コロナ禍でリアル店舗を利用しにくい状況下、外食業界では料理のテークアウトに加え、食材のオンライン販売に活路を見いだそうとする動きがある。だが、単なるオンライン販売では、既存の「お取り寄せ」と変わらない。そこで、リアル店舗と同じような楽しさを家庭で味わえるように工夫したのが、オイシックス・ラ・大地の「Oisixおうちレストラン」だ。
食品の宅配事業を展開するオイシックス・ラ・大地(以下、オイシックス)は2020年4月、外食支援事業として「Oisixおうちレストラン」(以下、おうちレストラン)を開始した。新型コロナウイルス感染症拡大により、最初の緊急事態宣言が発出され、外食産業は通常通りの店舗営業ができず、営業時間の短縮、テークアウトのメニューや体制づくりなどの対応に追われていた頃だ。
外食業界は売り上げの減少や食材ロスの発生といった問題にも直面。窮地にある外食産業を支援しようと、店で実際に提供する人気メニューをネット経由で家庭に届け、楽しんでもらおうというのがおうちレストランだ。
消費者にとっても、外食を控えた分、料理を作る人の家事労働が増えたり、外出せずに毎日家で食事をすることでストレスがたまったりする。「飲食業者と消費者、不満がたまっている両者を結び、お家でワクワクする食事体験を実現するのがおうちレストランの目的。だから、作る人の負担が増えないように『簡単、時短、楽しい』が商品開発のコンセプトだ」。Oisix EC事業本部おうちレストラン担当の熊本隆一氏は、こう説明する。
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サービス開始当初は「塚田農場」、次いで「串カツ田中」「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」の3つの店のメニューでスタート。21年5月には約20の飲食店の30~35のメニューを取り扱うまでに拡大した。
専用焼き台や白銀鍋も、食材と共に送り届ける
だが、単に食材をオンラインで販売するだけでは、既存の「お取り寄せ」と何ら変わらない。おうちレストラン以外にも、飲食店の人気メニューを家庭で楽しめるオンライン通販サービスは数多くあり、日ごろの食事とは違ったちょっとぜいたくなごちそうとして定着している。