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2014-10-04 23:00:00

96回から「マ-ケティング戦略」の「個性化戦略」について説明する予定であった。

しかし、昨年9月の東京オリンピックの決定に際してのプレゼンテ-ションで「おもてなし」が一躍有名になったが、わが国で「おもてなし」について、どこまで理解されているかというとなると、はなはだ疑問になる。東京オリンピックというと、多くのフードサ-ビス業の方々は、好機到来として受け止めているが、世界各国から来日される方々をお迎えする「おもてなし」は、総国民が行うものであるということを自覚しなければならない。さらに世界には、「ホスピタリティ」という言葉が存在していて、かなり多くの方々が素晴らしいサ-ビスを受けていますので、総国民はそれを超える「おもてなし」を提供しなければならない。したがって、その基本となる「起源・歴史・意味」について数回に分けて説明しよう。

 

おもてなし(1)

 

 一般的に「サ-ビス」「ホスピタリティ」「おもてなし」という言葉があるが、いろいろな使われ方をされているし、諸説があるようなので、まずはこれらの起源・歴史・現在について探ってみよう。

 

[1]言葉の起源

(1)サ-ビス

 「service(サ-ビス)」というのは、ラテン語の「servus(奴隷)」から英語の「slave(奴隷)」や「servant(召使い)」といううに変化をしている。つまり、「サ-ビス」という限り、サ-ビスを受ける側が主人であって、サ-ビスを提供する側が従者であるという主従関係にある。このような関係であると、お客様が主人であるから、サ-ビスを提供するスタッフからは「満足」を得るための「奉仕」をされるので、あくまで上下の関係に置いてお客様とスタッフの関係が設立している。その意味するところは、組織的に言うならば「タテの組織」である。

 

(2)ホスピタリティ

 「hospitality(ホスピタリティ)」というのは、ラテン語の「hospes(客人の保護者)」からきていて、その意味は「巡礼者や旅人を寺院などに泊めて手厚くもてなす」ということである。

 ここから、英語の「hospital(病院)」「hospice(宿泊所)」「hotel(ホテル)」「hosthostess(ホスト・ホステス:お客様をもてなす主人公)というような言葉が生まれた。これは、病院の医師や看護婦が患者の痛みをわがことのように思って、1日も早く直してあげようと治療に努めることによって、患者の身になりきることで、「お客様になりきるサ-ビス」に転化したものである。

 つまり、寺院という施設や、それを迎える人は、旅人に喜びを提供することによって、提供側が喜びを感じるという考え方である。この考え方は、お客様を「guest(賓客)」として、スタッフを「ホスト・ホステス」と位置づけている。しかし、わが国ではイメ-ジ上異なるので「ホスト・ホステス」を「cast(キャスト:俳優・女優)」にしている。

 「ゲスト」と「キャスト」の関係は、サ-ビスの上下の関係ではなく、対等の関係である。したがって、ホスピタリティというのは、「ゲスト」と「ホスト」は、「相手をもてなすこと」が根底にあり、ホスピタリティの意味は、思いやり、心遣い、親切なおもてなし、誠実な心、心からの歓待など、人間だけが表現できる、心や気持ちであるので、常に相互信頼と共生共栄という思想が不可欠になっている。この意味するところは、組織的に言うならば「ヨコの組織」である。

 

(3)おもてなしの心

 「おもてなしの心」は、茶道でお招きをする側が亭主で、お招きされる側がお客様としている。茶事では、季節に合わせたお菓子やお茶を用意して、亭主がお客様を「おもてなし」が、亭主はお客様の趣向に合わせて行う「おもてなしの心」そのものである。

 一方、招かれたお客様は、亭主の意図を汲んで、亭主に感謝の気持ちを表わす。つまり、茶事は、もてなされるお客様も参加するので、茶道では「一期一会」という言葉が使われている。「一期一会」というのは、生涯で一度心の通い会う場をお客様に提供することである。これこそが「おもてなしの心」の源流である。