インフォメーション

2022-03-05 20:55:00

オイシックスCVC 収穫ロボットと代替シーフード開発2社に投資

CVCファンド「Future Food Fund」は、自動野菜収穫ロボットの開発・サービス提供を行うinaho(神奈川県鎌倉市、月刊事業構想2022年4月号参照)と、プラントベースの代替まぐろの開発を行っている米Impact Food社(米国カルフォルニア州)に新規投資を実行した。2022年3月1日に発表した。

「Future Food Fund」は、オイシックス・ラ・大地(月刊事業構想2019年9月号参照)が投資子会社Future Food Fundを通じて運営するCVCファンド。これまでにアグリテック、国産農産物の海外への販路開拓など、食分野の新たな価値創造に取り組む6社への出資と事業提携を行っている。今回の投資により、Future Food Fundの累計投資総額は約9億円、投資先は15社(内、海外投資先4社)となった。

inahoは、農業の高齢化や人手不足といった社会課題に対し、自社開発の「自動収穫ロボット」により一次産業の自動化・省力化ソリューションを提供する。農家や農業事業を展開するLP(有限責任組合員)へのロボット導入と共同研究を進め、収穫の効率化による持続可能な農業の実現を目指している。

Impact Food社は、サステナブルでヘルシーな植物由来の海鮮類の食品開発を手掛けている。乱獲、海洋汚染による食料不安、たんぱく質危機などの世界中で直面している社会課題解決の実現を目指す。代替マグロの刺身ほか、味も担保したイノベーティブな食品開発を進めている。

オイシックスCVC 収穫ロボットと代替シーフード開発2社に投資 | ニュース 2022年 3月 | 事業構想オンライン (projectdesign.jp)

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2022-03-05 20:52:00

植物性代替肉市場が2027年に123億ドル超と予測。製品の革新とMD戦略が成長を加速

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グローバルインフォメーションが植物性代替肉市場に関する調査レポートの販売をスタート。植物性代替肉の市場規模が2027年には123億2,000万ドルとなり、市場成長には製品のイノベーションとマーチャンダイジング戦略の増加が予想されると発表しました。

参考:「植物性代替肉の世界市場:原料別、タイプ別、製品別、地域別見通し、産業分析レポートおよび予測(2021年~2027年)」(KBV Research)

幅広い選択肢も人気の一因
製品の進化とMD戦略が市場成長に拍車

植物性代替肉とは、非動物性製品から作られた肉の代替品のことです。動物性の食品を摂取したくない生活者のために、肉に替わる選択肢として提供されています。

その多くは、大豆やグルテンを原料としていて、熱可塑性押出成形と繊維紡糸という2つの方法によって加工されています。熱可塑性押出成形は、植物性代替肉を加工するためにメーカーが採用する一般的な方法であり、大規模生産に対応できる費用対効果の高い方法です。一方で繊維紡績法は、低コストで作るという考えとは相反する、製造コストがかかる方法です。

製造方法の進化によって、鶏肉、牛肉、豚肉、魚介類などの動物性たんぱく質に近い製品が実現可能に。幅広い味わいの植物性代替肉を食べられることが、世界中の生活者から人気が高まった一因といえるでしょう。今後もさらに、製品の革新的な進化とマーチャンダイジング戦略の発展が、市場の成長に拍車をかけ、2027年には市場規模が123億2,000万ドルとなると予想されています。

関連記事:広がる脱ミート、植物由来食品のスタートアップに注目

健康志向の高まりで、さらに需要増

近年は、糖尿病や肥満などを予防する観点から、低カロリー・高タンパク質の食品に対する需要が急増。この傾向は今後も続くと考えられ、植物性代替肉の成長を加速させると考えられます。

健康以外の訴求にも期待

日本でも少しずつ、動物性タンパク質不使用の商品やメニューを扱う店が増加。植物性食品を使用したジャンクフードを提供する「2foods」のように、健康以外の新しい切り口も増えています。商品の多様化により、健康志向以外の層にも届く訴求が生まれ、さらなる市場拡大が期待されます。

