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2022-08-04 11:58:00

Z世代の次のトレンド「ネオ・フードコート」とは 食もタイパ?

 読了時間: 6分
13
  • Sucle編集部

無機質カフェに続き、Z世代が集う場所があるという。それは何と、フードコート。Z世代を中心に累計フォロワー数90万人を超える女性向けFinT(東京・目黒)のメディア「Sucle(シュクレ)」。運営する編集部内では、毎週Instagram上の新トレンドをリポートとしてまとめている。本連載はこのリポートの中から注目のトレンドを紹介していく。連載第3回の今回は、新機軸の複合業態「ネオ・フードコート」について。

Z世代の間で新機軸のフードコート人気が高まっているという。SucleのInstgramの投稿でも話題に。投稿は→https://www.instagram.com/p/CeiyT3MBkJt/
Z世代の間で新機軸のフードコート人気が高まっているという。SucleのInstgramの投稿でも話題に。投稿は→https://www.instagram.com/p/CeiyT3MBkJt/

 Z世代の間で新たに話題となっている「ネオ・フードコート」、みなさんご存じでしょうか?

 ショッピングセンターなどに併設されているこれまでのフードコートは、飲食店が横並びに屋台形式で出店されているのが定番の形でした。一方、ネオ・フードコートと呼ばれる施設は、多様な飲食店が複数出店されている点は同じなのですが、一風変わっているようです。今回は、Z世代がこぞって集まるネオ・フードコートについてご紹介します。

 Z世代から今注目を集めているネオ・フードコートの典型例が、東京・日本橋にある「COMMISSARY NIHONBASHI(カミサリー ニホンバシ)」です。中に入ってみると、まず目に付くのがポップなアメリカンテイストのカフェ。さらに進んでみると、その隣には洗練されたパステルブルーの壁紙でシンプルな英字のメニューが表記されている“無機質なカフェ”があります(無機質カフェについては、以下の参考記事に)。その他、ドーナツやタコス、ピザ、クラフトビールなど、多様なジャンルのショップが入っています。

2020年9月に東京・日本橋にオープンした「COMMISSARY NIHONBASHI」。海外風のおしゃれなフードコートとしてSNSでも話題に
2020年9月に東京・日本橋にオープンした「COMMISSARY NIHONBASHI」。海外風のおしゃれなフードコートとしてSNSでも話題に
▼参考記事Z世代注目の「無機質カフェ」って何? 意外な人気の理由

 従来、フードコートといえば、いわゆる街中にある飲食チェーン店が軒を連ねているのがスタンダードだったと思います。ですが、カミサリーは、個性的なカフェや多様なテイストの店舗が、米国の工場をイメージした大きな空間の中に集結しているのが特徴的です。

Z世代発 SNSトレンドリポート

まだある! テーマ性の高い「ネオ・フードコート」

 また、ネオ・フードコートの別の例として、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」も挙げられます。ここはその名の通り、韓国グルメに特化したフードコートです。中に入ると、ネオン調の看板やハングル文字が書かれた居酒屋が立ち並んでおり、いかにも韓国にいるような気分が味わえる空間になっています。ここではそれぞれの居酒屋の席に座りながらも、他の店舗の商品も注文ができるのです。

若者に人気の、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」
若者に人気の、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」

 他にも注目のネオ・フードコートがあります。

 東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をまるごと改修した驚きの業態。スパニッシュイタリアン、アジアン酒場、シャンパンと餃子のバルなど、多種多様な居酒屋が集結しています。

東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をリニューアル。世界観にどっぷり浸れる
東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をリニューアル。世界観にどっぷり浸れる

 もともと2017年に古民家部分がオープンしていましたが、22年に倉庫部分がオープンしてからさらに人気を博しています。1つの空間に個性的な飲食店が軒を連ね、非日常的な異空間がZ世代の心を捉えているのでしょう。

 こうしたネオ・フードコートの最大の特徴は、1つの空間に飲食店が並ぶ“フードコート”のくくり方が、カフェに特化していたり、韓国料理や居酒屋などに特化していたり、工場をイメージしていたり、テーマ性を持っているということです。また、一見すると、SNS映えする内装や食事ということも共通点のようにも思えますが、どうやら人気の理由はそれだけではないようです。

無機質カフェに続き、Z世代が集う場所があるという。それは何と、フードコート。Z世代を中心に累計フォロワー数90万人を超える女性向けFinT(東京・目黒)のメディア「Sucle(シュクレ)」。運営する編集部内では、毎週Instagram上の新トレンドをリポートとしてまとめている。本連載はこのリポートの中から注目のトレンドを紹介していく。連載第3回の今回は、新機軸の複合業態「ネオ・フードコート」について。

Z世代の間で新機軸のフードコート人気が高まっているという。SucleのInstgramの投稿でも話題に。投稿は→https://www.instagram.com/p/CeiyT3MBkJt/
Z世代の間で新機軸のフードコート人気が高まっているという。SucleのInstgramの投稿でも話題に。投稿は→https://www.instagram.com/p/CeiyT3MBkJt/

 Z世代の間で新たに話題となっている「ネオ・フードコート」、みなさんご存じでしょうか?

