の実証実験ではZMPが提供する自動宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」を2台活用。佃・月島・勝どきエリア(半径1キロ程度)を遠隔監視による運行を行い、デリバリー事業の採算性を検証する。

 ロボットを配備するのは、当該エリア内の東新エナジーが運営する「Dr.Drive月島SS」と、乾汽船が運営するシェア型企業寮「月島荘」の2カ所。エリア内の配送可能マンションは約5000戸で、参加店舗はサイゼリヤ、ダイエー、モスバーガーなどを含む27店舗に拡大した。

ロボット参加企業の一部(出所:プレスリリース)

 専用アプリから注文すると、ロボットが店舗から商品をピックアップし、注文者が居住するマンションのエントランス付近まで宅配する。配送料は330円。基本的な営業時間は午前11時~午後8時だが、2月18日のみ試験的に深夜配送も実施する予定。参加店舗のうち、ダイエー 月島店と松屋 勝どき店の2店舗が24時間営業で、それらの店舗において深夜帯での稼働率を検証する。

 宅配システムには、エニキャリの注文・宅配プラットフォームを使用し、ENEOSはデリロの保有・補完・運用、注文・宅配プラットフォームの運営を担う。

利用者95%が「引き続き利用したい」と回答

 すでに2月1~3日の3日間の実証実験結果はでており、注文数は96件だった。弁当を中心とした食材・日用品の注文が多く、チェーン店ではなく地元商店の注文が半数近くにのぼった。

 利用者からは「ロボットに会えた」「非接触で受け取れた」という点が評価され、ほかにも「人間による配達では配達員に当たりはずれがあるが、ロボットは品質が安定している。また、雨天時においては人間に頼むのは申し訳ないという気持ちが生じていたが、ロボットだと悪天候でも心理的に頼みやすい」という回答もあった。

ロボット利用方法

 また、利用者のうち95%は「引き続き利用したい」と回答。取り扱いを希望する店舗にはベーカリー、ドラッグストアなどが多く挙がった。

 一方、課題としては「マンションの下まで取りに行くのが面倒だった」という意見があった。この回答を受け、エニキャリ業務推進本部の境潤也氏は「今後はエレベーター会社と連携することで、部屋の玄関先まで届けられるような対応ができるようになるとさらにスケールすると思う」と考えを示した。

ロボット

国内約1万3000カ所あるSSをロボットの充電・運用拠点として活用

 今回の事業を行う背景について、ENEOS未来事業推進部 事業推進3グループの片山裕太氏は「コロナ禍の影響でECサイトによる宅配が増加し、ラストワンマイルデリバリー市場の需要が急拡大している」ことに触れ、「物流クライシスとなっている物流業界を持続可能なものにするために、何か価値提供ができないかと考えた」と語る。

 ここで「どうしてENEOSが自動宅配ロボット事業?」と考える読者が多いと思うが、片山氏の所属するのは未来事業推進部。19年4月に発足した部署で、「2040年に柱となる事業を創出すること」をミッションに掲げている。本実証実験もその取り組みの一つという位置付けだ。

ロボットサービスステーションを拠点に自動走行ロボットの輸送インフラを構築(出所:プレスリリース)

 それでは、ENEOSはこの事業で何を目指しているのか。片山氏は「全国にある当社のサービスステーション(SS)を、ロボットの充電・運用・メンテナンス拠点として活用し、自動走行ロボットの輸送インフラを構築すること」だという。

 将来的には、国内約1万3000カ所ある同社のSSを活用し、自動宅配ロボットだけでなくドローンや自転車などを配備。商品・距離・時間に応じた最適な配送手段を活用し、新たなラストワンマイル配送の拠点にすることを目指す。

ロボット国内約1万3000カ所ある同社のSSを活用(画像提供:ゲッティイメージズ)

 ビジネスモデルについて片山氏は、「お客さまのニーズに合わせて最適なサービスを提供できるロボットデリバリーソリューションを構築したい」と展望を語る。

 具体的なサービスとして、参加したい店舗の注文サイトへの出店、すでにデリバリーを行っており宅配ロボットを導入したい店舗には、デリバリーインフラの提供などを考えている。

 また、片山氏は「ディベロッパーが特定エリアでロボットを活用したいというニーズがあると聞いている。そういった場合は、ロボット、顧客UI、配送アルゴリズムをOEMという形で提供することも考えている」と話す。これらを収益源にして新たな事業を創出したい考えだ。

 「今後全国展開し、誰が、いつ、何を買ったか、店舗にどんな在庫があるかなどのデータが蓄積できれば、そういったデータを活用した新たなビジネスも可能になっていくのでは」と片山氏。

 一方、片山氏は今後の課題として挙げるのが「法規制とビジネス面」だ。

課題は法規制とビジネス面

 「自動宅配ロボットの法制度は、これから整備されていくような状況。公道を縦横無尽に走り回るまでにはかなりのハードルがある。そのため、実証実験を通して実績を積み上げていき、規制改革を訴えていきたい。法規制が緩和されるまでは、走行可能なエリアやサービスにフォーカスして進めていく」(片山氏)。

