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2026-03-28 12:16:00

2026年「アジアのベストレストラン50」 日本はトップ10圏外に

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香港で開催されたアジアのベストレストラン50の授賞式にて

世界のベストレストランのアジア版「アジアのベストレストラン50」の授賞式が3月25日、香港のウォーターフロントにある「ケリーホテル」で行われた。古くから食の都として知られる香港だが、ベストレストラン50の開催地となるのは初めてのこと。今回もシェフやレストラン関係者約900人が集まり、盛況となった。

 

ランキング結果は、香港の「チェアマン」が2021年以来2度目のアジアNo.1に輝き、2位には同じ香港の中国料理「ウィン」、3位にはタイの「ガガン」が続いた。日本は最高位は13位の大阪「ラ・シーム」となった。日本が10位以内にランクインしなかったのは2013年から始まるこのアワードで初めてのこととなる。

また、これまで何度もNo.1レストランを排出してきたシンガポールも、最高位が「オデット」の19位にとどまった。

一方で、特別賞にアート・オブ・ホスピタリティにインドの「マスク」、最も順位を上げたレストラン「ハイエスト・クライマー賞」に北京の「ランブレ」、サステナブル・レストラン賞にバンコクの「バーン・テパ」、シェフズ・チョイス賞でもバンコクの「レドゥ」と「ヌサラ」のティティッ・トン・タッサナーカジョンシェフが選出。

 

さらに、ベスト女性シェフに韓国「オンジム」のチョ・ウンヒシェフ、ベストペストリーシェフにはインドネシア「オーガスト」のアルディカ・チャンドラシェフが選ばれるなど、新しい地域の台頭が感じられる結果になった。

日本のレストランは50位以内に13位に「ラ・シーム」、16位に「セザン」、21位に「茶禅華」、28位に「マス」、31位に「フロリレージュ」、33位に「明寂」、34位に「クローニー」、37位に「NARISAWA」と、去年の11軒から3軒少ない、全8軒がランクインした。

中国料理の躍進にみる多様性

今回特徴的だったのは、中国料理、特に香港や台湾、北京や上海といった大都市だけでない地域の中国料理がランキングを上げていることだろう。6位に福建料理の「ミート・ザ・バンド」、10位に浙江料理の「如院」が入った。昨年から、中国本土より細かく見るため、中国の評議委員長が一人増えたという背景もある。その長い歴史と多様な地域性が新たな注目を集めていると言えるだろう。

授賞式前日に行われたトークイベント「50ベストトークス」では、上海「リンロン」のジェイソン・リューシェフが「中国にはまだ知られていない地方料理がたくさんある。中国八大料理を学び、そのの多様性を表現している」と、中国国外であまり知られていないその食の地方性と奥深さを強調。中国本土は50ベストが追求する「食のフロンティア」の一つということができるだろう。

また、中国4000年の歴史を背景とした中国料理の世界では、年代物の柑橘の皮「陳皮」や中国茶が価値あるものとして評価されるなど、時間の経過が生み出す深い味わいが重要視される。

 

今回1位となった「ザ・チェアマン」のダニー・イップシェフは、授賞式の壇上で「うちのスタッフの平均年齢は52歳、多くが開業時の17年前から働き続けている『ヴィンテージ・チーム』」と冗談を飛ばした。

それだけではなく、チェアマンでは多くの中国料理店で使われている化学調味料を一切使わず、代わりに開業時から作り続け、なかは「17年もの」のものもある発酵調味料や保存食などが料理に使われている。「時間が生み出す発酵や保存食の味わいは、新しくつくることができないもの。それが私の料理の味の決め手になっている」と語った。

「チェアマン」のダニー・イップシェフ
「チェアマン」のダニー・イップシェフ

日本の地方の多様性

日本のベスト50入りは減ったものの、51〜100位のリストには51位に「傳」、60位に「Goh」(福岡)、63位に「鮨しゅんじ」、72位に「鮨さいとう」、76位に「チェンチ」(京都)、81位に「ヴィラ・アイーダ」(和歌山)、82位に「片折」(石川)、93位に「出羽屋」(山形)が入るなど、今後に期待ができる結果となった。

 

昨年に日本の新評議委員長として選ばれた浜田岳文氏は、「No.1を取るかどうかに注目が集まりがちなアワードですが、日本は、ローカルな地域でも美食が楽しめるのが特徴で、このような国は他にないはず。多様性の時代に、東京だけでなく多くの地域のレストランが選ばれることにも大きな意味があります」と語っている。

「自分の物語を伝える」料理の背景にあるもの

50ベストでは、未来の美食を考え、人と人を繋ぐためのイベントを行なっているが、その一つが、シェフとメディアが直接話し合うMeet the Chefというイベントで、今回は「Time as Craft」というテーマで、各店のさまざまな取り組みが紹介された。

その中で印象的だったのは「自分の気持ちや物語を伝えることで、食べる側の感情を動かす」と語ったシェフが多いことだ。

台湾でモダンシンガポール料理を提供する「JLスタジオ」(50位)のジミー・リンシェフは、「2017年に店をオープンする際、もともと台湾食材を使ったヨーロッパ料理を考えていた。でも、当時はノーマの影響もあり、地元食材を売りにする店の全盛期。試作した料理が他の店と同じに見えた。どうやって違いを生み出そうかと考えたとき、自分の感情を動かす料理は、食べて育ったシンガポール料理だと思い、2週間前にメニューもコンセプトも全部変えた」という。

