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2019-09-14 21:49:00
フランスのスーパーマーケットや街中で開かれているマルシェでは、「bio」と書かれた看板の下で野菜や果物が売られている光景をよく目にします。「bio(biologique)」とは、日本では「有機」などと呼ばれ、化学肥料や農薬を使わず、かつ、遺伝子組み換え技術を使わない等の生産要件を満たす有機農産物や、原料の95%以上に有機農産物が使われた加工食品を指し、ヨーロッパ共通認証の「ユーロフィーユ」や、フランス農業・食料省の認証である「AB(Agriculture Biologique)」マークが付され販売されます。

 これらは、日本の有機JASに相当する厳しいものですが、約1,850億円(2018年 農林水産省調査)といわれる日本の有機食品市場と比べ、フランスbio市場は2013年時点で既に45億ユーロ(約5,400億円)、2018年には97億ユーロ(約1兆1,640億円)と遥かに大きくなっています。
 
 bioであると35%程度高価になるにも関わらず、フランスにおいてbioが浸透している理由は何でしょうか。フランスの公益団体、有機農業開発促進機関(Agence BIO)の調査(2019年2月公表)によると、フランス人の88%がbio商品を購入した経験があり、また、71%が自分と家族の健康、地球環境への配慮のため、月1回以上bio商品を購入すると回答しています。国民一人当たりの平均購入額は年間136ユーロと日本の10倍以上も高く、食と健康への意識の高さがうかがえます。
 
 フランス国民の高い意識を背景に、農業・食料省は2018年6月、農業及び食品に関する行動計画「Ambition Bio 2022」を策定し、有機農業への転換促進のため総額11億ユーロの財政支援を盛り込むなど、農業構造の転換を強く後押しするほか、他省と共同で、2025年までの農薬使用半減目標も設定しており、農薬依存脱却に向けた強い意志が感じられます。
 
 一連の動向は、フランスの地域振興にも恩恵をもたらしています。Agence BIOの報告書(2019年6月公表)では、2018年にbioに関し18,714名の新たな直接雇用が創出されたとされています。また、フランス南部オート=ガロンヌ県ヴォルベストルコミューン共同体では、域内で生産される有機農産物の管理、加工、流通の一元化プロジェクトが進行しており、地域の雇用、経済等促進する新たな取り組みへと発展しています。
 
 これらのフランスのbioの取り組みから今後の日本の農業や地方にとって有効な方策も期待されます。

価格比較例など詳しくはこちら。
https://www.clairparis.org/ja/clair-paris-blog-jp/blog-2019-jp/1322-2019-08-28
 
                                                パリ事務所 所長補佐 澤田