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2015-05-14 17:35:00

アジアのローカル景気やおカネ事情を現地在住ウォッチャーがレポート。今回は中国・上海で急成長を遂げた海鮮レストランオーナーさんに、気になる経営状況を教えてもらいました!(取材・文 / ジンダオ)

【 取材時の為替レート:1人民元 = 約19円 】

生き馬の目を抜く上海で規模拡大中!海鮮レストラン『沈家門漁村』へ

大家好(だーじぁーはお)!皆さんコンニチワ。
路地ウラウォッチャー・中国担当の「ジンダオ」です。

今回は、私の体力源と言っても過言ではない本場上海の海鮮中華レストラン『沈家門漁村(しぇんじゃめんぎょそん)』本店にお伺いして、お店経営のウラ側や、オーナーさんのインタビューをお届けしたいと思います。

海鮮中華レストラン『沈家門漁村(しぇんじゃめんぎょそん)』本店

海鮮中華レストラン『沈家門漁村(しぇんじゃめんぎょそん)』本店

店舗は、人民広場からタクシーで約15分、虹口区周家嘴路エリアにあります。

こちらのお店は、味はもちろん、食事に行くたび「おっ!兄弟!」と出迎えてくれる気の良さが魅力。近ごろはドンドン店舗を拡張していて、なんだかものすごーく景気がイイみたいなんですよ。

人気メニューはもちろん新鮮採れたての海鮮料理。海鮮で有名な浙江省舟山出身のオーナーさんが独自ルートで仕入れる魚介の数々は、周辺エリアの競合他店と比べても群を抜いて新鮮。連日、お客さんが絶えることはありません。

営業時間は朝9時~深夜3時までですが、メインは夕刻からで、朝・昼は仮営業状態。鮮度の良い魚介を食べたいなら、なるべく17時以降の訪問がオススメです。

ではでは、さっそく中に入ってみましょう!

「上海ドリーム」の7年間、店舗拡張と新規出店で延べ床面積は18倍に

お店の中はこんな感じ!いつ来ても大勢のお客さんで賑わっています。

改装を繰り返し広々とした店内はいつも大勢の客で賑わう

改装を繰り返し広々とした店内はいつも大勢の客で賑わう

オススメのメニューはアゲマキガイの炒めもの(38元:約700円)、鯛やマナガツオ、イサキなど魚介の醤油蒸し(80元:約1,500円)、ヤリイカの湯引き(58元:約1,100円)など、この店自慢の鮮度が味わえる料理がメイン。

こだわりの食材はオーナー独自のルートで仕入れている

こだわりの食材はオーナー独自のルートで仕入れている

どれも素材を活かしたサッパリ系の味付けで、日本人の舌にもよく合います。

アゲマキガイの炒めもの(38元:約700円)

アゲマキガイの炒めもの(38元:約700円)

イサキの醤油蒸し(80元:約1,500円)

イサキの醤油蒸し(80元:約1,500円)

ヤリイカの湯引き(58元:約1,100円)

ヤリイカの湯引き(58元:約1,100円)

私、ジンダオがこのお店を初めて知ったのは約7年前のこと。散歩の途中に偶然、雰囲気抜群の『沈家門漁村』本店(今回お邪魔した店舗)を見つけ飛び込んだのがキッカケです。

そのとき注文した「ヤリイカの湯引き」の味に惚れ込み、足繁く通うようになったんですよ。当時の店舗は2階建て・90平米の店構えで、スタッフも顔馴染みの10名程度。

約7年前、開業直後の店舗。すべてはここから始まった

約7年前、開業直後の店舗。すべてはここから始まった

ところがその数年後、オーナーの呉さんから「ジンダオ、春節に店舗を改築するから終わったら食べに来いよ」との連絡が。春節明けには、2階建てだった店舗に3階を増築し130平米になりました。

さらにその翌年、こんどはスタッフから「ただいま改築中でご不便をお掛けしますが、通常どおり営業中です」とのお知らせ。どういうことだろう?と思ってお店を訪れると、隣にあった物件を買い取っての店舗拡張工事が始まっていたんです。

通常営業を続けながらの突貫拡張工事。左奥で指示を飛ばしているのが呉オーナー

通常営業を続けながらの突貫拡張工事。左奥で指示を飛ばしているのが呉オーナー

改装を終えてリニューアルオープンした本店は、現在の600平米にパワーアップ。一気に5倍の広さに拡張したにもかかわらず、それでも客足が途切れることはありませんでした。ちょうどこの頃から、顔を知らないウェイターが大半を占めるようになったと記憶しています。

そして2014年9月、ついに呉オーナーから「ジンダオ、いよいよ2号店をオープンするぞ。オープニングにはぜひ来てくれ」とのめでたいお誘いが。

馴染みの本店から、さらにタクシーで北上すること15分、楊浦区国和路に新オープンした2号店に行ってみると、本店を凌ぐ2階建て・1,000平米のゴージャスな店舗が完成していました。あまりにトントン拍子の事業拡大に、度肝を抜かれると同時に、思わず笑ってしまいました。

新たにオープンした2号店は1,000平米!

新たにオープンした2号店は1,000平米!