 加えて、ZMPロボライフ事業部の池田慈氏は「法規制がたとえ緩和できて自動宅配ロボットが公道を走れるようになったとしても、その光景を住民が受け入れられるのかという課題がある。そうした社会受容性を高めていく取り組みは、ロボットメーカーとしてもやっていきたい」と話した。

ロボット公道を走るデリロ

 ビジネス面について片山氏は、「ロボットが一般的な普及価格になっていないので、稼働率を高めながら、さまざまなサービスを1台で賄えるようなサービス設計を見つけていく必要がある。実証実験では配送料のみで運営するが、実際にプラットフォームビジネスとして行っていく段階では、店舗側から手数料をいただくと思う」と話す。

 また、中山間地域に住む高齢者のなかには、近くに店舗が存在せず、交通手段もないことから買い物難民になっている人が数多く存在する。宅配サービスはそうした課題を解決する一助になることも期待されている。

 片山氏は「買い物難民を救う面では、本事業も有意義なサービスになると思う。しかし、住人が少ないので稼働率は非常に少ないことが予測される。今回のモデルをそのまま適用しても、ビジネスモデルをうまく構築できないのではないか。例えば、高齢者の見守り機能といった別の付加価値をつけて展開する必要がある」と言及した。

ロボット商品を積み込む様子

 同実証実験は2月28日まで実施する予定。実証期間中に検証した稼働率(注文数)を参考に、事業化フェーズに移行するかどうかを今年度中に判断。定常サービスへの移行は次年度を予定している。

 世界中で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが加速し、電気自動車需要の拡大が続いている。全国1万3000カ所のネットワークを活用し、「脱石油」に向け新たな事業を展開できるか。石油元売り大手ENEOSの今後の動きに注目だ。

著者プロフィール

太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)

 

1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。

その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。

2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329

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2022-02-19 14:58:00

ENEOSが「モス」や「サイゼ」を自動配送 1万3000カ所の給油所活用で目指す姿とは自動走行ロボットの輸送インフラを構築

2022年02月15日 06時00分 公開
[太田祐一ITmedia]

 ENEOSホールディングス(以下、ENEOS)、ZMP、エニキャリは2月1日、自動宅配ロボットを活用したデリバリーの実証実験を、東京都中央区佃・月島・勝どきエリアで開始した。今回は2021年2月に実施した技術実証に続く第2弾。前回よりも配達エリア、参加企業を拡大し、事業採算性の検証を目的として行っている。

ロボットZMPが提供する自動宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」

 第1弾の設置場所は「Dr.Drive月島SS」のみで自動宅配ロボットは1台。参加店舗は11店舗で、配達先は今回の5分の1となる約1000戸だった。近接監視による運行で、主に技術性の検証を主眼に行われた。(関連記事

 今回の実証実験ではZMPが提供する自動宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」を2台活用。佃・月島・勝どきエリア(半径1キロ程度)を遠隔監視による運行を行い、デリバリー事業の採算性を検証する。

 ロボットを配備するのは、当該エリア内の東新エナジーが運営する「Dr.Drive月島SS」と、乾汽船が運営するシェア型企業寮「月島荘」の2カ所。エリア内の配送可能マンションは約5000戸で、参加店舗はサイゼリヤ、ダイエー、モスバーガーなどを含む27店舗に拡大した。

ロボット参加企業の一部(出所:プレスリリース)

 専用アプリから注文すると、ロボットが店舗から商品をピックアップし、注文者が居住するマンションのエントランス付近まで宅配する。配送料は330円。基本的な営業時間は午前11時~午後8時だが、2月18日のみ試験的に深夜配送も実施する予定。参加店舗のうち、ダイエー 月島店と松屋 勝どき店の2店舗が24時間営業で、それらの店舗において深夜帯での稼働率を検証する。

 宅配システムには、エニキャリの注文・宅配プラットフォームを使用し、ENEOSはデリロの保有・補完・運用、注文・宅配プラットフォームの運営を担う。

利用者95%が「引き続き利用したい」と回答

 すでに2月1~3日の3日間の実証実験結果はでており、注文数は96件だった。弁当を中心とした食材・日用品の注文が多く、チェーン店ではなく地元商店の注文が半数近くにのぼった。

 利用者からは「ロボットに会えた」「非接触で受け取れた」という点が評価され、ほかにも「人間による配達では配達員に当たりはずれがあるが、ロボットは品質が安定している。また、雨天時においては人間に頼むのは申し訳ないという気持ちが生じていたが、ロボットだと悪天候でも心理的に頼みやすい」という回答もあった。

