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2020-01-18 13:40:00

「高値で買いたい!」中国人期待の日本産水産物のカラクリ

日経ビジネス記者
2020年1月16日
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 中国で日本産水産物への期待が高まっている。場合によっては「倍の高値でも買いたい!」との声も現地にはあるという。そんな期待に応える、三菱ケミカルが手掛ける付加価値向上策とは。

 「品質が良く、文句なし。コスト次第だが取引量を増やせる」。中国・大連にある日本料理店「政宗」の店主は、日本から送られてきたマダイやブリの品質の高さに、思わず表情を緩めた。

 2019年11月、三菱ケミカルやNTTデータが手掛けた魚の輸出の実証実験。三重県や鹿児島県の養殖場で水揚げされたマダイやブリを空輸し、中国の大連や北京向けに輸出した。

 一般的な輸出との大きな違いは、デジタル通貨の発行などに使われてきたブロックチェーン(分散型台帳)技術を応用したこと。魚を詰めた発泡スチロールに貼られたQRコードを基に、いつどこを経由して届けられたのかを追跡できる。保冷温度などの記録もブロックチェーンで管理した。

出荷前に、魚や発泡スチロールにQRコードを貼って識別する
QRコードを読み取れば、出荷日だけでなく、養殖場での投薬履歴なども確認できる
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 ブロックチェーンの最大の特長は、データの書き換えが難しい点にある。NTTデータなどは、どのような管理下で輸入されたのか、QRコードを読み取れば現地の業者や客も確認できる仕組みを作った。日本料理は海外でも人気が高く、鮮度の高さは大きなウリになる。だが、トレーサビリティー(生産履歴追跡)をきちんと証明するものがこれまではなかった。

 事前の現地調査では、「トレーサビリティーがきちんと管理されたものであれば、倍の値段でも買いたい」という声がバイヤーや料理店から多く寄せられていた。「高く売れれば、それだけ漁師や養殖業者の実入りが増える」と三菱ケミカルのインフラ・アグリマテリアルズ本部の吉田重信プロジェクトマネジャーは胸を張る。

現地に着荷後、通関履歴やどのような経路で運ばれたかの位置データ、温度管理のデータも一目でわかる
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 三菱ケミカルは魚の養殖を成長市場の1つと捉えている。養殖に使うエサで、三菱ケミカルが持つ食品機能材などの売り上げ増を期待する。日本は四方を海に囲まれ、恵み豊かな海流も通る、世界でも屈指の漁場を抱える。資源が乏しい日本にとって、水産物は世界に売っていける数少ない資源と言える。水産物は水揚げから加工、運送などのシステムが確立されており、鮮度の高さは海外でも評価が高い。

 だが、農林水産省「漁業経営調査報告」によると、沿岸漁船の漁労所得は年間で200万円程度と低い。高齢化が進む一方で、次世代の担い手不足に慢性的に悩まされる。いかにして水産業従事者の所得を増やすか。

 その課題解消策の1つとして、三菱ケミカルはより高く海外で売るスキームの構築が不可欠と考える。水産白書によると日本の水産物の輸出は2018年に前年比26%増の75万トン、金額ベースでも同10%増の3031億円と増えている。海外で高く売れば、漁師や養殖業者などへの実入りも増えるというわけだ。そのためには、履歴をきちんと証明するプラットフォームを整備する必要がある。

大連の日本料理店の店主は、鮮度の高さに驚いた

 今回の実証実験では、QRコードを活用してトレーサビリティーを確保できることは証明できた。ただ、中国内でのコールドチェーンの確立などの課題も見えた。将来的にはチップを活用した個体管理も視野に入れるが、チップの価格が高いと、利用できるのが高級魚種など一部に限られるといった問題もある。

 政府は農林水産品の輸出を19年に1兆円とする目標を掲げている。香港や韓国への輸出の減少もあり、19年の達成は難しそうだが、経済連携協定(EPA)を発効した欧州や環太平洋経済連携協定(TPP)発効国向けの輸出は好調だ。農林水産品の輸出増加には、付加価値を高めるためのプラットフォーム整備も欠かせない。


