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2021-06-05 21:32:00

「有料になる?……やめます」加盟店離れ、スマホ決済普及の正念場

64件のコメント

鷲尾 龍一

日経ビジネス記者

 2019年の消費増税に伴う還元事業や、新型コロナウイルスの感染防止を背景に広がり続けるキャッシュレス決済。20年にはキャッシュレス決済比率は3割に達したとみられ、政府が掲げる「2025年に4割程度」の達成にじわじわと近づいている。

2019年の消費増税に伴い、各社の還元事業でスマホ決済が徐々に浸透していった(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 ただ、QRコードを使ったスマートフォン決済は今年、普及の正念場を迎える。スマホ決済の大手が加盟店の開拓を優先して無料にしてきた決済手数料を有料化するからだ。

 決済事業者はユーザー獲得などに費やした先行投資を回収する必要があるが、「有料になるならやめる」(中小小売店の関係者)との声が漏れる。加盟店を引き留められるのだろうか。

 決済手数料とは、電子マネーやクレジットカード、スマホ決済サービスを提供する事業者が、導入した加盟店から得る手数料だ。

 例えば、Suicaなど交通系電子マネーは3.25%(米Squareの場合)、楽天ペイは3.24%。今年有料化を予定するLINE Payは10月から2.45%、メルペイは7月から2.6%となる。PayPayは10月に有料化を検討し、料率は未定としている。

 クレジットカードは導入店舗ごとに与信を判断するため、1~6%程度と幅がある。経済産業省が18年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によれば、中央値は3.00%となっている。

 19年の消費増税に伴う「キャッシュレス決済・ポイント還元事業」では、キャッシュレス事業者は決済手数料を3.25%まで抑えることが参加要件だった。還元事業は20年6月に終了したが、3.25%が一つの目安になり、今に至る。

 しかし、この水準でも中小企業には苦しい。中小企業実態基本調査(2019年度決算実績、速報)によると、スマホ決済が得意な少額決済が多い小売業の経常利益率は1.5%、宿泊業・飲食サービス業も同じく1.5%にとどまる。クレジットカードに比べて初期コストが低いことを売りに導入を訴えてきたスマホ決済事業者だが、有料化が進めば、決済回数が増えるたびに、利用者の利益が目減りしていってしまう。

 ある小売店の関係者は、「事前にチャージして使う前払い式が多いスマホ決済は、クレジットカードのように与信コストが必要ないから有料になるにしても、それより安くしてほしいと話したが反応は芳しくなかった」と明かす。

「手数料10分の1」を実現したスーパー連合

 相次ぐ有料化でスマホ決済大手からの離脱が増えれば、独立系キャッシュレスが注目を集めるかもしれない。中堅・中小スーパーを運営する約200社が加盟するシジシージャパン(CGC、東京・新宿)が開発したカード型電子マネー「CoGCa(コジカ)」はその一つといえそうだ。

コジカは手数料を抑えて電子マネーを提供している

 コジカは15年3月にスタートした。当時主流だった鉄道会社や大手スーパーの汎用的な電子マネーはタッチするだけで支払いができる便利さから来店客からの導入希望の声が寄せられていたが、決済手数料はクレジットカード以上。「手数料が高い」という加盟スーパーの不満を受け、コジカの手数料は他のキャッシュレスの10分の1程度に抑えた。

 その要因は、ポイント還元制度を設けていない点だ。ほかの電子マネーやスマホ決済と違って還元に必要な原資が手数料に反映されていないため料率が低い。還元は必要なら、加盟スーパーが個々に実施する。

 CGC関連会社のエス・ビー・システムズの堀内秀起カード事業推進リーダーは「コジカの利用率が高まっても加盟スーパーに負担をかけないことを最優先にした」と話す。

 キャッシュレス普及の壁とされる加盟店への入金方法も独特だ。ほかの汎用的なキャッシュレス決済では、ユーザーが支払った額が店舗に入金されるまで15~30日かかり、加盟店の手元資金が心もとなくなる。コジカは店舗でチャージをするのが基本で、店舗がチャージ金を預かる。その預かり金と利用額を精算するため、キャッシュフローに大きな影響はない。

 そもそもQRコード決済は、スーパーの店舗運営にとって課題が大きい。スマホのアプリを立ち上げ、レジでコードを読み取る一連の流れは、タッチするだけで済むカード型電子マネーに比べて手間だ。また、来店客がレジに設置したQRコードを読み取って代金をアプリに入力する場合、来店客が入力した数字を従業員が確認しづらいという課題もある。

