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全員参加マネジメント戦略[3] |
「全員参加マネジメント戦略」の理論形成としては、野中郁次郎・勝見明共著「全員経営」があるが、「全員参加マネジメント戦略」を企業に導入するには、「トップ」はもちろんのこと「経営陣」や「全スタッフ」は精読し、さらに熟読することをお奨めする。
[2]全員参加マネジメント戦略論の基本
「自律分散(環境変化に対するスピードや柔軟性を高める為に、一人ひとりが自立性をもって活動し、命令がなくても俊敏に向けて対応していく生命体のような組織)イノベーション企業成功」の本質として、野中郁次郎・勝見明共著「全員経営」で、日本企業が取り戻すべきは衆知を集めた「全員経営」であるとして、「基本的な考え方」を次のように説明している。
※実戦知:社会的な価値に向けて、現場において適切に判断する力
※形式知:文章や計算式、図表などで説明できる知識のこと
※暗黙知:経験や勘、直感力などにもとづく知識
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(1)全員に「実践知」を組み込む 「全員参加マネジメント戦略」の「カナメ」は、「全員カリスマのマネジメント」である。この意味するところは、「中央集権型」から「自律分散型」への180度の転換である。 このためには、「全スタッフ」一人ひとりに「実践知」を組み込むことである。「実践知」というのは、元々日本企業の「DNA」であるので、「実践知」を復活させていくことが「全員マネジメント」である。
(2)「実践知」とは「即興の判断力」 企業の中で、常に高いパフォーマンスを達成しているその部署で、部員たちが発揮する最も特徴的な能力は、「即興の判断力」である。現場で個別具体的のミクロの現実に直面したとき、その都度、背後にある文脈や関係性を読み、マクロの対極と結びつけ、適時に最前の判断を俊敏に行う。それが典型的な「実践知」である。 「即興の判断力」を身につけるには、出発点として、「何がよいことなのか」という「共通善(common good:個人や一部の集団とっての善ではなく政治社会全体の共通の善のこと)」の「価値基準」を持たなければならない。 「何がよいことなのか」という「価値基準」をベースにしながら、その都度、状況に応じて最前の判断をする。もし、判断が結果的に間違っていたら、即、フィードバックして修正し、次の「目標」に向けてフィードフォワードしていく。このサイクルを速めながら一歩一歩、自分たちの目指す「よいこと」に近づいていく。 この「即興の判断力」には、論理や分析よりも「直観的な察知力」が大きく働く。日本の場合、その「直観」の背後には特有の「真善美」の意識がある。企業や組織において、社員やナバーたちが、「何がよいことなのか」という「共通善」を「価値基準」として持つと、それを目指そうとする思いが共有され、企業であっても、利益至上主義ではない「共同体(コミュニティ)」的な組織が生まれる。 その「共同体」的な「組織風土」のもとで、一人ひとりが「即興の判断力」を発揮し、「機動力」が生まれるところに、日本企業の強みがある。
(3)凡事の非凡化 「凡事(あたりまえのこと)」の積み重ねが「非凡(特にすぐれていること)」を生むので、「実践知」を高めるには、「凡事の非凡化」も必要な条件である。「ハイパフォーマンス」の企業でも、直面する多くの困難や混乱を乗り越えるため、その都度、「イノベティーブ」な試みに挑戦してきた。 ただ、「イノベーション」は、「さあ、これからやろう」と思い立って起こせるものではない。ましてや、論理分析的に「イノベーション」の方法が導かれない。論理分析からは非連続な発想は生まれない。 では、「イノベーション」は、いかにして生まれるのか。日々の仕事という「凡事」の連続が蓄積していくなかで、あるとき、日々の仕事という「凡事」が「非凡化」する。それが「イノベーション」にほかならない。 直面する個別具体の現実は決して固定的ではなく、流動的で常に変化をする。ただ、日々の「凡事」を積み重ねていなければ、変化への気づきは得られない。変化が一回性の出来事であっても、「凡事」の蓄積があるからこそ、その背後にある文脈や関係性を見抜き、普遍的な意味合いを読み取って、新しい価値を生み出していくことができる。 