インフォメーション

2019-07-07 09:52:00

コラム:中国揺さぶるアフリカ豚コレラ、世界農業に影響も

 
 

[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アフリカ豚コレラが中国を揺さぶっている。過去最悪級の感染拡大が豚肉価格を押し上げており、たとえ経済減速などに伴って全般的なインフレが抑制されるとしても、さらに悪化する見通しだ。この家畜伝染病が中国におけるシフトを促す可能性もある。

 
 
6月25日、アフリカ豚コレラが中国を揺さぶっている。遼寧省昌図の豚舎で1月撮影(2019年 ロイター/Ryan Woo)

中国で昨年始まったアフリカ豚コレラの大流行は当初、豚肉価格を押し下げたかもしれない。これは豚肉農家が家畜の処分を急いだためだ。しかし、現在は価格を押し上げている。消費者に対するコストは先月、前年比で18%上昇。農業省当局者は4月、上昇率が今年下半期に70%に達する可能性があると指摘した。

今回の大流行は中国人民銀行(中央銀行)にとってまだ懸念にはなっていない。豚肉は中国の消費者物価インフレバスケットの3%前後を占めていると推定されている。弱気見通しではヘッドライン指数が1.5─2%ポイント上昇し、インフレ率が約4─5%になることが示唆されている。これは今年の政府目標である3%前後を上回るが、金融政策の引き締めが発動されるには十分ではない。

業界内の人々にとっては、価格が上がらないという、さらに悪い結果がある。これは消費者がタンパク源を他に切り替えていることを示すものだ。OECD─FAO農業アウトルックによると、中国の1人当たり豚肉消費は1990年から2014年に2倍以上増えているものの、需要はそれ以降横ばいとなっている。ラボバンクの推計によると、今年の需要は安全性への懸念から約10─15%減少しており、生産が完全に回復するには5年以上かかる可能性があるという。これは家庭で消費する量が最高水位線を超えた可能性を意味する。

もしそうであるならば、世界の農業に多大な影響を及ぼす大きなシフトだ。中国は世界の人口のほぼ5分の1を占めているが、豚肉生産・消費のほぼ半分を占めている。それにより、大豆やトウモロコシといった投入財のほか、関連する肥料や化学薬品の需要を押し上げている。HSBCのアナリストの推計によると、中国の豚肉生産が30%減少すれば、大豆だけで世界需要が約2─4%減少するとみられている。アフリカ豚コレラの東南アジアへの拡大は事態をさらに悪化させる。

 

ただ、最大の影響は必ずしも国内にとどまらない。米中貿易摩擦では大豆購入が米国政府をなだめる1つの手段だが、中国政府にとって大きな武器にはもはやならないかもしれない。

●背景となるニュース

*中国税関当局が23日発表したデータによると、同国の5月の豚肉輸入は18万7459トンと、前年同月比63%近く増加した。2016年8月の19万2348トン以来の高水準となった。

1─5月の輸入は前年同期比19.8%増の65万8236トンだった。

中国ではアフリカ豚コレラの感染拡大を受け、豚の飼育数が減少している。[nL4N23V15W]

 

*5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇で市場予想と一致し、2018年2月以来の高い伸びとなった。アフリカ豚コレラの感染拡大を受けて豚肉の供給減少が続いていることが影響した。[nL4N23J0RT]

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。


1 2 3 4