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2021-08-21 22:31:00

ファミレス運営11社の店舗数、コロナ禍で793店減少 「都心部の見直しは避けられない」東京商工リサーチ調べ

2021年08月16日 09時20分 公開
[ITmedia]

 東京商工リサーチの調査によると、レストランを運営する上場主要11社の店舗数は、直近決算期(2021年3月末・21年5月末)で8322店、20年12月末の8437店から3カ月間で115店減少したことが分かった。新型コロナ流行前(19年12月・20年2月)は9115店だったが、感染拡大で793店が減少していることになる。

レストラン主要企業の店舗数はコロナ禍で793店減少(画像はイメージ、ゲッティイメージズ提供)

 同社が7月12日に発表した上場14社を対象にした「大手居酒屋チェーン」店舗数調査では、コロナ禍前に比べ14.5%減の1048店が閉店している。酒類提供を前提とする居酒屋に比べ、レストラン事業は酒類提供への依存度は大きくない。

 にもかかわらず、店舗数が減少していることについて東京商工リサーチは「繁華街やオフィス街での夜間営業ができなくなったことに加え、それ以外の出店地でも長引く外出自粛や、滞在時間の制限も影響し、厳しい店舗運営を強いられている」と分析。「夏休みに入っても1日の感染者数が過去最多を記録する日が続き、レストラン運営各社の店舗運営は新たな見直しを迫られる可能性もある」と指摘する。

レストランレストラン運営主要11社の店舗数推移(東京商工リサーチ調べ)

 主要11社のうち、店舗が増加したのはサイゼリヤのみ。コロナ禍前の1085店から7店舗増え、1092店だった。

シスコが目指す次世代のデータセンターネットワーク、実現の鍵は?

 コロナ禍前と比べ店舗減少率が最も大きかったのは、九州・中国を中心に全国にファミリーレストラン「ジョイフル」を展開するジョイフルで22.6%減(882店→682店)。同社は、コロナ禍による外食産業の環境変化を理由に、20年6月に200店の退店計画を発表していた。

 次いで、「ステーキ宮」などを運営するアトムが21.5%減(468店→367店)だった。しかし、アトムは前四半期から1店舗増加しており、退店ペースは底を打ち一段落している。このほか、うどん主体に和食メニューを展開するグルメ杵屋は18.4%減(396店→323店)、イタリアンレストラン「カプリチョーザ」のWDIは13.7%減(102店→88店)と続いた。

レストランレストラン運営主要11社店舗数推移(東京商工リサーチ調べ)

 今春以降、既存店をより収益性の見込める別業態に転換し、出店を図るケースも散見される。コーヒーショップやメニュー特化型など、コロナ禍でも高いニーズをあて込んだ業態に転換し、コロナ禍での生き残りを目指している。一方、東京商工リサーチは「地域や業態により、不採算店のスクラップは並行して継続するとみられる」とし「特に賃料が割高な都心部では店舗見直しは避けられないだろう」と指摘する。

 集計対象の企業は、ゼンショーホールディングス、サイゼリヤ、すかいらーくホールディングス、ロイヤルホールディングス、セブン&アイ・ホールディングス(子会社のセブン&アイ・フードシステムズのみ)、ジョイフル、グルメ杵屋、木曽路、アトム、WDI(直営のみ、海外含む)、梅の花(外食事業のみ)の11社。


2021-08-21 22:29:00

【新型コロナ】2021年上半期の飲食店倒産件数。前年比下回るも約半数がコロナ関連

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画像素材:PIXTA

東京商工リサーチが、2021年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は330件であることを発表した。前年同期と比べ21.0%減少しており、上半期ベースでは前年同期を3期ぶりに下回る数字だ。

【注目記事】飲食店が活用できる「給付金・補助金・助成金・融資制度」総まとめ -最新版-

倒産件数としては過去15年で2番目の低水準

飲食業の倒産が大幅に抑制された。国や自治体、金融機関などによる資金繰り支援が功を奏したとみられ、2007年同期からの15年間においては、2015年(312件)に次ぐ2番目の低水準を示している。しかし、新型コロナ関連の倒産は145件と倒産件数の半数に近く、コロナ禍の長期化で飲食業界が深刻な状況にあることに変わりはない。