関連記事:健康と食欲を両立。2foodsの植物性ジャンクフード



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2022-03-05 20:46:00

米国でキッチンの主役争いが激化 調理機器のIoT化の進展で 

 読了時間: 2分
  • 瀧口 範子

    ジャーナリスト

米国では調理機器のIoT化が急激に進化している。新型コロナウイルス禍の自粛ムードの中で自宅で料理をする人が増えたといわれるが、そうした背景もIoT化を後押しした。一方、どの調理機器が家庭のレシピデータを扱う中核になるかが注目され始めた。

 米ミーターは、スマートフォンのアプリと連係させた調理用の温度計を開発した。料理に応じた適正な焼き具合の温度になると、自動的に知らせる機能がある。肉料理の場合、肉に差し込んだままオーブンに入れるだけ。肉の種類や焼き加減をアプリで設定しておくと、焼き上がったときに信号が鳴る。簡単な機能だが、何度も温度計を確認する必要がなくなるほか、肉の内部を適温に仕上げるため料理に失敗しないという。

 家庭菜園として使う水耕栽培用キットもある。米エアロガーデンの製品は栄養素と水とLED照明だけで、野菜やハーブを通常の5倍も早く育てられる室内用栽培ポット。太陽のように強い光を照射するだけでなく、育ち過ぎないように調整する機能も備える。

米ミーターの調理用温度計はアプリから肉の種類や焼き加減を設定できる(出所:https://meater.com/)
米ミーターの調理用温度計はアプリから肉の種類や焼き加減を設定できる(出所:https://meater.com/)
米エアロガーデンの水耕栽培用ポット。太陽の照射も模倣し、野菜やハーブを失敗なく育てられるという。米アマゾン・ドット・コムの「アレクサ」からも設定可能(出所:https://www.aerogarden.com/)
米エアロガーデンの水耕栽培用ポット。太陽の照射を模倣し、野菜やハーブを失敗なく育てられるという。米アマゾン・ドット・コムの「アレクサ」からも設定可能(出所:https://www.aerogarden.com/)

料理では計量が重要になる

 米インスタントブランズが2010年に発売し、今では世界的なヒット商品として知られる電気圧力鍋「インスタントポット」にもアプリと連動するモデルが出てきた。1000以上のレシピをアプリから選び、調理設定もワンタップだ。米エンバーのマグカップはバッテリーとセンサーを搭載し、温かい飲み物を好みの温度に保つ。アプリとも連動し、飲み物ごとの設定を送信することもできる。

米インスタントブランズの人気の「インスタントポット」もアプリからレシピを選んだり設定したりできる(出所:https://www.instanthome.com/)
米インスタントブランズの人気の「インスタントポット」もアプリからレシピを選んだり設定したりできる(出所:https://www.instanthome.com/)
適温に保ってくれる米エンバーのマグカップ(出所:https://ember.com/)
適温に保ってくれる米エンバーのマグカップ(出所:https://ember.com/)
米アノバの低温調理機器もIoT化で設定や調理過程を確認可能(出所:https://anovaculinary.com/)
米アノバの低温調理機器もIoT化で設定や調理過程を確認可能(出所:https://anovaculinary.com/)

 料理で重要な点の1つは、材料を正確に量ることだろう。米ドロップのスマート計量器はアプリと連動するだけでなく、ほかのキッチン用品とも連係できる。レシピを選ぶとアプリを経由し、オーブンに計量データや温度設定などを送信。自分が集めたレシピの管理もアプリ内で可能だ。キッチンの中心を占めるようにと考えて開発しただけに、今後は目が離せなくなりそうだ。

米ドロップの調理用計量器は今後、キッチンの中心的役割を担いそうだ(出所:https://getdrop.com/)
米ドロップの調理用計量器は今後、キッチンの中心的役割を担いそうだ(出所:https://getdrop.com/)

この記事は連載「Hot Topics」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

米国でキッチンの主役争いが激化 調理機器のIoT化の進展で :日経クロストレンド (nikkei.com)

 


2022-03-05 20:43:00

輸入牛の価格高騰、コロナ禍で起きている「ミートショック」の深層 

2022/02/25 08:29 
湯浅 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)

