インフォメーション

2016-06-18 22:57:00

ミャンマー  2016/06/15(水曜日)
佐賀の団体が有機農法を指導:(上)北東部の農家に広がる[農水]

戦前は世界最大のコメ輸出量を誇った農業国ミャンマー。国民の7割が農村に住み、潜在性が大きいと期待されるが、近代化の遅れや知識の不足で生産性が上がらない上、海外から流入する農薬で安全も確保できていない。地球市民の会(TPA、佐賀市)はそんな状況を改善しようと、農業が盛んな北東部シャン州南部で長年、有機農法を指導。裾野が広がり始めた。

 



観光地としても有名なインレー湖に近いシャン州南部の主要都市タウンジー郊外に、TPAが運営する「ナウンカ村落開発センター」がある。5月下旬、周辺の村から集まった若者を前に、ベテラン教師ミョー・ミン氏が教壇に立っていた。「インレー湖の水は湖岸や湖上の農業で農薬を使いすぎて飲めなくなり、魚も減った。木酢液で虫を近寄らせなければ、殺す必要はない」。木酢液とは、ここで教える「循環型農業」で要の一つとなる忌避剤のこと。座学の後、ミョー・ミン氏と若者らは外の畑に出て、精米後の籾(もみ)殻から酢液をつくる実技に移った。

センターは2005年に完成、2エーカー(約8千平方メートル)ほどの土地に教室や宿泊所のある母屋、畑や養鶏場、精米所などを備える。ここで月1回、農家20人ほどを集めた7日間研修が行われるほか、年に1度は若手10人ほどを対象とする3カ月の長期研修も実施。近隣の村を中心に州内外から集まる研修生はセンターに泊まり込み、寝食を共にしながら学ぶ。研修は延べ80回を数え、受講者は1,000人を超えた。近隣の村への出張研修も行っており、裾野は広がりつつある。

TPAのミャンマー国代表、柴田京子氏は「土地が痩せて困って研修を受けにくる農家が多い」と話す。国境を接するタイや中国から安価な化学肥料が大量に流れ込み、農家はビルマ語の使用書もないまま、業者の言いなりに大量の化学肥料を使い、土地が痩せる悪循環が起きているという。

センターで教える農法の柱は、農薬や化学肥料の代わりに、土地に生息する菌を増やして堆肥にする「土着菌堆肥」、鶏糞や油かすを使う「ぼかし肥」、炭焼きなどで出る液を忌避剤にする「木酢液」の3つだ。

5月下旬の7日間研修に近隣の村から参加していたウィン・チョンさん(30)は、「ハトマメを植えたら初年はできたが、2年目は減り、3年目は全く実らなくなった。ミカンも昔は何年でも実ったが、いまは実らない。収量があがらないので参加した。肥料を昔の牛糞(ふん)から化学肥料に切り替えたせいかもしれない」。研修で学ぶ循環型農業は「環境にも自分にも良いので、実践しようと決めた」と話した。

過去に3カ月研修を受けたというトゥン・ナインさん(29)も、「化学肥料を使うようになって土が硬くなった」として参加した。研修で習った堆肥の作り方やコメの植え方を実践している。ただ化学肥料や農機が普及する一方で牛は減り、堆肥に使う糞なども買わなければならなくなった。

 

■成果示し悪循環絶つ

 



ミョー・ミン氏は自身も農家で、TPAが引き継ぐ以前に別の団体がタウンジーで循環型農業を教えていた1999年から教師を務める。「農家は30年前から化学肥料を多く使っていたが、近年は特に広がった」と危機感を強めている。

タイから輸入されるハイブリッド種は化学肥料の使用を前提とした種。在来種・固定種であれば種取りができ、何年でも実るが、ハイブリッド種は毎年、種も買わなければならない。生産コストが上がり続ける一方、収入はなかなか伸びない。

一方、ミョー・ミン氏が指導したインレー湖畔のテレーウー村では、土着菌を生かす農法で1エーカー(約4千平方メートル)当たりのコメ収穫量が国内で一、二を争うまでに高まるという成果を挙げた。実績を示すことが農薬や化学肥料に頼る悪循環を絶ち、他の地域への循環型農業の普及を後押しすると期待する。

TPAでは、約10の農家からなる農業組合も組織して、有機栽培の振興に取り組む。センターのスタッフの案内で周辺の村を回ると、研修所で学んだ農家が、「隣の農家も循環型農業を実践している」と教えてくれた。研修を受けた人が周囲に広げたり、近隣の村への出張研修に参加した人が実践したり。タウンジー駐在のTPAプロジェクトアドミニストレーター、鈴木亜香里氏も「この広がりには驚いた」と言う。



当初は研修に参加しても自分の畑に持ち帰って実践する人ばかりではなかった。有機栽培で安全な野菜を作っても、卸先のブローカーが評価してくれず、収入向上に役立たなかったからだ。ブローカーは見た目重視で、農薬の有無は意に介さない。農家が実践するには、販路が必要だった。(八木悠佑、(下)は16日に掲載予定です)