倒産件数は、2015年同期に次ぐ2番目の低水準

「居酒屋」などのコロナ関連倒産は6割

業種別の倒産状況は、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の91件(前年同期比17.2%減)が最も多く、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」79件(同7.0%減)、「食堂,レストラン」52件(同49.5%減)と続く。一方、業種別に新型コロナ関連の倒産が占める割合をみると、「そば・うどん店」60.0%(新型コロナ関連倒産3件)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」59.4%(同47件)、「持ち帰り飲食サービス業」50.0%(同4件)の3業種で5割以上を占めた。コロナ禍での外出自粛、テレワークの増加、度重なる休業要請や酒類提供の停止などが業績悪化をまねいたとみられている。

業種別では「専門料理店」の91件が最多に

小・零細企業の脱落が目立つ

資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」は288件で、飲食業倒産に占める構成比は約9割(87.2%)。負債額別では、「1億円未満」が288件で、構成比は約9割(87.2%)だった。

資本金・負債額ともに、小・零細規模の倒産が大半を占めている。来店客の減少や客単価の下落に加え、協力金などの支払いに遅れが出ていることが、手元資金の少ない小・零細企業を息切れ状態にしていることがうかがえる。コロナ関連の倒産は今後も増加する可能性が高い。

一日に発表される新型コロナ陽性者数、重症者数は増加の一途をたどっている。緊急事態宣言やまん延防止措置地域も大きく拡大しており、状況は深刻だ。飲食店には引き続き感染防止対策を徹底してもらいつつ、国や自治体には即時性のある財政支援を強く願いたい。

【新型コロナ】2021年上半期の飲食店倒産件数。前年比下回るも約半数がコロナ関連 | Foodist Media by 飲食店.COM (inshokuten.com)


2021-08-21 22:25:00

PayPay、10月から決済手数料有料化1.6%に 他社を大きく下回る

2021年08月19日 15時15分 公開
[ITmedia]

 PayPayは、これまで無料としてきた中小店舗向け決済手数料を10月1日から有料化する。月額1980円(税別)の「PayPayマイストア ライトプラン」への加入を条件に、決済金額の1.6%とする。クレジットカードが2.5〜3.75%、他のコード決済が2〜3%程度の手数料を課しているのに比べて安く、競争力を維持する狙いだ。

PayPayの決済手数料(PayPay)

 「PayPayマイストア ライトプラン」はPayPayクーポンの発行などが行える加盟店向けサービス。同サービスに加入しない場合、決済手数料は1.98%となる。

シスコが目指す次世代のデータセンターネットワーク、実現の鍵は?

 これまで多くのコード決済各社は、3.24%の楽天ペイを除き、加入促進のために決済手数料を無料としてきた。この無料期間が続々終了している。多くは2.6%で、メルペイは7月から、d払いとau PAYは10月から手数料を徴収する。LINE Payは10月から2.45%となる。

 最大手のPayPayが、どんな決済手数料とするかが注目されていたが、他社を大きく下回る水準に決まった。

 この手数料を原資に、利用者へのポイント還元や入出金の費用も負担するわけで、4000万ユーザーと340万カ所の加盟店という、他社を凌ぐ規模を生かした事業モデルとなると見られる。


2021-08-13 18:01:00

巨大な成長余地、中国のコーヒー市場

カップ数 中国コーヒー市場

中国の1人当たりのコーヒー消費は、米国だけでなく隣国の日本、韓国と比較してもかなり小さい数字である。それでも、2019年の中国コーヒー市場規模は約860億元(1.3兆円)、2026年には約2倍の1,676億元(2.5兆円)との予測もあり、成長余地の大きさが分かる。
(Forrward The Economosit https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/201116-bbed57b9.html )

世界全体のコーヒー消費量の2017 -2020年間平均成長率(CAGR)は1.1%で世界4位の消費国である日本はマイナス1.6%となる。
(ICO 国際コーヒー機関 http://www.ico.org/prices/new-consumption-table.pdf )
そのため、中国市場での新興企業の登場や、大手企業の多角的投資が続き、同時にブランド淘汰とプレーヤーの変化も続くと考える。

ソリュブル(インスタント)が多い中国市場

コーヒー 中国
「お茶文化」が根強いとみられていた中国で、一般消費者にコーヒーが紹介されたのは1980年代の初め、ネスレ、マックスウェル(米国)によってと言われる。(日本では1960年前後に国産、輸入自由化で一気に普及)主流だった製品は「3in1」と言われる、ソリュブルコーヒー(インスタントコーヒーとの呼称もあるが本文ではソリュブルと表記)、砂糖、粉乳を混合したものであった。一部ホテル、レストランでレギュラーコーヒーの提供はされていたが、あまり一般的ではなかった。

