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2012-02-05 12:25:00

今回は、市場調査の対象となる「生活者行動」について説明しよう。

 

市場調査の意義と方法②

 

[2]生活者行動

 「消費者」は、いまや「生活者」に転換しているので、これからの新しい時代は、まさしく「生活者時代」であり、また時々刻々と変化しているので、継続的に「市場調査」を行わないと、お客様の変化に適応できなくなってしまう。

(1)生活者とは

① 生活者主義

 「生活者主義(principle of consumer citizen)」について、小原博は「現代商業・流通辞典」で、次のように説明している。

 経済運営や企業経営における視点からは、われわれ人間は「消費者」として認識され取り扱われてきた。消費者は、商品を購買し使用することを目的として存在するが「われわれは、この世に生まれてきた以上、よりよく活きてゆきたいとする者」(宇野政雄)という生活者として、消費は生活するための手段でなければならないのは自明であろう。生活者主義は、このような消費目的のために存在する消費者としてではなく、人間らしく生きていくための生活者として意識改革されるべきであり、かつ、そうした考え方、その行動を指す・

 

② 生活者の意味

 「生活者」の意味については、有馬賢治が「マ-ケティング辞典」で、次のように説明している。

 宇野政雄により提唱された消費者を拡張した概念。消費者とは、商品およびサ-ビスを使用し消耗する者のことであるが、生活者は人間の生活全般を視野に入れた概念である。生活者の観点では、人間が生まれて生きていくために消費を手段的なものとして捉えて活用する人間像が考えられている。そのために、生活者は消費者よりも人間の生活に根ざしたより根源的な立場として位置づけられるものである。

 

③ 生活者の定義

 「生活者」の定義としては、確固たるものがないが、ここでは次のように定義する。

 「消費者」は、生産者や販売者が一方的に提供する商品を購入し生活をしていたが、時代と共に生産者や販売者は消費者の動向を探ることによって商品を提供するようになってきたものの、どちらかというと生産者や販売者が優先されてきた、

 「生活者」は、人々が生産者や販売者が考える商品について、自分が気に入らなくては見向きをしなくなくなり、人々は自分自身の生活のスタイルや質を考えて、それにフィットしなければ商品を購入しないという人々が主体の生活、つまり「生活設計」をする人々に大転換したので、「生活者」と「消費者」を区別するものである。

 したがって、生産者や販売者は、「生活者」の「ニ-ズ」や「ウォンツ」を徹底的に探索することによって「仮説」を立てて「検証」していかなければならない時代となってきた。

重要なことは、「コモディティ・グッズ」であっても高品質が求められ、「ライフ・スタイル・グッズ」においては、「ハイ・クォリティ・オブ・ライフ」が提案されなければならないのである。

 さらに、「ニュ-・ラグジュアリ-・グッズ」が求められるようになった。これは、従来の「ライフスタイル・グッズ」よりも、ワンランクもツ-ランクも上質を求める傾向が高まってきた。

 生活者の「ニ-ズ」や「ウォンツ」は、「二極分化」より「三極分化」というように、多彩になってきて、生活者のその時点における利用動機がますます複雑化してきているので、「生活者」としての位置づけを明確にしなければならない。

 

(2)生活者を求めて

 「生活者」という言葉について、もっと詳細に考察すると、次のようになる。

① 消費者とは

 いまでも「消費者」「消費者」といわれ続けているが、この言葉は大量生産・大量販売時代に、商品をつくれば売れたという、いわば「消費=費やしてなくすこと。つかいつくすこと」(広辞苑:岩波書店)という感覚が強い。これは、どちらかというと、メ-カ-がお客様の「ニ-ズ」と思っているものを生産し、マスコミで大量のコミュニケ-シヨンを行っていく「マ-ケティング」手法であった。

 

② 気にいった店

 これからの時代は、人々は販売されている商品を何でも買うのではなく、自分の生活設計に合致した商品しか購入しなくなり、外食ならどこの店でいいものではなく、自分の気にいった店しか足を運ばないようになってきた。つまり、人々は、「自分の欲している心の感動」を得たいと願っているのである。

 

③ 生活者の言葉の誕生

 気にいった店というのは、自分で自分の生活を描いていくことであり、ここに「生活者」という言葉が生まれ、「消費者」と区別する必要性が生じたのである。人々は、確かに景気がよければ、サイフのヒモをゆるめ、景気が悪くなれば締めるのは、ごくごく当たり前のことである。

 

④ 大不況は

 平成大不況や世界的金融不安は、「コモディティ・グッズ」は、ディスカウントに走ったが、これはいつの不況時代でも起こりえることであるが、大不況では、たんなる安さだけでなく、質の高いものが求められた。

 さらに、「ライスタイル・グッズ」については、高額品は絶対といってよいほど売れなかったが、「アップスケ-ル」された商品で、品質の価値が高く、その価値に見合ったバリュ-プライスの商品は売れていたのであった。消費者時代は、不況になると、まったく低迷してしまったが、「生活者時代」は、人々が心から望んでいるビジネスは、依然として好調である。

 

⑤ 生活者の望むもの

 これらの実情をみると、どんな時代でも人々の「ニ-ズ」というものは、どんどん「アップスケ-ル」されていることがわかる。また、人々は特に「ウォンツ」についても、ますます高まっていることがわかる。

したがって、商品やサービスを提供する側は、「生活者」の「ウォンツ」を真剣に、しかも継続的に探索していかなければならず、「生活者」は物を言わないから、「生活者」の心の奥底まで知る努力が不可欠である。

 

⑥ サ-ビスの付加

 生活者というものは、「心の満足度を高めたい」「心から感動したい」と願っているので、「商品+価値+価格」に「接客サ-ビス」を付加していかなければならない。

 

⑦ ホスピタリティ時代

 「接客サ-ビス」も、たんにサ-ビスを良くするというものでなく、「お客様を心からおもてなし」をするという「ホスピタリティ」が不可欠になっている。つまり、流通サ-ビス業の新しい時代の展望は、「ホスピタリティ社会」が「ドメイン」になる。