2020-01-18 13:39:00

日本ハムが植物肉、3月から参入 健康志向で需要増
【イブニングスクープ】

サービス・食品
関西
2020/1/14 18:00
日本経済新聞 電子版
 
 
 
 
 

食肉国内最大手の日本ハムが3月、植物性の材料を使う「植物肉」市場に参入する。大豆を主原料にしたハムやソーセージ風の商品を発売する。動物保護や健康志向の高まりといった観点から植物肉の需要は世界で急増し、2030年には9兆円市場になるとの予測もある。ESG(環境・社会・企業統治)への関心の高まりに食肉業界も対応する。

 

日本ハムは、植物肉で開発が難しいとされたハムタイプの商品化にも成功した

日本ハムは、植物肉で開発が難しいとされたハムタイプの商品化にも成功した

日本ハムは「NatuMeat(ナチュミート)」のブランド名で、家庭用と業務用の植物肉を展開する。家庭向けに加熱しなくても食べられるハム(希望小売価格は6枚で税別217円)のほか、ソーセージやハンバーグなど5品目を3月に発売する。初年度は5億円の売上高(小売りベース)を目指す。

 

イブニングスクープ

翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後6時ごろに配信します。

健康志向の高まりや畜産に伴う環境破壊への懸念、動物保護といった観点から、欧米を中心に肉を口にしないベジタリアンが増加。植物肉需要が急増し、ビヨンド・ミート(09年創業)やインポッシブル・フーズ(11年創業)といった新興企業がブームをけん引する。

 

 

スイスの金融大手UBSによると、18年に5千億円だった植物肉の世界市場が30年には9兆円を超える見通しだ。日本でも成長が期待され、調査会社のマーケッツアンドマーケッツは国内市場も13年の約150億円から23年には約340億円に膨らむと試算している。

食肉大手にとって、食肉とハム・ソーセージ事業は連結売上高の約6~8割を占める。主要な事業基盤を脅かしかねない植物肉事業だが、米国発のブームが急速に広がっているほか、ESGの観点から手掛けざるを得なくなっている。日本では17年に丸大食品が家庭向け商品を投入し、今春、品目数を増やす。伊藤ハムもカツやソーセージなど8品目を2月に発売する予定で、プリマハムも研究開発中だ。


2020-01-18 13:37:00

日本産牛肉の輸入禁止措置を解除

(中国、日本)

北京発

2019年12月26日

中国の海関(税関)総署と農業農村部は12月19日、2001年の牛海綿状脳症(BSE)の発症を受けた、日本産の月齢30カ月以下の骨なしの牛肉(骨から分離した肉)の輸入禁止措置について、解除すると発表した。輸入に際する具体的な検疫条件は別途、策定するとした。また、海関総署と農業農村部は同日、口蹄疫(こうていえき)の発生を理由に、2010年から実施している日本産の偶蹄類動物(豚、牛、ヒツジなど)およびその製品の輸入禁止措置も解除すると発表した。いずれも、公布日から実施する。

中国は2001年3月、BSEの侵入防止のために、英国、フランス、ドイツなど欧州の13カ国からの牛肉およびその製品の輸入を禁止した(注)。その後、同年9月に日本でBSEが発生したことを受け、日本産牛肉に対しても輸入禁止措置が発動された。さらに、2003年には、米国産牛肉からもBSEが検出されたことで、同様に輸入禁止措置が講じられた。

その後、米国、フランス、英国などからの牛肉輸入は再開されたが、日本産牛肉の輸入は禁止されたままになっていた。このような状況の下、2019年4月14日に北京市で開催された第5回日中ハイレベル経済対話において、日中双方は日本産牛肉の対中輸出再開で実質合意し、同年11月25日に名古屋市で行われた日中外相会談において、日中動物衛生検疫協定に署名していた(2019年4月15日記事参照)。

