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2014-01-11 11:33:00

世界三大料理に数えられるトルコ料理。徒弟制度による技術伝承が当たり前であった伝統的な料理人の世界に、今、新たな風が吹き込んでいます。欧米の料理学校を視察したうえで生み出した、インターナショナルなプログラムを確立したイスタンブールの料理学校を紹介します。

この10年の間に、あるイスタンブールの料理学校が料理のあり方を変化させている。
 従来トルコでは、料理人という生業は父から息子へ、または師匠から弟子へと受け継いでいくことが当たり前だった。いわゆる徒弟制による料理技術の伝承が一般的であり、その技術はオープンではなかった。しかし、この料理学校での職業教育により、料理人が正式な職業として確立したのだ。そして、現在イスタンブールの街は、この変化をトルコ国内だけでなく、世界に向けて発信しようとしている。

 トルコを訪れる人にとって、この国にやってくる目的のひとつは世界三大料理であるトルコの食にあることは間違いない。そして、その魅力を余すところなく楽しむには、ありとあらゆる美食の要素が詰まっているイスタンブールの街がいちばんだ。この街には、1800年代後半創業という歴史を誇る、伝統的なオスマン料理を出す「ハジ・アブドゥラ・アンド・ベキル」や、トルコ銘菓として世界中から愛されるターキッシュディライトで有名な菓子店「アリ・ムヒディン・ハジベキル」のように、伝承の技と味を紡いできた老舗と対を成すかのように、ここ数年の間でイスタンブールには、新しいタイプのシェフたちが急浮上してきている。

 その中でもとくに感度の高いイスタンブールっ子たちや、世界各国からの旅行者が訪れるのが、世界的に有名なイギリス人シェフ、ジェイミー・オリバーが手がける最新店舗、「Jamie's Italian」や、「frankie」や「Mikla」、「Mama Shelter」など、市内の人気ホテル内に位置するレストランだ。

イスタンブールで人気の「Mama Shelter」

 また、こうした才気あふれる新しい 世代の料理が海外へと飛び出している例もある。たとえば、ニューヨークの 「Annisa Restaurant」は、地中海やペルシャなどオリエンタルなバックグラウンドを反映した料理が評判を呼び、ミシュランガイドでも星を得ているほどである。こうした新しい世代のシェフたちに共通するものとは何だろうか? それは、確固たる教育を受け、ディプロマ(教育機関で発行される卒業証明書)を取得しているという点だ。質の高い教育で知られる料理学校「ムトファク・サナットラル・アカデミスィ」(以下、MSA)に、イスタンブールの料理業界の今を聞いた。

聴衆席を備えたデモンストレーション用の実習室と、そこでの授業風景

 イスタンブールで2004年にメフメット・アクスルが設立したMSAは、トルコ国内に誕生した初めてのプロ養成に主眼を置いた私立の料理専門学校のひとつであり、もっともよく知られている。世界100カ国以上で認められる国際的な資格である、イギリスの「City&Guilds」や、「WACS」と提携しているのが特徴で、国内で唯一の職業教育に主眼を置いた教育機関となっている。厨房や講義室だけでなく、聴衆席を備えたデモンストレーション授業用の実習室、レストラン、研究開発専用の厨房、図書室、そして歴史的な料理道具を集めた展示室までも併設している、ユニークな学校だ。

ムトファク・サナットラル・アカデミスィ(MSA)内の図書室


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