「凡事」の積み重ねが「非凡」を生むプロセスは、日本独自の自己革新の方法論である「守・破・離」のプロセスと重なる。「守」は日々の基本(凡事)を模範どおりに遂行する。「破」は基本から抜け出し、試行錯誤して自分らしさを発見していく。そして、「離」は基本(凡事)から脱し、まったく新しい独自のものを創造し、生み出す(非凡化)。 「守・破・離」は、「武道」や「茶道」などの伝統から継承された概念であるが、日本では企業活動においても、数々の「イノベーション」が人々の「守・破・離」の「自己革新」が生まれている。 これまでにない「イノベーション」により、高い「パフォーマンス」を実現し、競争力を高めていくためには、一人ひとりが「守・破・離」で「凡事」を「非凡化」していくことが求められる。
※守:師匠に言われたこと、師匠の流儀、基本の型を守る ※破:師匠の流儀を極めた後に、工夫して自分が良いと思った型を作り既存の型を破る ※璃:独自の境地の中で、一流を目指す。師匠の型・自分自身が作り出した型を踏まえたオリジナルに心化し、型から離れる
(4)ミドルマネジャーの 「ミドルアップダウン・マネジメント」 いちばん難しい問題は、現場で「実践知」を発揮しながら、新しい価値や価値を持った概念を生み出し、そこから、一つのビジネスモデルをつくり出して、収益へと結びつけることである。 実際、「パフォーマンス」の高い企業でも、第一線のフロントにいる人間が優秀でも一人だけの力では限界がある。それでも高い成果を出すことができるのは、チームを組むメンバーたちや社内外でであった人たちと、対話を通じて互いの「知」と「知」を結びつけ、ともに実践していく「場」をつくることができるからである。 互いに対話し、ともに実践する「場」においては、それぞれが現実のなかで直観的に見抜いた文脈や意味合いを、対話を通じて概念化し、一つの物語として相手に伝え、共有していくことも求められる。 「パフォーマンス」の高い企業の場合、対話と実践の「場」をつくり、そこから新しい概念を紡ぎ出し、その概念から物語をつくり出して、一つのビジネスモデルにつくり出していくうえで、重要な役割を演じるのが、ミドルマネジャーやミドルリーダーたちである。彼らは単にコントロールする管理職ではなく、「プロデューサー」としての力を発揮することが求められる。 「プロデューサー」というと、ある特定事業のリーダーをイメージするが、そうではない。社内や組織内において、クローズになりがちなサイロ(縦割り組織)を超え、より大きな関係性に目を向けて、内外にオープンに人脈やネットワークを形成し、「知」を総動員して新しいビジネスモデルを生み出していくことのできる人材、それが「プロデューサー」である。 「プロデューサー」的なミドルがネットワークのハブ的な役割を担い、そこにかかわる人々の「知」と「知」を結びつけていくことが、衆知を集めた「全員マネジメント」の実現には何より必要である。 企業や組織の内外において、ミドルマネジャーやミドルリーダーがタテとヨコの「知」の流が交差する中心点に立ちネトップとフロントを巻き込み、「知識創造プロセス」を促進する。これは「ミドルアップダウン」ともいうべき「マネジメント」のあり方である。 トップは「ビジョン」や「方向性」を示すが、フロントはどうしても日常的な現実世界に目を奪われ,視野や考え方が硬直しがちである。 そこで、ミドルがトップの目指す「ビジョン」と現実世界の間の矛盾を統合できるような「コンセプト」をつくり出し「伝道師」の役割を演じて、新しいビジネスモデルを紡ぎ出していく。この「ミドルアップダウン・マネジメント」も日本企業の得意技であることを、再確認すべきである。
(5)目標を実現する力 社内外のネットワークを駆使し、人々の「知」と「知」を結びつけ、これまでにない「価値」を生み出し、新しいビジネス・モデルをつくり出そうとするとき、多くの困難がともなう。それでも「パフォーマンスの高い企業」が成果をあげることができるのは、ミドルマネジャーたちの実現力がすぐれていたからである。 周囲から反対されても、市場のデータと反していても、巨費の投資が必要であっても、「世のため人のため」という「価値観」で挑戦すべきであると判断し、自分たちの生み出した新しい概念を実現していく、それには、政治的判断力や政治力も必要である。 これは、いわゆる狭義の政治の意味ではない。次元の違いにかかわらず、政治の本来の目的は「未来創造」にある。「未来創造」という、よい目的のためには、あらゆる手段を駆使し、実現する、それが本来の政治的判断力であり、政治力である。