原油価格の高騰やサプライチェーンの分断、それに伴う原材料の高騰――多くの食料品で値上げが著しい昨今、特に影響が大きいのは「輸入牛肉」だ。アメリカ産のショートプレート(バラ肉)の卸売価格は2022年1月時点で1キロあたり1047円。前年同期の687円から52.4%価格が上昇している。さらに、懸念されるのは卸売価格の「高止まり」である。21年4月からショートプレートは1キロあたり1000円以上で推移している。こうした「ミートショック」は、いつまで続くのか、その背景には何があるのか。30年以上コモディティ市場を見てきた資源食糧問題研究所の柴田明夫氏による解説をお届けする(談・文責編集部)

牛肉
(mphillips/iStock)

輸入牛は中国に対する「買い負け」が起きている

輸入牛の高騰に関しては、「供給」と「需要」の両面から分析する必要がある。

「供給」サイドに関しては、日本は輸入牛をアメリカとオーストラリアから全体の約86%を輸入している。特にアメリカにおいてはコロナの影響で海上運賃の上昇やコンテナ・トラック関連の労働者不足、畜産業での人手不足など根詰まりが起きている。アフターコロナの社会で旺盛になってきた国内需要に応えるためにも、アメリカは全体的に輸出量を調整している印象を受ける。

オーストラリアについては、18~19年にかけての干ばつの影響で肉牛の飼養頭数が減少。21年には2393万頭と、ピーク時の13年(2929万頭)に比べると約19%減少している。結果として、日本への牛肉の輸出量は、20年度は24万3000トンと前年より約15%減少、冷凍のチャックロール(日本では肩ロース)の卸売価格は2022年1月において1キロあたり1120円(対前年同期比17%増)と価格が上昇した。

※卸売価格、牛飼養頭数は農畜産業振興機構より引用

一方「需要」サイドでみると、中国に対する「買い負け」が起きている。高度大衆消費社会になった中国では牛肉を日常的に食べる文化が定着。国内生産量だけで賄いきれず、近年は世界からの輸入量も急速に増やしている。(20年の輸入量は約166万トン、17年は約70万トン※農業産業振興機構より)

中国料理
(ALLEKO/iStock)

中国に「買い負け」ているポイントは大きく3つ。1つ目は、「値段」の買い負け。文字通り、中国の輸入商社がより高い値段を払って買うことによる買い負けである。2つ目は、中国は牛の「一頭買い」をすること。日本では部位ごとに牛を仕入れるが、中国は一頭丸々買うことが多い。コロナ禍で人手不足に悩まされる米・豪の畜産業者が細かい注文の少ない中国の業者からの注文を優先したのは想像に難くない。

3つ目は、「買いのタイミング」を逸したことだ。輸入牛の価格は過去5年間、一定の水準で推移していて、2021年4月から始まったミートショックに対しても「いつかは下がるだろう」と楽観視する向きもあった。ところが今回は価格が一向に下がらない。そのため、買うタイミングを逸したのだろう。

コロナ禍の「ミートショック」、長引く可能性も

このように、輸入牛の価格高騰には供給・需要の両面からの理由がある。実は過去にも、2014年9~12月にかけてアメリカ産のショートプレート(バラ肉)の卸売価格が1000円台を推移したこともあった。これは、アメリカが輸入牛の生産量を調整したことと、香港の需要が大きくなったことが背景にあるが、2015年9月には同591円に収まるなど、非常に短期間のものだった。

しかし、コロナ禍を端に発したミートショックは長引く可能性がある。それは、問題が蜘蛛の糸のように複雑に絡み合う、日本の食糧安全保障を取り巻く構造的問題といった色彩が強いからだ。

まず挙げられるのは、15年のパリ協定締結以降、世界中で脱炭素の傾向が強まり、原油生産が減退していく方向が決定づけられたことにある。

脱炭素
(y-studio/iStock)

長期的に見て原油価格が上昇するとあらゆる近代農業、畜産業へのコスト面での負荷は計り知れない。さらに、環境問題の観点からも、森林伐採やメタンガスの排出を伴う畜産業への風当たりが強くなっていくことも予想される。

