新型コロナウイルス感染拡大で、飲食店やホテルの休業に伴う「食品ロス」の問題が広がっている。賞味期限切れが近づく食品を中心に扱う電子商取引(EC)サイトのクラダシ(東京・品川)は、2020年2月から売り上げが倍増。新型コロナは、流通の分野でも劇的な変化を引き起こそうとしている。

フードシェアリングサイト「KURADASHI」。2020年5月12日にはサイトをリニューアルした
フードシェアリングサイト「KURADASHI」。2020年5月12日にはサイトをリニューアルした
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 売れ筋ランキングの上位をのぞいてみると、「プロが選んだ」「ワンランク上の味をご自宅で」とコピーが付いていた。商品名には「ホテルレストラン用の果汁100%ジュース」とある。20年5月7日朝に発売となり、その日のうちに完売となったオレンジジュースは、1リットルパック12本で1420円。1本あたり約120円で、参考価格として掲げられている4080円の65%引きとなる。ただし賞味期限は6月中旬まで。

 「ホテルやレストランの休業が続く中、業務用商品を扱ってほしいという依頼が増えている」と説明するのは、フードシェアリングサイト「KURADASHI」を運営するクラダシの関藤竜也社長だ。外出自粛が続く中で、旅行やインバウンド、結婚式などの需要は急落した。緊急事態宣言下で飲食店などが2カ月間もの休業を余儀なくされる中で、賞味期限切れの業務用食品が急増している。同社と取引のある業務用食品の業者は、コロナ以前と比べて1.25倍に増えているという。

一般的に販売されている食品よりも賞味期限が近いものを低価格で多数販売している。サイトの画面はリニューアル前のもの
一般的に販売されている食品よりも賞味期限が近いものを低価格で多数販売している。サイトの画面はリニューアル前のもの
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 サイトの売り上げや利用者数も増えている。新型コロナの影響による巣ごもり需要の拡大や、食品ロスへの意識の高まりを受け、2月と比べて3月の売り上げは2倍、新規会員は約3倍。4月実績でも、売り上げが前月比1.2倍、新規会員は1.5倍と伸び続けているという。

ビッグデータで最適な値付け

 クラダシは基本的に在庫を持たない。例えば、5月になるとチョコレートを処分したいと考えるメーカーが増える。徐々に気温が上がり、通常の倉庫では溶けてしまうので、追加のコストをかけて保冷倉庫で保存しなければならないからだ。そうしたメーカーからの相談を受けてサイト上で掲載する。商品が売れれば、メーカーから宅配事業者を通してユーザーの元へ届ける。

 「創業からの5年半余りで多数の商品を売り切ってきた」と関藤氏は言う。どの程度の値段を付ければ、どれだけの数が売り切ることができるか。商品を売り切るノウハウの核となっているのは、値付けと販売数の関係を記録し続けたビッグデータだ。このデータを生かし、今後2~3年をかけて価格決定を支援するAI(人工知能)の開発も進めていく考えだ。

 加工食品の場合、原価は20~30%のものが多いと言われている。「メーカーからは、その原価分は回収したいという相談が多い」(関藤氏)ことから、クラダシのサイト上では同社の販売手数料をのせた上で、通常価格の65%オフ前後で販売しているものが多いという。クラダシで販売した価格の3~5%は社会福祉や環境保護などの支援団体に寄付をする仕組みとなっている。