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全員参加マネジメント戦略[2] |
前回は、「松下幸之助の経営哲学」を紹介したが、近年では「稲盛和夫の経営哲学」を紹介しよう。この「哲学」の中心は、「全員参加マネジメント戦略」であり、今日の「亰セラ」を創りあげた「原理原則」でもある。この「原理原則」は、稲盛和夫が「日本航空」の再生を短期間に行った大きな「全員参加マネジメント戦略」の賜物なのである。
(3)稲盛和夫の経営哲学
現代の日本の「経営者」で「リーダー的経営者」である稲盛和夫の著書「京セラフィロソフィー」で「経営のこころ」として、次のように説明しているが、「京セラでは一人ひとりが経営者」として位置づけ、「全員参加マネジメント戦略」の「経営哲学」として称賛されている。
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1.心をベースとして経営する
京セラは資金も信用も実績もない小さな町工場から出発しました。頼れるものはなけなしの技術と28人の信じ合える仲間だけでした。会社の発展のために一人ひとりが精一杯努力する、経営者も命をかけてみんなの信頼にこたえる、働く仲間にそのような心を信じ、私利私欲のためではない、社員のみんなが本当にこの会社で働いて良かったと思う、すばらしい会社でありたいと考えてやってきたのが 京セラの経営です。 人の心はうつろいやすいものと言われますが、また同時にこれほど強固なものもないのです。その強い心のつながりをベースにしてきたからこそ、今日までの京セラの発展があるのです。
2.原理原則にしたがう
京セラでは創業の当初から、すべてのことを原理原則にしたがって判断してきました。会社の経営というものは、筋の通った、道理にあう、世間一般の道徳に反しないものでなければうまくいかず、長続きしないはずです。われわれは、いわゆる経営の常識というものに頼ることはしません。「たいていの会社ではこうだから」という常識に頼って安易な判断をしてはなりません。 組織にしても、財務にしても、利益の配分にしても、本来どうあるべきなのか、もの の本質に基づいて判断をしていれば、外国においても、また、いまだかって遭遇したことのない新しい経済状況にあっても、判断を誤ることはありません。
3.大家族主義で経営する
私たちは、人の喜びを自分の喜びとして感じ、苦楽を共にできる家族のような信頼関係を大切にしてきました。これが京セラの社員どうしのつながりの原点といえます。この家族のような関係は、お互いに感謝しあうという気持ち、お互いを想いやるという気持ちとなって、これが信じあえる仲間をつくり、仕事をしていく基盤となりました。 家族のような関係ですから、仲間が仕事で困っているときには、理屈抜きで助けあえますし、プライベートなことでも親身になって話しあえます。人の心をベースとした経営は、とりもなおさず家族のような関係を大切にする経営でもあるのです。
4.実力主義に徹する
組織を運営していく上で最も重要なことは、それぞれの組織の長に本当に力のある人がついているかどうかということです。本当に力のある人とは、職務遂行の能力とともに、人間として尊敬され、信頼され、みんなのために自分の力を発揮しようとする人です。こうした人が組織の長として場や機会を与えられ、その力を十分に発揮できるような組織風土でなければなりません。 こうした実力主義によって組織の運営が行なわなければ、その組織は強化され、ひいてはみんなのためになっていきます。京セラでは年功や経歴といったものではなく、その人がもっている真の実力がすべてを測る基準となっているのです。
5.パートナーシップを重視する
京セラでは創業以来、心の通じあえる、信頼できる仲間づくりを目指し、これをベースに仕事をしてきました。したがって社員どうしは、「経営者」と「スタッフ」という縦の関係ではなく、一つの目的に向かって行動を共にし、自らの夢を実現していく同志の関係、つまりパートナーシップ(partnership:協力関係)という横の関係が基本となっているのです。 一般にありがちな権力や権威に基づく上下関係ではなく、志を同じくした仲間が心を一つにして会社を運営してきたことにより今日の発展があるのです。これはパートナーとしてお互いを理解しあい、信頼しあえる人間同士の結びつきとなったからこそ可能であったのです。
6.全員参加で経営する
京セラでは、アメーバ(amoeba:柔軟な)組織を経営の単位としています。各アメーバは自主独立で経営されており、そこでは誰もが自分の意見を言い、経営を考え、それに参画することができます。 一握りの人だけで経営が行なわれるのではなく、全員が参加するというところにその真髄があるのです。この経営への参加を通じて一人ひとりの自己実現が図られ、全員の力が一つの方向にそろったときに集団として目標達成へとつながっていきます。 全員参加の精神は、私たちが日頃のひらかれた人間関係や仲間意識、家族意識をつちかう場として、仕事と同じように大切にしてきた会社行事やコンパなどにも受けつがれています。
◎すべてのスタッフに経営への参加を求める
◎スタッフ一人ひとりが「有意議」となることが大切
◎京セラでは、すべての催しに「全員参加」を鉄則とした
◎スタッフと経営者の考え方のベースが同じになれば労使紛争は起きない
7.ベクトルを合わせる
人間にはそれぞれさまざまな考え方があります。もし社員一人ひとりがバラバラな考え方に従って行動したらどうなるでしょうか。それぞれの人の方向「ベクトル(vector:方向と勢い)」がそろわなければ力は分散してしまい、会社全体としての力とはなりません。 このことは、野球やサッカーなどの団体競技を見ればよくわかります。全員が勝利に向かって心を一つにしているチームと、各人が「個人タイトル」という目標にしか向いていないチームとでは、力の差は歴然としています。全員の力が同じ方向に結集したとき、何倍もの力となって驚くような成果を生み出します。1プラス1が5にも10にもなるのです。
