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2013-07-25 12:40:00

 「日経ビジネス」は2013年7月15日号で「爆発する日本食経済圏」という特集を掲載した。ヘルシーな日本食が世界中で人気を博していることは読者もご存じだろうが、直近3年間で店舗数が実に2倍近くに増えている事実には驚かされたのではないだろうか。

 記者が赴任している上海でもたくさんの日本料理店を目にする。正確な統計数値はないものの、ファストフード店を除けば上海で最も数の多い外国料理店は日本料理店ではないかと感じる。

 当初は上海に駐在する日本人を相手にした日本料理店が大半だろうと思っていた。何しろ上海で生活している日本人は、中長期の出張者も含めると10万人以上はいると言われる。それだけの日本人がいれば、日本人相手の商売でも十分に採算が合うはず。実際、現地で発行されている日本語フリーペーパーには、日本料理店の広告が数え切れないほど掲載されている。

 だが、特集でも紹介したように“非日系”、つまり日本人以外がオーナーの日本料理店に日本人以外の客が長蛇の列をなしている現象が、ここ上海でも起きている。そこで本稿では、非日系で人気の高い日本料理店を実際に訪れた体験レポートをお届けしたい。

台湾人オーナーの日本料理店が人気トップ

 参考にしたのが中国のグルメサイト「大衆点評」だ。日本の「ぐるなび」のようにエリアや食べたい料理を選べば、レストランを簡単に検索できる。訪れた客が各店を「味」「雰囲気」「サービス」の三項目で評価するシステムで、それらを基にお勧め度が星の数で示されている(最高は5つ星)。

 大衆点評では様々なランキングも充実している。四川料理や西洋料理などジャンル別に人気の高い店が並んでおり、この中に日本料理店のランキングもある。

大衆点評ではジャンル別に人気の高いレストランが紹介されている。ランキングは毎週更新される(詳しくはこちらから)

 ランキング1位は「酒呑新館」で、5位にも「酒呑」がランクインしている。ともに台湾人が経営する店だが、3位の「九井日本料理(虹梅路店)」もこの台湾人オーナーの奥さんが経営している。つまりトップ5位のうち3店が同系列ということになる。

 記者はとある週末、人気ナンバーワンの酒呑新館を訪れた。混雑が予想されたので事前に電話で予約しようとしたが、週末の夕方は特別料金がかかる個室以外は予約できないと言われた。仕方がないので少し早めの夕方6時に到着した。それでも、その日は既に5組が玄関スペースで並んでいた。店に入るまで20分近く待たされたものの、待っている間の椅子も用意されており、その間、熱いお茶も振る舞われた。こうした対応は「さすが人気店」と納得できるものだった。

メニューを見たら帰りたくなった

 名前を呼ばれると店員に靴を預けて店内に入る。そこで目に飛び込んで来たのがL字型の巨大なカウンターだ。カウンター席には50人以上の客が横並びで座っており(後で数えたら56席あった)、その向こう側では数十人の板前が客からの注文をさばくために忙しそうに働いている。この活気ある光景に圧倒された。

酒呑新館のメニューの一部。白目をむくほど価格が高いが、料理が運ばれて来ると再度驚く

 テーブル席に着いて再度驚かされたのが値段の高さだった。マグロの大トロは5切れ入って900元と書かれている。1元=16円で計算すると、なんと1万4400円!もするのだ。1切れ当たりでも180元(2880円)である。私は東京銀座の高級寿司店に足を踏み入れたことはないが、1切れで3000円近くもする刺身をいまだかつて口にしたことはない。私の相場観で言えば、3000円は刺し盛り(上)の価格である。

 ちなみにこの酒呑新館では赤身でも1切れが30元(480円)もする。ケチな性格の私はいつも牛丼に換算して考える癖があるのだが、赤身1切れが牛丼1.7杯分の値段ということになる(牛丼の並盛りは主要チェーンで現在1杯280円)。大トロは1切れで10.3牛丼、中トロは1切れで5.1牛丼・・・腹はへっていたが、注文せずにこのまま帰ろうかと真剣に悩んだほどだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130719/251260/?n_cid=nbpnbo_mlt