わずか7年間で、店舗面積は2店舗あわせて約18倍、延べ1,600平米に。スタッフ数も本店32名、2号店58名、計90名の大所帯に成長しました。まさに上海ドリームです。

飲食店でも「ブラック臭」はなし!?スタッフの休憩時間はこんな感じ

事業拡大により、ウェイター全員の顔と名前が一致しなくなって久しいのですが、馴染みの一人にちょっとお願いして、スタッフのみなさんの休憩中の様子を見せてもらいました。

朝9時~深夜3時の営業時間のうち、メインの稼ぎ時は17~21時。お客さんが約2回転した夜21時半頃から、スタッフ勢揃いでの食事&休息タイムになるんです。22時過ぎから、またお客さんが増えてきます。

休憩中の様子。おいしいまかない料理は中国人スタッフの楽しみのひとつ

休憩中の様子。おいしいまかない料理は中国人スタッフの楽しみのひとつ

若いスタッフは、まかない料理を食べた後はスマートフォンでゲームやSNSをやって過ごしていました。これはあまり日本と変わらない休み時間の過ごし方かもしれませんね。忙しい飲食店ではありますが、日本で言われる「ブラック」臭はあまりしませんでした。

上海の若者もスマホが大好き

上海の若者もスマホが大好き

いっぽう、古株スタッフは席を陣取ってテレビドラマを鑑賞していました。ちなみに今日の番組は抗日戦争ドラマ。「ジンダオ!見ろ、見ろ!ワハハっ」と招かれ、私も一緒に鑑賞しました。

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日本人を絶対悪とした抗日ドラマは、彼らからすれば単なる娯楽のひとつ。少なくともこのお店のスタッフはみんな、現実の日本人が劇中のような人格ではないことを知っています。だからこそ外国人の私も、気持ちよく食事を楽しめます。

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抗日ドラマの荒唐無稽さがネットのまとめ記事などでネタにされることがありますが、実は当の中国人も、かなり半信半疑で観ています(笑)超がつく田舎だとまた違ってくるのですが、ここ上海ではそんな感じです。

月商2,800万円を実現の呉オーナー「ほんの些細な差が、成功と失敗を分けるんだ」

事業拡大に成功したオーナーの呉さん(37歳)に、お時間をいただいてインタビューしてみました。「兄弟の頼みだ」とわざわざ食事の機会を設けて、和んだ雰囲気でいろいろお話を聞かせてくれましたよ。

忙しく働くオーナーの呉さん(右)

忙しく働くオーナーの呉さん(右)

まず、呉オーナーの稼働時間は週に7日(!)、毎日14時~深夜2時頃まで。仕込み・準備が始まる昼過ぎから、深夜に最後のお客さんが帰るまでお店に常駐しているとのこと。

呉さんのご家庭は奥さんと小学生低学年になる息子さんの3人家族なのですが、仕事上の付き合いなどで遠出することはあっても、これと言って決まったお休みはないそうです。

「オーナーだから休みたい時には休める」と言いつつ、今年は春節や国慶節も休まず営業。ただ、元旦は家族で温泉旅行に行きました。

「よっ!兄弟!」従業員には厳しいオーナーだが、お客さんに対しては笑顔を絶やさない

「よっ!兄弟!」従業員には厳しいオーナーだが、お客さんに対しては笑顔を絶やさない

気になるお店の経営状況ですが、1日の来店客数は2店舗あわせて400名前後。平均客単価は120元(約2,300円)前後で、1日の売上は計5万元(約95万円)だそう。

月間売上150万元(約2,800万円)はすごいですよね。新たにオープンした2号店の客入りもまずまずで、「古い馴染みの客に支えられているよ」とのことでした。

この商売を始めたキッカケを尋ねると、

「俺はもともと舟山出身という事もあって、学校を卒業後は海鮮の売買に関係する仕事に就いた。そこで海鮮の販売ルートを学んで、ちょうどジンダオが初めて店を訪ねてきた7年前に店を構えたんだよ」

と教えてくれました。

「ほんの些細な差が、成功と失敗を分けるんだ」経営の秘訣を語る呉オーナー

「ほんの些細な差が、成功と失敗を分けるんだ」経営の秘訣を語る呉オーナー

また、中国でビジネスをしたい日本人にアドバイスはあるかと質問したところ、

「日本人へのアドバイス?あははっ、アドバイスか。そうだな、レストラン経営に言えるのは素人が手を出すなってことだが……。要するに、門外漢はまずダメだな。これはレストラン経営に関しても、中国という国、上海という場所に関しても、だ」

とのこと。自分の専門分野を生かしつつ、中国や中国人のことをよく知れ、というお答えでした。

「俺の知り合いにもいたんだ。建築内装工事で成功して大儲けした奴が、大型レストランをオープンさせて案の定失敗したよ。もともと内装一本の男で、店舗作りはできても、レストラン経営の経験なんてなかった。俺は海鮮仕入れの独自ルートを持っていたし、もともと海鮮に詳しかった。俺と奴の差は、そういう基本的な部分だ」

日本でも食べるのか?とザリガニを剥きながら応じてくれた呉さん。時折、顧客にSNSで連絡をしながらインタビューに協力してくれました。

本店と2号店、2店舗の料理長を務める李さん(左)

本店と2号店、2店舗の料理長を務める李さん(左)

途中からは、2店舗の料理長を務める李さんも合流して和気あいあい。

「俺は仕事中も、お客さんから酒をすすめられたら断らずに飲む。それはあくまで接客のひとつだ。でもジンダオみたいな友人ならこうやって食べながら楽しんで飲めるし、疲れなくていいな(笑)」

と、仕事のしんどさもチョットだけ漏らしてくれた呉オーナー。李さん、私と3人で乾杯をし、煙草をくゆらせつつ、上海の夜は更けていきました。

「家族経営から組織経営へ」人脈社会の中国で重要なポイントとは?

家族経営から脱却し、組織としての経営に挑戦中の『沈家門漁村』。

もともとは親族中心の営業形態でしたが、店舗拡大に伴い一般スタッフを少しずつ雇用し、いまでは店先に「社員規則」まで掲げるようになっています。

7年前にはまだなかった「社員規則」

7年前にはまだなかった「社員規則」

ただし仕入れや購買、各種支払いなどの資金まわり、料理の注