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2026-04-27 17:59:00

未来価値創造戦略【8】

 

今回は、「未来価値創造戦略」の「財務マネジメント戦略の考察」「バランス・スコアカード」「グローバリゼーション・マネジメント」「ROE重視の財務マネジメント」「ROEの課題」について説明しよう。

 

[8]未来価値創造の課題

「未来価値創造」といっても、何がなんでも無差別な投資は忌避しなければならない。確かに「未来価値創造」は、「企業ミッション」をベースに「経営戦略」の一つの柱として構築されるのであるが、「財務マネジメント戦略」に裏打ちされたものでなければならない。

 

(1)財務マネジメント戦略の考察

「企業戦略」のなかで、「未来価値戦略」は「経営戦略」の主柱で、「マーケティング戦略」「情報マネジメント戦略」「組織マネジメント戦略」「人的マネジメント戦略」などと同時に実現するために必要な「資金」や「利益」を生み出すのが「財務マネジメント戦略」で、「企業戦略」の中核として位置づけなければならない。

しかし、中核といっても、「財務マネジメント戦略」が最優先の「戦略」ではなく、「企業戦略」を支えるものであり、しかも対等に「マネジメント・パワー」を注ぐものとして志向しなければならない。さらに重要なことは、「未来価値創造」のためには、「未来価値」そのものの「創造」するだけではなく、「情報」「知識」「人財」を「創造」していくための膨大な「資金」を用意する「財務マネジメント戦略」を確立しなければならない。

 

(2)バランス・スコア・カード

「財務マネジメント戦略」だけを「戦略化」しても、「企業戦略」との関連が明確にされないので、適切に機能させるために「バランス・スコア・カード(BSC:Balanced Score Card)」という「マネジメント手法」を活用することである。「BSC」は、「4つの視点」を用いて、「企業戦略」との「バランス」をとり、「長期」「中期」「短期」の「業績向上」を図るものである。

 

① 財務の視点

「BSC」の4つの視点の最上位に位置づけられ、「株主」が企業を評価する「財務視点」の「基準」である。

 

② お客様の視点

企業はお客様に商品やおもてなしを提供することによって、「利益」を得ているので、「財務指標」を改善するためには、「お客様の視点」による評価する「基準」である。

 

③ 内部プロセスの視点

「お客様の視点」を「アップスケール」させるためには、必ず「内部プロセスの視点」の改善のための「基準」である。

 

④ スタッフの学習と成長の視点

「スタッフの学習と成長の視点」というのは、組織を構成するスタッフが「企業マネジメント」を継続的に「アップスケール」させるための「基準」である。「BSC」の「4つの視点」によって、「未来価値創造」を「戦略化」するためには、次のような「戦略マップ」を描くことである。

 

【戦略マップ】

 

企  業  戦  略

財務の視点

売上高の増加、自己資本比率の向上、コストの低減

お客様の視点

お客様の感謝度のアップスケール化

内部プロセスの視点

情報・組織・人的資源戦略の向上と教育訓練の充実

スタッフの学習と成長の視点

全員参加マネジメントの定着

 

(3)グローバリゼーション・マネジメント

企業活動は、いまや世界規模で行われるので、経済や金融は「グローバリゼーション」が進展しているので。その立場で「財務マネジメント戦略」を確立しなければならない。そのためには、「国際会計基準」に取り組むことである。

「国際会計基準」というのは、「国際会計基準審議会(LASB:International Accounting Standards Board)」という独立した民間の非営利団体によって設定している「国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)」で、世界各国には独自の「会計基準」があるので、いわば「会計基準の世界標準」である。

「国際会計基準」は、グローバル企業の「財務諸表」が統一されることによって、世界の株式市場の企業業績の評価が「公正」になり、さらに世界中の投資家にとって効率的に投資の判断が行うことができる。「グローバル・マネジメント」を行う場合、「財務諸表」の「評価」が「国際会計基準」が不可欠であり、「グローバル戦略」を行う場合には、早急に導入しなければならない。

 

(4)ROE重視の財務マネジメント

 

