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2025-10-24 09:47:00
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9月25日、「世界のベストレストラン50」が北アメリカを対象とした地域版、「北アメリカベストレストラン50」を初めて発表した。授賞式の会場となったのは、昨年6月の世界版の会場と同じラスベガスの統合型リゾート「ウィン・ラスベガス」だ。800人が参加した授賞式にはバンドによる生演奏が入り、エンターテイメントの街を印象付けた。

 

「北アメリカベストレストラン50」の対象になるのは、アメリカとカナダ、カリブ海のレストラン。地理的には本来、メキシコ、キューバ、ドミニカ共和国も含まれるが、いずれも既にラテンアメリカ版の対象となってきた関係上、対象外となる。

50ベストのコンテンツ・ディレクター、ウィリアム・ドリュー氏によると、世界版同様に、北アメリカ版もシェフやジャーナリスト、レストラン関係者による投票で選ばれる。その投票者は約300人で、地域ごとのチェアパーソン(評議委員長)が投票者を選ぶ。広いエリアをより細かくカバーするために、これまでの世界版の3人に加え、新たに北アメリカ版のみを対象とする5人のチェアパーソンが選ばれ、カナダ3人、米国4人、カリブ海1人の8人体制となった。

No.1レストランに選ばれたのは、ニューヨークのモダン韓国料理「アトミックス」。今年6月に発表された世界版でも12位に輝いており、順当な結果となった。

 

ソウル出身のパク・ジョンウンシェフとエリア夫妻は大学の同級生で、パクシェフがフランス料理の手法で韓国の味を表現する「ジュンシック」のヘッドシェフに就任した2012年にニューヨークへ。16年に独立し、オーナーシェフとしてカジュアル店「アトボーイ」を開店した後、18年にファインダイニングの「アトミックス」をスタートした。

22年にはニューヨークに韓国の伝統料理店を再解釈した「ナロ」を、さらに24年には、より韓国文化に根付いた食を生み出すためにソウルの一等地にラボ「コモンエラ」をオープンするなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。来年には、韓国文化がまだあまり根付いていないロンドンに出店し、「食文化のアンバサダー」として魅力を伝えていく予定だ。

授賞式では「今回の受賞は私たちにとって、アメリカンドリームが実現したようなもの。他の文化背景を持つ人たちも、それぞれにアメリカンドリームを持っているはず」と他のレストランへも思いを馳せた。

アトミックスでは見事な食材のプレゼンテーションと共にトロフィーが飾られていた
アトミックスでは見事な食材のプレゼンテーションと共にトロフィーが飾られていた

アワード後、実際に「アトミックス」を訪問してみると、14席のメインダイニングカウンターと6席のバーカウンターはいずれも2回転とも満席だった。10年ほど前までニューヨークで韓国料理といえばカジュアルな印象が強かったが、そんなイメージを覆し、エレガントなインテリアのなか、韓国人アーティストとコラボレーションして作られた食器類と、丁寧かつあたたかなサービスと共に、韓国の味の組み合わせや文化を表現している。K-POPをはじめとする韓国カルチャー人気ともあいまった、現代のファインダイニングらしい店だ。

 

今回の北アメリカ版は、50ベストらしい多様な未来を予感させるリストとなった。シカゴからはモダンフィリピン料理「カサマ」、ニューオーリンズからはモダンセネガル料理「ダカール・ノラ」、さらにジャマイカからはプラントベースのモダンジャマイカ料理「スタッシュ・イン・ザ・ブッシュ」もランクインしている。

また、「ファインダイニングにこだわらず、人気のある店はランクインする」というポリシーの通り、予約を取らない、気取らない雰囲気の魚料理のレストラン「チャビー・フィッシュ」(チャールストン)、元々ワインバーとしてスタートした「モンラパン」(モントリオール)などカジュアルな店もリスト入りしている。

「カサマ」はファインダイニングの店だが、週末の朝にはフィリピン風の朝食(左下)を提供し、地元の人たちで大行列、そのユニークな営業スタイルでも知られる。
「カサマ」はファインダイニングの店だが、週末の朝にはフィリピン風の朝食(左下)を提供し、地元の人たちで大行列、そのユニークな営業スタイルでも知られる。

北アメリカからはこれまで、ナパバレーの「フレンチランドリー」とニューヨークの「イレブンマディソンパーク」というファインダイニングが世界No.1に選ばれているが、北アメリカ独自のリストが生まれたことで、美食の旅先として、今後多様なアメリカの都市にスポットライトが当たるようになっていくと言えるだろう。

 

また、店が提供する料理の国籍の多様化、カジュアルレストランにも焦点が当たり、質の良い料理をくつろいだ雰囲気で楽しむ「ファインカジュアル」への潮流も感じる結果となった。ドリュー氏は「北アメリカは世界的に見ても特に移民の多い地域で、今年の北アメリカのリストは、これまでの世界版、または世界各地の数あるリストのなかでも、最もダイバーシティのあるリストとなった」と語った。

 

