業務用、一般消費者向けに乳製品を製造・販売する中沢乳業(東京都大田区)は、シンガポールを足がかりに東南アジア市場への本格参入を目指している。生クリームをはじめとする乳製品を日本から輸出。現地のホテルやレストランなど業務用に的を絞り、経済成長を背景に各国で伸びる高級洋菓子の製造に欠かせない生クリームの需要などを取り込みたい考えだ。【Nixon Tan】
中沢乳業は昨年12月にシンガポールへの輸出を始めた。現地の代理店を通じて生クリームとバターを高級ホテルやレストラン、ベーカリーに販売している。中沢乳業の広域事業部アジア課の上村究・部長代理は、「シンガポールの有名ホテルから、北海道産原乳を使用した生クリームをシンガポールでも使いたいという要望があった」と参入の理由を語った。
シンガポールでは日本産乳製品の需要が伸びつつある。日本の財務省の統計によると、日本からシンガポールへの加工していないミルク・クリームの輸出額は2015年度の約3,800万円から、25年度は約4億4,000万円へと約12倍に拡大した。
需要拡大を背景に、中沢乳業は海外向けに開発した賞味期限の長い生クリームもシンガポールで販売する予定だ。
中沢乳業は1868年創業の老舗乳業メーカーで、プロのパティシエの間では生クリームに定評がある。泡立ちの良さ、安定した品質、素材を引き立てる味わいを強みとする。
今後はシンガポールを足がかりに東南アジア諸国への展開を見据える。シンガポールは年間1,700万人近い外国人が訪れる観光国で、国際的な会議も頻繁に開かれる。上村氏は、「アジアでは、成功を目指すシェフはシンガポールで修行し、力をつけてから他地域へと活躍の場を広げる傾向がある」と話し、シンガポールでの販売が周辺市場へのアピールにつながると期待する。
東南アジアへの本格参入の第一歩として、7月にはシンガポールで開催された飲食・外食産業向け展示会「SIGEPアジア2026」に出展するとともに、同展示会で行われた「ジェラート・ワールドカップ・アジア予選」のテクニカルスポンサーを務めた。現地のシェフや代理店との接点を増やし、製品の認知度向上を図った。
東南アジア市場への参入に当たっては、過去の海外展開で得た経験を生かしたいと考えている。中沢乳業は13年に台湾との取引を通じて海外販売を開始した。台湾や香港で10年以上の販売実績を持つ。
台湾は4カ月間の保存が可能なロングライフのクリーム、香港はフレッシュクリームを主力製品としている。ロングライフのクリームは船便、フレッシュ製品は航空便での輸送だ。
なかでも台湾では、現地の高級洋菓子市場が急拡大する前に参入したことで、消費者の需要拡大に沿って現地のベーカリーに後れを取ることなく成長できたという。東南アジアでも、シンガポールから各国の需要を見ながら参入の機をうかがう。タイでは、新製品のロングライフ純生クリームの取引が近く始まる予定だという。中沢乳、東南アに本格参入へ - NNA ASIA・シンガポール・食品
海外市場では共通して、販売する製品カテゴリーを絞る方針だ。上村氏は「まずは各国の市場シェアの2~3%を獲得したい。1つの製品カテゴリーを磨き上げ、プロのパティシエと長期的な関係を築くことを目指す」と話した。