現在でも製品構成比は、ソリュブルが約70%、レギュラーが20%、RTD(缶、ボトル)が10%と、ソリュブル人気が根強い。今後は低単価のソリュブルから、レギュラーが普及、高付加価値商品への志向が高まるとの見方もある。

「luckin coffee」登場で、変化する市場 

コーヒー 中国
1999年、スターバックスが中国で開業(当時は合弁事業でスタート)。その後台湾、香港、韓国、欧州資本がカフェ事業に参入し、チェーン化とともにコーヒー消費が拡大した。2015年以降は、ECによる新興ブランドの立ち上げが起こり、luckinがオンラインオーダー、宅配を中心としたイートインスペースを減らした小型店舗の開発を行い、急激な店舗増加策が、注目を集めた。

米国上場後、虚偽の売上高を申告していた問題などもあり、評価を落とした。しかし、フロントランナーのスターバックスが、アリババと組んでデリバリーを開始するなど、「本家」が中国市場への対応に変化を迫られた形と言える。

食品世界大手によるM&A相次ぐ

コーヒー 中国
中国市場の動向について分析する前に、世界のコーヒー市場の現状をまとめたい。日本では余りなじみのない社名も多いが、全体の資本の流れから説明する必要があるためだ。世界のコーヒー市場金額ベースでは 4,366億米㌦(2021年予想、出所:Statista)で、今後5年間の年間成長率(CAGR)は8.3%と予想される。その内、ローストコーヒーの市場は3,198億米㌦と見られる。

前述の消費量ベースより成長率が大きいのは、ソリュブルより高価なレギュラーの消費量が増えるなどの理由が推察される。

「食品」「外食」の垣根なくなるコーヒー市場

コーヒー市場は、カフェなどを経営する「外食」、豆やソリュブルなどを販売する「食品」に分かれていた。
しかし、昨今の世界的な資本の動きを見ると、大手食品会社や投資ファンドがカフェ経営会社を取り込む形で、大型M&Aが相次ぎ、外食と食品の垣根がなくなりつつあると言える。

世界のコーヒー企業ランキングは出所により異なるが、1位はネスレ、2位はJDEピーツ(ヤコブ・ダウ・エグバーツ)となる。いずれも、外食、食品いずれの市場も抑え、家庭、オフィス向けのコーヒーメーカー向け需要の獲得を目指している。

1位ネスレの戦略 

スタバ コーヒー 中国
総合食品製造業で世界1位のネスレは、2017年に米国ブルーボトルコーヒー(サードウェーブ、として日本にも進出)の68%株式を約5億米㌦で、米国のボトル・缶コーヒー飲料(RTD=Ready To Drink)Chamelon Cold-Brew社株式18%を25億米㌦で取得した。更に2018年には、スターバックス関連の商品販売権を約72億米㌦で取得している。この契約で、スーパーなどの小売、フードサービス向けに、ネスレがスタバの商品(豆やソリュブル)を販売できる。

ネスレは家庭、オフィス向けのコーヒーメーカー、「ネスプレッソ」の普及にも注力しており、この中にスターバックス製品も含め販売拡大を図っている。

2位JDEピーツ、ファンドの投資で拡大

コーヒー 中国
2位JDEピーツの拡大は、親会社JABグループ(ドイツの投資ファンド)の積極的なコーヒー産業への投資によるものだ。これまで多くのコーヒー企業にM&Aを繰り返しており、当時世界2位、3位だったJDE、キューリグ・グリーン・マウンテンなどを傘下に収めた。2019年には米国のカフェチェーン、「ピーツ・コーヒー&ティー」(Peet’s Coffee&Tea)と合併した。店舗展開は米国内一部地域に限定されているが、ロースト製品などは全米で展開。軽いコーヒーが主流だった米国で、深煎りコーヒーが普及するきっかけとなった存在であり、熱心なファンが多い。こうした積極的なM&Aにより、ネスレのシェアに迫る規模となっている。

また、2015年に買収したキューリグ社は、家庭用・オフィス用のコーヒーメーカーを製造販売している。JDEの狙いは、ネスプレッソへの対抗であり、家庭、オフィスニーズの取り込みである。グループのピーツブランドに加え、イリ―社(ill、エスプレッソで有名、買収提案をはねつけた)など、幅広いブランドのマシン用カプセルの販売を展開している。