日本の「買い負け」には、為替の問題、つまり円安相場にも遠因がある。2021年の日本の貿易収支は輸出が83兆931億円、輸入が84兆5652億円で約1兆4722億円の貿易赤字。品目別では、鉱物性燃料である原油(49.1%増)、液化天然ガス(33.1%増)※などが大きく伸びている。ドル建てがほとんどの鉱物性燃料の輸入には円を売らなければいけない、すると必然的に円安になる。円安ゆえに、輸入価格が上昇する・・・と悪循環に陥っている。※財務省貿易統計より

輸入牛の価格が上昇すれば、国産の牛肉にとっては追い風になるはずだが、それも疑問ではある。なぜなら、長引くデフレで国内の畜産業の生産基盤は弱体化し、高齢化も進んでいるからだ。

コロナ禍の「ミートショック」、長引く可能性も

このように、輸入牛の価格高騰には供給・需要の両面からの理由がある。実は過去にも、2014年9~12月にかけてアメリカ産のショートプレート(バラ肉)の卸売価格が1000円台を推移したこともあった。これは、アメリカが輸入牛の生産量を調整したことと、香港の需要が大きくなったことが背景にあるが、2015年9月には同591円に収まるなど、非常に短期間のものだった。

しかし、コロナ禍を端に発したミートショックは長引く可能性がある。それは、問題が蜘蛛の糸のように複雑に絡み合う、日本の食糧安全保障を取り巻く構造的問題といった色彩が強いからだ。

まず挙げられるのは、15年のパリ協定締結以降、世界中で脱炭素の傾向が強まり、原油生産が減退していく方向が決定づけられたことにある。

脱炭素
(y-studio/iStock)

長期的に見て原油価格が上昇するとあらゆる近代農業、畜産業へのコスト面での負荷は計り知れない。さらに、環境問題の観点からも、森林伐採やメタンガスの排出を伴う畜産業への風当たりが強くなっていくことも予想される。

日本の「買い負け」には、為替の問題、つまり円安相場にも遠因がある。2021年の日本の貿易収支は輸出が83兆931億円、輸入が84兆5652億円で約1兆4722億円の貿易赤字。品目別では、鉱物性燃料である原油(49.1%増)、液化天然ガス(33.1%増)※などが大きく伸びている。ドル建てがほとんどの鉱物性燃料の輸入には円を売らなければいけない、すると必然的に円安になる。円安ゆえに、輸入価格が上昇する・・・と悪循環に陥っている。※財務省貿易統計より

輸入牛の価格が上昇すれば、国産の牛肉にとっては追い風になるはずだが、それも疑問ではある。なぜなら、長引くデフレで国内の畜産業の生産基盤は弱体化し、高齢化も進んでいるからだ。

※本稿は柴田明夫氏による「ミートショック」現象解説の前編です。後編ではコロナ禍で浮き彫りになった日本の食糧安全保障の問題について解説します

輸入牛の価格高騰、コロナ禍で起きている「ミートショック」の深層  _小売・物流業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】 (diamond-rm.net)

 

 


2022-02-27 10:06:00
 
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熊本城天守(令和3年4月撮影)© SankeiBiz 提供 熊本城天守(令和3年4月撮影)

熊本に発祥したローカルラーメンがグローバルを制す! アメリカに次ぐポジションにつき、経済大国を標榜し始めた中国。14億の人民を魅了した一杯を追えば、「失われた20年」にも粘る日本ラーメンのバイタリティが見える。その時代に台頭したラーメン店に焦点を当て、日本経済の興隆と変貌、日本人の食文化の変遷を活写する本連載。今回は、中国本土をはじめ世界に750店以上を擁する『味千ラーメン』に迫る。

2010年の中国外食シーンを熊本ラーメンのレジェンドが席巻

世界最大、約14億の巨大人口を擁して改革開放後の経済をドライブさせてきた中国。2010年、そのGDPは日本を抜いて世界第2位となった。40年以上も守り続けたNo.2の席を失い、新興中国の後塵を拝することとなった日本。しかし、その巨龍の身中には豚骨香るホットなラーメンが勢いを見せていた。