 野村資本市場研究所の淵田康之シニアフェローは「無料期間中にキャッシュレスを導入した実店舗はコロナで非常に苦しい。無料期間終了が迫り、キャッシュレス普及に向けて、これからが正念場だ」と指摘する。

 少額決済が中心のスマホ決済事業者は、スーパーやコンビニを重視しているが、有料化で離反を招けば大きな痛手となる。コジカのような手数料を抑えたシステムが増えれば、そちらに流れる可能性がある。コジカは、スーパーが安価に利用できるスマホアプリも検討している。

手数料に見合う「納得」

 キャッシュレス決済が伸び続けるかどうかの分水嶺を迎える中、米国にヒントがみえる。小売りや外食など幅広い業態に決済システムを提供する大手のSquareだ。

 Squareはガラス工芸家のジム・マッケルビー氏が自分の作品を販売する際、クレジットカードでの支払いを受け付けられず、販売機会を逃したことをきっかけに設立した。「Squareの存在意義は、中小企業や十分なサービスを受けられない人々が経済活動に参加できるようにすること」(Squareゼネラル・マネージャーのデイビッド・タラック氏)として、決済だけでなく従業員の給与支払い、顧客管理など経営支援につながるサービスへと領域を広げてきた。

 その柱の一つが、事業者向け融資だ。日々の売り上げを基に借入可能額を自動ではじき出し、事業者は最短、翌日に融資が入金される。返済額も売り上げが少ない日は少なく、多い日は多くなる仕組みだ。伝統的な金融機関の融資審査が画一的な一方、店舗の実情に鑑みて資金を融通しており、女性など「マイノリティー」が経営する事業者への融資比率が高い。

 このように単に支払い機能だけでなく、加盟店が納得しやすい付加価値の提供にまで踏み込めば、自然とキャッシュレス普及率も高まっていくだろう。

 大規模還元や手数料ゼロをうたって、勢力を広げる第1幕は終わった。物珍しさやコストの低さで利用してきたユーザーや加盟店も、使い続けるメリットが薄まれば根強い現金信仰に押し戻される恐れがある。キャッシュレス決済を軸に、付加価値をいかに高めていくか。次の競争が始まっている。

「有料になる?……やめます」加盟店離れ、スマホ決済普及の正念場:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 


2021-06-05 21:30:00

KDDI、料理宅配3位のmenuに出資 スマホ決済拡充

【イブニングスクープ】

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think!多様な観点からニュースを考える
蛯原健さん他2名の投稿蛯原健石川温大岩佐和子

 

KDDIは料理宅配で国内3位のmenu(メニュー、東京・新宿)と資本業務提携する。50億円前後を投じて20%を出資する。通信事業の成長が頭打ちとなるなか、注文データを生かしたスマートフォン決済サービスの拡充などにつなげる。料理宅配はウーバーイーツジャパン(東京・港)と出前館が国内2強だが、巣ごもり需要増による市場の拡大が競争を促しはじめた。

6月をめどに提携契約を結ぶ。メニューには現在、スマホゲーム会社や広告会社を傘下にもつレアゾン・ホールディングス(東京・新宿)が全額出資している。第三者割当増資により、KDDIが20%を出資する。メニューはKDDIの持ち分法適用会社となる。

メニューは2018年設立の新興企業。データ分析のヴァリューズ(東京・港)によると、21年4月のアプリ利用者数は97万8千人で、ウーバーイーツ(456万人)と出前館(355万人)に次ぐ3位だ。国内では6万店が加盟しており、ウーバーイーツ(10万店超)と出前館(7万店超)を追い上げる。

KDDIは出資を通じて加盟店増など規模拡大を支えるほか、スマホ決済サービス「auペイ」でメニューの購入代金を支払えるようにする。約3000万人のKDDIの顧客基盤を生かし、顧客データとメニューの利用履歴を統合した嗜好分析にも役立てる。顧客の好みにあった近隣飲食店を提案したり、割引クーポンを配信したりする計画だ。

新型コロナ下で料理宅配の市場は急速に伸びた。市場調査会社のエヌピーディー・ジャパン(東京・港)によると、外食業態による料理宅配市場は20年に6264億円と、19年から50%増加した。これまでは年5%前後で成長していた。

