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2014-07-09 17:25:00

本誌のシリーズ特集「90億人の食」と連動したWebナショジオのオリジナル企画が
「日本の食の未来」。世界の食料の問題を、日本の視点で考えるインタビューです。
今回はアフリカで稲作の技術を指導しているJICA(国際協力機構)の坪井達史さんに
お話をうかがいました。

 世界で最も飢餓が深刻なアフリカ。食料自給率のアップは急務ですが、いま、
「ネリカ」と呼ばれる米が急速に普及しているといいます。坪井さんは、このネリカ
にいち早く注目し、ウガンダを拠点にしてアフリカ諸国で稲作の技術を指導していま
す。

 実は坪井さん、2009年にはニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人100人」
にも選ばれ、「ミスターネリカ」の異名を持つ、ネリカ栽培の第一人者なのです。

 しかし、なぜ、アフリカで米づくりなのか。そしてネリカとはどんな米なのか。
詳しくはインタビューをご覧ください。今日から3日間連続で公開です!

■日本の食の未来 第1回 えっ、アフリカで米づくり? しかも畑で?

第1回 えっ、アフリカで米づくり? しかも畑で?

 世界最後のフロンティア市場。

 アフリカ大陸を指す言葉である。ヨーロッパ各国の植民地から独立したアフリカ諸国は、内戦に陥る国も多く、ながらく社会基盤が脆弱であった。しかし、近年は紛争の数も減り、復興の兆しが見えつつある。実際、2001年から2011年までのアフリカの実質GDP成長率は年平均で4.6%。世界の平均は3.7%であり、めざましい経済発展がうかがえる。

 その背景には近海などの石油や天然ガス、レアメタルといった資源開発や、生活水準の向上による市場の拡大などがあり、欧米から中国やインドの新興国まで、世界中がアフリカを新たな投資先として注目している。これが世界最後のフロンティア市場と呼ばれる所以だ。

 それは農業も同じ。アフリカには食用穀物の栽培に適した未耕作地が約4億5000万ヘクタールあるという。これは世界全体の未耕作地のおよそ半分にあたる。しかも、耕作地は農業技術やインフラの整備が未発達なため、トウモロコシなど穀物の面積当たりの収量は欧米の6分の1程度(サハラ砂漠以南)しかない。つまり、農業開発の余地が非常に大きい土地なのだ。

 2050年に世界人口は90億人を超えると予測される。その増加率が最も高いのがアフリカで、現在約9億2600万人の人口は2050年には倍以上の約22億人に達する可能性があるといわれている。しかも国連の報告によると、アフリカの飢餓人口は過去20年間で1億7500万人(1990~1992年)から2億3900万人(2010~2012年)と、世界で唯一増加している。そこにはいまだ政情の不安定な国の影響もあるが、多くの国が自国で食料をまかなえず、米や小麦などの穀物を輸入に頼っていることも一因と考えられる。

 もし、アフリカの農業生産が向上して未耕作地の開発が進み、自給率が上がれば、いまの飢餓を解決に導くばかりか、懸念されている将来の食料危機問題に貢献するひとつの手段となるのではないだろうか。

 では、実際にどのように開拓していくべきなのか。すでに世界では、アメリカが中心となってルワンダで大規模な農地開拓を行なっていたり、中国の企業がモザンビークなどで大農園を造成したりするなど、アフリカへの農業投資を始めている。日本もまた、ブラジルとともにモザンビークで大規模な農地開発「プロサバンナ」を行っているが、それとは別にアフリカの食料事情を改善するために普及に努めている穀物がある。

「ネリカ」と呼ばれる米だ。

アフリカのネリカ「畑」。ネリカの栽培はアフリカの多くの国々から注目されている。(写真提供:坪井達史)(写真クリックで拡大)

本誌2014年6月号では2050年、90億人時代に向けた特集「沸騰するアフリカの農業開発」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。

http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140701/405329/?mail