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2011-03-28 23:35:00

外食産業の動向
食生活の国際化 ‐ 外国レストランの客層二極化

2011年1月
分野:食品・農林水産物

中国の経済成長に伴い、中国人の食生活は多様化し、外食やグルメ志向が高収入者や若者を中心に増えている。各国料理のレストランが北京で次々と開業し、外食産業は一層バラエティ豊かになっている。国際的大都市にふさわしい食生活が、今北京で味わえるようになりつつある。

外食産業の国際化が進む北京

北京で開業された外国レストランに関する公式の統計はないが、中国随一の口コミウェブサイトである「大衆点評ネット他のサイトへ」の情報を利用して、大まかな状況を把握することができる。

表1:北京で開業された外国料理レストラン
 料理のジャンル店舗数 料理のジャンル店舗数
 西洋料理(合計)1,4987韓国料理910
1洋食7508日本料理865
2ピザ4369タイ料理84
3イタリア料理14910ラテン焼肉41
4フランス料理7711ベトナム料理32
5ステーキ5012中東料理26
6ロシア料理3613インド料理23
ファストフード2,795   

出所:「大衆点評ネット」の検索結果(2011年1月14日付)。
※ 太字項目は西洋料理に当たる。

表1に整理したように、北京で開業している外国料理レストランは少なくとも4,000店舗以上ある。なかでも、西洋料理が約1,500店と最も多い。ただし、西洋料理の中では、本格的なイタリア料理、フランス料理よりも、一般的な洋食レストランが750店と圧倒的に多い。その中には、ホテルのカフェバーなどの高級店もあれば、「Sizzler」、「T.G.I. Friday's」などの中所得者層向けの店、さらに庶民向けのチェーン店もある。ほかに西洋風のピザ店も、街の随所に見られる。今や、中国人はかなり西洋風の味付けに馴染んできていることがうかがえる。

その次に人気がある外国料理は、韓国料理、日本料理である。北京在住の韓国人は10万人(※1)と非常に多いこと、また、韓国料理の香ばしい味付けが中国人によく合っていることなどにから、韓国料理は北京に浸透している。一方、日本料理店は日本人駐在員や家族によく利用されていると同時に、中国の高所得層や若者にも利用されている。
※1, 「長期滞在の外国人が50万人弱で、違法滞在は管理の課題」正義ネット(2011年1月10日)

その他、東南アジア料理やインド料理もそれぞれ数十カ所のレストランがある。ただし、利用者は外国人が多い。中国人の中には、東南アジア、インド料理などのエスニック料理はまだ浸透していない。

総じて見ると、北京で外食の国際化が進んでいるが、しかし外国人向けか中国人向けかによって、外国レストランは二極化しており、それぞれ異なる客層ターゲットを持っている。

ファストフードなどのチェーン店の進出

1987年に「Kentucky Fried Chicken」北京1号店が開業してから、その後1990年に「Pizza Hut」、1992年に「McDonald's」が続いて開業した。早い時期に北京に進出したこの3つのチェーン店は、今でも最も人気がある洋風ファストフードのチェーン店である。その後、「T.G.I. Friday's」(1995年)、「Subway」(1995年)、「Grandma's Kitchen」(1999年)、近年は「Sizzler」(2005年)、「Burger King」(2009年)なども開店し、世界的に有名なチェーン店も多数北京に進出した(表2)。大多数の店は顧客の入り具合がよく、食事の時間帯に行列ができる人気ぶりである。

表2:北京のファストフードなどの外国料理チェーン店
ジャンルチェーン店名称ブランド国店舗数平均消費
(元/1人)
利用者と利用ケース
ファスト
フード
Kentucky Fried Chickenアメリカ25126
(325円)
10~20代が主要客層。デート、食事、待ち合わせ、休憩に使われる。
McDonald'sアメリカ11624
(300円)
Subwayアメリカ8523
(288円)
20~30代が主要客層。デート、食事、待ち合わせ、休憩に使われる。
Burger Kingアメリカ829
(363円)
若い男性が主要客層。食事、待ち合わせ、休憩に使われる。
ピザPizza Hutアメリカ7166
(825円)
20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事に使われる。
Big Pizzaイタリア3844
(550円)
20~30代が主要客層。デート、友人会食、食事、休憩に使われる。
Papa John'sアメリカ1862
(775円)
The Pizza Companyタイ1552
(650円)
20~30代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事、休憩に使われる。
Mr. Pizzaアメリカ1066
(825円)
20~40代が主要客層。デート、友人会食、食事に使われる。
洋食Jacket Potatoesイギリス716
(200円)
20~30代が主要客層。デート、待ち合わせ、食事、休憩に使われる。
Sizzlerアメリカ659
(738円)
20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、食事に使われる。
Grandma's Kitchenアメリカ580
(1,000円)
20~30代が主要客層。デート、友人会食に使われる。
T.G.I. Friday'sアメリカ4128
(1,600円)
20~40代が主要客層。デート、家族会食、友人会食、ビジネス会食に使われる。
CAFE FLATWHITEニュージーランド484
(1,050円)
20~30代が主要客層。デート、友人会食に使われる。

