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2012-03-24 22:06:00

2012年3月7日 大連事務所発

中国が日本からの一部農産物・食品輸入に対する規制緩和を決定した2011年11月24日から約3カ月が経過、遼寧省の大連、瀋陽では、小売店の棚に日本産食品が徐々に戻りつつある。小売店や輸入・卸業者へのヒアリングによると、売れ行きは悪くないようだが、品揃えが大震災以前の状態に戻るにはまだ時間が掛かる見込み。現段階では消費者の日本産食品に対する態度を判断するのは時期尚早のようだ。

<3月以降、商品の種類・数は増加見込み>
中国・国家質量監督検査検疫総局が水産品などを除き事実上輸入を禁止していた日本産農産物・食品の輸入を再開すると決定した直後から、多くのバイヤーが迅速に輸入に動いた。ただ、原産地証明書発行などの各種手続きに時間が掛かったことなどから、春節(12年1月22~28日)前の一大商戦に、日本産食品を調達できた小売店は極めて限定的であった。

しかし、緩和実施から約3カ月が経過した現時点では、小売店の棚には徐々に日本産が戻る動きが顕在化してきている。従来から日本産食品を数多く扱ってきた小売店の店頭をみると、規制緩和後の条件下で輸入されたとみられる菓子類、カップ麺などの麺類、醤油などの調味料類、飲料、酒類が棚に並んでいる。

とはいえ、商品の種類・数は非常に限られており、東日本大震災以前の15~20%程度といったところだ。この点について、日本産食品を豊富に取りそろえることで競合店との差別化を図ってきた小売店の担当者からは、「制度上輸入可能なものはできるだけ迅速に仕入れ、品揃えを充実させたい」との声が聞かれている。

実際、3月以降は徐々に品揃えも充実するとの見方が多い。ヒアリングした輸入・卸業者からは、「緩和直後は手続きや通関の状況を確認するために少量輸入したが、特に問題がなかったため、次回はより多く発注する」、「これまで手続きの確認、書類の整備に時間を掛けていたが、3~4月に掛けて、緩和後初めての輸入を実施する」といった声が聞かれている。

ただ、バイヤーも品揃えの充実には苦労が続きそうな状況だ。10都県(福島、栃木、群馬、茨城、千葉、宮城、新潟、長野、埼玉、東京)からの輸入がいまだ禁止されていること、乳製品など放射線検査合格証明書が必要な一部食品の輸入が事実上できない状態が続いていること、また、原産地証明書取得にかかる費用がメーカー負担であるため、現時点での輸出に積極的ではないメーカーもあることなどが背景にある。

なお、主に上位中間層をターゲットにしている大連の外資系大型スーパーの輸入食品売り場を3月6日に視察したところ、大震災以前は一棚が日本産に割り当てられていたのに対し、震災前に生産された1商品が残されているだけとなっていた。棚には「中国産日本風食品」との表記がなされており、中国国内、東南アジアなどで生産されたふりかけ、海苔、調味料、菓子類が並べられていた。もともと輸入食品、中でも日本産食品を主力商品としていない小売店においては、「回復」までは時間が掛かりそうだ。

<消費者の反応をみるには時間が必要>
気になる消費者の反応について、バイヤーへのヒアリングでは、入荷したアイテムの売れ行き自体は悪くないとの声が多数を占めている。日本産が事実上手に入らない状態が続いていたこともあり、「日本産食品の「常連」については、棚に並んだ商品を積極的に買っている」との声が聞かれている。

一方で、大連や瀋陽の消費者が一般的傾向として日本産をどうみているのかについては、「判断するほどの材料(商品数)が少なく、即断はできない」とのコメントが聞かれた。確かに、商品数、種類が非常に限定的で、偏りもみられる現段階では「何とも言えない」というのが本音のようだ。

大震災から約1年、中国の消費者が著しく日本産離れを起こしているといった声は現時点では聞かれない。一方で、楽観できる状況にないのも事実だ。今後は輸入できる商品を大事にしながら、日本産の魅力を改めて訴えていく取り組みがより重要になりそうだ。

http://www.jetro.go.jp:80/world/shinsai/20120307_01.html