① 欧米と日本のROEの現状と将来性

「ROE」については、日本の企業の平均値は8%程度であるが、欧米の企業の平均値は10~15%であるので、日本の「企業マネジメント」の強化が課題になっている。しかも、アメリカでは長期にわたって「ROE」が20%を達成している企業が「将来性」があるとされている。

さらに、世界最大の議決権行使助言会社「ISS:International Shareholder Services」の「議決権行使助言」によると、「過去5年間の平均と直近決算期の「ROE」がいずれも5%未満の企業については、経営トップの取締役選任議案に反対するように株主に勧める方針」を発表し、企業にプレッシャーをかけ始めた。

日本においては、日本経済新聞社、日本取引所グループ、東京証券取引所が協働で開発し、日本銀行が買い入れている「上場投資信託」の一つとして採用している「株式指標」の「JPX日経インデックス400」も「ROE」重視に拍車をかけた。

この「インデックス」は、「3年間の平均ROEや、累積営業利益、基準時の時価総額などを考慮して、上位400銘柄を選んだもの」で、この「インデックス」に選ばれるかどうかが、「株価」に影響する要因の一つとして位置づけられている。

 

② 優良企業の企業戦略

日本の企業の中には、「ROE」について、慎重な企業や否定している企業のある中、継続的に「ROE」を「20~40%」を維持している企業も少数派ではあるが存在している。優良企業の「企業戦略」は、「財務マネジメント戦略」が優れていることはもちろんであるが、その中でも「グローバル戦略」を確立していて、「国際会計基準」についていち早く取り組んでいる。

さらに、「財務マネジメント戦略」においても、「ROE」を重視しているばかりでなく、「ROA(Return On Asset:総資本営業利益率)」を高めるために、「財務レバレッジ(資産÷自己資本)」を重視している。

「財務レバレッジ」というのは、「自己資本比率(自己資本÷資産)」の逆数であることから、「ROA」を高めることによって、「ROE」を高めることが「財務マネジメント戦略」として重視しなければ「健全経営」と言えなくなることは必至である。

多くの企業で「ROE」を高めるために、「ROE」ばかりに注目し、「自社株買い」「リストラ」「滅茶苦茶なコストカット」が行なわれているが、これは短期的には「ROE」は高まるが長期的には課題を残してしまう。

重要なことは、優良企業の共通している「戦略」は、「財務マネジメント戦略」だけでなく、「経営戦略」とか「マーケティング戦略」を重視していることなのである。さらに、重要なことは「情報マネジメント戦略」「組織マネジメント戦略」「人的資源マネジメント戦略」とのバランスがとれていることである。

 

(5)ROEの課題

 

①マクドナルド事件

2014年夏、「日本マクドナルド」に激震が走った。これは、「チキンマックナゲット」に使用している鶏肉の一部の仕入先である、米・食肉大手OSIグループの「上海福喜食品有限公司」で、「使用期限切れ鶏肉」を使用している問題が発覚したことであった。

さらに、中国のローカルテレビ局による報道で、工場内の不衛生な食肉の処理作業が明らかにされ、日本のお客様に動揺を与えた。「日本マクドナルド」は、謝罪してタイ産に切り替えた。また、2015年1月には、「人の歯」や「ビニール片」などといった異物がポテトやチキンナゲットに混入していた事実が全国で相次いで発覚した。

「日本マクドナルド」は、1971年に第1号店を東京・銀座に開店し、企業の「店舗オペレーションの原理原則」である「QSC(Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(清潔感))」を徹底させ「お客様への安全・安心」を提供して、「信頼感」を醸成してきた。

今回の事件は、謝罪はしたものの、内容は責任は加工工場で、あたかも「日本マクドナルド」は被害者的な感覚を匂わせたので、お客様だけでなくマスコミの「信頼感」を一気に失ってしまった。たとえ、本当の責任は加工工場にあることは事実であるが、「日本マクドナルド」には、「管理責任」は存在するので、「信用喪失」は当然のことである。

 

③ アメリカのマクドナルドの創業精神

「日本マクドナルド」は、「アメリカ・マクドナルド」の合弁会社であり、会社設立当時は、創業者のレイ・クロックが経営者であった。レイ・クロックの「事業哲学」は、生涯ピューリタン的論理に基づいていた。