2010年、中国料理協会が選出した「中国ファストフード企業トップ50」を引こう。米国のヤム・ブランズ(ケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどを運営)、同じくマクドナルド、台湾発のファストフードであるディコスに次ぎ、4位にランクインしたのが『味千ラーメン』である。

この店が熊本県庁正門横にオープンしたのは1968年。奇しくも日本が西ドイツ(当時)を抜き、世界2位の経済大国にのし上がった年であり、東京では本連載で紹介した『ラーメン二郎』が創業している。さて、そんな味千ラーメンの出で立ちは? 白濁豚骨スープがどっしりと構え、ネギ、チャーシューといったスタンダード具材に加えてキクラゲも存在感を発揮。ストレート中太麺が泳ぐ、重厚な九州ラーメンらしい一杯だ。お品書きを見れば漆黒の香味油がスープ表面にたゆたう「黒マー油ラーメン」なるメニューも目に留まる。

この味千ラーメン、有力ご当地麺「熊本ラーメン」誕生の一幕に深く関わったキー店でもある。1950-60年代の九州ラーメン年譜を紐解き、熊本ラーメンの出自を振り返ってみよう。

九州ラーメンの多くは豚骨ダシをベースとする白濁スープだが、この「とんこつスープ」が生まれたのは福岡県久留米市である。1937年、西鉄久留米駅前に屋台として出店した『南京千両』が開業。そして、1947年に、同じく屋台の『三九』が、仕込みプロセスの偶然の産物として白濁スープを世に出した。「煮込みすぎて白く濁ったスープに味付けをしてみたらおいしかった」――これが白濁豚骨スープ誕生のセレンディピティである。

ブレイクした久留米ラーメンは九州各地に伝播。久留米から県境を挟んでほど近い熊本県玉名市にも、1952年に『三九』の屋台が久留米から出店し話題となる。その噂を聞きつけ、ラーメン技能の習得を目指し、熊本市から3人の男が玉名市にやってきた。その中のひとりが熊本ラーメンの古豪『こむらさき』を創業した山中安敏、そして『味千ラーメン』の創業者・重光孝治である。

九州各地で開花した多くのラーメンは、久留米のデッドコピーに堕すことなく、それぞれ独自の装いを纏って立ち上がった。熊本では豚骨に加えて鶏ガラ、キャベツなどの野菜も出汁に使われ、まろやかなスープが作られる。そして、強化パーツとして投入されたのが「ニンニク」だ。ニンニクを油で炒め、寸胴に加える手法が開発されたのだ。台湾をルーツとし、中国食文化圏の料理に通じていた重光孝治は、その発案者のひとりと言われる。

『味千ラーメン』『こむらさき』『桂花』といったアーリー熊本ラーメンの名店は、この手法を先鋭化。炙ってから乾燥させたニンニクチップ、揚げ工程を経たガーリックチップ、ニンニクを揚げて香りを移した香味油「マー油」が開発され、熊本ラーメンに無二のオリジナリティを付与することとなる。

店舗個々が実力をつけ、そして同じコアパーツを擁するラーメン集団としても強みを持った。熊本ラーメンは有力なご当地麺として認知度を着実に高めていくが、フリークをはじめ中央のラーメン論壇で認知されたのは、東京進出でブレイクした『桂花』、そして『新横浜ラーメン博物館』の出店で注目を集めた『こむらさき』といった面々。『味千ラーメン』は九州地方を中心に勢力を広げたが、東京には出店しなかった。現在、最も東にある店舗でも静岡県の掛川インター店である。首都圏での出店を経ずして、中国からグローバルへの飛躍。このリープフロッグはいかにしてなし得られたのか……?

