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2012-06-30 17:52:00

26日付の米医学専門誌「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)」に掲載された研究論文によると、良質な炭水化物中心のダイエット(食事療法)は、低脂肪ないし低炭水化物の食事よりも、体重を減らした状態をそのまま維持するのに役立つ可能性が高く、しかも体内で望まない副作用を誘発しないことが分かった。

 良質な炭水化物中心の食事、つまり血糖指数(GI=炭水化物が消化されて糖に変化する速さを表す数値)の低い食事をした被験者には、コレステロール値や、心疾患や糖尿病の発症リスクを低下させるその他の主要な指標に改善がみられた。GIの低いこの食事は、地中海ダイエット(地中海周辺で収穫される農作物を中心とした食事)に似たもので、果物、野菜、ナッツや全粒穀物(糠となる胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物)を中心とする。

Reuters

血糖指数の低い食事をした被験者はコレステロール値などの改善がみられた

 この研究は、ボストン小児病院付属のニュー・バランス・ファンデーション・オビーシティ・プリベンション・センターの研究者が中心となって実施。一般的によく見受けられる3通りのダイエットパターンが減量状態を維持する能力にどう影響するのかを調べるために行われた。大半のダイエット研究と違い、被験者は用意された食事を全て食べ、食物摂取量が監視された。被験者は多くの食事を病院で取ったが、そうでない場合は家に持ち帰って食べた。

 論文の共同執筆者の1人で、同センターの責任者でもあるデービッド・ラドウィグ博士は、ダイエットした大半の人々は一般的にその減量状態を維持するのに悪戦苦闘すると指摘。これまでの各種の研究では、体重が減ると1日のエネルギー消費量、つまり休息や活動を通じて体が消費するカロリーが減り、リバウンドしやすくなることが示されている。そこで同博士の研究は、3パターンのダイエットを用意し、それらがエネルギー消費量にもたらす影響を調べるために行われた。このほか、同時にホルモン、血中の脂肪値や、その他の指標についても検査した。

 21人の被験者(18~40歳)はまず、総カロリーのうち約45%を炭水化物、30%を脂質、25%をタンパク質が占めるダイエット用の食事を3カ月間取り、体重を当初10~15%減らした。

 その後、被験者は次のダイエットパターンのうちいずれか一つを1カ月間取った。すなわち①低脂肪メニュー(脂肪を総カロリーの20%以内に抑えたもの)、②アトキンス博士の考案したダイエットをモデルとした低炭水化物メニュー(炭水化物を総カロリーの10%以内に抑えたもの)、③低GIメニュー(総カロリーのうち炭水化物から40%、脂質から40%、タンパク質から20%を摂取するように配分したもの)の3パターンだ。その後、被験者は他の2パターンもそれぞれ4週間ずつ取った。

 ラドウィグ博士によると、このようなダイエット3種の各段階を摂取した被験者の状態を調べたところ、①の低脂肪メニューがエネルギー消費量に最も悪い影響をもたらした。また、この低脂肪メニューを取った被験者には、脂肪の一種であるトリグリセリドの増加やいわゆる善玉コレステロール値の低下がみられた。同博士は「主要な栄養素はどれも厳しく制限するのは避けるべきで、栄養素の質に注目すべきだ」と指摘した。

 同博士によると、総エネルギー消費量の伸びは②の低炭水化物メニューで最も大きく、①の低脂肪メニューよりも1日当たり約300カロリー多かった。300キロカロリーは中程度の運動1時間で消費するカロリーに匹敵する。しかし、この変化には代償が伴った。ストレスホルモンとされるコルチゾールと、体内炎症の指標であるC反応性タンパク(CRP)が増えたのだ。CRPは心疾患や糖尿病の発症リスクを高める恐れがある。

 これに対し③の低GIメニューのエネルギー消費量は①の低脂肪メニューよりも1日当たり約150カロリー多かったが、コレステロール値やその他のホルモンに悪影響が一切出なかった。そのため同博士は、③の低GIメニューが理想的な食事療法と結論した。
http://jp.wsj.com:80/Life-Style/node_468148/?nid=LF20120628&reflink=NLhtml_20120628_a1