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2014-09-09 10:40:00

米国民の食生活は改善、貧困層は取り残される

 
2014 年 9 月 4 日 15:15 JST

 

12年におよぶ研究で米国民の食生活は改善したものの、理想からはほど遠いままであることが分かったAssociated Press

 【シカゴ】米国の食生活は改善した――ただし、貧困層を除いて。これは栄養面での格差が拡大している証拠だ。しかし、裕福な成人でさえも食品の選択は理想には依然ほど遠い状態であることが、12年にわたる研究で分かった。

 

 研究によると、健全な食生活を示す指数(最高110)で、米国の成人の数値は1999-2000年で40ポイントだったが、その後安定的に上昇し、2009-10年には47ポイントとなった。

 

 ただ、低所得層の成人の数値は平均を下回り、調査期間を通してほとんど変化がなかった。研究を始めた頃の低所得層の数値は高所得層の平均を約4ポイント下回っていたが、2009-10年にはその差が6ポイントに拡大した。

 

 高い数値は、野菜や果物、全粒粉、ヘルシーな脂肪といった心臓に良い食品を摂取していることを意味する。また、肥満や心臓疾患、脳卒中、糖尿病を含む生活習慣病のリスクが少ないことも示している。一方、低い数値は、こうした疾患にかかるリスクが大きいことを意味している。

 

 貧困層と富裕層の食事面での格差が拡大しているのは気がかりで、「公衆衛生上の重大な問題を含んでいる」と、ハーバード公衆衛生大学院のフランク・フー氏は指摘する。同氏はこの研究の共同執筆者。糖尿病のように食事に関連した生活習慣病は米国では全体的に症例が増えており、特に貧困層で顕著だという。

 

 フー氏は「長期間に及ぶ食事の質の低下は、貧困層と富裕層の格差を拡大させるかもしれない」と話す。

 

 健全な食生活を示す指数を開発したのは、これを研究に利用したハーバード公衆衛生大学院の研究者だ。連邦政府が作成した食生活ガイドラインに似ているが、赤身肉や加工肉、砂糖を添加した飲料、アルコールを含む食品群などが追加されている。

 

 研究者らは食習慣に関する聞き取り調査を含む全国規模の調査を実施し、その結果を分析するためトランス脂肪酸の摂取量に関する政府の試算と合わせてこの指数を利用した。研究結果は米国医師会が1日に発行した医学誌「JAMA Internal Medicine 」に掲載された。

 

 フー氏は、栄養格差の拡大は最近の金融危機で所得格差が拡大したことを反映していると指摘する。さらに、安価で加工度の高い食品はしばしば貧困層の地域で広く入手可能であることもその理由に挙げた。

 

 トランス脂肪酸の摂取量が減ったことを主因に、全体では食生活が改善したものの、研究結果は芳しくなく、栄養に関するより良い教育を含む政策変更が必要であることを示している、とフー氏は言う。

 

 政府や食品メーカーはここ数年、加工処理がほどこされたクッキーやケーキ、冷凍ピザ、マーガリンなどに含まれる人工トランス脂肪酸の使用を段階的に減らすよう努めてきた。トランス脂肪酸はコレステロールを増やし、心臓疾患のリスクを高めかねない。風味付けや賞味期限を伸ばすために、こうした脂肪は植物油に水素を加えて製造されている。

 

 執筆者らによると、今回の研究結果は「米国のほぼ全国民が、連邦政府が推奨する栄養摂取量を満たしていない」とする過去の報告とも合致するという。

 

 連邦政府による食生活のガイドラインは5年ごとに作成され、最新版は来年発行される予定。現行のもガイドラインはトランス脂肪酸、塩分、加工食品、添加物としての糖分の摂取量を減らすよう推奨している。具体的な摂取量は明示されていないが、全粒粉や野菜、果物の摂取量を増やすよう促している。

 

 ハーバードの指数も同じような点を強調しているが、もっと具体的だ。例えば、最高点をとるためには毎日2カップの野菜と、果物を少なくとも4回、それに少なくともナッツ類を1オンス(約28グラム)摂取するよう推奨している。

 

 JAMA Internal Medicine誌は、ハーバードの指数は完璧ではないと指摘した。健康面への貢献度が同じではないかもしれない多様な食品を、同じ物差しで測っているというのがその理由だ。とはいえ、研究は公衆衛生上の懸念である「格差の拡大」を浮き彫りにしているとも述べている。また、こうした格差を埋めるためのフードスタンプといった政府のプログラムは不十分かもしれず、政府給付金の対象を健康的な食品に限ったほうが好ましい戦略かもしれないと提案している。

 

 

(AP通信)