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2014-09-11 10:04:00

生産量世界第二位のコーヒー大国ベトナムのコーヒーショップ市場

 ベトナム、というとコーヒーを思い浮かべる方は多いかと思います。生産量世界第二位のコーヒー生産国であるベトナムにはコーヒー屋さんが本当にたくさんあります。ベトナムに旅行をして、コンデンスミルクの入ったベトナムコーヒーを飲まれた方は多くいらっしゃるかと思います。


 とはいえ、ベトナム人がベトナムコーヒーばかり飲んでいるかというとまったくそんなことはありません。ベトナムには様々な価格帯のコーヒー屋さんがあり、ローカルのお店だと一杯10,000ドン(50円)から、ベトナム1のコーヒーチェーン店のTrung Nguyen Coffee(何とベトナム内に1000店舗も展開しています)だと60,000ドン(300円)とかなり幅があります。スターバックスなどもようやく去年店舗をオープンさせました。今回はそんなコーヒー業界の起業家二人に話を聞いてきました。


 1人目の起業家はHai Ninh。彼は大学を卒業してメーカーで勤務した後、23歳で手持ちの3,000ドルでUrban Station Coffeeというコーヒー店を起業した若者です。最初の店舗のオープンから3年でUrban Station Coffeeは店舗を34店舗、年商6億まで急成長させました。留学経験など全くないのに流暢な英語をしゃべります。共通の知人曰く「店舗オペレーションのプロ」とのこと。


 

手持ち3,000ドルから3年間で年商6億円

 

 Urban Stationはそれまでのコーヒーチェーン店よりも若い層向けのコーヒー店が無いkことに目を付けて、若者をターゲットに店舗デザインに凝り、価格も競合より低めに設定、女性・若者の集まり立地を選んで展開したところ大当たりしたそうです。実際いつ行っても学生で大賑わいしています。


 店舗はほとんどの店が一年で投資回収出来ているそうです。店舗は40席程度からと小さめなのですが客数が平均300人と多く、月商でUSD$15,000(150万円)弱程度になるそうです。一方で家賃・人件費等・原材料が安いため出費は月USD$8,000(80万円)程度。凄い利益率になります。


 そんな彼が新たな挑戦として立ち上げたのが新店舗 THE COFFEE HOUSEです。このお店はUrban Stationよりもずっと大きく「最高の品質を手頃な価格で」提供することでスターバックスやローカル大手のTrung Nguyen Coffeeなどに打ち勝ちたいとの狙いを持っています。3年で60~80店舗ほどまで伸ばしていきたいとのこと。実際の店舗ですが、コーヒーに利用する氷にまでこだわって凄く雰囲気のある店舗になっています。

 

農園直送のコーヒー豆でスタバ価格のコーヒーショップをオープン

 

 もう1人の起業家はDuy Kalvin。彼はベトナムコーヒーの産地ダラットでコーヒー農園を経営していた時に出会いました。その当時から自分の顔写真の入ったコーヒー豆の販売などしていたのですが、この度ホーチミンに大きな店をオープンさせました。彼のお店「Workshop」はホーチミンの繁華街のど真ん中にあり、200㎡もある大きな店舗で、「え、ここベトナム?」というような写真の通りの格好よい店舗です。


 「ベトナム人は化学薬品のはいったコーヒーばかり飲んでいるので、自分が本当のコーヒーを伝えたい」という思いから、自分の農園でとれたコーヒー豆を使って何とサイフォンでコーヒーを作って出してくれます。価格も日本のスタバと変わらないのですが、単価が高いこともあり初月より収支はトントンだそうです。将来的には海外にも展開していきたいという夢を持っています。




 

二人のコーヒー起業家が成功する理由

 

 NghiもDuyも20代半ばと非常に若いのですが、とても前向きで、展開スピードがものすごく早いです。彼らの成功の鍵として上げられるのが、一つは良い出資パートナーを見つけていること。Nghiのパートナーは携帯電話チェーン最大手のFounderですので、今後お店を展開していく上で不可欠な「立地」についての的確なアドバイスが得られます。Duyに関しては外国人を含む10名の出資者をFacebookなどでコンタクトして集め、より良い立地の店舗を安く借りています。ベトナムでは人のネットワークはビジネス成功の上で不可欠です。


 また二人ともベトナムでは珍しく社員教育に力を入れていることも特長としてあげられます。Duyのお店では店舗トレーニングに6カ月費やしたそうですし、Nghiも、「お客様優先」の精神についてスタッフに徹底してたたきこんだそうです。日本と異なり、ベトナムでは飲食店でのサービスが悪くて不愉快な思いをすることも少なくないのですが(というか多い)、彼らのお店はスタッフが笑顔で対応してくれます。また、例えば Urban Stationの離職率は3%とベトナム平均の離職率20%と比較しても非常に低く、スタッフが職場を楽しんでいるのが数値に現れています。


 彼らの経営するコーヒー店にいる若者を見ていると、ベトナムが一人当たりのGDP2000ドルに満たない国だとはとても思えません。貧富の差が大きいからですが、ベトナムがどんどん変化して成長していく姿をこれらのお店で目の当たりにすることができます。

 

【著者】

 

黒川賢吾/株式会社Asia Plus/Founder/CEO

横浜国立大学卒業後、日本電信電話株式会社に就職。2000年よりメキシコにボクシング修行に出るために退社。帰国後、外資系ソフトウェア勤務を経て2002年にソニー株式会社入社し、英国・米国・シンガポールにて海外マーケティングを担当。株式会社ユニクロを経て、2014年1月に株式会社Asia Plus を設立。ベトナムをベースに企業向けSNS「Tascade」とオンラインリサーチサービス「Q&Me」を展開。

株式会社Asia Plus http://asia-plus.net/
Tasacade http://www.tascade.net