コカ・コーラの転換

コカコーラ
ここでコーヒー市場新規参入組として注目されるのは、コカ・コーラ社だ。かつて、前述のキューリグ社に投資していたが、コーヒー市場への参入よりも、「家庭用コーラサーバー」の開発と拡販を目的としていた。結果として、家庭用コーラサーバーは普及せず、投資後1年で売却・撤退している。

しかし2018年に同社は英国コーヒー大手 コスタ(Costa Coffee)を51億米㌦で買収。グローバルコーヒー市場へ、本格的に参入した。
外食事業としてみると、コスタの世界での店舗数は約3,800。中国では2006年進出し約400店。コカ・コーラ社は外食事業の拡大もあるが、同社の強みとしているファストフード等フードサービスへの製品提供、更にコスタの特徴である業務用コーヒーマシンの設置も進めていくと見られる。

ちなみに、日本、中国、韓国ではコカ・コーラは「ジョージア」ブランドの缶・ボトルコーヒーなど(RTD)を販売しているが、グローバル商品では無い。(コカ・コーラの本社はジョージア州アトランタだが、米国でジョージアは売っていない)日本市場では、業務用コーヒーマシンの設置を進めつつ、ジョージアとの差別化を図るのではと推測する。

中国コーヒー市場が注目される理由とは

多元化するコーヒーの提供チャネル
1. 外食店で購買  店内喫食、テークアウト、デリバリー
2. 小売店で購買  レギュラーコーヒー、ソリュブル、RTD
3. オフィス・家庭で購買  マシン提供によるカプセルの定期購買
4. その他 自販機 (RTD, カップ)

メーカーの外食ブランド取り込みにより、従来の自社製品以外に消費者の購買機会を進めている。また、それぞれにECが関与する事で消費場所、機会は更に多元化する。そういう意味で、ECの先進地であり、コーヒー市場の急成長が見込める中国市場への注目は否応にも高まっている。

中国市場の現状

スターバックスは2020年末時点で、中国に4,863店を展開する。2018年度が約3,600店舗であった事から、出店スピードは速い。2021年度600店、2022年度には230都市で開業し、合計6,000店舗を目指す計画を発表している。(スタバの会計年度は9月期)

2020年度は、世界全体の約33,000店舗で売上高が前年比約11%減少し、235億米㌦となった。一方で、中国は1%増であり、21年度以降も2-4%増を予想している。更に2020年11月に江蘇省蘇州市で自社コーヒー焙煎工場、倉庫を含むコーヒー・イノベーション・パークの建設を開始。総投資額は11億元(約165億円)で、拡大する中国市場へのインテグレーション化を進めている。

スターバックスのボトル飲料等(RTD)は、1994年以降ペプシコが扱っている。中国では同ペプシコ事業を買収した即席麺の世界最大手「康師傅」(カンシーフー)が継承し製造販売している。今後、ソリュブル部門では圧倒的シェアを持つネスレが、高付加価値商品としてスターバックスの製品販売展開をどう進めるのか注目したい。

レッドオーシャン化する中国コーヒー市場

スタバ コーヒー 中国
中国のコーヒー市場の成長をみて、様々な企業が本格的に参入しており、市場はレッドオーシャン化しつつある。SNS・ゲーム大手のテンセントは2020年、カナダ最大のチェーンTim Hortons中国事業に投資、10年以内に1,500店舗開業するとの計画を発表した。今後はインターネットを含め、B2C及びB2B展開を行っていくと見られる。

カフェチェーン以外の外食では、マクドナルドが2020年11月に3年間で25億元(約400億円)投資を掛け、4,000店舗以上にマックカフェを開設しレギュラーコーヒーの提供を発表。ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は2019年にアップグレードしたコーヒーを「K Coffee」としてチェーン6,000店舗で展開する。

中国でケンタッキーを運営するYum Chinaは、昨年Lavazza旗艦店を開業、更に独自ブランドCOOFFii&Joyの展開を発表した。
また中国で約28,000店舗のコンビニ最大手、易捷(Easyjoy)は、ラッキンコーヒーと提携。2020年末には、EC販売の連珈琲(CoffeeBox)と合弁設立を発表。E-Coffeeとして3年以内3,000店開業を目指すとしている。