◎ベクトルが合うまでとことんスタッフと話し込む
8.独創性を重んじる
京セラは、創業の時から独創性を重んじ、人の模倣ではなく、独自の技術で勝負してきました。他者ができないといったものを喜んで受注し、全員が必至の努力でこれをつくり上げ、結果として独自の技術を次々に確立・蓄積してきたのです。 大河内記念生産特賞や科学技術庁長官賞を受賞し、京セラが大きく飛躍するきっかけとなった「マルチレイヤーパッケージ(multi layer pacage:高い目標をかかげ困難な状況から逃げる事無く真っ正面から取り組み素晴らしい成果を上げること)の開発は、このことを実証しています。何としてもやり遂げなければという強い使命感をもち、毎日毎日創意工夫を重ねていく、その一歩一歩の積み重ねが、やがてすばらしい創造へとつながっていくのです。
◎「約束」を「現実」にしていく過程で、独創性は生まれた
◎毎日の小さな「創意工夫」の積み重ねが、偉大な技術開発へとつながっていく
◎自分自身で考え、自分自身の足で歩むこと
◎「やれもしないことをやる」という習い性が、第二電電を誕生させた
9.ガラス張りで経営する
京セラでは、信頼関係をベースとして経営が行なわれています。そこでは、経理面をはじめ、すべてのことがオープンになっており、何ら疑いをさしはさむ余地のないシステムが構築されています。 その一つの例として、「時間当り採算制度」では全部門の経営成績が全社員に公開されています。自分たちのアメーバの利益がいくらで、その内容はどうなのかが誰にでも容易に理解できるようになっています。 一方、私たち一人ひとりも同じように心をひらき、オープンに仕事をすることを求められています。このように社内がガラス張りであることによって、私たちは全力で仕事に取り組むことができるのです。
◎公明正大であることが経営者の迫力を生む
◎「経営者」の犠牲的精神が社会的な正義を守っている
10.高い目標をもつ
創業時、京セラは間借りの社屋がスタートし、「スタッフ」が百人に満たない頃から、「京セラは世界的視野に立って世界の京セラへ前進する」と言ってきました。 ちっぽけな会社でありながら世界に目を向けるということは、高く大きい目標をもつということと同じです。高い目標を設定する人には大きな成功が得られ、低い目標しかもたない人にはそれなりの結果しか得られません。 自ら大きな目標を設定すれば、そこに向かってエネルギーを集中させることができ、それが成功のカギとなるのです。明るく大きな夢や目標を描いてこそ、想像もつかないような偉大なことが成し遂げられるのです。
◎目標は、京都の「原町一」そして「世界一」へ
◎高い目標と、一歩一歩の積み重ねから未来は開かれる
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(4)逆ピラミットの組織化
多くの企業の「組織」は、「ピラミッド型」であるが、「カリスマ(Charisma:大衆の強い支持を得る非凡な能力)」性が高い「トップ」であろうと、あるいは「ワンマン(one man:独裁者)」であろうと、「トップ」一人では、企業を動かせるはずはない。
最近、「人を重視」する傾向が高くなり、「逆ピラミッド型」組織が横行しているが、形だけで成功していない企業が多い。つまり、「魂」が入っていないための形骸化である。重要なことは、「逆ピラミッド型」の「組織」の最上位は、「お客様」であり、「お客様発」の思想を「トップ」みずから実践し、「組織」を構成する「スタッフ」ばかりでなく、関係する企業にも徹底させなければならない。
(5)全員参加マネジメント戦略化のポイント
「企業マネジメント能力」を高めるためには、多くの企業では「企業能力」のテクニックを向上させることに終始しているが、これでは絶対に「企業マネジメント能力」は高めてはいない。
「企業マネジメント能力」を高める最善の道は、「全員参加マネジメント戦略」を徹底させなければならない。そのためには、「卓越したリーダーシップ」と「優れたツー・ウエイ・コミュニケーション」が不可欠である。さらに、「全員参加マネジメント戦略」を発揮するには、「実践知」→「形式知」→「暗黙知」の連結化である。
「全員参加マネジメント戦略」のポイントは、店舗販売に例えるなら、最前線の「スタッフ」には、「ルール」としての「マニュアル」は必要である。「マニュアル」というのは最低限厳守するための「ルール」であって、「おもてなし社会を実現」するためには、「各スタッフ」の「おもてなしの心」の「アップスケール」がなければならない。
つまり、「各スタッフ」の「個性化」が不可欠であり、「お客様」が次の利用機会には、担当した「スタッフ」の指名があるほどの「おもてなしレベル」である。かくして、ここに「現場力」の「エンパワーメント・マネジメント戦略」を発揮によって、「全員参加マネジメント戦略」が可能になり、「企業マネジメント能力」が高まるのである。
「全員参加マネジメント戦略」の「カナメ」は、「全員カリスマのマネジメント戦略」である。このためには、「全スタッフ」に「実践知」を組み込むことである。「実践知」は、元々日本企業の「DNA」であるので、「実践知」を復活させることが不可欠である。
「実践知」というのは「即興の判断力」である。つまり、「ミクロ(micro:微少)」の現実に直面したときに、「マクロ(macro:巨大)」の対極と結びつけ、適時に最前の判断を俊敏に行うことである。
「即興の判断力」には、「論理」や「分析」よりも、「直観的な察知力」や「エンパワーメント・マネジメント戦略力」が不可欠である。「全員参加マネジメント戦略」には、「実践知」ができたら、「形式化」による「文章化」である。「形式知」が形成されたら、「暗黙知」として、「システム化」をしていかなければならない。