 ショッピングセンターなどに併設されているこれまでのフードコートは、飲食店が横並びに屋台形式で出店されているのが定番の形でした。一方、ネオ・フードコートと呼ばれる施設は、多様な飲食店が複数出店されている点は同じなのですが、一風変わっているようです。今回は、Z世代がこぞって集まるネオ・フードコートについてご紹介します。

 Z世代から今注目を集めているネオ・フードコートの典型例が、東京・日本橋にある「COMMISSARY NIHONBASHI(カミサリー ニホンバシ)」です。中に入ってみると、まず目に付くのがポップなアメリカンテイストのカフェ。さらに進んでみると、その隣には洗練されたパステルブルーの壁紙でシンプルな英字のメニューが表記されている“無機質なカフェ”があります(無機質カフェについては、以下の参考記事に)。その他、ドーナツやタコス、ピザ、クラフトビールなど、多様なジャンルのショップが入っています。

2020年9月に東京・日本橋にオープンした「COMMISSARY NIHONBASHI」。海外風のおしゃれなフードコートとしてSNSでも話題に
2020年9月に東京・日本橋にオープンした「COMMISSARY NIHONBASHI」。海外風のおしゃれなフードコートとしてSNSでも話題に

▼参考記事Z世代注目の「無機質カフェ」って何? 意外な人気の理由

 従来、フードコートといえば、いわゆる街中にある飲食チェーン店が軒を連ねているのがスタンダードだったと思います。ですが、カミサリーは、個性的なカフェや多様なテイストの店舗が、米国の工場をイメージした大きな空間の中に集結しているのが特徴的です。

Z世代発 SNSトレンドリポート

まだある! テーマ性の高い「ネオ・フードコート」

 また、ネオ・フードコートの別の例として、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」も挙げられます。ここはその名の通り、韓国グルメに特化したフードコートです。中に入ると、ネオン調の看板やハングル文字が書かれた居酒屋が立ち並んでおり、いかにも韓国にいるような気分が味わえる空間になっています。ここではそれぞれの居酒屋の席に座りながらも、他の店舗の商品も注文ができるのです。

若者に人気の、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」
若者に人気の、東京・新大久保にある「新大久保韓国横丁」

 他にも注目のネオ・フードコートがあります。

 東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をまるごと改修した驚きの業態。スパニッシュイタリアン、アジアン酒場、シャンパンと餃子のバルなど、多種多様な居酒屋が集結しています。

東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をリニューアル。世界観にどっぷり浸れる
東京・代々木にある「ほぼ新宿のれん街」は、古民家10棟と倉庫をリニューアル。世界観にどっぷり浸れる

 もともと2017年に古民家部分がオープンしていましたが、22年に倉庫部分がオープンしてからさらに人気を博しています。1つの空間に個性的な飲食店が軒を連ね、非日常的な異空間がZ世代の心を捉えているのでしょう。

 こうしたネオ・フードコートの最大の特徴は、1つの空間に飲食店が並ぶ“フードコート”のくくり方が、カフェに特化していたり、韓国料理や居酒屋などに特化していたり、工場をイメージしていたり、テーマ性を持っているということです。また、一見すると、SNS映えする内装や食事ということも共通点のようにも思えますが、どうやら人気の理由はそれだけではないようです。

なぜネオ・フードコートに集うのか。 鍵は世界観の中和

 ではなぜ今、Z世代がネオ・フードコートに集まるのか。それは彼ら・彼女らが“世界観”を大切にすることと関係していると考えられます。

 Z世代は、自分らしさを尊重し、多様性を大切にするとよくいわれます。またそれと同時に、自身のアイデンティティーを積極的に表に出す風潮もあります。そのことから、InstagramなどのSNS上では、自身の世界観を醸成することで自己表現を行う姿もよく見られます。

 友人同士だったとしても、もちろん異なる世界観を持っていることがあります。そんなとき、友人と一緒にカフェや居酒屋に行くと、店舗のコンセプトによってはそれぞれの世界観にちょっとした齟齬(そご)が起きる可能性があるのです。こうした世界観のぶつかり合いを避けるためにも、自身の世界観に合う選択肢が用意されているフードコート形式が最適なのだと思われます。

 先ほどご紹介したカミサリーを例にすると、ビビッドなアメリカンテイストのカフェと、淡色がベースのカフェが併設されています。アメカジを好みポップテイストが好きな人はアメリカンテイストのカフェ、淡色が好みの人はシンプルテイストのカフェと、それぞれの好みに応じて選択できるため、互いの世界観がぶつかり合うことなく、同じ空間を一緒に楽しむことができるのです。

カミサリーには、ポップなアメリカンテイストのカフェ(左)とシンプルなテイストのカフェ(右)が“同居”している
カミサリーには、ポップなアメリカンテイストのカフェ(左)とシンプルなテイストのカフェ(右)が“同居”している

 SNSの中でも、特にInstagramは画像を中心とするため、アカウント全体で世界観を表現しやすくなっています。それ故にZ世代にとってInstagramのアカウントは、いわゆる名刺代わりになるような自己表現のツールと捉えられています。そのため、投稿する店舗のテイストが自身の世界観にマッチしているかどうかがとても重要で、ブランディングの材料になっています。

