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今回は「経営戦略と戦略的マ-ケティング戦略」について嶋口充輝先生の考え方を説明しよう。
マ-ケティング戦略の確立(4) |
(3)経営戦略と戦略的マ-ケティングの役割
嶋口光輝は、「戦略的マ-ケティングの論理」の中で、「経営戦略と戦略的マ-ケティングの役割」として、次のように説明している。
経営戦略の枠組みのなかで、特に強調される点は、今日の経営戦略が、市場環境によって方向づけされることである。実は、経営戦略の、この方向づけを司るのが、戦略的マ-ケティングの中心的役割にほかならない。 企業の経営諸機能のなかで、市場環境から機会や脅威を見極め、企業の方向づけに関係するのは、マ-ケティングのみである。他の経営諸機能は、このマ-ケティングによって方向づけられた経営戦略の制約・可能性をつくるものである。 たとえば、財務機能(ないし戦略)は、マ-ケティングによる方向づけに十分な資金上の対応(銀行借り入れか、株式による資金調達かなど)を考えるものであり、技術や研究開発機能は、具体的な技術や製品開発の可能性(自社技術開発、特許買収など)を考えるものである。 また人材開発機能は、マ-ケティングによってつくられた方向への適切な人材の選択、脅威、育成、スカウト等にかかわるものであり、生産機能は、対応的な生産設備のあり方(委託生産、自社生産、向上拡張など)に関連するものである。さらに、組織戦略は、それらの基本方向にそって、どのような適切で適応的な組織構造と適材適所の配置を行なうかを扱い、マネジメント・コントロ-ルは管理システムを明確にして、現実の行動をどのように効果的、効率的に遂行、修正していくかを問題にする。 このように、経営戦略の基本である方向づけを行なうのが、戦略的マ-ケティングにあるとすれば、現代企業の経営理念がしばしばマ-ケティング理念であることは不思議でない。戦略的マ-ケティングは、その意味で、経営戦略の骨格に当たる方向確定部分とも考えられ、しばしば現代の経営戦略と同一視されるのである。 マ-ケティングを経営全体の立場からとらえるとき、マ-ケティングは企業の経営戦略そのものに近いとみられている他の理由をマ-ケティングの焦点の置き方に則して 考えてみることにしよう。 経営学者の1人、ピ-タ-・ドラッカ-によると、「マ-ケティングの究極目的はセリング(販売)を不必要にすることだ」という。この言葉は、実は、マ-ケティングの焦点を日常業務的なセリングと峻別し、企業経営戦略としてのマ-ケティングの役割をより明確に示す重要な示唆を含んでいる。そこで、以下において、この二つの対比を説明しながら、マ-ケティングの戦略的性格と経営的役割を浮き彫りにしてみよう。 |
セリングとマーケティングにみる焦点の差異 | ||
セ リ ン グ | マ-ケティング | |
○「売り込む方法」を追求 ○アクション中心 ○「今日の糧」に焦点 ↓ 「日常業務思考」 | ○「売れるしくみ」を追求 ○分析力、創造力中心 ○「明日の糧」に焦点 ↓ 「戦略思考」 | |
一般的に、セリングとは、すでに出来上がった経営上のしくみを基礎に、所与の製品やサービスを、対象顧客に「売り込むこと」だと考えられる。従って、セリングを担当する営業マン、セ-ルスマンは、もっぱら、アクション中心に、その売り込みに努力する。この活動は企業にとってきわめて重要な活動であり、企業の全体活動を潔くするためには不可欠である。しかし、この活動の焦点は、基本的には「今日の糧」を稼ぐことにあり、その活動が将来にわたってどういう意味をもつかには、さほどかかわりがない。 一方、マ-ケティングの中心的役割は、セリング活動の前提となる「売れるしくみ」をつくることにある。売れるしくみそのものは、いくらからだを使って、アクション中心に働いてもつくられるものではない。売れるしくみはそのあり方を模索することにより可能となる。この売れるしくみは、すでに指摘したように、現在の企業経営のなかにあるのではなく、将来の市場環境のなかに埋没されているのである。 マ-ケティングは、このように将来に向けての売れるしくみを分析的、創造的につくることにより、「明日の糧」のつみ重ねが「明日の糧」を保証しない現在では、明日の糧を直接模索して継続的な成長を計画することが重要で、これこそマ-ケティングの役割になるのである。換言すれば、企業のなかで本来、戦略的マ-ケティングは「タネをまくこと」を中心に考え、セリングは、それをどう「刈り取る」かを考えるのである。 ドラッカ-のいう「マ-ケティングの究極目的がセリングを不必要にする」という表現は、実は、セリングが企業活動として不必要だということではない。真の意味はもしマ-ケティングが真にしっかりつくられているのなら、売り込み型セリングの日常努力は必然的に軽減されてくるということである。セリングは、今日の糧を最大限に稼ぐためには不可欠だが、もし、マ-ケティングによって売れるしくみがあらかじめしっかりつくられ、明日の糧が稼げる方策ができているなら、明日が今日になったときそのまま自然に売れるはずとなる。これこそ、ドラッカ-のいわんとした意図と考えられるのである。 このようにみると、すでに指摘したごとく、戦略的マ-ケティングが、企業の経営戦略そのものに近いという見方がさらに理解できよう。つまり、戦略的マ-ケティングも、経営戦略も、ともに将来の企業の糧を目ざして、創造的、分析的に「売れるしくみ」を考えていくことにその中心課題があるのである。 |
