新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、消費者の意識はどう変わったのか――。米調査会社のニールセンは2020年3月、世界70カ国以上を対象に大規模調査を実施した(i)。感染の流行度合いやそれぞれの国や地域における消費者の受け止め方にばらつきがあったタイミングだが、そこから見えてきた消費者意識の変化をデータで浮き彫りにしたい。

米調査会社のニールセンが世界70カ国以上を対象に実施した大規模な消費者調査から、アフターコロナ時代の消費者の実像が浮かび上がってきた(写真/Shutterstock)
米調査会社のニールセンが世界70カ国以上を対象に実施した大規模な消費者調査から、アフターコロナ時代の消費者の実像が浮かび上がってきた(写真/Shutterstock)
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 新型コロナウイルスによって、消費者は生活の変化を余儀なくされている。外出自粛によって「やらないこと」ことが増えた一方で、やり始めたり頻度が増えたりしたことも多い。顕著なのは、オンラインショッピングや在宅勤務だろう。どちらも人との物理的接触を避けるための強制的な手段ながら、利用拡大の流れに拍車がかかっている。

 今回の調査で顕著に見えた国内の変化を項目ごとにみながら、海外の状況と比較してみたい。まずニールセンは100以上の国や地域で7000社以上の企業から、POS(販売時点情報管理)データなどのマーケティングデータを得て長年分析している。新型コロナウイルスの流行初期の段階から、小売カテゴリーがどの国や地域でもほぼ同じようなうな変化を示していたことを受けて、大規模調査を実施することを決めた。日本では3月13日から16日まで、全国18歳から65歳までの526サンプルを対象に行った。他の国や地域と比較できるようにするため、質問項目はほぼ同じ内容としている。

EC利用頻度は30%の人が増加

 まず、見てほしいのはオンラインショッピング(EC)における変化だ。頻度が増加したと回答した人は、全体の30%。ウイルスが終息した後も頻度を減らさないとした人は87%に及んだ。

買い物に関する消費者の変化
買い物に関する消費者の変化
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 実はアジアの他の地域では、オンラインショッピングを増加させたと答えた割合は日本よりも多い。もともとオンラインショッピングに対して満足度が低い中で、強制力や罰則のある外出制限によって日用品などを購入する人が激増したためだと考えられる。現地の担当者によると、配送事業者のキャパシティーを超えてしまい、配送が滞るなどの不満の声も多く聞かれるということだ。

 オンラインでの販売額が、新型コロナウイルスの影響で1.5~2倍近くにまで跳ね上がった国もある。例えばイタリアだ。食品・日用品の販売額は2月16日の週で前週比+56.8%に増加、3月16日の週には+142.3%と激増した。欧州連合(EU)の中でも突出してオンラインショッピングが普及していなかったイタリアでこのような変化が起こったことは見逃せない。