タイムパフォーマンス(タイパ)の流れが「食」へも

 Z世代がネオ・フードコートへ注目するのには、もう一つ理由が考えられます。それはタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する価値観です。昨今、映像コンテンツの倍速視聴やネタバレ視聴など、Z世代の特徴としてタイパがキーワードとして挙げられていますが、食に対しても同様の傾向があるように感じます。

 一度に効率よく、いろんな食、そして店舗、雰囲気を楽しめるネオ・フードコートは、タイパを大事にする彼ら・彼女らにとって、とても“都合のいい空間”です。

 実際にSucle編集部のメンバーに話を聞くと、最近は友人と会う時間として丸1日というのはあまりなく、半日程度が多いといいます。コロナ禍を経て、自分の時間を大事にしたい人や、1日のうちにいろいろな友人に会いたい人など、時間の使い方も多様になっていると感じます。そんな中、短時間で満足感が得られる店舗、例えば無機質カフェのようなつくり込んだコンセプト性の高いカフェや、短時間で複数回れる空間が好まれるのも分かります。こういった背景から、今後もネオ・フードコートのように、多様な世界観を許容でき、かつ多様性を持った施設が増えてくると考えられます。

今週のZ世代編集部員「マストチェック」
編集部・西沢が注目!

 今週の気になるものは、22年7月8日からスタートした日本橋三井ホールで開催中の「Immersive Museum」です! 昨今、Z世代の間で美術館で鑑賞を楽しむ人は増えてきています。非日常感を味わえて、手ぶらで行って楽しむことができるのが人気の理由として考えられます。

 今回紹介するアート展「Immersive Museum」は、これまでの美術館での鑑賞よりも、絵画の中に没入できるのが大きな特徴です。モネやルノワールなどの印象派絵画を、単に映像化しただけでなく、スケールを大きくしたり音楽を加えたりすることで没入体験ができるようになっています。大きな絵画を全身で楽しむ姿がSNS映えするうえに、非日常感を味わうことができるため、Z世代も注目間違いなしです!

 さらに、美術館と併設されているカフェも注目ポイント。「Immersive Museum」からインスパイアされたオリジナルメニューを味わえます。暑い季節に大人気のかき氷は、絵画で使われている色彩に仕立てられているのが印象的。美術館を楽しんだ後、カフェで余韻を感じながらゆっくり過ごせそうです。
Sucle編集部の西沢さん
Sucle編集部の西沢さん

(写真提供/Sucle編集部)

Z世代の次のトレンド「ネオ・フードコート」とは 食もタイパ?:日経クロストレンド (nikkei.com)

 


2022-08-04 11:53:00

フランス人による日本の祭典「Japan Expo」 3年ぶり再開で活況

 読了時間: 8分
12
  • 永末 アコ

    ジャーナリスト

フランス人による日本のポップカルチャーと文化の祭典「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」が3年ぶりに開かれた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により2019年の7月以来、2年間、2会期が見送られ、多くのファンが待望した再開だ。場所は変わらずパリ郊外ヴィルパントの広大な見本市会場。動員数は19年は25万人を集めたが、22年も大盛況。正確な数字はまだ発表されていないが、最高クラスの動員数だったことは確かだとジャパンエキスポのプレスからメッセージが届いている。その証拠に2日目の7月15日には、展示面積24万6312平方メートルの広大な会場の収容人数に達してしまったそうだ。

19年より多いのではないかという人出だったジャパンエキスポ。パリ郊外の国際見本市会場で開催された
19年より多いのではないかという人出だったジャパンエキスポ。パリ郊外の国際見本市会場で開催された

 スタートは22年7月14日、パリでは花火も上がるパリ祭(フランス革命記念日)の祝日。既にフランスでは子供や学生たちが夏休みに入っているが、14日は木曜日で、フランスでは木曜日が祝日に当たると金曜も休みにし4日連休にする習慣があるため、仕事を持つ人々も今年は木曜日から日曜日まで丸々4日間ジャパンエキスポを楽しめた。

 オープン時間の午前9時ごろには、入り口に200人は下らないだろう人々が入場を待って並ぶ。コスプレ姿の人々、頭のてっぺんから足の爪先まで(仮面も被り)手作りの衣装をつけた人々、浴衣や法被を着た人々……が、30度を超す真夏日にもかかわらず会場にはあふれる。そして午後6時に閉館で会場を出た後も人々は駅へと続くコンコースや庭で、独自のコンサートを続けたり、芝生に座り込んで久しぶりに再会したファン同士でおしゃべりを続けたりする。彼らの中には、数年前からネットでコミュニティーを作り、ジャパンエキスポで年に1回リアルな再会を繰り返してきた若者たちも多く、新しいコスプレに身を包んでの3年ぶりの再会に話は尽きない。相変わらず英国、ベルギー、スペインなどの近隣国から来る人も多い。数年前から親子連れの姿も多く見られる。2世代にわたってのマンガやアニメファンが増えているのだ。

ジャパンエキスポはコスプレで来場する人も多い。片言の日本が話せ、ひらがなやカタカナが書ける参加者も多い。上の三人は各々違う都市から来ていて3年ぶりの再会を喜んでいた
ジャパンエキスポはコスプレで来場する人も多い