中国では所得の増加などにより、牛肉の需要が高まっている。海関総署によれば、2018年通年の牛肉の輸入量は前年比49.5%増の約103万9,400トンとなった。10年前と比較すると、約245倍の水準になっている。

今回の輸入禁止措置の解除によって、日本産牛肉の対中輸出が18年ぶりに再開されることとなる。

(注)2001年3月1日に公布された農業部、国家出入境検査検疫局公告第143号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますには、同時点までにBSEが発生した国として、英国、アイルランド、スイス、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、ポルトガル、デンマーク、イタリア、スペイン、リヒテンシュタインの13カ国が記載されていた。また、同公告には、同時点以降にBSEが発生した国は、自動的にリストに追加されると規定されていた。

(張敏)

(中国、日本)

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2020-01-11 12:53:00
技術・データ

日本発「抹茶マシン」が世界デビュー イメージは禅【CES2020】

 
 
 
 
 
 
 
酒井 大輔
日経クロストレンド 記者

創業から1年足らず。日本のスタートアップが抹茶で世界に羽ばたいた。2020年1月7日(日本時間1月8日)、米ラスベガスで華々しく開幕した世界最大のデジタル技術見本市「CES」。初出展ながら大賞に準じるイノベーション賞を射止めたのは「抹茶マシン」だった。

CES2020でイノベーション賞を獲得した「Cuzen Matcha(クウゼン・マッチャ)」
CES2020でイノベーション賞を獲得した「Cuzen Matcha(クウゼン・マッチャ)」
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 コーヒーマシンならぬ抹茶マシン。抹茶を挽く前の茶葉「碾茶(てんちゃ)」を入れ、カップに水を注いでセット。ボタンを押せば、挽きたて「抹茶プレッソ」の出来上がり――。

 ストレートで飲むもよし、ミルクを加えて抹茶ラテにするもよし、炭酸水で割るもよし。家庭で気軽に抹茶ライフが楽しめる、ありそうでなかったプロダクトがCESでデビューを飾った。

 その名は「Cuzen Matcha(クウゼン・マッチャ)」。クウゼンは漢字で「空禅」と書く。デザインは禅を連想させる“丸窓”をあしらったシンプルものだ。

抹茶マシンの上部に碾茶を入れる
抹茶マシンの上部に碾茶を入れる
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 開発したのはWORLD MATCHA(東京・目黒)。19年1月23日設立というスタートアップ企業だ。塚田英次郎社長は、かつてサントリーで「伊右衛門特茶」の開発に携わった。その後、18年に米サンフランシスコで抹茶カフェ「Stonemill Matcha(ストーンミル抹茶)」を立ち上げ、軌道に乗せた。


2020-01-11 12:43:00

牛に続き豚の代用肉を発表、インポッシブルが中国に的【CES2020】

 
 
 
 
 
 
 
市嶋 洋平
シリコンバレー支局長

豆類などを利用する代用肉の米インポッシブル・フーズは2019年1月6日、豚肉風味の製品を開発したことを明らかにした。豚のひき肉を材料とする料理に適用できる。世界最大のデジタル技術見本市「CES」の会場で記者会見を開き、同時に代用肉のソーセージも発表した。

豚ひき肉の代用肉を発表するインポッシブル・フーズのパット・ブラウン創業者CEO(左から2番目)
豚ひき肉の代用肉を発表するインポッシブル・フーズのパット・ブラウン創業者CEO(左から2番目)
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 「インポッシブルポーク」は豚のひき肉として利用できる代用肉で、ミートボール、春巻き、シューマイ、麺物など、様々な料理に利用できる。

 実際に発表会場で、シューマイやサンドイッチ、ミートボールやジャアジャア麺などを食べてみたところ、食感や味も豚ひき肉を用いたものと見分けが付かないくらいだった。

 インポッシブルはこれまで牛肉の代用肉を提供しており、バーガーキングの米店舗やハンバーガーチェーン店などでパテとして幅広く提供していた。

豚肉需要が大きい中国市場を攻める


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