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2021-08-13 17:52:00

外食、持ち帰り需要が3割超に 各社がサービス競う

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「丸亀製麺」で持ち帰りをする消費者の列

新型コロナウイルス禍にあえぐ外食大手が、持ち帰りサービスの拡充を競っている。売上高に占める比率は業界全体で2020年に初めて3割を超え、足元では5割に達するチェーンもある。在宅勤務の定着などでコロナ禍収束後も需要は膨らむとみて、各社は事前決済アプリといった利便性向上や店舗設計の見直しに踏み込んでいる。

英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると、日本市場における持ち帰りの比率は20年に前年から6ポイント増の34%になった。統計が遡れる09年以降で最も高い。店内飲食の売り上げが32%減少した一方、持ち帰りはほぼ横ばいで、市場を下支えした。

ワクチン接種が進むにつれて店内飲食も回復するとみられるが、ユーロモニターは日本では25年まで持ち帰りの割合は30%超を維持すると予想する。中国は10%程度、米国が20%強で推移するとみているのに対し、比率が高い。

日本では電車での移動が多く、駅前商店街で多様な店が持ち帰りに対応するようになったことで購入意欲が高まる。さらに在宅勤務などで自宅で食事をする機会が増えた。すかいらーくホールディングス(HD)の谷真会長兼社長は「コロナが収束しても、消費者の働き方や食事の取り方などの多様性は定着する」と話す。

もともと持ち帰りに向かなかったジャンルの店舗も、需要を取り込んでいる。トリドールホールディングスの「丸亀製麺」では、コロナ前に2%に満たなかった持ち帰り比率が約25%に上がった。4月に冷やしうどんとてんぷらなどを詰めた「丸亀うどん弁当」を商品化し、900万食以上を販売した。

ロイヤルホールディングスの天丼チェーン「てんや」はコロナ前に約3割だった比率が5割に上昇。「夕方以降の持ち帰り需要に加え、ランチ帯の購入が増えている」という。従来3割だった吉野家も4割を超えた。

緊急事態宣言の再発令など苦境が続くなか、各社は利便性の向上を急ぐ。「ガスト」などを展開するすかいらーくHDは7月末、スマートフォンのアプリで事前決済できるようにした。1~3月の持ち帰りの売り上げは前年同期の約2倍の60億円弱に伸びた。てんやもモバイル注文の導入へ6月にテストを始めた。

店作りから変える企業もある。イートアンドホールディングスは22年2月期中に国内で開く「大阪王将」全店を持ち帰り重視の設計にする。店に入らなくても専用窓口から受け取れるように厨房の配置を変える。従来に比べ店舗内の座席数は減るが、持ち帰りの利便性向上を優先させる。

ワタミは今期200店出す唐揚げ店「から揚げの天才」の半数を、駐車場の一画などでも営業できるコンテナ型にする。持ち帰り専門で、約10平方メートルあれば開業できる。

21年12月期に2期連続の営業最高益を見込む日本マクドナルドホールディングスは調理能力を2倍にした厨房設備の導入を進める。コロナ下の勝ち組企業となる原動力となったドライブスルーなどの注文を、効率よくさばく体制を整える。

コロナ禍で「ウーバーイーツ」などの宅配サービスを導入する店も増えたが、いちよし経済研究所の鮫島誠一郎首席研究員は「持ち帰りは手数料のかかる料理宅配サービスに比べコスト負担が少ない」と指摘する。

ユーロモニターによると日本のフードサービス市場での宅配の比率は20年に約5%で、持ち帰りの方がはるかに大きい。消費者にとっても配達料がかからず、同じ商品を割安に買えるためだ。

外食のなかでも、店内での酒類の提供が主力だった居酒屋は、持ち帰り需要の取り込みに苦戦している。持ち帰りサービスの成否が各社の業績回復を左右する構図はしばらく続きそうだ。

新型コロナ: 外食、持ち帰り需要が3割超に 各社がサービス競う: 日本経済新聞 (nikkei.com)