香港「ネイバーフッド」(24位)のデビッド・ライシェフは、「30年以上料理をしているが、10年ほど前から、市場に行き、食材を選んで、自分の感情を動かす料理をつくるようになった。一番の褒め言葉は『シェフの感情が伝わった』と言われること」と語る。例えば、自ら採集した松茸をシンプルにオリーブオイルで焼き上げ、蜂蜜を垂らした料理など、その時の感性で作り上げる料理は、日々変わり、その日だけの限定の料理として注目を集めている。「個人の思いを表現する料理」という時代性は、冠スポンサーでもあるサンペレグリノ社が、30歳以下の世界の料理人を対象に2年に一度行っている若手料理人のコンペティション「サンペレグリノ・ヤング・シェフ」を集めてのメディアランチでも感じられた。

 

会場となったのは2019年と2020年にアジアNo.1に輝き、このコンペティションのメンターシェフを務める「オデット」のジュリアン・ロワイエシェフ(右から2人目)のビストロ「ルイーズ」
会場となったのは2019年と2020年にアジアNo.1に輝き、このコンペティションのメンターシェフを務める「オデット」のジュリアン・ロワイエシェフ(右から2人目)のビストロ「ルイーズ」

昨年の世界大会の優勝者となった香港「ベロン」のアーディ・ファーガソンシェフ(写真左端)は、コーチを務めた香港「テート ダイニング ルーム」のヴィッキー・ラウシェフに「どうしたらいいか聞くのでなく、あなたがどうしたいのか私に言って」と、言われ続けたことで、母の味であるインドネシアの味を表現する勇気をもらい、世界一に輝くことができたという。また、このコンペを通して出会ったシェフ仲間などのコミュニティが、個人の思いを表現する今のスタイルを形づくったと語った。

2018年世界大会で優勝し、現在は京都で「ミドル」のオーナーシェフを務める藤尾康浩シェフ(写真右端)は、「15歳からイギリスで暮らし、フランス料理を学んできた。2018年の大会に参加した際、日本を表現する必要があり、自らのルーツを改めて考えたことで今のスタイルが生まれました」と語った。

「自らの声を見つける」ことは、今の美食の一つの方向性と言えるだろう。それは、SNSの発達でめまぐるしく変化してゆくトレンドへのアンチテーゼとも言えるかもしれない。いまや一つの事象が瞬時に世界のトレンドとなる時代だ。熟成された中国の保存食材などには、その真逆の価値がある。

 

また、ここ数年、AIをどう料理に活用するかという話が世界の食のカンファレンスで取り沙汰されるようになってきた。AIを活用すれば、レシピをいくらでも生み出せるが、その人の内側を反映した「パーソナリティのある料理」はAIで決して生み出せない独自性をもつ。

シェフが自分自身のアイデンティティを見つめ、一人ひとりのゲストに合わせ「世界に一つだけの花」としての料理を提供する。「自分の物語を伝える」のは、料理のスタイルの多様性を保つだけでなく「あなたのために心から料理する」という、料理の根本にある大切なものを、再確認するためのものでもあるのかもしれない。

アジアのベスト50レストラン 一覧

1. ザ・チェアマン(The Chairman)|香港
2. ウィング(Wing)|香港
3. ガガン(Gaggan)|バンコク
4. ミングルス(Mingles)|ソウル
5. ヌサラー(Nusara)|バンコク
6. ミート・ザ・バンド(Meet the Bund)|上海
7. シェフ・タムズ・シーズンズ(Chef Tam's Seasons)|マカオ
8. ガガン・アット・ルイ・ヴィトン(Gaggan at Louis Vuitton)|バンコク
9. リン・ロン(Ling Long)|上海
10. 如院(Ru Yuan)|杭州

11. 福和慧(Fu He Hui)|上海
12. ソーン(Sorn)|バンコク
13. ラ・シーム(La Cime)|大阪
14. オンジウム(Onjium)|ソウル
15. マスク(Masque)|ムンバイ
16. セザン(Sézanne)|東京
17. ラムドレ(Lamdre)|北京
18. ズーリング(Sühring)|バンコク
19. オデット(Odette)|シンガポール
20. セロージャ(Seroja)|シンガポール

 

21. 茶禅華 (Sazenka)|東京
22. ロジー(Logy)|台北
23. ボーン(Born)|シンガポール
24. ネイバーフッド(Neighborhood)|香港
25. ポトン(Potong)|バンコク
26. イータニック・ガーデン(Eatanic Garden)|ソウル
27. ミス・マリア&ミスター・シン(Ms. Maria & Mr. Singh)|バンコク
28. マス(Maz)|東京
29. 102ハウス(102 House)|上海
30. ナー(Naar)|カサウリ

31. フロリレージュ(Florilège)|東京
32. エストロ(Estro)|香港
33. 明寂(Myoujyaku)|東京
34. クローニー(Crony)|東京
35. カプリス(Caprice)|香港
36. ル・ドゥ(Le Du)|バンコク
37. ナリサワ(Narisawa)|東京
38. レザミ(Les Amis)|シンガポール
39. オ・ジャルダン(Au Jardin)|ペナン
40. ラビリンス(Labyrinth)|シンガポール

41. モス(Mosu)|ソウル
42. オーガスト(August)|ジャカルタ
43. ビウム(Bium)|ソウル
44. ロカヴォール NXT(Locavore NXT)|ウブド
45. ナエウン(Nae:Um)|シンガポール
46. モノ(Mono)|香港
47. ワナ・ユック(Wana Yook)|バンコク
48. ラ・ブリッシュ 133(La Bourriche 133)|上海
49. セブンス・ドア(7th Door)|ソウル
50. JLスタジオ(JL Studio)|台中

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