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今回は、伊丹敬之の著書「よき経営者の姿」日本経済新聞社(2007)から「経営者の条件」について紹介しよう。
伊丹敬之は、日本の経営学者として、現在国際大学学長を務めていて、一ツ橋大学名誉教授でもある。
著書としては、「経営戦略の論理」日本経済新聞社(1980)、「新・経営戦略の論理」日本経済新聞社(1984)他に多数ある。
現代経営者の条件(15) |
[5]よき経営者の姿(1)
(1)顔つき
「40歳を過ぎた人間の顔つきは、親のせいでもなんでもなく、自分の責任」
①三つの共通点
1.深い素朴さ
◎松下幸之助「実践経営哲学」
「経営者が経営を進めていく上での心がまえとして大切なことはいろいろあるが、いちばん根本になるものとして、私自身が考え、努めているのは素直な心ということである。
素直になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさないべきかということも分かってくる。
なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから涌いてくる。さらには、寛容の心、慈悲の心というものも生まれて、だから人もいっさい生かすような経営ができてくる。
2.柔らかい強さ
顔つきから感じる強さは、芯の強さの表れであろうし、物事の自分なりの筋をきちんと一本もっている強さであろうし、失敗にめげない強さであり、不安にぶれない強さである。
しかし、その強さは、硬さであってはうならない。硬さは、人を遠ざける。硬さは、もろさや頑固さにつながる危険がある。だから、軟らかいという形容詞がつく。強さを背後に秘め、しかし柔らかさで人を魅了する最後の粘り腰といってよい。
◎松下幸之助:経営の責任
「経営者はその経営体における“王者”である。そこにおけるいっさいの人、物、資金などを意のままに動かす権限を与えられているのが経営者である。
しかし同時に経営者は、それらの人、物、資金すべてに対して、愛情と公正さ、また十分な配慮をもって、それぞれ最も生かされるような用い方をし、その経営体を限りなく発展させていく責務を負っているのである。」
3.大きな透明感
責任意識とは、こうせねばならないという思いである。そして、覚悟とは、何かをなした後の結果について、自分で全て引き取るという思いであろう。その覚悟を決めると、人の顔は透明になる。
透明感をもたらす覚悟は、経営者として必要な複雑な総合判断、矛盾する要請にどこかでけりをつける判断をするからこそ、生まれてくる。
それは、悩んだ末の、自分なりのけりをつけての覚悟である。けりをつけるためには、しばしば公の心をもたねばならない。我欲を捨てた心境が、透明感となって表れる。そして、公の心は、大きさにもつながる。
◎松下幸之助「実践経営哲学」:「自然の理法に従うこと」
「私は自分の経営の秘訣というようなことについて質問を受けることがあるが、そういうときには『別にこれといったものはないが強いていえば、“天地自然の理法”に従って仕事をしていることだ』という意味を答える場合がある。
天地自然の理法に従った経営などというと、いかにもむずかししそうだが、たとえていえば、雨が降れば傘をさすというようなことである。…
限りなき生成発展というのが、この大自然の理法なのである。だから、それに従った行き方というのは、おのずと生成発展の道だといえよう。それを人間の小さな知恵、才覚だけで考えてやってのでは、かえって自然の理にもとり、失敗してしまう。
大いに知恵を働かせ、才覚を生かすことも一面きわめて大切であるが、やはり根本は人知を超えた大きな天然自然の理に従って経営をしていくということではなくてはならないのである」
②顔つきを育むもの
思考、決断、感謝
名経営者の顔つきは、さまざまな経験を行ってきたはずの、深い思考と決断と感謝であった。何かに悩んで、深く考える。その思考のプロセスで、迷いに迷う、そしてときに霧が晴れる。
また、考えを奨めると新しい霧が出る。そのジグザグのプロセスの深さが、顔に何ものかを表出させる。あるいは、ぎりぎりの状況で、決断をする。その決断に至るまでの思考と、そして最後の決断のジャンプをする覚悟が、顔に何ものか刻む。
決断をして行動をとれば、結果が何らかのかたちでひとまずは出る。その結果に対して、そしてその結果を生むために自分を助けてくれたもろもろの人や状況に対して、感謝の気持ちをもつ。その感謝の念の積み重なりが顔に何ものかを残していく。
つまり、深い思考と決断と感謝が、顔つきを育む。三つのうちどれを欠けても、いい顔つきにはならないのだろう。逆にいえば、深い思考と決断と感謝は、名経営者が育つための一つの基礎字要件ともいえそうである。
(ヤマト運輸小倉昌男):「小倉昌男経営学」
「経営者にとって一番必要な条件は、論理的に考える力をもっていることである。なぜなら、経営は論理の積み重ねだからである。……論理の反対は情緒である。情緒的にものを考える人は、経営者には向かない」