 「再開に当たって今までと違うこと、新しいことはしていません。今回はジャパンエキスポのルネサンス(復活)です」と語るのはジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「ただロゴを新しくしたのですよ」。以前は赤と黄で光り輝く太陽だったが、新しいロゴは富士山を真ん中に据え、フランス人がここ数年好んで使う言葉「ZEN(=静寂な心)」を感じさせるものになった。

 今年も相変わらず圧倒的な人気、いや例年以上だったのは、マンガ、アニメ関連、eスポーツのコーナーだ。「コロナ禍の中でアニメは非常に多くの人に観られ、今まではアニメに興味のなかった人たちをもファンにしました。外出することができず何もすることのない毎日、全世代が色々なアニメを楽しんだのです。マンガの売り上げも上がっています」とシルデ氏。ビデオゲームに至っては言わずもがなだろう。その影響が表れている。

盛り上がりを見せるeスポーツのコーナー
盛り上がりを見せるeスポーツのコーナー

 しかしジャパンエキスポの企画運営会社は、コロナ禍の中での2開催の見送りでとても厳しい状況にあった。「会社を保つために小さな出版社をつくったりもしました。Isan mangaという名で“遺産“からとりました。扱うのは手塚治虫、いがらしゆみこ、石ノ森章太郎、永井豪などです」。巨匠ばかりである。ただ「高い人気を保ち続けるポケモンやワンピースに比べたら、売り上げはなかなか厳しく大変でした」(シルデ氏)

 会場内では、おにぎり、カレー、唐揚げ、ギョーザ、たこ焼き、たい焼きなどの日本食スタンドもある。日本の3倍ほどの値段だが長い列ができる。おにぎりは日本人が握っているが、他の日本食スタンドは日本人が作っていなかったり、日本人がオーナーでなかったりするものも多い。それは特にこの世情だからというわけでもない。食べ物のみならずどこで作られたのかわからない“日本のものらしきもの”の売店も多い。その風景は日本というよりアジア。日本語とは少し違う日本語らしき文字の羅列もしばしば見られる。外国製の日本がここにはたくさん存在している。それは実際のところ日本での米国やフランスと同じだ。

ジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「この先の展開として、日本の生活様式に興味があります。狭い空間をうまく使うテクニックや、床下に空気が通る家の構造、暑い日に玄関先に水を撒くという風習など…」
ジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「この先の展開として、日本の生活様式に興味があります。狭い空間をうまく使うテクニックや、床下に空気が通る家の構造、暑い日に玄関先に水を撒くという風習など…」

フランス人による日本のポップカルチャーと文化の祭典「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」が3年ぶりに開かれた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により2019年の7月以来、2年間、2会期が見送られ、多くのファンが待望した再開だ。場所は変わらずパリ郊外ヴィルパントの広大な見本市会場。動員数は19年は25万人を集めたが、22年も大盛況。正確な数字はまだ発表されていないが、最高クラスの動員数だったことは確かだとジャパンエキスポのプレスからメッセージが届いている。その証拠に2日目の7月15日には、展示面積24万6312平方メートルの広大な会場の収容人数に達してしまったそうだ。

19年より多いのではないかという人出だったジャパンエキスポ。パリ郊外の国際見本市会場で開催された
19年より多いのではないかという人出だったジャパンエキスポ。パリ郊外の国際見本市会場で開催された

 スタートは22年7月14日、パリでは花火も上がるパリ祭(フランス革命記念日)の祝日。既にフランスでは子供や学生たちが夏休みに入っているが、14日は木曜日で、フランスでは木曜日が祝日に当たると金曜も休みにし4日連休にする習慣があるため、仕事を持つ人々も今年は木曜日から日曜日まで丸々4日間ジャパンエキスポを楽しめた。

 オープン時間の午前9時ごろには、入り口に200人は下らないだろう人々が入場を待って並ぶ。コスプレ姿の人々、頭のてっぺんから足の爪先まで(仮面も被り)手作りの衣装をつけた人々、浴衣や法被を着た人々……が、30度を超す真夏日にもかかわらず会場にはあふれる。そして午後6時に閉館で会場を出た後も人々は駅へと続くコンコースや庭で、独自のコンサートを続けたり、芝生に座り込んで久しぶりに再会したファン同士でおしゃべりを続けたりする。彼らの中には、数年前からネットでコミュニティーを作り、ジャパンエキスポで年に1回リアルな再会を繰り返してきた若者たちも多く、新しいコスプレに身を包んでの3年ぶりの再会に話は尽きない。相変わらず英国、ベルギー、スペインなどの近隣国から来る人も多い。数年前から親子連れの姿も多く見られる。2世代にわたってのマンガやアニメファンが増えているのだ。

ジャパンエキスポはコスプレで来場する人も多い。片言の日本が話せ、ひらがなやカタカナが書ける参加者も多い。上の三人は各々違う都市から来ていて3年ぶりの再会を喜んでいた
ジャパンエキスポはコスプレで来場する人も多い

 「再開に当たって今までと違うこと、新しいことはしていません。今回はジャパンエキスポのルネサンス(復活)です」と語るのはジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「ただロゴを新しくしたのですよ」。以前は赤と黄で光り輝く太陽だったが、新しいロゴは富士山を真ん中に据え、フランス人がここ数年好んで使う言葉「ZEN(=静寂な心)」を感じさせるものになった。

