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2014-12-13 22:47:00
 
 
2014 年 12 月 9 日 11:08 JST

 

AFP/Getty Images

 「東京フィクサー」としても知られるノハラ・シンジさんが誰なのかを人に説明するとき、記者はまず、彼の仕事ほど素晴らしい仕事はないと話す。

 メディアや観光客に日本の最もおいしいレストランや食堂を紹介するのが彼の仕事だ。毎回のツアーは顧客の好みに特別に合わせたもので、彼も同行して食事を共にし、通訳をしたり、美食に関する豊富な知識を披露したりもする。

 彼はほぼ偶然に東京フィクサーになってしまった。かつてフードジャーナリストだったノハラさんは、副業として海外メディアの手助けを始めた。世界で日本の食に対する関心が高まるなか、今や彼はそうした計画や手配を本業にしている。1日の料金は750ドル(約9万円)からだが、予約でいっぱいの状態だ。

 最近、甘党を自認するノハラさんが選んだデザートを提供する珍しい焼き鳥屋で彼に話を聞くことができた。そのデザートとは、バターとアイスクリームと一緒に出される皮が黒くなるまで焼かれたサツマイモで、その柔らかい果肉を食べるのにスプーンを使う。

 ノハラさんは、自分が築地市場での朝食よりもパンを好む理由、なぜ東京に新婚旅行に来る外国人が多いのか、どうして次の肉ブームの主役が短角牛になるかもしれないのかなどを語ってくれた。

――あなたの日本での仕事にとって、過去5年間はどうだったか

 最大の出来事は2011年の東日本大震災だった。地震と津波だけなら、あれほどの影響はなかっただろうが、福島原発で事故も起きてしまった。その後3カ月間の予約はすべてキャンセルになった。客足がようやく戻り始めたのはその年の7月だった。

 震災を受けて顧客からは多くの問い合わせがあった。日本政府の発表を信頼できるのか、食べ物は本当に大丈夫なのかと聞かれた。顧客には誠実でありたいので、日本政府の情報がどの程度信頼できるのかは私にも分からないと言った。

 私の解決策はシェフの顔が見えるレストランを選ぶことだった。料理に使われる魚がどこで捕れたものなのかをシェフにじかに聞くことができるからだ。私はそうしたことを説明できる店を選び、説明できない店には行かなかった。

 さまざまなことが元通りになり始めるまでには1年以上もかかった。今や観光業は震災前とほぼ同じ水準にまで盛り返している。震災直後に旅行を取りやめた人々も、日本に戻ってきてくれた。

――この5年間であなたの顧客のニーズに変化はあったか

 

(都内の焼き鳥店) AP

 リクエストの多さでは寿司が今も1位だが、この2年間で居酒屋に行きたい、ラーメンを食べたいというリクエストが急増した。これは米国のメディアで東京のそうした食文化についての特集記事が増えているからだと私は考えている。

 シングルモルトのウィスキーを飲みたい、日本のカクテル文化を見たいというリクエストもある。そして天ぷらや焼き鳥も人気だ。もはや寿司だけではなくなった。

 人々は「地元の人が行く」店にも行きたがる。「隠れ家的な」店や「辺ぴな所にある」店にもだ。

――現在はどういった顧客が多いのか

 最近は新婚旅行客に大人気で、彼らはハワイと東京、バリ島と東京、モルディブと東京といった具合にビーチリゾートとセットにして東京を訪れている。外国人が東京に新婚旅行に来ていると聞いて初めは非常に驚いたが、ショッピングができるところでもあり、日本食だけではなく、イタリアンやフレンチでもおいしいものがたくさんあるということを踏まえれば納得がいく。

――東京の食べ物で今人気があるのは何か

 いちばん新しい流行は熟成肉だ。最初に本物の米国のステーキハウスが東京にやって来たのが2007年、より最近では、ニュージーランドやニューヨークのステーキハウスがオープンした。

 今や東京在住の日本人の誰もが熟成肉を食したがっているが、私の顧客が日本に来たときには、今も和牛を食べたがる。

――和牛で熟成肉はできないのか

 霜降り肉が特徴的な和牛は、脂身が少ない海外のビーフとは異なっている。熟成和牛を出す店も増えているが、和牛で熟成肉を作ることについては意見が分かれている。個人的な意見だが、私は和牛は炭火焼きがいちばんだと思う。脂身が溶けて炭にぽたぽたと落ちるが、その味は最高だ。

 東北地方で生産されている短角牛の肉は脂身が少なめで、海外のビーフに似ている。しかし、この肉はまだ主流にはなっていない。

――東京でさまざまな美食を試したいと考えている観光客にとって向こう5年間に変わりそうなことは何か

 オリンピックが開催される2020年までに、東京はどうすれば観光客にもっと優しくなれるのかを考える必要がある。

 喫煙は大問題になるだろう。寿司店のほとんどが禁煙だが、喫煙が許可されている焼き鳥屋のような飲食店がいまだに存在している。日本に来た私の顧客はそれを見てかなり驚いている。私は飲食店内の喫煙を全面的に禁止すべきだと思う。

 ATMにも問題がある。外国の銀行のキャッシュカードが使えるATMを設置している金融機関はほんのわずかしかない。こうしたサービスを提供していない日本の金融機関はビジネスチャンスを逃していると思う。そうした銀行のシステムはできるだけ早く改善されるべきだ。

――東京におけるあなたの理想の1日を教えてほしい

 

 まず朝食には築地に行く代わりに、パンを食べたい。日本には本当においしいパン――バゲットサンドウィッチやクロワッサンなど――があり、メロンパンやあんパンといった他国では食べられないパンもある。顧客に勧めているのは、ホテルの朝食ではなく、外の店で東京のパンを試すこと。東京のパンは世界一だからだ。

 私なら個人経営のコーヒーショップか昔ながらの喫茶店にも行きたくなるだろう。喫茶店には「モーニング」という朝食セットがある。外国人たちも「モーニング」のコンセプトにはかなり驚くだろう。これには本当に分厚く、おいしいバタートーストが含まれている。

 昼食には、天ぷらかラーメンを食べることになる。その後でジェラートかアイスクリームを食べてから散歩をする。満腹になって腹ごなしが必要になるだろうから(笑)。

 夕食には寿司か焼き鳥か和牛を食べたくなるだろう。私は常においしい肉を探し求めているのだ。

(聞き手はEleanor Warnock)

ノハラ・シンジ

 

 

 グルメガイド、ジャーナリスト。東京出身。海外メディアや訪日観光客を主な対象として日本の食やグルメシーンを紹介している。仕事でよく使う英語のスキルは外国映画の鑑賞で磨いたと本人は語る。

 

夕食には寿司か焼き鳥か和牛を食べたくなるだろう。私は常においしい肉を探し求めているのだ。

(聞き手はEleanor Warnock)

ノハラ・シンジ

 

 

 グルメガイド、ジャーナリスト。東京出身。海外メディアや訪日観光客を主な対象として日本の食やグルメシーンを紹介している。仕事でよく使う英語のスキルは外国映画の鑑賞で磨いたと本人は語る。

 

(この記事はウォール・ストリート・ジャーナル日本版の創刊5周年を記念した特別企画の1本です)