中国の大手外食チェーンの間で、メニューを更新する際に大幅値下げに踏み切るケースが目立ち始めた。
麺類チェーンの「和府撈麺(ホーフー・ヌードル)」は6月下旬、新メニューへの切り替えと同時に価格を見直し、料理の単価を16~29元(約352~638円)の水準に引き下げた。以前のメニューと比較した値下げ幅は平均約30%に上る。
この値下げの理由について、和府撈麺は「集中仕入れにより得られた原価低減メリットを、消費者に還元するため」と説明している。
上場外食大手の「九毛九」は、傘下の火鍋(中国式鍋料理)チェーン「慫火鍋廠(ホットポット・ファクトリー)」の料理を5月に値下げした。同じく九毛九傘下の魚料理チェーン「太二酸菜魚」は、スマホアプリなどでクーポンを取得すればカップル向けのセットメニューを1割引するなどのキャンペーンを始めた。
ネット限定の低価格セットも
別の火鍋チェーンの「巴奴(バーヌー)」は、オンライン・プラットフォームを通じた低価格メニューの提供に注力している。
例えば、生活関連サービス大手の美団(メイトゥアン)のプラットフォームで実施したライブコマース(生中継のネット動画による実演販売)では、カップル向けセットメニュー(のクーポン)を1名当たり115~150元(約2530~3299円)で販売。ショート動画アプリ抖音(ドゥイン、TikTokの中国国内版)でのライブコマースでは同じく115~145元(約2530円~3190円)で販売した。
「店舗の立地や時間帯などに応じて、価格を動的に変えている。『巴奴は値段が高い』と感じている消費者に、新たな選択肢を提供したい」。財新記者の取材に対し、巴奴の担当者は狙いをそう説明した。
大手外食チェーンの値下げが相次ぐ背景には、顧客の消費マインドの冷え込みがある。前出の九毛九の決算報告書によれば、慫火鍋廠の2023年の平均客単価は113元(約2486円)と、前年より15元(約330円)低下。太二酸菜魚は同75元(約1650円)と前年より2元(約44円)低下した。
日本にも進出している火鍋チェーン大手の「海底撈(ハイディラオ)」も、2023年の平均客単価が99.1元(約2180円)と前年より5.8元(約128円)下がった。各チェーンの値下げは、顧客を繋ぎ止めるための懸命の努力にほかならない。
「火鍋は消費者の間で人気が高く、料理の粗利率も相対的に高い。消費マインドが低下している局面では、値下げで需要を喚起するのは合理的な選択だ」。食品業界のアナリストの朱丹蓬氏は、財新記者の取材に対してそうコメントした。
より低価格の新興チェーン台頭
もっとも外食産業全体で見ると、消費は必ずしも縮小していない。中国国家統計局のデータによれば、全国の飲食業の2024年1月から5月までの総売上高は前年同期比8.4%増加。同じ期間の(個人消費全体の指標である)社会消費品小売総額の増加率(4.1%)を上回った。
その一方、個人の消費マインドは間違いなく低下している。北京大学国家発展研究院のデータによれば、2024年3月時点の(消費マインドの指標である)消費者信頼感指数は128.04と、1年前より3.7ポイント低下、2023年12月との比較では4.5ポイント低下した。
一見矛盾して見えるデータの裏には、客単価がより低い新興チェーンの急成長があると見られている。例えばカフェチェーンの「瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)」や茶系飲料チェーンの「喜茶(HEYTEA)」などは、フランチャイズ方式をテコにわずか数年で地方の中小都市にまで店舗網を広げ、新たな市場を掘り起こした。
(財新記者:孫嫣然)
※原文の配信は6月24日
中国の外食チェーンで「大幅値下げ」が相次ぐ事情 消費マインド低下に対応、顧客の繋ぎ止め狙う | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