出所:「大衆点評ネット」の情報およびヒアリングした結果をもとに作成。
※ 為替レートは、1元=12.5円とする。

その成功要因は、第一に安心感である。外国料理においては、どの店がよいか、どの料理を注文するか判断できない人にとって、どこでも見かけるチェーン店には、実力のある店で信頼できる、期待できる料理が食べられるというブランド効果が働く。

第二に値段の手頃さである。特典セットや期間限定商品などを加えると、中華料理より少し高いが、気軽に利用できる程度である。

第三に、家族やカップル、一人でも利用しやすい環境。外国料理チェーン店は内装がきれいで、どの消費者層も気楽に利用できる。

第四に、味を中国人に合わせて改良し、新しいメニューを次々と出すことである。例えば「Kentucky Fried Chicken」では朝食メニューにおかゆを出したり、中国人が主食を欠かせない食習慣に合わせてさまざまな味付けのチキンをサンドなどにして出したりしている。日本の「Kentucky Fried Chicken」にないメニューでは、スパイシーチキンサンド、ニューオーリンズチキンサンドなどがある。また、「Pizza Hut」では、ピザに中国風のハムを入れたり、また中国人に馴染み深い米料理のドリアを取り入れ、味も焼き肉や貝柱海鮮など中国人に人気のある味でアレンジしたりしている。これらは皆、中国人に人気のあるメニューである。

ただし、中国人への洋食の浸透はまだ主に若い世代に限られており、中華料理以外の外国料理に対する態度は世代間で格差が大きい。40代半ば以上の世代では、食べ慣れていない味に対して拒む心理が強く働き、新しいものを楽しむ傾向はほとんどない。一方、1980年代以降生まれた若い世代は小さい時からファストフードの味に慣れており、経済的に許される限り、新しい味を試してみたい、または楽しみたいという気持ちが強い。

ファストフードなどのチェーン店の進出で、中国人は洋風の味に慣れつつあり、若い世代の成長に伴い、今後、日本人のようにさらに西洋料理を楽しめるようになっていくと思われる。

高級西洋料理は長期滞在の外国人向け

北京にはどれほどの外国人がいるか、公式な統計発表がないが、ある記事では合法的な長期滞在者は約20万人(※2)と推計されている。日本人1万人と韓国人10万人を除いても、米国、ヨーロッパ、アフリカから来ている外国人は10万人ほどいると思われる。彼らはイタリア料理、フランス料理などの高級な西洋料理やタイ料理、ベトナム料理の主な客層である。店内に入ると、半分以上は外国人の顧客である。大使館や外資企業が北京市内の東側にあることもあり、西洋料理の立地場所も国貿、三里屯、三元橋などの東エリアや北東エリアに群がっている(図1)。
※2, 前掲の※1と同

こうした外国人向けのレストランは、店内のインテリアにイタリアやスペイン、アメリカ風のデザインを取り入れ、外国を再現したかのような雰囲気で、外国人に親しみを感じさせる。また、外国人シェフがいるレストランが多く、本場の味をそのまま北京で提供している。メニューは外国人の好みに合わせて、厳選された食材やワインを現地から空輸するという本格的料理店も少なくない。ワインやアルコールを多数揃える店も多く、夜はバーとしても利用できる。さらに、外国人向けのレストランが集中する食堂街(例えば東エリアの「幸運街」)では、夜はイルミネーションを加えて、時には通り一体が華やかに装飾される。

外国人向けレストランの価格は日本国内並みで、平均消費金額は120~180元(約1,500~2,250円)。例えば、ボリュームのある海鮮サラダは60~70元(約750~875円)。一般の中国人にとっては高い金額である。

外国人向けレストランは宣伝として、無料広告誌「Cityweekend」(英語)、「Concierge」(日本語)などに記事や広告などを掲載するところが多い。これらの無料広告誌による宣伝は、ピーアール効果が高い。口コミも重要な情報源で、北京にいる多くの外国人は、食・住に関して特定の場所に固まっている。

今後、中国の富裕層の子ども世代の成長や海外留学経験者の帰国増加に伴い、高級西洋料理を利用する中国人も増えていくと思われる。

図1:北京の西洋料理店の立地分布

*引用掲載アドレス
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/foods/trends/1101005.html