 今年も相変わらず圧倒的な人気、いや例年以上だったのは、マンガ、アニメ関連、eスポーツのコーナーだ。「コロナ禍の中でアニメは非常に多くの人に観られ、今まではアニメに興味のなかった人たちをもファンにしました。外出することができず何もすることのない毎日、全世代が色々なアニメを楽しんだのです。マンガの売り上げも上がっています」とシルデ氏。ビデオゲームに至っては言わずもがなだろう。その影響が表れている。

盛り上がりを見せるeスポーツのコーナー
盛り上がりを見せるeスポーツのコーナー

 しかしジャパンエキスポの企画運営会社は、コロナ禍の中での2開催の見送りでとても厳しい状況にあった。「会社を保つために小さな出版社をつくったりもしました。Isan mangaという名で“遺産“からとりました。扱うのは手塚治虫、いがらしゆみこ、石ノ森章太郎、永井豪などです」。巨匠ばかりである。ただ「高い人気を保ち続けるポケモンやワンピースに比べたら、売り上げはなかなか厳しく大変でした」(シルデ氏)

 会場内では、おにぎり、カレー、唐揚げ、ギョーザ、たこ焼き、たい焼きなどの日本食スタンドもある。日本の3倍ほどの値段だが長い列ができる。おにぎりは日本人が握っているが、他の日本食スタンドは日本人が作っていなかったり、日本人がオーナーでなかったりするものも多い。それは特にこの世情だからというわけでもない。食べ物のみならずどこで作られたのかわからない“日本のものらしきもの”の売店も多い。その風景は日本というよりアジア。日本語とは少し違う日本語らしき文字の羅列もしばしば見られる。外国製の日本がここにはたくさん存在している。それは実際のところ日本での米国やフランスと同じだ。

ジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「この先の展開として、日本の生活様式に興味があります。狭い空間をうまく使うテクニックや、床下に空気が通る家の構造、暑い日に玄関先に水を撒くという風習など…」
ジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「この先の展開として、日本の生活様式に興味があります。狭い空間をうまく使うテクニックや、床下に空気が通る家の構造、暑い日に玄関先に水を撒くという風習など…」

思った以上に日本からの出展も

 日本の伝統文化を紹介する広いコーナーでは、柔道、剣道、相撲などの武道、格闘技(おのおの体験レッスンができる十分なスペースがある)、カルタや囲碁、将棋などのアナログゲーム、折り紙や習字、太鼓や指圧等が、どれも無料体験できる。昔から伝わる日本の心が宿るものが多いので、リスペクトもあってか他にはない静けさが漂う。ここでも日本人がオーナーでなかったり、教える者が日本人ではなかったりするものが多い。日本人の筆者としてはフランス人が日本の伝統を真剣に人々に伝える姿に有り難さのような感動がある。フランス人にとっては同国民を介した方が、知らない文化への第一歩を踏みだしやすいようだ。

日本政府観光局のスタンド。日本はフランス人にとって訪れたい国のナンバー5に毎年入っている
日本政府観光局のスタンド。日本はフランス人にとって訪れたい国のナンバー5に毎年入っている
人気があるAKIHABARA系のコンテンツ
人気があるAHIHABARA系のコンテンツ

 「フランス人を通して日本を紹介することに違和感はありません。ジャパンエキスポは日本文化への入り口。ここでまず日本の文化、物がどんなものかに触れてもらえばいいのです。ここで興味を抱いて、さらに自ら日本への知識を深めて行くという方がたくさんいます。もちろん日本人のグループのブース、日本の観光コーナーは人気ですし、日本の方も参加してほしい。皆さん日本人とのコンタクトも望んでいることは事実です。フランス人の行きたい国トップ5に日本は今でも入っているのですよ」(シルデ氏)

 今年は新型コロナ、ウクライナ危機、円安、航空料金の高騰など厳しい状況にありながら、思った以上に日本からの出展もあったという。「WabiSabi(日本企業が日本からの出展を取りまとめて運営するパビリオン)には工芸品のスタンドが80も並びました(19年は約100組)。日本人にとってジャパンエキスポは経済的な視点のものではなく、日仏文化交流の場なのだと感激しています」(シルデ氏)。

日本からの出展も少なくなかった「WabiSabi」のエリア
日本からの出展も少なくなかった「WabiSabi」のエリア
日本の伝統をフランス人が手ほどきする姿もよくみられる。教える人たちの、日本の知識の深さには驚かされる
日本の伝統をフランス人が手ほどきする姿もよくみられる。教える人たちの、日本の知識の深さには驚かされる
お酒を販売するブースも人気だ
お酒を販売するブースも人気だ

 またジャパンエキスポの中でも“日本からやって来た日本”が熱狂をもって迎えられるのが、コンサートやダンスのパフォーマンスだ。ジャパンエキスポはあくまでも見本市なので、人気のアーティストでも、ゲストアーティストと銘打っていても、基本的に持ち出しでこの“日本の見本市”に応募し参加する。先の通りの厳しい時世でもやって来て、猛暑の中、フランスの日本ファンに向けて今回パフォーマンスをして盛り上がりを見せた、阿波踊りの「寶船(たからぶね)」と「藝武(げいぶ)」のサカクラカツミ氏に話を聞いてみた。