麺料理の本場に逆輸入で躍進した「日式拉麺」

日本のラーメンが海外への雄飛を図ったのは1980年代以降のことだ。グローバルでは麺料理の一つとして「Ramen」が定着しており、中国、香港、台湾といった漢字文化圏では「日式拉麺」として受容されている。

中国大陸における日本式ラーメン店の橋頭堡は、1986年に北京にオープンした『新僑二幸』と言われる。日本の商社と北京の大手ホテル新僑飯店の合弁レストランとして開業した。ただ、カウンタータイプの日本ラーメン店のスタイルを現地にそのまま持ち込んだもので、主なターゲットは現地の邦人駐在員。広く中国人民に向けた「日式拉麺」に至ってはいなかった。

その後、商社や外食産業など多くの日本企業が合弁による中国進出を目指したが、成功モデルは「1000店出店計画」を掲げ、中国の各都市で大量に大規模店を出店した『味千ラーメン』をおいて他にはない。初めて海外出店を図ったのは1994年、創業者の故郷・台湾だ。

「初めての海外進出は失敗に終わりました。失敗の原因は、現地オーナーに当社の考え方を理解してもらえなかったことです。当社は台湾の製麺会社と合弁会社をつくったのですが、現地法人が販売していたラーメンは、日本の「味千ラーメン」とは似て非なるものでした。麺はフニャフニャで、スープの味も薄かったんです」(『経営者通信』2011年4月号)

創業者である父の想いを継いだ2代目社長・重光克昭の回顧である。この苦い戦訓を経て、重光は「現地の好みは無視できないが、本来の味については妥協してはいけない」と決意。1995年には現地実業家と強固なパートナーシップを結び、香港に初出店。コア・コンピタンスである「豚骨スープ」の味については徹底的に管理しつつ、店づくりなどのソフト面やメニュー開発、マーケティングは現地パートナーに移譲。日本法人・中国法人がバランスを取った両頭体制で大量出店につなげていく。

大人数でワイワイ食べる中国食文化に合わせ、席は4人がけ以上がスタンダード。ステータスを重んじる国民性を慮り、空港や百貨店、ショッピングセンターに活気ある大型店をつくった。スープは熊本流をぶらさず、麺の茹で方もしっかり品質管理。一方、トッピングは徹底的にローカライズする。香港では丼に皮付きの有頭エビを乗せた海老ラーメンやトマト鶏ラーメン、タイではトムヤムラーメン、シンガポールではチリソースを加えたボルケーノラーメン。焼き鳥などのサイドメニューも充実させ、ファミリーニーズにも刺さるよう配慮した。かくして、「地方中小企業の海外進出成功モデル」として大躍進を果たした味千ラーメン。2010年の中国経済躍進と歩を合わせたブレイクから、現在の発展はいかに――?

2010年代前半は1000店舗体制を目指して驀進していた味千中国だが、現在の店舗ネットワークは約700店ほど。尖閣諸島問題に端を発する反日感情の高まり、そしてスープの内製を巡った報道などがあり、基盤はいまだ強固ながら、一時期の勢いが失われているのも確かだ。

失速の背景として指摘されるのが、中国消費者の成熟だ。日本のマンガからコンテンツ化された『深夜食堂』が人気を集め、金ピカラグジュアリーから渋い職人志向の食体験を求める動きがあれば、SNS映え、コロナ禍によるオンラインデリバリーの隆盛も大箱店舗の苦境に追い込んでいる。

本連載で取り上げてきた多くのラーメンと同じく、戦後に勃興した熊本『味千ラーメン』。日が昇るかのような高度経済成長期に浸透し、リープフロッグ型のモデルとして無二の存在感を発揮してきた。成熟ステージに向かう中国、そしてアジア圏で、北極星をどうやって見出していくのか――。今こそ、火の国で培われた創意に期待したい。

佐々木正孝

ラーメンエディター/有限会社キッズファクトリー代表

ラーメン、フードに関わる幅広いコンテンツを制作。『石神秀幸ラーメンSELECTION』(双葉社)、『業界最高権威 TRY認定 ラーメン大賞』(講談社)、『ラーメン最強うんちく 石神秀幸』(晋遊舎)など多くのラーメン本を編集。執筆では『中華そばNEO:進化する醤油ラーメンの表現と技術』(柴田書店)等に参画。

2010年―熊本から巨龍・中国を飲み込む! 味千ラーメンの軌跡 (msn.com)