したがって、細部を疎かにして、短期間の利益を求めることはせず、質の高い仕事が生み出す「長期的利益を目標にせよ」と説き続けた。つまり、仕事を正しく行えば、お金は自然に入ってくるものであった。これは、今日でも語りつがれていて、「マクドナルド」の本社の壁には、次のような「創業者遺訓」が飾られている。

 

◎全員の結束は、個人の力にまさる

◎企業の成功は、社員のやる氣にかかっている。 

 

「マクドナルド」の「システム」は、「科学」によって構築する一方、「組織マネジメント」は、会社の幹部、加盟店のオーナー、仕入先をいかに選び、彼らの能力をいかに引き出すかを腐心するというもので、「共同事業」という、まさに「全員参加マネジメント」である。

ただし、「店舗オペレーションの原理原則」である「QSC」の基準の徹底が最大の方針で、レイ・クロックの「組織マネジメント」大半はここに注がれて居て、他社との格差をつけたものであった。いわゆる、「マクドナルド」の加盟店に対する考え方は、「加盟店の利益優先型」で、これが世界一ノチェーンを構築したのであった。

 

④ 日本マクドナルドの「QSC」の状況

「日本マクドナルド」の日本における快進撃は、「日本一のフードサービス」という「ビジョン」のもとに、これを支えるものは、いままで日本になかった「QSC」の導入で、日本の「フードサービスの産業化」につらなったものとして、大いに賞讃された。しかし、「日本マクドナルド」は、1985年の「プラザ合意」後の為替レート変動、バブル経済崩壊後によって、それまで順調に伸びていた売上が鈍化した。

この事態を打開するために、1994年より「ディスカウント戦略」がスタートし、1995年には、ハンバーガー210円を一挙に130円とし、期間限定ながら、平日半額の65円とした。確かに売上は上昇し、「ハンバーガー・ウォーズ」によって業界を混乱させた。その上、店舗は多忙を極め「QSC」のレベルは、自然に低下してしまった。

 

⑤ 日本マクドナルドの戦略転換

「日本マクドナルド」の頻繁に行った「価格戦略」によって、お客様の支持を失い、ついに「日本マクドナルド」の創業者の藤田田は、2003年に退任した。その後、パット・ドナヒューがCEO兼会長に就任して、「米国式戦略」に転換し、業績の回復を図った。

その後、2004年に代表取締役CEOに原田泳幸が就任して、「米国式戦略」を引き継いだ。原田泳幸は、様々な「米国式戦略」を展開するなかで、短期的には業績は回復し、「QSC」の徹底を行ったが、一度低下したレベルは、元には戻らなかった。

2007年に、シニア・ディレクターとして、ディブ・ホフマンが赴任し、2009年には副社長に昇格した。また、一度は回復した売上が、2008年に再び低下を始めた。デイブ・ホフマンは、直営店の閉鎖、直営店のフランチャイズ化などや、「マーケティング戦略」よりも「高価格戦略」を目指すことによって、「ROE」を最大限に高めることが優先された。

 

⑥ 未来価値の未創造

「日本マクドナルド」の業績の悪化は、直接的には「鶏事件」であるが、レイ・クロックの「創業者精神」である「全員マネジメント」の思想の喪失という課題に直面した。さらに、「お客様発の立場」はもちろんのこと、「お客様の立場」の喪失と、「未来価値」はおろか、「現在価値」すらも「創造」していないことが最大の課題であり、これに気がつかない「経営者」は失格といえる。

重要なことは、「日本マクドナルド」は、「ROE・財務戦略」>「未来価値・マーケティング戦略」であって、「ROE」=「未来価値」という「マネジメントの原理原則」を遵守するより、「米国式マネジメント」が、「鶏事件」を引き起こした要因であることに気がつかない愚行であったことである。

経営者カサノバは、事件発生当時は、他人ごとのように対応していたが、その後にお客様との座談会を開催したり、日本人を経営陣に参加させ、上から目線から脱皮して、お客様の顔を見るようにしたことが、業績を回復させた。