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2015-05-14 17:12:00

中国、生産でもワイン市場揺るがす存在狙う―畑面積はフランス抜く

 
2015 年 5 月 10 日 10:38 JST

 

馬清運氏のブドウ畑(西安市) Jade Valley

 中国は高級ワインの消費者としてボルドー産やブルゴーニュ産のワイン市場を作り変えた。そして今度は生産者として世界のワイン市場に衝撃を与えようとしている。

 中国では現在、世界有数のワイン醸造メーカーも参入して全土でワイン用ブドウ畑の開拓が進んでいる。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、フランスのワイン生産量は中国の4倍以上だが、ブドウ畑の面積では中国がフランスを抜いた。

 世界のワイン用ブドウ畑のうち、中国が占める割合は2014年の推計値で11%弱となり、スペインに次ぐ世界2位に浮上した。2000年には中国の割合は3.9%にすぎなかった。

 問題は世界のワイン業界では既に需要低迷と供給過剰が起きていることだ。OIVの推計では、2014年には中国など生産量上位10カ国のうち5カ国で生産量が前年から減少した。

 それでもワイン畑の開拓は続く。ワインの消費では既に世界5位で、今後1位になるとみられる中国が今後増加する国内生産のほぼ全てに加え、さらに大量のワインを消費するだろうという楽観的な見方もある。「お茶の国」中国に良質なコーヒーが登場したときにはコーヒー人気が高まったと指摘する人もいる。確かに、上海には世界のどの都市より多くのスターバックスの店舗がある。

 だが、コーヒーの場合と同じように中国がワインを大量に消費したとしても、ワイン畑の数が多すぎるという指摘もある。

 南カリフォルニア大学建築学部の学長で、中国・陝西省にあるワイン醸造所「玉川酒庄」のオーナーでもある馬清運氏は中国のワイン畑の作付けが盛んに行われている様子を太陽光発電の流行に例えている。中国では、政府の報奨金に押されて世界最大の太陽光パネル業界が誕生したものの、今は過剰な生産能力に悩まされている。

 中国でワインが生産されるのは輸入ワインに40%もの関税がかかるという事情もある。

 ワイン販売業者や専門家は起業家や銀行、国際的な高級ブランドが何百万ドルもの資金をワイン畑に投じている今の中国を見ると、1970年代のカリフォルニアを思い出すと話す。一切ワインに携わったことがない巨大国営企業も業界に参入しつつある。家電メーカーの美的集団や山東省に本社を置く複合企業の南山集団もワイン生産に乗り出した。

 中国で生産されるワインの一部は海外に輸出される可能性もある。中国のワイン輸出量は今のところごくわずかだが、それも変わるかもしれない。2年前、英国のワイン業者ベリー・ブラザーズ・アンド・ラッドはロンドンの店舗で中国のワインを恒久的に扱うことを決めた。中国産ワインの質は向上しており、国外でもコンクールで受賞するワインも出始めている。ウォール・ストリート・ジャーナルの購読者向けイベントでワインのブラインドテイスティング(利き酒)を行ったところ、3人の専門家が寧夏回族自治区にあるワイン醸造所「銀色高地」のボルドースタイルの赤ワインに感心したと語った。同自治区は中国有数のワインの名産地だ。

 プロのワイン醸造業者が中国産ワインのレベルアップに一役買っている。フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンはヒマラヤ山脈山麓のシャングリラと呼ばれる場所にワイン醸造所を建設した。中国で最高の、そしておそらく最も高価なワインを造るためだ。シャンパンのドン・ペリニヨンを生産するLVMH傘下のモエ・ヘネシーは既に寧夏回族自治区でスパークリングワインの生産を開始した。販売価格は1本27ドルだ。

 

 ワイン畑が熱心に開拓されているにしては、中国は最高のブドウを造るのにふさわしい気候に恵まれてはいない。太陽が十分に当たる地域では気温が低すぎたり、温暖な気候の地域は湿度が高すぎたりする。気候が合わないことに加えてインフラ不足と経験不足が重なれば、おいしいワインを造るのは実に難しい仕事にもなりうる。