 「寶船」は一般社団法人のプロの阿波踊りエンターテインメント集団である。国内でも活動するが、12年に法人化する際アウトバウンドを視野に入れ、14年以降、外国で開催される世界最大級の日本の祭典 ジャパンエキスポに参加。今年で7度目になる。

 プロデューサーでありパフォーマーの1人、米澤渉氏は言う。「阿波踊りを文化として国外に伝えたいと参加し始めました。今では踊りを通して皆さんとコミュニケーションしているという感じがします。お客さんたちが私たちを覚えていてくれて、時間を合わせて見に来てくれる。今回も“おかえり!”と叫んでくれました。皆さん日本に対する知識が深く、私たちより知っていることもあって驚かされます。単発ではなく何度も参加することに意義がある気がします」。6人のグループが大きな楽器を抱えてやって来るため出費はかさむが「ここに来る前に(スペインの)バルセロナで公演したり今後もフランスの他都市を巡ったりと公演を重ねて、領事館や文化会館などからの補助金をもらってやりくりしています」。来年ももちろん参加したいと目を輝かせる。

寶船は今年7度目の出演。この前後に欧州5都市でもパフォーマンスを行う
寶船は今年7度目の出演。この前後に欧州5都市でもパフォーマンスを行う

 サカクラ氏は、日本の武道の特異性、動きやリズムと共にある精神性を芸術にした「藝武」を創作したパフォーマー。世界40カ国以上でパフォーミングアートを行い、20カ国以上のテレビ番組に出演。国内でも19年ラグビーW杯日本大会のオープニングでソロパフォーマンスをし、自身による構成、演出、振り付け、主演の舞台「The Life of HOKUSAI」では本年度の内閣府主管のクールジャパンマッチングアワードを受賞。知るぞ知る世界の日本人アーティストだ。ジャパンエキスポは今回で3回目の参加だ。

 「今年再開されると聞き、初日のオープニングでパフォーマンスをさせてほしいとお願いしました。今回のパフォーマンスは日本の地鎮祭の中の四方祓い(しほうばらい)を新しい解釈で創った作品です。地鎮祭は1300年も前から家を建てるときに家内安全と疫病退散の願いを込め行われていて、いまだに近代的な超高層ビルを建てるときにも行われます。通常は出演の日時の希望は聞き入れられないのですが、世界が混沌としている今、このパフォーマンスは地鎮祭と同じく最初に行うべきものだとお話しすると、受け入れていただけたのです」とサカクラ氏。

パフォーマンスをするサカクラ氏。サカクラ氏は2016年TEDxTokyoにスピーカーとしても壇上し、日本のカッコ良さ、素晴らしさを日本人に伝えた
パフォーマンスをするサカクラ氏。サカクラ氏は2016年TEDxTokyoにスピーカーとしても壇上し、日本のカッコ良さ、素晴らしさを日本人に伝えた

 また新型コロナで厳しい状況の時に、国として“アートは大切なもの”とアーティストに寄り添う欧州に力づけられたことから、「国は違っても共感してもらえるものがあるはず」と奮起しての参加でもあった。「以前は自分を売り込むためのジャパンエキスポ参加でしたが、今回は勝手に使命を感じて参加しました」と笑う。「みな苦しい時だが心まで貧しくなってはいけない。そんなメッセージをパフォーマンスに込めた今回は、観客の反応、食いつき方が違いました。パフォーマンス後に質問はないかと聞くと“質問ではなく感動している”という言葉もありました」(サカクラ氏)

 ジャパンエキスポは今まで以上の盛り上がりを見せ、復活した。この祭典を作り出したことで25万の人々を幸せにしていると感じた取材だった。創始者のシルデ氏にそのことを伝えると「次の計画もある、けれど、“フランス人による欧州人のための日本の祭典”というコンセプトは変わらない」と言う。日本の何がフランス人に受けるかはフランス人だからこそわかるものなのだと。

(写真/永末アコ)

フランス人による日本の祭典「Japan Expo」 3年ぶり再開で活況:日経クロストレンド (nikkei.com)

 


2022-07-30 21:57:00

「仮想フードコート」運営の米キッチン・ユナイテッド、1億ドルの資金調達

ダイヤモンド・リテイルメディア デジタル推進室
仮想フードコート「キッチン・ユナイテッド・ミックス」
「キッチン・ユナイテッド・ミックス」の店名で、複数のレストランの料理をまとめて注文できる共同利用型のゴーストキッチンを展開している

 「仮想フードコート」を運営するスタートアップ企業の米キッチン・ユナイテッド(カリフォルニア州パサデナ)は7月25日、米食品スーパー最大手のクローガーやコンビニエンスストア「サークルK」の運営元であるカナダのクシュタールなどから、1億ドル(約137億円)の資金を調達したと発表した。

 キッチン・ユナイテッドは、複数のレストランが共同利用できるゴーストキッチン(テークアウトとデリバリー専用の厨房)を設置して、レストラン事業者をテナント誘致。消費者が複数のレストランの料理をまとめて注文できるアプリを提供している。家族や友人同士で複数のレストランの料理を注文し、テークアウトしたり、宅配してもらったりできるため、仮想フードコートと呼ばれる。同社は、この仮想フードコートのパイオニア企業だ。