KDDIの主力の既存通信事業は人口減少などで成長が鈍化している。一方で、金融事業や電子商取引事業などの非通信事業は、22年3月期には営業利益で前期比26%増える見通し。30年には既存の通信事業を上回ると予想している。

他の通信会社も決済事業を強化する理由などから料理宅配に目を向けている。ウーバーイーツジャパンの親会社である米ウーバーテクノロジーズにはソフトバンクグループ(SBG)が傘下の投資ファンドを通じて出資しており、出前館はソフトバンクグループの一員であるLINEが3割超を出資する実質子会社だ。


2021-06-05 21:27:00

料理宅配アプリ快走、だが黒字化はいつ?

ドアダッシュ、ウーバーイーツなど「生きるか死ぬか」の戦い

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料理宅配アプリ快走、だが黒字化はいつ?
Photo:SOPA Images/gettyimages

 料理宅配サービス企業は新型コロナウイルス禍で、記録的な売り上げをたたき出した。多くの米国民が自宅待機を強いられる中で、スマートフォンのアプリで夕食を注文できる手軽さが人気を集めたからだ。企業のバリュエーションは跳ね上がった。入手した大量のデータは効率改善にもつながった。だが、1つだけ問題が残っている。破竹の勢いだった頃でさえ、利益を確保できていないという課題だ。

 コロナ流行が収束へと向かう中、ドアダッシュやウーバーテクノロジーズ、グラブハブなどの料理宅配企業はここにきて、利益をいかに確保するのかという「生きるか死ぬか」の問いに取り組んでいる。

 料理宅配ビジネスはコストのかかる仕事だ。アプリ会社はレストランから注文額の一定割合を受け取り、消費者からはサービス手数料を徴収する。そこから運転手に支払う必要があり、これが最大の費用となっている。

 販促費用や顧客への払い戻しなどの営業費用を差し引くと、ドアダッシュの手に入る利益は、顧客の注文額の平均2.5%だ。ドイツ銀行が分析した。これはつまり、コロナが最も深刻化していた時期の平均注文額およそ36ドル(約4000円)に対して、0.90ドルの利益しか残らない計算になる。

 とても素晴らしいとは言えないが、これでも業界内ではトップだ。ドアダッシュは8年前の創業以来、年間で黒字化を実現したことはないが、四半期ベースでは昨年、一度だけ赤字を脱却。米料理宅配サービス企業で唯一、コロナ禍で黒字化を果たした。


2021-06-05 21:24:00

焦点:世界の牛肉価格が高騰、ステーキ好きの国では消費者悲鳴

[ブエノスアイレス/シカゴ/サンパウロ 27日 ロイター] - 牛肉価格が世界的に高騰し、ステーキ好きの国アルゼンチンの首都ブエノスアイレスではメニューから牛肉が消え、米国では夏のバーベキューが台無しになりそうだ。背景には、中国の輸入増加や飼料価格の上昇がある。

5月27日、 牛肉価格が世界的に高騰し、ステーキ好きの国アルゼンチンの首都ブエノスアイレスではメニューから牛肉が消え、米国では夏のバーベキューが台無しになりそうだ。ブエノスアイレスの精肉店で19日、冷蔵庫から牛肉を取り出す店員(2021年 ロイター/Agustin Marcarian)

国連食糧農業機関(FAO)によると、牛肉価格の上昇が一因となり、世界の食品価格は2014年以来で最も高騰。とりわけ打撃を被っているのは、コロナ禍による経済的打撃から立ち直ろうと奮闘する貧しい消費者だ。

牛肉価格高騰の原因は、中国での需要増加や、一部の国々における牛の供給制約、食肉処理施設の労働者不足、飼料価格の上昇などにある。

中国への牛肉供給量でブラジルに次ぎ世界第2位のアルゼンチンは17日、インフレを抑えるため1カ月間の牛肉輸出停止に踏み切った。アジアからの旺盛な需要が国内向けの供給を吸い上げ、国内価格の上昇を招いていると政府は指摘している。

「牛肉がとんでもなく値上がりした」と嘆くのは、ブエノスアイレスの公務員、フェルナンダ・アルバレンガさん(38)だ。これまで2日に一度は家で牛肉を食べていたが、週1回に減らした。料理に使う牛肉の種類も安いものに切り替えたという。