コスタを買収したコカ・コーラ社は、コスタブランドのRTDを投入。今後コーヒーマシンの設置、展開も行うとみられ、一方出店が進まない外食分野からマシンとRTDへの注力に進む可能性もある。マシンについては、セキュリティ上、オフィスビル各フロアまでデリバリーサービスが出来ない中国のオフィスユースに適合する可能性がある。ちなみに、RTDについては中国で国有企業の中糧集団との合弁と、太古(Swire Pacificグループ)の2社がコカ・コーラボトラーとなっている。

コスタカフェ使用のローストビーンズは輸入であったが、コスト面の見直しや、マシン、RTD用も含め中国国内でローストを進める、とのうわさもあり、中国市場への新たな拡販を計画していると考える。

まとめ

中国市場では他の市場より成長余地が大きい。また、EC分野では中国は規模、質ともに世界をリードしている。そのため、コーヒー産業の資本提携や、外食、小売、家庭という従来の市場にECを掛け合わせ、消費者の購買動機を増やす動きは、加速化すると見られる。

「luckin coffee」だけじゃない  過熱化する中国コーヒー市場 | Frontier Eyes Online by フロンティア・マネジメント (frontier-eyes.online)

 


2021-08-13 17:55:00

有機農業転換へ補助金  農水省、脱炭素支援

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農業の脱炭素は世界的な課題となっている

農林水産省は化学肥料や農薬を使わない有機農業への転換を促すため、担い手に補助金を出す新たな制度を設ける。新法の制定も検討する。欧米は脱炭素や食料安全保障の確立に向けて環境配慮型農業への大型支援策を打ち出しており、日本も将来の競争に備える。

日本では農薬や化学農法を使う「慣行農業」が一般的だ。一部の化学肥料は製造時に化石燃料を使っており、二酸化炭素(CO2)を排出する。畑などに散布した化学肥料により、農耕地からは一酸化二窒素(N2O)が発生する。N2Oは削減が難しいとされる温暖化ガスで、温暖化への影響度がCO2のおよそ300倍という。

有機農業への転換を促し、農業の脱炭素化を進める。例えば堆肥を活用して化学肥料の使用量を減らせば、脱炭素につなげられる。

2022年度予算の概算要求に制度の新設を盛り込む。金額規模は今後詰める。脱炭素と環境負荷の低減を要件とし、有機農業への転換に必要な資材購入や設備導入などにかかる費用を補助する。同時に農業の大規模化や効率化も進める狙いで、国が認定する仕組みを整備する。

農水省は今回の枠組みを複数年度にまたがる中長期的な戦略と位置づけ、新法の制定も検討する。有機農業への移行にあたり、農業の担い手が投資や経営戦略を立てやすいように環境を整える。

問題はコストだ。農薬や化学肥料を使う「慣行農業」に比べて、有機農業は除草や害虫駆除の手間がかかる。農作物の生育スピードは遅く収穫量も減少しがちで、コストが5割近く高いとされる。

それでも政府が転換を急ぐ背景には、脱炭素や環境配慮に対する世界的な意識の高まりがある。世界で排出される温暖化ガスのおよそ4分の1は農業分野によるもので、厳しい目が向けられている。

欧米は脱炭素化に向けた大型の支援策をいち早く打ち出した。

欧州連合(EU)は30年までに有機農業の面積割合を25%に増やす目標を掲げ、環境配慮型農業を目指す農家の所得支援に3870億ユーロ(約50兆円)の予算を充てるとした。米国のバイデン政権も気候変動に配慮した取り組みをする農家に対し給付金を出すといった支援策を講じる方針を示している。

日本は農水省が5月に策定した農業の脱炭素化に向けた「みどりの食料システム戦略」で、有機農業農地の割合を50年までに25%に増やす目標を掲げた。国内の農業の大半は慣行農業で、現状は有機農業が農地に占める割合は1%未満にとどまる。今回の補助金などの施策と合わせて転換を急ぐ。

今後は農作物の調達や輸出時に、作物の育成時の環境対応の有無や内容が問われる可能性がある。環境に配慮した作物という付加価値で輸出拡大も狙う。

コストはかかるが、健康志向や環境問題への関心の高まりとともに有機食品は消費者の支持も得られるようになってきた。欧米系調査会社ビジネス・リサーチ・カンパニーによると、世界の有機食品の市場規模は2025年に3808億ドル(約42兆円)と20年の約9割増に拡大するという。

有機農業転換へ補助金  農水省、脱炭素支援: 日本経済新聞 (nikkei.com)


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