 今回の資金調達は株式公開を控えたシリーズCラウンドに当たるもので、ショッピングセンター(SC)開発・運営のサイモン、「バーガーキング」などのファーストフードチェーンを運営するレストラン・ブランズ・インターナショナル、複数の投資ファンド、アメリカンフットボールの元スター選手であるペイトン・マニング氏なども出資した。

 新たに調達した1億ドルを加えて、キッチン・ユナイテッドの累計資金調達額は1億7500万ドルに達した。同社は、全米の20地域で約200のゴーストキッチンを運営しているが、調達した資金でゴーストキッチンと仮想フードコートの出店を増やしていく。

「仮想フードコート」運営の米キッチン・ユナイテッド、1億ドルの資金調達 | 小売・流通業界で働く人の情報サイト_ダイヤモンド・チェーンストアオンライン (diamond-rm.net)

 


2022-07-30 21:53:00

I cover quick-service, fast casual and pizza restaurants.

Getty Images

今や米国ではどのブランドもチキンサンドイッチをメニューに載せているが、次のメニューカテゴリー「戦争」の場はチキンナゲットかもしれない。

この商品は長い間McDonald’s(マクドナルド)やWendy’s(ウェンディーズ)、Chick-fil-A(チックフィレ)などのベストセラーだが、骨なしチキンの需要が高まり続け、チキン全体の需要も同様に伸びている中、チキン・チェーンの大手たちもナゲット市場のシェアを狙って戦っている。

最新の事例がKFC(ケンタッキーフライドチキン)だ。今週同社は、新しいケンタッキーフライドチキンナゲットをテストしていることを発表した。同社のナゲットは、100%ホワイトミートとブランドの特徴である11種類のハーブとスパイスで差別化をはかることになる。

「ナゲットが小さいパッケージに入っていることは、フレーバーも小さいという意味ではありません。オリジナル・フライドチキンのエキスパートとして、当社の伝統に沿ったフレーバーと材料を使ってナゲットを作ることにしました」と最高マーケティング責任者のニック・チャベスが声明で語った。

今回のテストは、KFCのチキンサンドイッチ導入の成功に続くものだ。同商品は順調に売れ行きを伸ばし、2019年末にPopeyes(ポパイズ・ルイジアナ・キッチン)がサンドイッチを発売して以来競争が激化する分野に自社ブランドを注入した。

ポパイズといえば、同社もサンドイッチのデビューに続きチキンナゲットを昨年発売した。Boston Market(ボストンマーケット)も昨年クリスピーBLTサンドイッチを新発売し、つい先週、ロティサリー・チキンナゲットをデビューさせた。

ポパイズやKFC、ボストンマーケットといったチキンチェーンがこれまでナゲットを売っていなかったことに驚くかもしれない。ライバルたちが大きな成功を収めていることを考えるとなおさらだ。

たとえばウェンディーズ)の場合、同社のスパイシー・チキンナゲットは大きな注目を集め(ツイッターでは200万のいいね!を集め同ブランドの「史上最多いいね!ツイート」を達成した)、発売以来既存店舗売上高を押し上げている。スパイシー・ナゲットは同チェーンの数十年来の看板メニューである伝統のナゲットから自然派生した商品といえる。
マクドナルドのチキン・マックナゲットは1980年以来販売されており、ビジネスインサイダーによると同チェーンの売上ランキング7位に入っている。

チックフィレイは、日曜休業にもかかわらず、1店舗平均800万ドル(約11億円)以上を売り上げており、同社のチックフィレイナゲットはこの圧倒的数字の主要な要因だ。この商品はどの地域でも人気がある。

KFCがこの可能性を利用しないわけがない。

これまでナゲットは、魅力的な主役になるメニュー項目になったことはないが、客を動かすパワーを持っていることは間違いない。ミレニアル世代を中心とする子を持つ忙しい消費者については特にそうだ。KFCは、「ブランドの若返り化」を試みていることで知られており、チキンナゲット拒否権の提案はそのひとつだ。

しかし、これが同社史上初の「ナゲット」(ファストフード評論家の定義による)だからといって、これまでKFCが骨なしチキン分野に足を踏み入れたことがない、という意味ではない。実際、昨年同チェーンは、テンダーなどの骨なしチキン製品の広告をサプライチェーンの調達難のために一時中断したが、ポップコーンチキンは長年人気の主要メニュー項目だ。同社は植物由来のビヨンドフライドチキンを初めて発売した会社でもあり、同製品はナゲットの形態で販売されている。

KFCはプレスリリースで、同社のナゲットはおやつでも出先で食べるのにもおつまみとしても楽しめると述べている。商品にはKFCソース、ハニーBBQ、クラシック・ランチまたはハニーマスタードのソースが付き、8個入り、12個入り、36個入りがある。価格は3.49ドル(約480円)から。

新しいナゲットは、当初ノースカロライナ州シャーロット周辺地域で期間限定で販売される。果たして今後他の市場にも展開していくのか、KFCの既存ナゲット製品のような強力商品になるのか、それは今後を見守るしかない。メニューの定位置を獲得するだけに人気が証明できれば、チキン分野の新たな興味深い競争は激化していくだろう。