ロボット利用方法

 また、利用者のうち95%は「引き続き利用したい」と回答。取り扱いを希望する店舗にはベーカリー、ドラッグストアなどが多く挙がった。

 一方、課題としては「マンションの下まで取りに行くのが面倒だった」という意見があった。この回答を受け、エニキャリ業務推進本部の境潤也氏は「今後はエレベーター会社と連携することで、部屋の玄関先まで届けられるような対応ができるようになるとさらにスケールすると思う」と考えを示した。

ロボット

国内約1万3000カ所あるSSをロボットの充電・運用拠点として活用

 今回の事業を行う背景について、ENEOS未来事業推進部 事業推進3グループの片山裕太氏は「コロナ禍の影響でECサイトによる宅配が増加し、ラストワンマイルデリバリー市場の需要が急拡大している」ことに触れ、「物流クライシスとなっている物流業界を持続可能なものにするために、何か価値提供ができないかと考えた」と語る。

 ここで「どうしてENEOSが自動宅配ロボット事業?」と考える読者が多いと思うが、片山氏の所属するのは未来事業推進部。19年4月に発足した部署で、「2040年に柱となる事業を創出すること」をミッションに掲げている。本実証実験もその取り組みの一つという位置付けだ。

ロボットサービスステーションを拠点に自動走行ロボットの輸送インフラを構築(出所:プレスリリース)

 それでは、ENEOSはこの事業で何を目指しているのか。片山氏は「全国にある当社のサービスステーション(SS)を、ロボットの充電・運用・メンテナンス拠点として活用し、自動走行ロボットの輸送インフラを構築すること」だという。

 将来的には、国内約1万3000カ所ある同社のSSを活用し、自動宅配ロボットだけでなくドローンや自転車などを配備。商品・距離・時間に応じた最適な配送手段を活用し、新たなラストワンマイル配送の拠点にすることを目指す。

ロボット国内約1万3000カ所ある同社のSSを活用(画像提供:ゲッティイメージズ)

 ビジネスモデルについて片山氏は、「お客さまのニーズに合わせて最適なサービスを提供できるロボットデリバリーソリューションを構築したい」と展望を語る。

 具体的なサービスとして、参加したい店舗の注文サイトへの出店、すでにデリバリーを行っており宅配ロボットを導入したい店舗には、デリバリーインフラの提供などを考えている。

 また、片山氏は「ディベロッパーが特定エリアでロボットを活用したいというニーズがあると聞いている。そういった場合は、ロボット、顧客UI、配送アルゴリズムをOEMという形で提供することも考えている」と話す。これらを収益源にして新たな事業を創出したい考えだ。

 「今後全国展開し、誰が、いつ、何を買ったか、店舗にどんな在庫があるかなどのデータが蓄積できれば、そういったデータを活用した新たなビジネスも可能になっていくのでは」と片山氏。

 一方、片山氏は今後の課題として挙げるのが「法規制とビジネス面」だ。

課題は法規制とビジネス面

 「自動宅配ロボットの法制度は、これから整備されていくような状況。公道を縦横無尽に走り回るまでにはかなりのハードルがある。そのため、実証実験を通して実績を積み上げていき、規制改革を訴えていきたい。法規制が緩和されるまでは、走行可能なエリアやサービスにフォーカスして進めていく」(片山氏)。

 加えて、ZMPロボライフ事業部の池田慈氏は「法規制がたとえ緩和できて自動宅配ロボットが公道を走れるようになったとしても、その光景を住民が受け入れられるのかという課題がある。そうした社会受容性を高めていく取り組みは、ロボットメーカーとしてもやっていきたい」と話した。

ロボット公道を走るデリロ

 ビジネス面について片山氏は、「ロボットが一般的な普及価格になっていないので、稼働率を高めながら、さまざまなサービスを1台で賄えるようなサービス設計を見つけていく必要がある。実証実験では配送料のみで運営するが、実際にプラットフォームビジネスとして行っていく段階では、店舗側から手数料をいただくと思う」と話す。

 また、中山間地域に住む高齢者のなかには、近くに店舗が存在せず、交通手段もないことから買い物難民になっている人が数多く存在する。宅配サービスはそうした課題を解決する一助になることも期待されている。

 片山氏は「買い物難民を救う面では、本事業も有意義なサービスになると思う。しかし、住人が少ないので稼働率は非常に少ないことが予測される。今回のモデルをそのまま適用しても、ビジネスモデルをうまく構築できないのではないか。例えば、高齢者の見守り機能といった別の付加価値をつけて展開する必要がある」と言及した。

ロボット商品を積み込む様子

 同実証実験は2月28日まで実施する予定。実証期間中に検証した稼働率(注文数)を参考に、事業化フェーズに移行するかどうかを今年度中に判断。定常サービスへの移行は次年度を予定している。

 世界中で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが加速し、電気自動車需要の拡大が続いている。全国1万3000カ所のネットワークを活用し、「脱石油」に向け新たな事業を展開できるか。石油元売り大手ENEOSの今後の動きに注目だ。

著者プロフィール

太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)

 

1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。

その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。

2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329

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