(6)実践知を「組織化」する 「実践知」を育成し、伝承し、組織に埋め込む。「実践知」を組織的な「実践知」へと発展させていく、これも「実践知」に求められる能力の一つである。
(7)実践知の6つの能力 「実践知」のありようをさまざまな角度からとらえてみると、「実践知」にすぐれた人材には、次のような共通する特性がある。 1.「何がよいことなのか」という判断基準を持ち、「よい目的」をつくる能力を持つ 2.ありのままの現実のなかで本質を直観する能力を持つ 3.「場」をタイムリーにつくる能力を持つ 4.直観した本質を概念化し、物語として伝える能力を持つ 5.あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力を持つ 6.「実践知」を埋め込み「組織化」する能力を持つ この6つの能力を合せると、「賢(phronesis:フロシネス)」と呼ぶ「リーダーシップ」のあり方が浮かび上がる。 「演繹的」な代表格は、マイケル・ポーターの「競争戦略論」であり、「ファイブ・フォース分析」によって市場を分析する科学的な考え方である。この結果「自分たちが何をやりたいのか」という主体的な当事者意識が欠如して、多くの日本企業がこの問題を抱えるようになった。 これと対照的なのは、一人ひとりの「実践知」を重視する考え方である。お客様のいる現場に行き、共体験し、対話する。そこには、生き生きした生活世界があり、主体と客体の対立を超えた主客一体の世界が展開される。 このとき大切なのは「競争の度合いは○○%」といった分析データではなく、マーケットを内側から見たときに、現実が自分にどう見える化、主観的な意味を問うことである。 主観的世界の入り口は、自らの思いである。自分は何のために生き、何のために仕事を、やりたいかという思いから始まり、主客一体の世界で「何がよいことなのか」という「気き」を得ていく。 あるいは、最初は単純な好奇心からでも、主観的世界に入り込んでいくうちに自分は何をやりたいのかという思いが次第に湧き上がりね「よい目的」が浮かび上がる。そうした主観的な世界で、ありのままの現実を直観し、直感した本質を概念化し、その概念を物語化し、あらゆる手段を駆使して実現し、一つのビジネスモデルをつくり出す。これが「実践知」である。 「分析マヒ症候群(分析することばかり意識を集中し、現場の声を無視し、使い道のない結果を生むこと)」から抜け出すためには、日本人が持っていた「実践知」を、もう一度取り戻す必要がある。つまり、「演繹的な方法」から「帰納的な方法」に転換することが「実践知」の実現になる。 ※演繹法:「ルール」と「法則」に基づく物事に当てはめて結果を導き出す方法。 ※帰納法:複数の事実や事例から共通点を導き出し、一般論となる結論にたどり着く方法。
(8)全員経営を実践する企業の特徴は何か ① 1人ひとりが実践知を発揮し、知識創造の「SECIモデル」のサイクルを回す 人間が生み出す「知」の在り方は、個人的で主観的な「暗黙知」と社会的な客観的な「形式知」の二つの側面に分けることができる。「暗黙知」は、言葉や文章で表現することが難しい主観的な「知」で、個人が経験に基づいて「暗黙」のうちに持つものである。思いや信念、身体に染め込んだ熟練、ひらめきもやもやなどは典型的な「暗黙知」である。「形式知」とは、言葉や文章で費用減できる明示的で客観的な「知」のことである。 新たな「知識創造」の源泉は、「暗黙知」にある。「知識」とは、個人主体的な信念や糸を真理に向かって社会的に正当化していくダイナミック・プロセス() である。日本は特に「暗黙知」を重視する「精神風土」がある。 人間が行う最も知的な営みである「知識創造」には、「暗黙知」と「形式知」が互いに作用し合い、相互変換し、それがスパイラル(spiral:らせん)に循環していく画で行われる。この「知」の循環運動が組織やチームで起きる場合、「知識創造論」では、次のような4つのモードをたどると考えられている。 1.まず、個人はまわりの世界との相互作用のなかで「暗黙知」を組織的に「共創」する。これを「共同化(Socialization)」と呼ぶ。 2.次に、「暗黙知」を「形式知」に変換する「表出化(Externalization)」。 3.