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2021-06-19 22:59:00

中国消費、草食系「寝そべり族」増加 共産党も危機感

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天野彬さん他2名の投稿天野彬鈴木一人中村奈都子

 

北京市内の繁華街を歩く若者たち=共同

【北京=川手伊織】中国国家統計局が16日発表した5月の小売売上高は前年同月比12%増えた。新型コロナウイルスで落ち込んだ前年の反動が大きく、飲食店収入や家電販売はなお伸び悩む。「寝そべり族」と呼ばれる消費意欲が低い若者が増えていることも一因で、中国共産党も危機感を募らせている。

小売売上高は2019年5月を9%上回った。ガソリンなど燃料価格の上昇で支出額を押し上げたとみられる。宝飾品などの高額品は堅調だが、消費者の根強い節約志向が垣間見えた。

飲食店収入の伸び率は2年前との比較で3%弱にとどまった。前年同月比9%増えていたコロナ前の水準には遠い。家電や音響機器は3%と4月から伸びが鈍った。みずほリサーチ&テクノロジーズの玉井芳野氏が季節の変動をならした分析をしたところ、自動車や通信機器も落ち込んだ。

サービス消費も勢いを欠く。中国文化観光省によると、5月初旬の大型連休の旅行者数は19年の同時期を3%上回ったが、1人あたりの旅行消費額は25%下回った。6月12~14日の3連休も客足はほぼ元通りだが、消費額は2年前の8割弱にとどまった。

中国人民銀行(中央銀行)が1~3月に実施した預金者へのアンケート調査では、「消費に回すお金を増やす」との回答は22.3%だった。19年までは30%弱で推移したが、新型コロナがまん延した後は22~23%に低下している。

消費意欲が高まらないのは雇用・所得の持ち直しが一向に加速しないためだ。5月の都市部の新規雇用は2年前を下回った。21年に入ってから、19年同月水準を上回ったのは4月だけだ。資源高が中小企業の収益を圧迫するなか、好調な輸出などの恩恵が家計に行き渡らない。

若者の消費意欲の低さも指摘される。「寝そべり族」とも呼ばれ、必要最低限の生活さえ送れればいいという、草食系の若者だ。就職難や住宅価格高騰で将来への不安をかき立てられる。企業や大学の成果至上主義に嫌気が差し、殻にこもる。これまでの世代より消費意欲も低い。

共産党政権は危機感を募らせる。党青年組織の共産主義青年団機関紙、中国青年報は「快適な環境に隠れていても、成功は決して天から降ってこない」との論文を掲載した。ネット上では「人に努力だけさせて、より豊かな生活を保障できないことが無責任だ」と当局を批判する書き込みも多い。

中国消費、草食系「寝そべり族」増加 共産党も危機感: 日本経済新聞 (nikkei.com)