西に日本海、南に白神山地が広がる青森県鰺ヶ沢(あじがさわ)町の牧場「アビタニアジャージーファーム」で、元気に走り回る乳牛「ジャージー牛」。質の良いミルクを産出することで知られるが、実は食肉としても一流となる力を秘めている。

 通常の黒毛和牛は2歳半ほどで出荷されるのに対し、この牧場は5年以上も肥育する。その成熟した赤身肉はかみ応えのある深い味わいがあり、日本でおいしい牛肉と言えば「柔らかい」という常識と一線を画す。

アビタニアジャージーファームでは、フリーストールと呼ばれる放し飼いスタイルで肥育している

 ジャージー牛は体が小さく、肉牛として育てるには効率が良くないため、日本市場ではほとんど流通していない。これまでも牧場関係者などごく狭い範囲でのみ、食されてきた。

 そんな希少な牛肉を使ったローストビーフの販売が、EC(電子商取引)で7月5日から始まる。コラボするのは、シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」。「幻の食材」に最適化した調理プログラムをヘルシオにダウンロードして、家庭で最高級の料理を楽しめる。担当者が「行き着くところまで行き着いた」と語るヘルシオの機能を生かし、家庭の食卓で「レストランを超える体験」の実現を目指す。

 「実は(調理プログラムの開発では)何も苦労しておらず、お肉を切っただけ。このクオリティーのローストビーフができてしまうのは、料理人として驚きだ」

 6月下旬、関係者を招いて開いた試食会。ローストビーフの調理を担当した熟成肉の「格之進」を運営する門崎(岩手県一関市)の遠藤雅総料理長が悔しそうに吐露した。格之進は肉好きに知られる人気店の一つだ。

ヘルシオはプロ並みの腕前でローストビーフを調理するという。

 ローストビーフを料理人が調理する場合、フライパンを使って高温で表面を焼き固め、業務用オーブンを使い、低温でじっくり内部まで加熱する。すると表面のみに火が通り、中身はピンクのおいしそうな仕上がりになる。

 ヘルシオは、ボタン一つでこの高温のあぶり焼きと、低温調理を実現してしまう。ジャージー牛用に試作を重ねた結果、ヘルシオにもともと入っていたローストビーフ用プログラムで、プロ級の仕上がりが実現できたという。だからこそ総料理長は複雑な顔をしたわけだ。

 今回は、ローストビーフにミートローフ、ハンバーグの3商品をセット販売する。ヘルシオの売りの一つは、その食材ごとに最適化した調理プログラムをダウンロードすることで、買い替えなくても機能を「進化」させることができる点だ。ジャージー牛を使ったミートローフ、ハンバーグ用に調理プログラムを開発し、外食店を超える味を家庭の食卓に届けるという。税込み、送料別で1万6200円。300セット限定としている。

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