続いて、「形式知」を組織内外の他の「形式知」と組み合わせ、一つの体系としての新たな「形式知」をつくり出す「連結化(Combination)」。 4.こうして体系化された「形式知」は行動や実践を通して、新たな「暗黙知」としてメンバー全員に吸収され、体化されていく。つまり、「形式知」からまた「暗黙知」へと変換される。「内面化(Internalization)」と呼ばれる。 この知識変換の4つのモードを、「共同化(S)」「表出化(E)」「連結化(C)」「内面化(I)」のそれぞれの頭文字をとって「SECIモデル」と呼ぶ。この一連のプロセスが回ることで、「知識」は「個人、集団、組織」の間を循環し、より豊かに増幅されていく。と同時に、「知識」が新しい「価値」として具現化されていく。これが組織的な「知識創造」の「基本原理」である。 「全員参加マネジメント戦略論」では、一人ひとりが「実践知」を発揮し、組織やチームで高いパフォーマンスをあげていくが、それを「知識創造」の切り口から見ると、必ず「SECIモデル」が回っている。それが、「全員マネジメント」の第一要件である。
【SECIモデル】
(組織的知識創造の一般原理) 1.共同化(S) 身体・五感を駆使、直接経験を通じた「暗黙知」の獲得、共創、創出(共感) 2.表出化(E) 対話・思索・喩えによる概念・図像の創造(概念化) 3.連結化(C) 「形式知」の組み合わせによる理論モデルの体系化(物語化) 4.内面化(I) 「形式知」を行動を通じて具現化、新たな「暗黙知」としての理解・会得(実践)
(知識創造のコンテンツ) 1.共同化(S):共感 ・社内外の活動による現実直観 ・感情移入・気付・予知の蓄積 ・「暗黙知」の伝授、移転 2.表出化(E):概念 ・「暗黙知」の言語化 ・「暗黙知」から「形式知」への変換、翻訳 ・言語からの概念・仮説の創造 3.連結化(C):分析 ・概念間の関係生成トプロトタイピング・モデル・物語化 ・「形式知」の伝達・普及・共有 ・「形式知」の編集・操作化、ICT化 4.内面化(I):実践 ・実験・仮説検証を通じた「形式知」の体化 ・目標・製菓の持続的追及と自己超越
(暗黙知と形式知のスパイラル) 「暗黙知」と「形式知」は相互に作用し、スパイラルに回りながら新しい「知」を生みだしていく [暗黙知] ・言葉や文章で費用減するのが難しい「暗黙知」で主観的な「知」 ・経験や五感から得られる直接的知識 ・思いや信念、身体に染み込んだ熟練やノウハウ、勘どころ ・個人的/情緒的・情念的・審美的 ・特定の人間・場所・対象により特定・限定されることが多い ・身体体験をともなう共同作業により共有、発展増殖が可能 [形式知] ・言葉や文章で明示できる明示的で客観的な「知」 ・特定の文脈から区切られた体系的知識 ・理論、問題解決法、マニュアル、データベースなど ・社会的・組織的/理性的・論理的 ・情報システムによる補完などにより場所の移動・転移、再利用可能 ・言詩的媒介を通じて共有、編集が可能
② 全体と部分が相似形の「フラクタル組織」が生まれる 「フラクタル」とは、「複雑系科学」の擁護で、全体と部分が相似形で形成される状態を表している。全体を細分化していっても最初と同じ形が現れると言う「自己相似性」を持つ。逆にいえば、部分を合わせて全体をつくると、部分と同じ形になる。日本語では、「入れ子構造」がこれに近い概念である。 「複雑系科学」とは、相互に関連する複数の要因が複雑に絡み合って、全体として何らかの性格や振る舞いを見せるものについて、さまざまな現代科学的手法を用いて研究する学問である。 一般的に企業は、ピラミッド型の階層組織の構造をとる。そこではもっぱら、ヒエラルキー(階層構造)に沿った指揮命令系統があり、職務が専門分化されて、分業が行なわれ、規則や手続きが重視されるといった官僚制(ビューロクラシー)の運営が行なわれる。「官僚制階層組織」においては、部分はあくまでも全体の一部分にすぎない。 これに対して、トップからフロントまで、一人ひとりが「経営者意識」を持ち、「実践知」を発揮すると、どのレイヤー(layer:階層、重ね合わせ)、どのレベルにおいても、自己完結的な判断能力と実行力が発揮されるようになる。一人ひとりが「実践知」を発揮すると、企業やそれを構成する組織やチームは「自己組織化」していく。これも「全員参加マネジメント」の要件の一つである。