近年、レストランにおいては、地域の関わりや次世代の育成がますます重要視されるようになってきている。

 

「アトミックス」のパクシェフは、去年ソウルにオープンしたラボで、韓国の若いシェフを招いて一緒にテーマに沿った料理を作り、インスピレーションを得てもらうなどの活動をしている。「若手を育て、韓国の食のレベルを高めたい。すでに有名なシェフがいるから、彼らよりも有名になれないだろう、と考えがちな若い人たちに夢を持たせることも自分たちの世代の仕事だ」と語った。

ソウルの「コモン・エラ」で、若手料理人を育成
ソウルの「コモン・エラ」で、若手料理人を育成

ラスベガスを中心にレストランを複数展開するシェフに話を聞くと、「アメリカでは、セレブリティやインフルエンサーの行くレストランの人気が高く、高級レストランを“ブランド”として捉える傾向がある。カジュアル店にしても、知名度のあるチェーン店へ行く人が多い」という。また、トランプ関税などにより食材の価格が上昇し、「コスパの良い大規模チェーンに人が流れることに繋がっている」そうだ。逆にいうと、小規模な個人オーナーの店や、その地域ならではの独自性に根ざした店は、現在苦境に立たされていると言える。

南米で食文化が花開いたように

かつて南米には、地域に根ざした美食を楽しむ文化がなく、例えば、ペルーの「セントラル」のヴィルヒリオ・マルティネスシェフやチリ「ボラゴ」のロドルフォ・グズマンシェフらは、当初、地元のゲストからの支持が得られなかった。その状況を変えたのが、「ラテンアメリカの50ベスト」だった。

 

グズマンシェフは、地元ジャーナリストに「牛の餌に使うような草を使った料理など食べたいか? 料理を持ってきてくれ」と酷評され、「客が入らないため、借金がかさんで夜逃げ寸前だった。ランクインできていなければ店は閉店していただろう」と、振り返る。今やチリを代表するレストランとなり、世界のコラボレーションイベントなどで引っ張りだこだ。

「セントラル」は世界一のレストランとなり、日本にも同じ哲学を持った「MAZ」をオープンするなど、世界でペルーの食文化を広める活動を行っている。

ソウルで開催された今春のアジアのベストレストラン50で、モダン韓国料理「絵ベット」とコラボレーションイベントを行うグズマンシェフ
ソウルで開催された今春のアジアのベストレストラン50で、モダン韓国料理「エベット」とコラボレーションイベントを行うグズマンシェフ

50ベストは2002年に「世界のベストレストラン50」をスタートしてから、2009年に「世界のベストバー50」を、2023年に「世界のベストホテル50」を、さらに2024年に「世界のベストヴィンヤード50」を立ち上げ、ホスピタリティ業界全体に拡大している。ドリュー氏は「50ベストは、個々の店だけではなく、文化理解のプロモーションでもある。シェフだけではなく、チームとローカルコミュニティと共に働く人々にスポットライトを当てたい」と語る。

来年以降も北アメリカ版は毎年行われることになる。年月を経ることで、地域のなかだけに留まり、消えかけていた、多様性あふれる食文化が花開いていくことに期待したい。

 

2025年度「北アメリカのベストレストラン50」、上位50軒のリストは以下の通り。

 

1. Atomix|New York
2. Mon Lapin|Montreal
3. Restaurant Pearl Morissette|Lincoln
4. Smyth|Chicago
5. Tanière3|Quebec City
6. Dakar NOLA|New Orleans
7. Kalaya|Philadelphia
8. SingleThread|Healdsburg
9. Le Bernardin|New York
10. Le Veau d'Or|New York

11. Quetzal|Toronto
12. Baan Lao|Richmond
13. Benu|San Francisco
14. Californios|San Francisco
15. The Four Horsemen|New York
16. Friday Saturday Sunday|Philadelphia
17. Moon Rabbit|Washington DC
18. Via Carota|New York
19. Chubby Fish|Charleston
20. Locust|Nashville

21. Saison|San Francisco
22. Montréa|Plaza| Montreal
23. Kono|New York
24. Aska|New York
25. Lazy Bear|San Francisco
26. Kato|Los Angeles
27. Kann|Portland
28. Published on Main|Vancouver
29. Le Violon|Montreal
30. Emeril's|New Orleans

 

31. Kasama|Chicago
32. Royal Sushi & Izakaya|Philadelphia
33. Saga|New York
34. Albi|Washington DC
35. Jungsik|New York
36. Corima|New York
37. Dōgon|Washington DC
38. César|New York
39. Café Carmellini|New York
40. Penny|New York

41. Buzo Osteria Italiana|Bridgetown
42. Holbox|Los Angeles
43. Alma|Montreal
44. Mhel|Toronto
45. Alma Fonda Fina|Denver
46. Atelier Crenn|San Francisco
47. Providence|Los Angeles
48. Quince|San Francisco
49. Stush in the Bush|St. Ann
50. Beba|Montreal

 

北米版「ベストレストラン50」、初回の1位はどの店に? | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)