「牛肉を買うのに毎月4000から5000ペソ(42―53ドル、約4600-5800円)ぐらいかかる。以前は同じお金でもっとたくさん買えたのに」

アルゼンチンは、バーベキューで牛肉を焼くことが「基本的人権」と見なされ、郊外には牛の牧場が点在するお国柄。その国で牛肉価格が1年前より60%以上も上昇している。業界団体の報告によると、1人当たりの消費量は急減し、4月には100年ぶりの低水準となった。

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対話アプリのワッツアップでは、牛肉に手が出なくなったと悲嘆に暮れる声が次々に寄せられ、政府による食料支援問題で話題となった「ポレンタ(トウモロコシ粉のおかゆ)」でしのがざるを得ない、という皮肉を込めたコメントも拡散されている。

<中国の胃袋>

中国税関総署のデータによると、中国は1―4月にアルゼンチンから牛肉17万8482トンを輸入した。前年同期は15万2776トンだった。

アルゼンチン食肉商工会議所は、中国の輸入分はアルゼンチンで消費されない高齢の牛のものだと主張。牛肉輸出の停止措置に抗議し、畜産物取引のストライキを行った。

中国は2018年からアフリカ豚熱(ASF)により大量の豚が死亡して以来、食肉の輸入を増やした。最近では、牛肉輸入量が3番目に多かったオーストラリアとの関係が悪化して同国からの輸入を一部停止し、その他の供給国への依存度が高まった。

米農務省によると、米国から中国への牛肉輸出は3月に1万4552トンと、月間の過去最高を記録した。これは2019年全体を大幅に上回る量だ。

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中国で食べられる肉は長く豚肉が中心だったが、中間所得層が拡大するにつれ牛肉の消費も増えている。

ラボバンクのシニアアナリスト、パン・チェンジュン氏は「牛肉はかつて、レストランなど主に家の外で食べるものだった。だが次第に家庭での料理でも広く使われるようになった」と語る。

中国農業農村省によると、同国では4月末時点で牛肉価格が前年同期比4.4%上昇している半面、豚肉価格は27.9%下落している。

<天文学的な価格>

米カリフォルニア州に住む退役軍人のダリン・クロスさん(55)は、ウォルマートで0.9キロ入りの牛ひき肉が8ドルから10ドルに値上がりしているのにショックを受けて以来、野菜を多く食べるようになった。

「決まった収入しかない私たちにとって、たった数週間でこれだけ跳ね上がるのは痛い。今後もこの状態が続くのではないかと怖くなる」

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ニールセンIQのデータによると、4月の米牛肉価格は前月比で5%、前年同月比では約10%の上昇だった。

ニューオーリンズ郊外に住むティナ・ハウエルさん(45)はステーキ肉のまとめ買いをやめた。生鮮食品店が安売りをしなくなったからだ。

ハウエルさんは「ニューヨーク・ストリップ・ステーキ」と呼ばれる牛肉のショートロイン部位が、以前の1ポンド(約0.45キロ)当たり7ドル前後から約12ドルと、「天文学的な値段」に跳ね上がっているのを目撃した。

米国は牛の供給こそ豊富だが、食肉処理施設での人手不足や設備不足により、牛肉の生産には制約がある。

また大豆やトウモロコシなどの飼料価格が約8年ぶりの水準に上昇し、一部は消費者に転嫁されている。コロナ禍に対応した制限措置が緩和され、飲食店向けの需要が増えていることも牛肉価格の高騰につながっている。

(Agustin Geist記者  Tom Polansek記者 Ana Mano記者)

焦点:世界の牛肉価格が高騰、ステーキ好きの国では消費者悲鳴 | ロイター (reuters.com)

 


2021-06-05 21:21:00

日本産食品の輸入規制、28日付で完全撤廃

日本の外務省は28日、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受け、シンガポール政府が続けてきた日本産食品の輸入規制が、同日付で完全に撤廃されたと発表した。これにより、福島県産をはじめとする日本産食品をシンガポールに出荷しやすくなる。

シンガポール政府は福島第一原発の事故後、福島県産の水産物などを輸入する際に放射性物質の検査報告書の提出を求めていたほか、全ての日本産食品には産地証明書の添付を求めていた。今回の発表を受けてこうした規制が全て撤廃された。

シンガポールのリー・シェンロン首相は、25日に行われた菅義偉首相との電話会談で、検査報告などの条件を付けていた東日本大震災後の日本産食品に対する輸入規制を完全撤廃する方針を表明していた。


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