③ 組織が「自己組織化」し、創造性と効率性を両立させる 「フラクタル組織は、「全員参加マネジメント」を自づ現できる企業の組織の構造を表す概念であるが、一方、企業の個々の構成員の動き方にスポットをあてると、「自己組織化」と呼ばれる姿が見えてくる。「自律組織化(Self-organization)」とは、やはり「複雑系科学」の概念で、自然界のある動きが、自らを組織だて、自律的に秩序を生み出す現象のことをいう。 幾何学的な構造を持つ決勝の生成、動物の体表や鳥の羽の模様、DNAの二重螺旋のように、分子が自発的に集まって構造と機能を生み出す現象など、自然界や生物界のいたるところに見られる。 これは、人間の組織にもあてはめて考えることができる。組織やチームのメンバーが全体の目的や目標を達成するよう、自分の役割と価値を理解し、自らを動機づけながら、自律的に動く。 その結果、メンバーの力の総和より、高度な「知」が創発されるように組織のあり方、それが自己組織化である。そこでは「創造性」と「効率性」の両方を高めることができる。一人ひとりが、「実践知」を発揮すると、企業やそれを構成する組織やチームは「自己組織化」していく。これも、「全員マネジメント」の要件の一つである。
④ 変化への即応性が高い「知的機動力」を発揮する 「自己組織化」した組織やチームについて、その「戦い方」を見ると、「気動線」と呼ばれるあり方が見えてくる。戦争における戦い方には、消耗戦と機動戦がある。消耗戦は、兵器の破壊力を最大限に活かし敵の攻撃力の重心を攻撃し、物理的な壊滅状態に追い込もうとする戦法である。必要なのは圧倒的な軍事力であり、兵站力(軍事装備や物資、兵力の補給、輸送、管理運用)である。 一方、機動戦は迅速な意思決定と兵力の移動・集中により、敵に対して物理的、心理的に優位に立ち、戦闘の主導権を握る戦闘方法である。機動戦では、指揮系統は中央より現場の状況判断と行動が優先される。機動戦を効果的に遂行するには、そうした自律分散的なネットワーク型組織が必要になる。 企業も、変かの激しい市場でビジネスや事業を展開するには、機動戦によって、価値の源泉となる知識を高速回転で創造し、戦略から戦術レベルまで、柔軟な構想力、迅速な判断力、俊敏な行動力を駆使する「知的機動力」が重要になっている。 自己組織化した組織やチームのメンバーたちは、最前線において、変化への即応性の高い知的機動力を発揮する。「全員マネジメント」で高いパフォーマンスを実現できる企業は、そのような知的機動力マネジメントを展開しているのと考えることができる。
⑤ 有事に強い「ハイパーテキスト型組織」がつくられる 「全員参加マネジメント」を実現できている企業も、多くの場合、ピラミッド型の官僚制階層組織によって構成される。管理用制階層組織は平時のルーティンの業務において、効率性を追求する。 組織にはもう一つ、基本的なタイプとして「タスクフォース」という形態がある。有事の課題に対応するため、縦割りの階層組織のさまざまな部署からメンバーを集めてプロジェクトチームを組み、創造性を追求する。 ところが、プロジェクトチームでありがちなのは、メンバーが出身部署の利害代表になってしまい、プロジェクトがまとまりを欠いたまま、成果を出せなってしまうケースである。これに対し、プロジェクトにおいて「全員参加マネジメント」を実現できている企業は、プロジェクトチームが自己完結的な判断能力と実行力を発揮して、自己組織化し、知的機動力を駆使して、「イノベーション」を起こしたり、高い「パフォーマンス」をあげていく。
⑥ 組織が「共同体=コミュニティ」化し、社員の自己実現が可能になる 「全員参加マネジメント戦略論」について、組織を構成する社員同士、メンバー同士のつながり方という視点から見てみよう。衆知を集める「全員参加マネジメント」で、社員一人ひとりが自律分散リーダー人材として発揮する「実践知」の真髄である即興的な判断力は、出発点として、何が良いことなのか」という共通善(コモングッド)の価値基準を持つことがベースになる。 誰もが共通善の価値基準を共有することで、そこに「場」が形成される。それは、利益を追求する企業であっても、職業的な倫理観を共有する共同体的な性格を持つようになる。「全員参加マネジメント戦略論」や「衆知マネジメント」を追求すれば、志を同じくする「コミュニティ型マネジメント」に行き着く。これも大きな要件である。かつての日本企業は、共同体的な組織であったことに強みがあった。 |
