米アマゾン・ドット・コムが展開するスーパーマーケット業態「Amazon Fresh」。その解釈については既にこの連載でも触れたが、実際の店頭や体験はどのようなものだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で、筆者らは現地に視察には行けていない。だが、ニューヨーク在住で顧客時間(大阪市)のメンバーでもある田原美穂が、実際の店舗体験をリポートしてくれた。そこから見えてきたのは、「店舗形態やシステム」の進化によって、OMOで提供する3つの価値だけではなかった。真の衝撃は、プライベートブランド(PB)を中心とした商品展開にあった。

米アマゾン・ドット・コムの新型スーパーマーケット「Amazon Fresh」を視察した感覚値だが、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazonのプライベートブランド(PB)が占める。緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付くことが分かる
米アマゾン・ドット・コムの新型スーパーマーケット「Amazon Fresh」を視察した感覚値だが、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazonのプライベートブランド(PB)が占める。緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付くことが分かる

 Amazon Freshのリアル店舗は2020年8月から展開を開始し、21年12月29日時点では米国の東海岸、西海岸、およびイリノイ州などの特定の地域で全米23店舗、および海外で営業している。今回の視察では、21年5月にオープンしたバージニア州にある郊外型店舗と、同7月にオープンしたワシントンD.C.にある都市型店舗の2店舗を訪れた。

 郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置しており、面積は約2787平米の、いわゆるロードサイドモールの大型店形式を取っている。同モール内にはファストフード店から小児科まで、幅広い業態が入居し、ファミリーがメインの顧客層だと推測できる。実際に訪れた21年11月中旬の平日午前は、年配の来店客が中心で人はまばらだった。

2021年5月にオープンしたヴァージニア州にある郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置している。面積は約2787平米で、いわゆるロードサイドモールの大型店だ
21年5月にオープンしたバージニア州にある郊外型店舗は、ワシントンD.C.の中心部から電車とバスで約1時間の場所に位置している。面積は約2787平米で、いわゆるロードサイドモールの大型店だ

店内を埋め尽くすAmazon PBの実態

 Amazon Freshは商品自動認識やスマートフォンとの連携で、リアルタイムにお薦め商品をリコメンデーションしてくれるスマートレジカートなどテクノロジーが注目を集めがちだが、店舗に入って、まず目に付くのは店自体の広さだ。

入口正面にスマートフォンと同期して、買い物を便利にする「スマートレジカート」が設置されている
入口正面にスマートフォンと同期して、買い物を便利にする「スマートレジカート」が設置されている
入店後すぐの左手一面には生鮮食品がずらりと陳列されている。テクノロジー以上に店自体の広さが目に付く
入店後すぐの左手一面には生鮮食品がずらりと陳列されている。テクノロジー以上に店自体の広さが目に付く

 商品構成にも驚きがある。同店では米アマゾン・ドット・コムが買収した米大手スーパーマーケット「Whole Foods Market」、ナショナルブランド(NB)、Amazon PBが棚に並んでいることはさまざまなメディアでも記述されている。だが、実際に店舗の棚を観察してみると、驚くことにAmazon PBがかなり高い割合を占めていることに気付く。特に、家計支出の高い割合を占める食品については、肉や魚などの加工されていない生鮮食品で7~8割をAmazon FreshのPBが占めるといってよいほどである。冒頭の写真でも分かる通り、緑色のAmazon Freshパッケージが非常に多く目に付いた。

 視察前には、Whole Foodsブランドで展開できていない商品をAmazon PBで補っているのではないか、と推測していたが、その期待は見事に裏切られた。アマゾンはWhole Foodsと類似商品を開発し、同じ陳列棚で、より低価格のPBを横並びで展開し始めている。次の写真はドレッシングの陳列棚だが、Whole Foodsブランド「365」の隣にAmazon PBの「Happy Belly」が並び、その下にNBの「Kraft」などが展開されている。価格は、365の「Organic Ranchドレッシング」が3ドル75セント、Kraftが1ドル84セント、そしてHappy Bellyの「Ranchドレッシング」は最安値の1ドル48セントで販売されていた。

ドレッシングのコーナーではAmazon PBの「Happy Belly」の商品が最安値で販売されていた
ドレッシングのコーナーではAmazon PBの「Happy Belly」の商品が最安値で販売されていた

 ただし、Amazon PBのすべてが低価格戦略を取っているわけではない。PBのブランド数は、すべて合わせると20年の時点で110以上あるといわれているが、Amazon Freshのリアル店舗でも下記の10種類を確認できた。

アマゾン、棚を埋め尽くす驚異のPB 米店舗Amazon Fresh体験ルポ:日経クロストレンド (nikkei.com)