2022-07-26 13:11:00

マックやKFCじゃない 米国で一番人気なのに日本人が知らない飲食店

11件のコメント

後藤 文俊

流通コンサルタント

米国で一番人気のファストフード店の店内。ここは、マクドナルドでもケンタッキーフライドチキンでもありません(写真:後藤文俊)
米国で一番人気のファストフード店の店内。ここは、マクドナルドでもケンタッキーフライドチキンでもありません(写真:後藤文俊)

 米国で一番人気のファストフード(FF)店はどこか?。

 仕事で頻繁に訪米する方でも、この質問に正解できる人は少ないでしょう。米国の流通事情に精通した専門家でさえ、「マクドナルド? ケンタッキーフライドチキン(KFC)? あるいは、イン&アウトバーガー(In-N-Out Burger)かな?」といった答えがせいぜい。また、「1店舗当たりの売上高ナンバーワンは、どこか?」と聞いても、正解は出てこないでしょう。

FF店1店舗当たり年間売上高、マクドナルドは5位

 実は、米国FF店の1店舗当たり年間売上高でナンバーワン、かつ顧客満足度でも第1位なのは、チキン・サンドイッチ・チェーンのチックフィレイ(Chick-fil-A)。米国47州とカナダに2700以上の店舗を展開しています。

 市場調査や消費者動向に関するデータ、統計を提供する世界最大級のプラットフォームである独スタティスタ(Statista)の調査(Leading quick service restaurant (QSR) chains in the United States in 2020, by sales per unit)によると、2020年のチックフィレイ1店舗当たりの年間売上高は、501万ドル(約6.8億円)。FF店で堂々の1位です。

 2位は600店を展開するレイジングケインズ(Raising Canes)で、年間売上高は385万ドル(約5.2億円、20年、以下同)。つまり1位チックフィレイの年間売上高は、2位より3割ほども大きいのです。ちなみに3位は、テキサス州を拠点に900店弱を展開するワッタバーガー(Whataburger)。そして、4位にやっと、グルメバーガーとして日本でも知られるようになったイン&アウトバーガーがランクインしています。同社は現在、米国7州に380店を展開し、年間売上高は306万ドル(約4.1億円)です。

 今回、改めてFF店の1店舗当たり年間売上高ランキングをじっくりと見たのですが、1~4位までは日本未上陸の企業ばかり。ようやく5位に飲食業界の巨人、マクドナルドが入っています(294万ドル、約4億円)。

もし日本で、「人気があって、売上高ナンバーワンのチキンのFF店はどこ?」と聞いたら、多くの人が「カーネルおじさん」や「ケンタ」の愛称で親しまれるKFCと答えるでしょう。しかし米国でKFCは(売り上げデータで見る限り)全く人気がありません。先のランキングで20位にも入っていないのです。

 ここまでなら、「へぇー、そうなんだ」と言うだけかもしれません。しかしチックフィレイが公開している「フランチャイズ開示資料(Franchise Disclosure Document)」には、業界に詳しい人でも驚くような記述がありました。

顧客満足度を最大化するために働く

 この資料は全部で424ページもあるのですが、そのノンブルで65ページ目に、チックフィレイの1店舗当たりのリアルな売上高が記載されていました。(モールなどに出店する小型店を除く)スタンドアローンの国内店(約1800カ所)1店舗当たり年間売上高の中間値(21年12月31時点)が、796万9510ドル(約10.8億円)。1店舗当たりの年間売上高の平均が814万2257ドル(約11億円)。また、「国内1800店の31%が該当する“優良店”においては、年間売上高が900万ドル(約12億円)を超えている」と記載されていたのです。

 1店舗当たり年間売上高が1億円を少し超えるくらいの日本のマクドナルドと比較すると、チックフィレイの11億円という金額は「驚異的」というほかありません。

 また、業績が良いだけでなく、米国に来た日本人の多くが驚くのは、同社が日曜日を定休日としていること。1946年創業のチックフィレイは創業者が敬虔(けいけん)なクリスチャンだったこともあり、1号店のオープン時から毎週日曜を休みにしています。米国でも日曜は“書き入れ時”ですが、チックフィレイでは「日曜日は教会に行くか、家族とゆっくり休んでもらいたい」という考えから定休日にしているのです。

チックフィレイはスタッフのサービスレベルが高く、顧客満足度も高い(写真:後藤文俊)
チックフィレイはスタッフのサービスレベルが高く、顧客満足度も高い(写真:後藤文俊)

 日曜にしっかりと休みを取れるため、平日にはよく働く(ハードワークする)ことができるのでしょう。同社が求めているのは、単に「一生懸命に働く」という、ややもすると独りよがりになりかねない働き方ではなく、「顧客満足度を最大化するために働く」ことなのです。

実際にチックフィレイは、ACSI(American Customer Satisfaction Index)が実施した「2021-2022米国顧客満足度指数」のFF部門で、8年連続となる1位を獲得。最も顧客を満足させている(=人気が高い)のですから、冒頭で紹介した、1店舗当たり年間売上高ランキングでトップなのも、納得できる結果でしょう。

(構成:安倍俊廣)

マックやKFCじゃない 米国で一番人気なのに日本人が知らない飲食店:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)