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2014-07-17 17:41:00

 ファストフード業界は、政府の補助金に助けられ、過去半世紀で食品市場を支配するようになった。この流れは、米国に肥満のまん延をもたらしたほか、いわゆる工場式畜産の成長も相まって、環境を悪化させた。

 

 さらに最近では、ファストフードや巨大農業会社に対する反発のなか、持続可能な食品を推進する運動が全米の飲食店や農場に足掛かりを得ている。地域の食品ネットワークやヘルシーな食事に焦点を当てたこの運動は草の根から始まったが、今や主流だ。

 

 将来的には、熱意あふれるシェフ、農業従事者、活動家を先頭に、二つの道筋のうち後者、つまり持続可能な食品という未来を選ぶ米国人が増えるとみられる。私は期待も込めて以下のような未来を予想している。

 

農産品の直売

 

 農産品の直売や、農業を始める若者の数は幾何学的に増加する。それに伴い、米国内のどの街にも最低一つは農産品の直売所ができ、これにより多くの地域が再生する。

 

 同時に、家族経営の小さな飲食店が復活する。フランチャイズ化などほとんど興味のない経営者たちの関心は主に、生活の質と、職場の周辺に地域社会を築くことに集まりそうだ。こうした飲食店は農家と直接の関係を築き、農産品の質と種類が向上するよう求めることになるだろう。その結果、市場で手に入る果物や野菜の種類が増えることが予想される。

 

 

 需要の増加や気候変動を受け、農家は革新を迫られる。その結果、例えば、国内の寒い地域で温室が増え、都市部で食料生産が拡大し、極端な気象に耐えられる作物が選ばれるようになりそうだ。

 

 こうした動きはファストフード事業や食品加工会社に対する脅威となる。両者は共に、形を変え続け、利益のためにそうした価値観を取り入れることになりそうだ。その商品に対する補助金の形で政府の支援が続く限り、両者は順調だろう。持続可能な食品を求める運動は一定の範囲までしか届かず、それに接する機会、手段、教育を持ち合わせた人々に限られたものにとどまりそうだ。ただ、議員たちが、食品・農業政策を劇的に変更すれば話は別だが。

 

 政府当局者は今後数年で正気に戻り、工場ではなく農家に補助金を交付し始めると思う。本物の食品を手にする機会の格差は持てる者と持たざる者の間で拡大し、食の安全は社会的正義の色合いを強めそうだ。

 

原点は学校

 

 筆者は、米国の食事情を変えるには、持続可能な無料給食プログラムの構築が最も効果的だとの見解が広まると確信している。全ての子どもに、最も長期的に影響を与えるのに最適なのは、「食育」プログラムを伴う場だとの考えで、政策決定者の意見がまとまるだろう。筆者は「エディブル・スクールヤード・プロジェクト」を通じて20年以上にわたりその分野で働いてきた経験から、何が可能か分かっている。有機食材で作られたごちそうにあずかった子どもたちは、生きるための食品に対する姿勢や振る舞いが変わるということだ。

 

 

アリス・ウォータース氏 Amanda Marsalis

 原則に基づいた購入基準(有機生産された地産品)を備えた組織的な食のプログラムは、子どもそれぞれの栄養状態を変えるほか、本物の食品に対する補助金制度になる。この制度では、学校が持続可能性の原動力になる。

 

 民主党も共和党もようやく、米国の病巣の多くが食に根源を持つことを認識するようになっている。食に解決策があることを両者が認識しているかどうか、筆者はまだ確信がない。

 

(アリス・ウォータース氏は料理家でカリフォルニアのレストラン「シェ・パニース」の創業者。著書も何冊かある)

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303379504580020582683662008?mod=djem_Japandaily_t