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日本の外食産業でたびたび話題に上るものの、なかなか根づかなかった業態「ファストカジュアル」。しかしここにきて、チェーン展開に成功する店舗が登場。大手飲食チェーンの参入も相次いでいる。
ファストカジュアルは、ファストフードとファミリーレストランの中間に当たる業態。客単価が高いファミレス、回転率が良く客数を確保できるファストフードの両者の「いいとこ取り」を狙う。注文を受けてから調理するため、提供までにファストフードよりやや時間はかかるが、客は作りたての料理が食べられる。客単価はファストフードより高めだが、ファミリーレストランよりは安め、または同程度だ。
外食頻度の高い米国では、質の高い食事を気軽に食べられる利点が受け、ファストカジュアル市場は2000年代初頭から成長が続いている。日本では長らく続いたデフレのなかで内食志向が高まり、外食業界全体が不振の状態に。ファストカジュアル店は定着には至らなかった。
転機は、消費者マインドの変化。「価格が少し高くなっても、おいしいものを選ぶ人が増えている」(ナポリスを運営する遠藤商事)。これらのニーズに応えるために、ファストカジュアルに参入する企業が再び増えたというわけだ。ファストカジュアル店では、本格的な食事を低価格で提供するため、専用機器の導入やメニュー数の絞り込みなどでコストの管理に取り組んでいる。
日本でのファストカジュアルは、大きく3つに分けられる。まずは、大手ファストフードチェーンとの差別化を狙って誕生した店だ。
店の目立つ場所に電動の石臼が置かれている「蕎麦 冷麦 嵯峨谷」。同店の売りは、製粉から製麺までを店内で行う十割そばだ。人気の「もりそば」は何と280円。格安で提供できる理由は、「ソバの実の状態で仕入れたほうが、粉より原価が安く済むため」(運営する越後屋の江波戸千洋氏)だという。
「ナポリス ピッツァ&カフェ」では注文を受けてから、客から見える場所に設置した専用マシンで生地を伸ばし、石窯でピザを焼き上げる。専用マシンと石窯はアルバイトでも簡単にピザを焼けるようにと開発したオリジナルのもので、人件費の削減が可能になった。